フランスで高校生デモが拡大、財政不安で長期金利は24年ぶりの水準に 伊藤忠総研・高野蒼太氏が読み解く「フランス・リスク」

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概要

フランス全土で高校生が主導するデモが広がっている。教員不足や校舎・設備の老朽化に抗議し、教育予算の増額を求める動きだ。一方、金融市場はフランスの財政悪化を警戒し、長期金利は一時24年ぶりの水準まで上昇した。若者の不満と市場の圧力に挟まれるフランス政府は、どちらに応えることができるのか。BSテレ東「NIKKEI NEWS NEXT」は、欧州経済に詳しい伊藤忠総研の副主任研究員、高野蒼太氏をゲストに迎え、デモの背景、財政悪化の構造、予算成立の見通し、景気への影響を聞いた。

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郊外の高校のストライキから全国のデモへ

番組によると、発端は9月中旬に郊外の高校で起きた教職員のストライキだった。教職員の不足に対する怒りが広がり、パリでは催涙ガスが立ち込める場面もあった。デモに参加した高校生は、壁が崩れかけていること、公立校で教員が足りず欠勤も多いことを挙げ、そのために授業が受けられなかったと訴えた。デモ参加者は教員や養護教諭(保健師)の増員に加え、教室の椅子やエアコンなど設備の整備を求めた。

これを受けてルコルニュ首相は7日、来年度の教育予算を増額すると発表した。しかしフランスでは、インフレ対策などの大規模な財政出動によって財政赤字が拡大し続けている。さらに与党が少数のため、来年度予算が成立するかどうかも見通せない。市場は財政の先行きを懸念している。

デモがここまで広がった理由について、高野氏は二段階の流れで説明する。まず、教員不足などで授業が行われない状況が続いていることを訴える高校生のSNS投稿が広まり、デモが始まった。次に、10月1日に発表された政府予算案に教員を減らす方針が盛り込まれていた。高野氏は、高校生の要求が政府にまったく届いていないと受け止められたことで、デモがさらに拡大したとみている。

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公務員もデモ、予算増額の要求に政府は応えられるか

声を上げているのは高校生だけではない。9月末には公務員およそ20万人が賃上げを求めてデモを行った。どちらも政府に予算の増額を求めている。

デモが収束に向かうかを問われた高野氏は、デモの先行きを予測するのは難しいと前置きした。そのうえで、予算の増額は政府にとって簡単な選択肢ではないと指摘する。フランスはもともと予算の制約が厳しく、むしろ予算の削減を求められている。その状況でデモ参加者の要求にどう応えるのか、答えは見えていないというのが高野氏の見方だ。

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財政悪化が続く理由は少数与党

なぜフランスでは財政悪化が止まらないのか。高野氏によれば、コロナ禍の財政拡大で財政状況が大きく悪化したのはフランスに限らず、欧州でも欧州以外でも同じだった。違いはその後にある。他の国はおおむね少しずつ財政を立て直したが、フランスは2024年の総選挙以降、政府が少数与党に陥った。その結果、歳出の切り詰めのように国民に人気のない政策を打てなくなり、財政が悪化した状態が常態化してしまったと高野氏は説明する。

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対独スプレッドでギリシャ・イタリアを上回る

高野氏が注目する指標が「対独スプレッド」だ。財政の信用力が高いドイツの国債利回りを各国の国債利回りから差し引いたもので、各国の財政リスクを示す。番組で示されたグラフでは、フランスのスプレッドが急上昇し、足元ではギリシャやイタリアを上回っていた。

高野氏は、ドイツの金利を差し引くことで世界的な金利上昇圧力の影響を除いて見られると説明する。そうして見てもフランスの金利上昇は際立っているという。理由として、構造的に悪い財政状況に加え、今回のデモ、予算案の公表、来年の大統領選挙が近づいていることを挙げた。こうした要因が重なり、市場がフランスの財政や金利に注目しやすくなっている。それが急激な金利上昇につながっているというのが高野氏の見立てだ。

