都心ではなく郊外のオフィスビルへ CLUB PILATESタンピネス店に見るシンガポール展開の勝ち筋

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概要

マシンピラティスチェーン「CLUB PILATES」の日本とシンガポール法人を率いる島袋直樹氏と尾上彰氏が、シンガポール東部のタンピネスを歩き、新しく開いたフランチャイズ店舗を訪ねた。テーマは、日本人が思い浮かべるシンガポールとは違う場所で、なぜスタジオが好調なのかである。2人は、都心ではなく人口の多い郊外の住宅地を狙うことが攻略法だと分かってきたと語る。

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タンピネスはどんな街か

タンピネスは、マリーナベイ・サンズやマーライオンがある南部の中心部から離れた、チャンギ国際空港近くの町だ。マリーナベイ周辺まで電車で1時間弱かかり、尾上氏は「もうほぼ空港」と表現する。

人口について、島袋氏は7万人ほどが住んでいると聞いていた。尾上氏はこれを訂正し、半径1km程度なら7万人だが、行政の都市計画上のエリア(半径3km程度)で見ると、タンピネス・セントラル、イースト、ウエストの3地区で計29万人が住んでいると説明した。

住民はシンガポール人が中心である。周辺にはシンガポール人しか購入できない公営団地「HDB」が建ち並ぶ。シンガポール航空の社員寮もあり、タンピネス店はその社員向けの割引を実施している。この取り組みはオーナーが自ら見つけてきたという。

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開業4か月弱で会員290人

島袋氏によれば、タンピネス店は日本ならありえない場所にある。普通のオフィスビルに入っていく立地で、多くの人が「ここに人が来るのか」と思うはずだという。それでも会員は多い。会員単価は日本の倍で、為替の影響もある。1人あたりの獲得単価は数百円で、2人とも「めちゃくちゃ安い」と強調する。

尾上氏が示した数字は次のとおりだ。開業から丸4か月が近いがまだ3か月台で、会員は290人。売上は5万〜5万5000シンガポールドルで、1ドル121円で換算すると700万円近い。島袋氏は、日本のトップクラスのスタジオに並ぶ水準だと評価する。利益率は25%前後、金額にして130万〜140万円ほどで、会員数はまだ増えているという。

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都心店の閉鎖から得た教訓

2人の会社はスタジオ運営も請け負っている。島袋氏は、シンガポールに移住したいがビザが取りにくい日本人が、運営を同社に任せてシンガポールの「地方」でCLUB PILATESを開くのは「超あり」だと話す。一方で、都心でやるのは難しいとも言う。自分たちも経験したからだという。

具体的には、以前撮影したオーチャード・セントラルの店舗とカトンの店舗を、物件契約が終わる9月と12月に閉じる予定だ。タンピネス店のような好調店は「我々日本人が行く場所」ではない。尾上氏は、それが明確に分かったと振り返る。

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他の狙い目は「人口30万人規模の6か所」

島袋氏が、分かりやすいシンガポールではない場所が狙い目なのかと尋ねた。尾上氏は具体的な地名を伏せ、問い合わせてほしいとした。そのうえで、人口30万人規模のエリアがあと6か所ほどあると明かす。そこにはエニタイムフィットネスのシンガポール国内トップティアの店舗が多く、ほぼ間違いないと見ているという。タンピネスでも、エニタイムフィットネスは非常に好調だと聞いているそうだ。

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駅前を歩いて見えたローカルの暮らし

2人は駅前のショッピングモール「Tampines 1」から街歩きを始めた。日系のシャトレーゼが出店しており、島袋氏はライセンスを取ったフランチャイズだろうと推測する。近くにはインターナショナルスクールもある。

島袋氏はラッキンコーヒーも紹介した。2017年に始まった中国発のチェーンで、店舗数は3万5000、シンガポールにも80店以上あるという。アプリで注文するモバイルオーダー型で、店員は1人しかいなかった。シンガポールで有名なベーカリーや中国茶の店も目につき、2人は中国茶ブームだと話す。実際に5.9ドル(約700円)のお茶を買ったが、漢方のような薬っぽい味で、島袋氏は好みではなかったと率直に語った。店頭にはGrabの配達員が多く、島袋氏も先日、家でドリンクを1本だけ配達で頼んだという。

