金利上昇局面での日本株の選び方:SMBC日興証券・安田光氏の見方
テレ東BIZ ダイジェストテレ東BIZ「朝活Online」で、SMBC日興証券の安田光氏が、世界的に長期金利が高止まりしやすい中で日本株をどう見て、どう選ぶべきかを解説した。安田氏は日本株への前向きな見方を維持している。日本株は米国株に比べて金利上昇を吸収する余地が大きく、企業の収益見通しも改善が続いているためだ。そのうえで、今後は市場全体をひとくくりに見るのではなく、業績改善が続く企業を丁寧に選ぶことが重要になると述べた。なお番組内では、取り上げる内容は一つの見方であり、投資は自己責任で行うよう断りが入っている。
日本の長期金利は上昇余地が限られるという見方
安田氏はまず、金利については水準だけでなく、今後どこまで上がるかが重要だと述べた。米国では財政問題、国債発行の増加、AIインフラ投資に伴う資金需要などを背景に、長期金利に上昇圧力が残りやすいという。一方、日本の10年債利回りは名目GDP成長率と比べると、すでに相応の水準まで上がっているという見方もできる。そのため、追加の上昇余地は米国に比べて限定的だと安田氏はみている。
日本でも追加利上げが意識されている点について問われると、安田氏は上昇リスクが残ることは認めた。ただし市場は、5年先の短期金利が3%程度まで上がることをすでに織り込んでいるという。安田氏によれば、これは推計に幅はあるものの、日本の中立金利と考えられる名目金利の上限を上回る織り込みにあたる。財政懸念や国債需給の悪化によって長期金利だけが上がるリスクには注意が必要だとしつつ、政策金利の最終到達点であるターミナルレートがさらに大きく上がる余地は以前より小さくなっている、というのが安田氏の見立てである。
日米のイールドスプレッドの違い
金利が上がると株式の割高感が意識されやすくなる。この点について安田氏は、日本と米国では状況が異なると説明した。米国では、株式の益利回りと10年債利回りの差であるイールドスプレッドがほぼゼロの水準まで縮小している。このため、米金利がもう一段上がると株の割高感が強まりやすいという。
日本も過去平均と比べるとかなり割高な状態にあるが、絶対水準ではまだ3%ポイント程度の差がある。安田氏はこれを根拠に、日本株は米国株よりも金利上昇を吸収する余地があると整理した。
世界株と比べた日本株の割高感は解消
世界の株式市場と比べた場合についても、安田氏は割高感はおおむね解消していると述べた。日本株とMSCIワールドのバリュエーションを比較すると、2026年前半にはAI半導体関連の上昇によって、日本株が世界株に対して一時的に割高な方向に振れた。その後、AI半導体関連の調整を経て、現在は過去平均に近いバリュエーション格差に戻っているという。
安田氏の評価をまとめると、日本株は金利との兼ね合いで米国に対して相対的に有利であり、世界株との比較でも極端な割高ではなくなっている。そのため、金利上昇に対するリスクが高い米国から日本株へと、グローバル投資家が資金をシフトさせる動きが今後出てくるのではないか、と安田氏は予想している。
業績改善はAI・半導体以外の業種にも広がる
金利以外で注目している点として、安田氏は企業業績を挙げた。ここまで話したのはトップダウンのマクロ的な観点からの日本株の優位性だが、ファンダメンタルズの裏付けがなければ、グローバルマネーを日本株に振り向けるのは難しいと安田氏は述べる。そのうえで、第1四半期決算は好調で、それを受けてアナリスト予想の上方修正が広がっていると説明した。TOPIXの12カ月先EPSの増加基調も続いているという。
業績改善の中心はAIや半導体なのかという質問に対して、安田氏は次のように答えた。以前は電気機器やAI半導体関連が特に強く、今も引き続き重要なセクターである。ただ、それ以外の鉄鋼、機械、エネルギー、不動産などでもアナリスト予想の改善が確認できるという。安田氏は、日本企業全体で業績改善のすそ野が広がり始めていると評価してよいと考えている。
