楽天モバイルは必要か、多角化は悪か 渋澤健氏が語る「レジリエンス」という企業の見方
テレ東BIZ ダイジェストコモンズ投信会長の渋澤健氏に、WBSキャスターの豊島晋作氏、元トレーダーの志田憲太郎氏、個人投資家のちょる子氏、タレントの兒玉遥氏の4人が質問した回である。話題は、コモンズ投信が組み入れている楽天の携帯事業の評価から始まり、「コングロマリット・ディスカウント」として批判されやすい企業の多角化をどう見るかへ移る。渋澤氏は、楽天モバイル単体には厳しい見方を示す。一方で、多角化そのものについては、企業が長く生き残るための「レジリエンス」として評価する立場を取る。
楽天モバイルへの厳しい評価
最初の質問は豊島氏からだった。コモンズ投信のポートフォリオには楽天が入っている。豊島氏は、三木谷浩史会長が携帯電話事業に資源を注ぎ込むことにマーケットは厳しい評価をしてきたと指摘し、その資源を別の分野に回すべきだという見方があると述べた。そのうえで、楽天モバイルが最近1000万回線を突破し、三木谷氏自身は結果を出してきたという思いを持っているだろうとも付け加え、渋澤氏の評価を尋ねた。
渋澤氏はまず、三木谷氏はゼロから事業をつくり上げた人物で、素晴らしい経営者であることは間違いないと述べた。そのうえで、携帯事業は最初から厳しいと思っていたと明言した。理由として挙げたのは自身の経験である。渋澤氏はかつて通信キャリアの社外役員を務めており、携帯事業には巨額の設備投資が必要だと知っていた。当時と比べればもう少しやりようがあるかと思ったものの、日本に3、4社もキャリアが必要かといえば必要ない、というのが渋澤氏の見方である。
株価への影響についても率直だった。楽天は優れた事業を持っているのに、モバイルを抱えているせいで株価がかなりディスカウントされている。渋澤氏は「あれさえやめてくれれば、もっと株価が飛ぶのに」という感覚があると語った。ただし、コモンズ投信の運用チームの中では、楽天は経済圏をつくろうとしているのだから、それもありだろうという受け止め方もあるという。それでも渋澤氏は、携帯事業を単体で見ればコモディティ化した事業であり、それだけで勝つのは無理だと考えている。
「モバイルはない方がいいと思っているのか」と重ねて問われると、渋澤氏は、できることなら資源は別の分野に投入した方がいいと答えた。さらに、コモンズ投信としてではなく個人として聞かれているのなら答えは「イエス」だと述べ、スタジオの笑いを誘った。
消費者目線と経済圏としての可能性
一方で渋澤氏は、楽天モバイルを全面的に否定したわけではない。楽天市場をつくり上げた人物なのだから、もしかするとやってのけるかもしれないという夢はある、と認めた。ただし現状では、モバイル事業によって株価がディスカウントされているという評価は変わらない。
渋澤氏は消費者としての視点も紹介した。自身の息子が楽天モバイルを使っており、他のキャリアより安く、普通に使えているという。消費者に選択肢を提供している点を考えると、経済圏という観点からは悪くないのかもしれない、と渋澤氏は述べた。投資家としての評価と利用者としての評価を分けて語ったことになる。
利益と社会的価値は「天秤」にかけるものか
続いて出演者の一人が、企業の純粋な利益や論理と、社会に良い影響を与えているかどうかを天秤にかけたとき、どのようなバランスで見ているのかと質問した。
渋澤氏は「天秤にかける」という発想はあまり好きではないと答えた。天秤にかけるとは、どちらかを取ればどちらかを失うトレードオフとして考えることだからである。渋澤氏によれば、単体で見れば弱く見える事業でも、組み合わせることで次のレベルの新たな価値が生まれるなら、その方が投資の考え方として面白い。選択と集中の観点から、できない事業はすぱっと切るべきだという判断も当然ある。しかし渋澤氏は、それだけではちょっとつまらないと語った。
コングロマリット・ディスカウントへの異論