駅前のホーカー(屋台広場)では、たこ焼きやドリアン、スープなどが4〜5ドルで食べられる。島袋氏は、ローカルの人たちはやはりこうした場所に来るのだろうと話す。

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人口に対して施設が少ない「バグ」

島袋氏はこのエリアを「バグ」と表現した。人口の割に商業施設やテナントが少ないうえ、尾上氏によれば、これだけ人がいるのに近くのピラティススタジオは1つしかない。島袋氏は「それ強い」と応じた。

近くには大型モールが複数ある。尾上氏によれば、住民は地元のモールで用が足りるので、わざわざ都心まで買い物に行かないという。都心は高く、時間がかかり、ユニクロなど同じ店が地元にもあるからだ。歩いている間、日本人は1人も見かけなかった。尾上氏は「住んでないと絶対来ない」と言う。

道中には、タンピネス店とコラボしているコーヒーチェーン「ケナンガンコーヒー」もあった。コーヒー店側から依頼があり、スタジオ会員はコーヒーを少し安く買える。日系の店では、豚丼の「ぶたはげ」やすき家もあった。すき家の牛丼は4.9ドル(約600円)で、尾上氏はよく通い、オクラの牛丼を食べているという。

駅周辺には銀行、社会保険にあたるCPFの手続きセンター、バスターミナルもある。端のエリアではあるが、オフィスもそれなりにあり、HDBの住宅も多い。

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教育系テナントが集まるオフィスビル

スタジオが入る「タンピネス・ポイント」は、外見はまさにオフィスビルだ。尾上氏によれば、中国系の学校や塾など教育系のテナントが多く入る「ラーニングビルディング」のような建物で、スタジオの隣にはADHDの子ども向けの学校もある。

島袋氏は、子どもを通わせている間に親が空き時間に利用する需要があるのではないかと推測した。尾上氏もこれに同意する。オープン時には父親や母親がひっきりなしに訪れ、「ここ何?」と尋ねてその場で体験を予約していったという。島袋氏は、出店場所が足りないためにオフィスビルさえモールのようになっていると見る。

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スタジオの内部と出店コスト

店内のフロントは、新しいデザインの水色を基調にしている。スタジオにはリフォーマーが12台並び、本部基準どおりのスタンダードな構成だ。別にプライベートトレーニング用の部屋もある。尾上氏によれば、シンガポールにはグループ型のピラティススタジオが多くないため、レアな存在になっているという。すでに100回受講した会員もいる。

機材の購入でも違いがあると尾上氏は話す。日本ではドル円で買うが、シンガポールではシンガポールドルで米ドル建ての機材を買う。為替の差が小さいため、とても安く買えた気になるという。

出店費用は約40万シンガポールドル、日本円で5000万円強だった。2人は日本で出すより安いと見ている。理由として尾上氏は2点を挙げた。1つは敷金で、シンガポールではデポジットが3か月分と決まっているため安い。もう1つは工事で、細かく見ると仕上げが雑だという。天井の処理が粗く、壁には鉛筆の跡も残っている。ただし日本人が見れば雑だと分かる程度で、実際の利用者にはほとんど分からないと2人は話す。その分、工事費は日本より400万円ほど安いかもしれないと尾上氏は見積もる。

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フランチャイズオーナーの顔ぶれと集客

シンガポールのフランチャイズオーナーは日本人が多く、シンガポール人オーナーはこの店舗だけだという。日本人オーナーには、ビザの維持を目的とする人もいれば、日本でCLUB PILATESを運営していてアジアでも事業をしたいという人もいる。島袋氏は、会社を売却した人などにも向いていると考えている。

尾上氏は、日本人とシンガポール人はあまり変わらないと思っていると述べた。集客も基本的に日本と同じやり方で、違うのは言語だけだという。

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インストラクターの評判

最後に、主要インストラクターの1人に話を聞いた。オープン直後から勤務している人物で、国籍はシンガポールだがルーツはマレーシアにある。父親はマレーシアの人で、本人はイギリスの大学に進み、別の仕事を経てこの仕事に就いたという。

尾上氏によれば、オーナーもマレーシアの人で、同社にはマレーシア系のインストラクターが何人かいる。彼らは明るく、会員からの評判が非常に良いそうだ。

島袋氏は改めて、路面店でもないのにこれだけ会員がいることに驚いていた。会員数は250人とも話していたが、尾上氏によれば実際は280人だという。冒頭の290人と数字に幅があるものの、開業から4か月足らずで300人近い会員を集めている点は一貫している。2人は、都心ではなく人口の多い郊外の住宅地を選ぶことがシンガポール展開の勝ち筋だという結論で動画を締めた。