2本のドキュメンタリー映画が描くロシアのプロパガンダ 元国営放送記者と告発した教師

YouTubeで開く ↗
概要

BSテレ東「日経モーニングプラスFT」のカルチャーコーナーは、2022年のウクライナ侵攻以来ロシアで進められているプロパガンダの実態を、2本のドキュメンタリー映画から考えた。番組はここでいうプロパガンダを、プーチン大統領の思想を信じるようロシア当局が国民を誘導することと定義している。1本はプロパガンダの担い手だった国営放送の記者が自らの加担を振り返る作品、もう1本は学校で行われる愛国教育を内部から記録した作品である。

4分で読めます
0:39

侵攻直後、国営放送の内部から上がった反対の声

番組はまず、侵攻の1か月後にロシアのジャーナリストたちが起こした動きを振り返った。2022年3月、ロシアの国営放送「第1チャンネル」の編集スタッフが、ニュース番組の生放送中に戦争反対のメッセージを掲げた。このスタッフは一時拘束され、その後に辞職した。

同じ第1チャンネルの特派員だったジャンナ・アガラコワさんも、ウクライナ侵攻を受けて辞職した。アガラコワさんは駐在していたパリで記者会見を開き、プーチン政権のプロパガンダを非難した。そのうえで、ロシア国民にプロパガンダとは何かを知ってほしいと訴えた。

1:08

『さよなら、私のロシア』 無自覚な加担への後悔

アガラコワさんが自ら監督したドキュメンタリー映画『さよなら、私のロシア』が、来月公開される。番組の紹介によると、アガラコワさんはロシアやウクライナをめぐる報道で妥協と沈黙を重ね、自覚のないままプーチン政権のプロパガンダに加担してしまった。作品はその後悔と葛藤をつづっている。

アガラコワさんは現在もジャーナリストとして活動している。ロシア当局がどう扱っているかについて、解説委員はこう説明した。ロシア政府はアガラコワさんを、外国のスパイを意味する「外国代理人」に指定した。アガラコワさんはパリで事実上の亡命生活を送っている。先月には来日して記者会見を開き、自分がプロパガンダに加担していると気づかせてくれたのは娘だったと語った。

2:30

『プーチンの愛国教室』 学校が戦争を教え込む場に変わる

2本目は、ロシアの教育現場で進むプロパガンダを扱った作品である。第98回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を受賞した『プーチンの愛国教室』は、ウクライナ侵攻以降にロシアの学校で行われている愛国プロパガンダ教育の実態を明らかにした。

映画の中心人物は、学校行事の撮影を担当する教師である。教室が子どもたちに戦争への参加を教え込む場へと変わっていく。教師はその様子に悩み、やがて実態を世界に告発する決意を固める。映画はその過程を描いている。

解説委員によると、この教師はロシアの中学校で働いていた。日本に例えれば中高一貫校のような学校だという。子どもたちにとっては年の離れたお兄さんのような存在で、「パーシャ」という愛称で親しまれていた。映画は、プーチン大統領を盲目的に支持するよう子どもたちを誘導する教育の実態を暴いた。作品がロシア国外で注目されると、ロシア当局はその影響力の大きさに驚いた。当局はパーシャさんに国家反逆者として国外追放を命じ、パーシャさんは現在ヨーロッパで暮らしている。

4:16

共同監督が見た「撮る側」へ変わっていくパーシャさん

番組は、パーシャさんと共同で監督を務めたアメリカのドキュメンタリー作家デビッド・ボレンスタインさんに、パーシャさんが告発を決意した理由を聞いた。命がけのリスクを冒すほどパーシャさんを駆り立てたものは何か、という質問に、ボレンスタインさんは撮影の経緯から答えた。

ボレンスタインさんによると、当初は自分たちがパーシャさんを撮影していた。しかし次第にパーシャさん自身が撮影する場面が増えていった。パーシャさんは自分を監督とみなすようになり、その自覚が強まるにつれて、冒すリスクも大きくなっていった。ボレンスタインさんは、そのことにとても動揺したと話す。パーシャさんが送ってくる映像の中には、ロシアの国旗を引きずり下ろす場面や、学校で(字幕では「レディー・ガガ」と聞き取られた)曲を流す場面があった。ボレンスタインさんは、そうした映像を受け取るたびに本当に腹が立ったと振り返った。

配信された部分は、このインタビューの途中で終わっている。パーシャさんの行動に共同監督として苛立ちを覚えた理由や、告発の動機をボレンスタインさんがどう結論づけたかは、この映像からは分からない。