コスト上昇を吸収する価格転嫁力
原料費や人件費の上昇が企業収益の重荷にならないかという問いに対して、安田氏は「もちろんなる」と認め、今後注意が必要だとした。そのうえで、金利が上がる中でも企業収益が大きく損なわれずに拡大している一番の背景は、企業の価格転嫁力が高まっていることだと指摘した。
TOPIXの売上高営業利益率(マージン)は、直近で過去最高圏まで上昇しているという。安田氏は、これを売上が単純に増えただけではなく、値上げや製品構成の改善を通じて、金利上昇とインフレの下でも利益率を改善させている表れだと読む。売上高の拡大とともに利益率の改善が続く限り、日本企業には人件費や金利などのコスト上昇を吸収する余地がある、というのが安田氏の考えである。
「どの業種か」から「業種の中でどの企業か」へ
業績改善が幅広い業種に広がると、投資戦略にも変化が出る。安田氏によれば、これまではAI、半導体、銀行など、どのセクターを選ぶかが投資成果を大きく左右してきた。しかし業績改善が多くの業種に広がった今は、業種同士の差だけでなく、同じ業種の中で利益を伸ばせる企業とそうでない企業の差が重要になるという。相場の焦点は、どの業種を選ぶかよりも、業種の中でどの企業を選ぶかに移っていくと安田氏はみている。
企業選びの2つの軸と「完全予見PER」の検証
企業を選ぶうえで重視すべき点として、安田氏は2つを挙げた。1つ目は、今期だけでなく来期以降も利益成長が続くかどうか。2つ目は、その利益成長が株価にどこまで織り込まれているかという、バリュエーションの観点である。
この考え方の裏付けとして、安田氏は「完全予見PER」を用いたバックテスト結果を示した。これは、1期先の利益を事前に知ることができたと仮定する、あくまで仮想的なシミュレーションである。その利益をもとにバリュエーションが割安な銘柄と割高な銘柄を分け、両者のスプレッドリターンを計算すると、基本的には常にプラスのリターンが得られたという。安田氏はこの社内分析から、利益を正しく予想し、その利益に照らして株価が割高か割安かを判断することが、今後のリターンを考えるうえで重要だと解釈している。
さらにチャートには地政学リスクの指標が重ねられていた。地政学リスクが高い局面ほど、完全予見PERにもとづくファクターがプラスに効く傾向が確認できたという。安田氏は、地政学リスクが高まっている足元のような局面では、利益が伸びるかどうかを正しく予想できるか、そしてその利益に対して株価が割高でないかがとりわけ重要になると述べた。
業種選択が不要になるわけではない
では業種選びはもう重要ではないのかと問われると、安田氏は「そこまでは考えていない」と答えた。金利、政策、AI投資といった大きなテーマは引き続き存在し、強いセクターもあるという。まず有望なテーマをある程度絞って業種を絞り込み、そのうえで個別企業を選んでいくアプローチが重要になると安田氏は説明した。トップダウンの業種選択に意味がなくなるのではなく、その上にボトムアップの企業選別をこれまで以上に組み合わせることが必要だ、というのが安田氏の立場である。
年末の日経平均は7万5000円がターゲット
最後に今後の見通しについて、安田氏は、SMBC日興証券としては年末に向けて日経平均・TOPIXともにもう一段上昇するとみていると述べた。日経平均の年末ターゲットは7万5000円としている。
朝活Onlineです。今日のゲストはSMBC日興証券の安田光さんです。安田さん、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
今日取り上げる内容はあくまで1つの見方です。投資は自己責任でお願いいたします。また、このコーナーではプレミアム会員の皆様からの質問をリアルタイムで受け付けています。Webブラウザーなどのチャット機能をお使いください。
では、今日のテーマはこちらです。金利上昇局面で日本株はどう選ぶということですが、まず足元の日本株ですが、安田さん、どう見ていますか?