ここから渋澤氏は、楽天のように多角化した企業の是非について話を広げた。複数の事業を同時に営む企業は、投資家から非効率だと見られやすい。これが「コングロマリット・ディスカウント」である。渋澤氏によれば、投資家からは「資本の配分を、勝ち筋のあるところに集中しなさい」という指導がよく入るという。
渋澤氏は、効率を高めることはもちろん大事だと認めている。そのうえで、社長が考えていることはそれだけではないと述べた。自分がいなくなった後も、社員や顧客など多くの人がその会社に頼っている。そう考えると、経営者が問うべきなのは、どうすれば自分の会社がレジリエントになれるかである。渋澤氏の答えは、会社は進化していかなければならない、というものだ。
例として渋澤氏は、150年前には繊維しか作っていなかった日本企業を挙げた。この会社は現在、ジェット機の翼から半導体のパーツまで、さまざまな事業を同時に手がけている。外から見れば非効率と言われるかもしれない。しかし会社のレジリエンスという点では、ごく当たり前のことをしているにすぎない、と渋澤氏は語った。
コダックと富士フイルムの分かれ道
渋澤氏がより具体的な例として挙げたのが、コダックと富士フイルムである。渋澤氏は学生時代にカメラが好きで、当時はまだ銀塩フィルムの時代だった。フィルムの世界には2つの大手があり、コダックは間違いなく世界一の会社だったという。
渋澤氏の推測では、当時コダックの投資家や経営者は「資本を効率的に使い、フィルムだけをやりなさい」と考え、実際にそうしたのだろう。しかし誰もがデジタルカメラを使うようになり、コダックはいまは存在していない会社だ、と渋澤氏は述べた。
一方の富士フイルムも、もちろんフィルム事業を営んでいた。同時に、医療機器や半導体などの事業も手がけていた。渋澤氏は、当時は「なぜ医療機器なんてやるのか」と言われたはずだと振り返る。それでも、どちらがレジリエントだったかと問えば富士フイルムではないか、というのが渋澤氏の見方である。
この話を受けて出演者は、コングロマリット・ディスカウントは大企業に対して悪い意味で使われることが多いが、渋澤氏はむしろ多角化を積極的に評価しているのか、と確認した。
一時的な業績悪化のとき、売るのか買い増すのか
収録の終盤には、別の角度からの質問が出た。今回の中東情勢の影響などで、一時的に業績がでこぼこになる企業もある。そうしたときに一旦手放すのか。それとも、マクロ環境による一時的な影響で会社の本質は変わらないとみて、買い増しと判断するのか。
渋澤氏は、業績のような目に見える価値だけを見て売却した例について話し始めたところで、この映像は終わっている。この問いに対する渋澤氏の結論は、本動画の範囲では示されていない。
コモンズの中に楽天が入ってますけども。
はい。
私は携帯は厳しいと最初から思っていて、あれさえやめてくれればもっと株価が飛ぶのになっていう感覚はあるけども。モバイルない方がいいと、もう思ってるし。健についてだったら、答え……。
変わるか変われるかの瀬戸際みたいな企業って多いですよね。
まだパナソニックは変わらないっていう。実は一番最初に、もしかすると、ごめんなさい、言った会社だったかもしれない。
日立は割と正しい選択をしてきたという。結構ダメダメになったじゃないですか。日立が変われば日本は変わる。
社長、質問があります。
ゲストは渋沢栄一の玄孫、渋澤健。銀行や証券会社を通さずに投資信託を直接販売、運用するコモンズ投信の会長を務める。
それでは早速始めてまいります。
はい。お願いします。
渋澤会長に質問をぶつけるのは、ワールドビジネスサテライトキャスターの豊島晋作、元トレーダーの志田憲太郎、個人投資家のちょる子、投資歴4年のタレント、兒玉遥の4人。
まずは楽天の話題。豊島が渋澤に切り込む。
コモンズの中に楽天が入ってますけれども、どうでしょう? 楽天はかなり三木谷会長が相当、携帯電話に入れることに対して、マーケットは厳しい評価をしてたと思います。なので、あれに対する資源をもっと別の方に入れた方がいいんじゃないかと。ただ、三木谷さんは最近1000万回線突破して、もうやっぱり結果出してきたというような思いも多分あると思うんですね。健さんは楽天はどう評価されてます?