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歳出削減の予算案は「毎年思うように通らない」

デモ参加者が教育などへの予算増額を求める一方で、市場は長期金利の上昇という形で政府に圧力をかけている。板挟みとなったフランス政府は、今月発表した予算案で、年金や医療費の抑制など国民に負担を求める歳出削減策を打ち出した。

これは長期金利上昇を受けた動きかと問われた高野氏は、足元の金利上昇に限らず、ここ数年フランスの金利は上がりやすい状況が続いていたと答えた。そのため政府は今年に限らず、毎年なるべく財政赤字を抑える予算案を出してきた。しかし毎年思うようには通らない状況が続いている、と高野氏は述べた。

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「ハングパーラメント」と大統領選が予算成立を阻む

予算案の成立見通しについて、高野氏は、当面すんなり通るのは難しいというのが正直なところだと語った。

番組で示された国民議会の勢力図をもとに、高野氏は構図を説明した。左派と社会党はいわゆる左派勢力、与党連合は中道勢力にあたる。共和党は中道右派とも呼ばれる右寄りの勢力で、極右が最も右に位置する。大まかに右・中道・左に分けると、それぞれがおおむね3分の1ずつを占めている。こうした議会は「ハングパーラメント(宙ぶらりん議会)」と呼ばれる。この状況では、どこかの政党や勢力から妥協を引き出さない限り予算は通らない。

さらに今年は、来年春に大統領選挙を控えている。高野氏は、どの勢力も政府に簡単には協力しにくく、予算に向けた議論が当面すんなり進むとは期待しにくいとみる。要求の中身も両側で異なる。右派は歳出削減や企業への優遇を、左派は国民への手当ての増強を求める。両側から違う要求が出るため予算が通らない状況が続いている、と高野氏は説明した。

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景気は主要国に後れ、持ち直しは描きにくい

フランスの景気の先行きについて、高野氏はまず欧州全体に触れた。欧州の景気は、イラン戦争が起きた直後に懸念されたほどには悪化しておらず、総じて底堅く推移しているという。ただしフランスは他の主要国に後れを取っている。高野氏は主な要因として、政治の混乱に伴う金利上昇と、政治の混乱を嫌った海外からの投資の減少を挙げた。こうした要因がなかなか解決しないことを踏まえると、フランスの景気が持ち直す絵は当面描きにくいと高野氏は述べた。

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本丸は社会保障改革、しかし後退の懸念も

番組の峰岸氏は、高校生が街に出て政府に不満をぶつける光景は日本ではあまり見られないとしつつ、市場が財政状況に警鐘を鳴らしている点は日本と非常に重なると指摘した。そのうえで、社会保障が充実しているとされるフランスでは、財政改革のために社会保障に切り込むことがポイントになるのかと尋ねた。

高野氏はこれに同意し、フランスの財政改革には年金を中心とした社会保障改革が欠かせないと答えた。教育予算の縮小や公務員給与の削減といったその場限りの策は打てる。しかし欧州はもともと社会保障の手厚い国が多く、フランスはその中でもかなり手厚いとされる。その「本丸」である社会保障改革に手をつけない限り、中長期的な財政の改善は見通せないと高野氏は述べた。

ハングパーラメントの下では中長期的な思い切った改革は難しいのかという問いにも、高野氏はその通りだと答えた。マクロン大統領の就任以降、政府は何度も年金改革に取り組んできた。年金の支給開始年齢を遅らせたり、満額の年金を受け取るのに必要な就労期間を延ばしたりする改革が実際に行われた。しかし昨年の予算編成時の混乱によって、一度決まった社会保障改革さえ凍結された状況にある。高野氏は、改革が前に進むことは期待しにくく、場合によっては後退するのではないかという懸念が広がっていると指摘した。

番組は、フランスの財政懸念が欧州全体にどう影響するかを次に取り上げると予告し、このパートを終えた。