はい。結論から申し上げると、日本株に対する前向きな見方は維持しております。世界的に長期金利が高止まりしやすい局面ですけれども、日本株は米国株に比べて金利上昇を吸収する余地が大きいのかなと見ています。
加えて、日本の企業の収益見通しですね。こちらも改善が続いておりますので、今後は市場全体を一括りに見るというよりも、業績改善が続く企業を丁寧に選んでいく、そういうことが重要な局面かなと思います。
日本株の方が金利上昇には強いということですけれども、これはどういう理由なんでしょうか?
はい。これは、まず金利の水準だけではなく、どこまで金利が上がっていくかというところが重要になりますけれども、米国では財政問題や国債発行の増加、AIインフラ投資に伴う資金需要などを背景に、長期金利になお上昇圧力が残りやすいかなと思います。一方で、日本の10年債につきましては、名目GDP成長率との対比で見ると、すでに相応の水準まで上昇しているというような見方もできますので、追加的な上昇余地は米国に比べて限定的という見方ができると思います。
ただ、日本でも追加利上げが意識されていますけれども、まだ金利が上がる可能性というのはないんですか?
そうですね。もちろん上昇リスクは残ると思います。ただ、市場は5年先の短期金利見通しが3%程度まで上昇することをすでに織り込んでいますので、これは推計に幅はありますけれども、日本の中立と考えられる名目金利の上限を上回る織り込みということになります。
財政懸念や国債需給によって長期金利だけが上昇するリスクには注意が必要ですけれども、この政策金利の最終到達点、ターミナルレートが今後さらに大きく上がる余地というのは、以前より小さくなっているかなと思います。
金利が上昇しますと、株式の割高感というのが意識されると思うんですけど、この点に関してはどうですか?
そうですね。少し日本とアメリカで状況は異なるかなと思っています。日米のイールドスプレッドを見ていただきますと、米国では株式の益利回りと10年債利回りの差がほぼゼロ水準まで縮小しています。このため、アメリカの金利がもう一段上昇しますと、株の割高感が強まりやすいという状況かなと思います。
一方で、日本も過去平均対比で見ると結構株高という状況ではありますけれども、絶対水準で見るとまだ3%ポイント程度差がある状況ですから、金利上昇に対しては、米国よりも吸収する余地があるというふうに整理できると思います。
これ、世界の株式市場と比べても日本株というのは割高ではないんですか?
そうですね。割高はおおむね解消していると思います。日本株とグローバル株、MSCIワールドですね。こちらのバリュエーションを比べてみますと、ご覧のような形になります。2026年の前半にかけましては、AI・半導体関連の上昇によって、世界株に対して一時的に日本株が割高方向に振れました。相対的な関係性です。
この辺ですか?
そうですね。その後、AI・半導体関連の調整を経て、現在は過去の平均に近いバリュエーション格差に戻ってきています。
日本株は先ほどから申し上げたように、金利との兼ね合いでアメリカに対して相対的に有利であるということに加えて、世界株との比較では今、極端に割高ではなくなってきているというのが現状の評価かなと思います。ゆえに、グローバル投資家が、より金利上昇に対してリスクの高いアメリカから日本株にシフトしてくるという動きが、今後出てくるんじゃないかと思っています。
今後ですね。
はい。
わかりました。では、金利以外ではどこか注目しているところはありますか?
はい。これはやっぱり企業業績だと思います。今までトップダウンのマクロ的な見方で日本株の優位性をお話ししてきましたが、当然、ファンダメンタルズ抜きにグローバルマネーが日本株へ振り向けられるということは難しいと思います。
ただ、ご覧の通り、1Q決算は好調でしたので、それを受けてアナリスト予想の上方修正が広がっているというのが現状の評価であります。TOPIXの12か月先EPSの増加基調も変わらず続いているというところでありますので、また幅広いセクターに、この業績の改善の裾野が広がっているというのが、ご覧の図表でお示ししているところでございます。
これ、業績改善といいますと、やはりAIとか半導体というのが中心になってくるんですか?