三木谷さんはゼロからあれを作った方なんで、本当にそういう意味では素晴らしい方であることは間違いないと思うんですけど、私は携帯は厳しいと最初から思っていて。やはり私は当時キャリアの社外役員をやってた経験もあって、ものすごい設備投資も必要だし、当時と比べるともうちょっとやり合わせできるかと思ったんですけど。だけどもう3、4社ぐらいキャリアが必要かっていうと、必要ないので。あんなすごいのがあるのに、モバイルが入ってるおかげで株価がかなりディスカウントされてるんですよね。
だから、投資家としては、あれさえやめてくれればもっと株価が飛ぶのになっていう感覚はあるけども。言いながらも、運用のチームの中では、そういう経済圏を作るからみたいな感じで、まあそうね、それもありみたいな感じだと思うんですけど。単体で見た時には、事業はコモディティ化してるものじゃないですか。だからそこだけでは絶対無理だと思うんですね。
モバイルはない方がいいと、もう思ってらっしゃる。モバイルはできることなら、資源は別の系に投入した方がいいんじゃないかとも思って。
コモンズ投信じゃなくて、健についてだったら、答えはイエスです。
とはいえ楽天市場を作り上げた人だから、もしかしたらやってのけるかもしれないっていうのは、あるっちゃあるんですよね。
夢はあるっちゃあるんですけど、現状はそれによってディスカウントされてる。消費者目線は、僕の息子、楽天モバイル使ってるので。だからそういう意味では、消費者目線で見ると他のキャリアより安くて、それなりに普通に使えるのでっていう。そういうふうに消費者には選択肢を提供してるので、だから経済圏って考える時、全然そういうのはいいのかもしれません。
ががてんってことですね。
純粋に企業の利益だったり、論理の部分と、その社会的にいい影響を与えてるかどうかっていうの、やっぱ評価軸、それを天秤にかけた時にどういうバランスで見てらっしゃるんですかね。
天秤にかけるって、僕あんまり好きじゃなくて。トレードオフじゃないですか。だから合わせることによって、それだけ単体だけ見るともしかするとかもしれないけど、だけど合わせることによって次のレベルの新たな価値ができるっていうことであれば。その方が、投資の考え方として、もちろん選択と集中、だからできない事業はスパッと切るべきだみたいな判断も当然あるんだけども。だけどそれだけだと、なんかちょっとつまんないなと。
ここで渋澤が楽天のような企業の多角化について、その是非を語る。
その話が派生しますと、コングロマリットディスカウントっていうのはあるんですね。
はい、聞いたことあります。
コングロマリットディスカウント。1つの会社がいろんな事業を同時にやってますと。一般論で言うと、投資家が見ると、そんなの非効率的じゃないかと。もうちょっと資本のアロケーション、配分を、あなたたちの勝ち筋があるところに集中しなさいっていうご指導がよくあるわけですね。効率を高めなきゃいけない。
だけど、その社長が考えてることっていうのは、もちろんそれも大事なんだけど、その会社のこれからの、自分がいなくなった後でも、その会社の社員とか顧客とか、いろんな人たちがその会社に頼ってるっていうことになると。レジリエント、どうやったら自分の会社がレジリエントになるかっていうふうに考えてみると、やはりその会社っていうのは進化していかなきゃいけないと思うんですよね。
日本の、例えば150年前は繊維しか作ってない会社がありました。だけど今見ると、ジェット機の翼から半導体のパーツとか、いろんなことを同時にやってます。それって非効率的じゃないかっていうふうに言われるんです。だけど、その会社のレジリエンスとしては、それはある意味でごく当たり前のことをやっている話であって。
もっと具体的になると、私、学生時代カメラとか好きで、まだ銀塩フィルムでこうやってやる時代があって、2社あったんですよね。コダックっていう会社と富士フイルムっていう会社なんです。当時、おそらくコダックの会社の、もしかしたら投資家とか経営者が、もっと君たちは資本を効率的にして、フィルムだけやりなさいと。多分そうしたと思うんです。今、存在してない会社なんですね。もうみんなデジカメになっちゃったから。間違いなくコダックが世界一の会社だったんです、その時は。
もう1つ富士フイルムがあって、もちろんフィルムやってたんですけども、これは医療機器とか半導体とかなんとかやってて。多分当時、なんで医療機器なんてやるのって言われたと思うんですよね。だけど、どっちがレジリエントでしたかっていうふうに考えると、富士フイルムなんじゃないかと思うので。
じゃあ、コングロマリットディスカウントって結構悪い意味で言われるじゃないですか、大企業は。渋澤さんは逆に、そういう悪く言うことはおかしい、むしろ積極的に評価してらっしゃる。
業績面で、例えば一時的に凸凹で、特に今回、中東の影響もあって、悪い企業さんもあったかなとは思うんですけども。そうなった時に、一旦手放すっていう選択になるものですか? それとも、今のマクロ環境の影響であって、その会社自体の本質は変わらないから、それはもう買い増しでいいっていうご判断になるのか。
はい。業績、見える価値、的な価値だけを見て売却した例。
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