はい。以前までは特に電気機器とか、AI・半導体関連のところが強かったですけれども、今も引き続きここは重要なセクターではあるんですけれども、それ以外のセクターにも、この業績改善の波が広がっているというところが重要かなと。鉄、機械、エネルギーとか不動産ですね。こういったところでもアナリスト予想の改善が確認できます。日本企業全体で、業績改善の裾野が広がり始めていると評価していいと考えています。
一方で、原材料費ですとか人件費の上昇というのは、この企業収益の重荷になりませんか?
そうですね。もちろんなると思います。今後注意が必要ですけれども、これだけ金利が上がっている中でも企業収益がそんなに毀損せず拡大していることの一番の背景というのは、やっぱり企業の価格転嫁力が高まっていることだと思います。
TOPIXの売上高営業利益率、いわゆるマージンを見てみますと、直近で過去最高圏で上昇しています。売上が単純に増えるだけではなくて、値上げですとか製品構成の改善、こういったところを通じて、金利上昇、インフレ下においても利益率を拡大させ、改善させているという様子がうかがえます。
今後、売上高の拡大とともに利益率の改善が続く限りは、日本企業には人件費や金利などのコスト上昇を吸収する余地があるのかなと思っています。
業績改善が幅広い業種に広がってくるということになりますと、投資戦略にも変化が現れますか?
そうですね。これまではAI、半導体、銀行とか特定のセクター、どのセクターを選ぶかというのが投資成果を大きく左右してきたと考えています。しかし、業績改善が幅広い業種に広がっていますので、業種同士の差だけではなくて、各業種の中でより利益を伸ばせる企業とそうでない企業の差というのが重要になっていくんじゃないかと思います。
相場の焦点としては、どの業種を選ぶかというよりも、その業種の中でどの企業を選ぶか、こちらの方が今後は重要になってくるんじゃないかなと思っています。
では、そのどの企業を選ぶかというところですけれども、これは何を重視したらいいんですか?
はい。そうですね。これが一番重要だと思いますけど、大きく2つあると思っていまして、1つは今期だけではなく来期以降、利益成長が続くのかという点で、2つ目がその利益成長が株価にどこまで織り込まれているか、いわゆるバリュエーションの考え方が重要かなと思います。
ここでチャートが出ると思うんですけれども、ご覧いただいているチャートは、完全予見PERという考え方を用いたバックテスト結果であります。これは完全に事後的なシミュレーションですけれども、1期先の利益を事前に知ることができていたとして、その利益をベースにバリュエーションが割安な銘柄と割高な銘柄のスプレッドリターンを計算すると、ブルーの棒グラフのように、常に基本的にはプラスのリターンが獲得できますよというのが、このチャートの意味合いであります。
弊社の分析結果から、やっぱり利益を正しく予想して、その利益ベースで割高じゃないのか、割安であるかどうかというのが、今後のリターンを考える上では重要だというふうに解釈をしています。
特に、これ赤い折れ線を重ねていますけれども、地政学リスクが高い局面に、完全予見PERベースのファクター効果がプラスに効くという傾向が確認できますので、足元のように地政学リスクが高まっているような局面においては、いかに利益が伸びるか、かつ正しく予想できるかというのと、その利益に対して割高でないかということが重要なんじゃないかなと思います。
しっかりそこを調べる必要があるということですね。
はい。
となりますと、もう業種選びというのは重要ではなくなってきてしまうということになるんですか?
はい。そこまでは考えていないです。依然として金利とか政策、AI投資といった大きなテーマというのはありますので、引き続き、より強いセクターというのは存在すると思いますけれども、まずは有望なテーマをある程度絞って、業種を絞って、その上でその中で個別企業を絞り込んでいくというアプローチが重要になってくるかなと思います。
要するに、トップダウンの業種選択は意味がないですということではなく、そのトップダウンの業種選択の上に、ボトムアップの企業選別をこれまで以上に組み合わせていくということが重要なのかと思います。
わかりました。では、今後の日経平均ですけれども、見通しはどのように考えていますか?
はい。弊社では年末に向けてもう一段、日経平均、TOPIXともに上昇していくと思っていまして、日経平均でいうと7万5000を年末のターゲットと考えています。
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