第3次世界大戦は起きるのか:未邦訳の2冊から読む「次の大戦争」のリスクと発火点
テレ東BIZ ダイジェストテレビ東京の豊島晋作キャスターは、この解説で「第3次世界大戦は起こるのか」という問いを扱う。荒唐無稽に聞こえかねないテーマだが、豊島氏によれば、アメリカやヨーロッパの外交・安全保障関係者の間では、このリスクが現実のものとして意識されている。ロンドンやベルリンなどの書店には、学者、元政府高官、ジャーナリストが次の大戦争に警鐘を鳴らす本が数多く並んでいるという。豊島氏は出張先でそうした本を買って読み込み、まだ日本語訳が出ていない2冊を中心に、国際政治でどのような議論がなされているかを紹介している。
取り上げる2冊と著者
1冊目は『Ten Steps to Prevent World War Three(第3次世界大戦を防ぐ10のステップ)』で、著者はトバイアス・エルウッドである。豊島氏の紹介では、エルウッド氏はイギリス保守党の元下院議員で、外務・防衛分野の政府ポストを歴任した。陸軍での経験を持つ安全保障の専門家でもある。
2冊目は『The Next World War: The New Age of Global Conflict and the Fight to Stop It(次の世界大戦:新時代の世界対立とそれを止めるための戦い)』で、著者はロイター通信で国際問題・安全保障を担当するコラムニストのピーター・アップスである。アップス氏はイギリス陸軍の予備役にも所属し、軍事と外交を長年取材してきた。
「絵空事」ではなく、確率で語られるリスク
豊島氏によれば、2冊に限らず、学者の著作を含む同種の本には共通の前提がある。安全保障の専門家や学者の認識では、次の世界大戦はもはや絵空事ではなく、現実のリスクとして捉えられているという。アップス氏は著書の中で、今後10年間に大戦争が起こる確率をおよそ30〜35%と見積もっている。豊島氏は、日本政府が防衛費を10兆円近くまで増やしているのも、世界がこうしたリスクを懸念していることと重なると述べる。
「考えすぎだ」「恐怖を煽っている」という反応に対して、豊島氏は過去の例を挙げる。2001年9月11日より前に、複数の民間旅客機がビルやペンタゴンに突っ込むリスクがあると言っても、誰も信じなかったかもしれない。2022年2月より前に、ロシアが大規模な陸軍で隣国に攻め込む全面戦争が起こると言っても、一笑に付された可能性がある。さらに豊島氏は、2026年にAIが人類へのリスクになるとの懸念が高まって開発停止を求める声が強まり、テック株を中心に株価が急落したことも挙げ、前年にそれを予言しても相手にされなかっただろうと語る。何が起こり、何が絵空事なのかを判断するのは現代世界では極めて難しい、というのが豊島氏の立場である。
世界大戦は必ずしも核戦争にならない
「次の世界大戦は核戦争になり人類が滅ぶのだから、起こりえない」という反論もありうる。豊島氏は、核戦争へのエスカレーションは最も警戒すべき可能性だと認めたうえで、通常兵器による大国間戦争も想定しておく必要があると強調する。
その根拠として豊島氏は、核保有国が実際に通常戦争を戦っている事実を挙げる。ロシアは核保有国でありながら、ウクライナで大規模な通常戦争を遂行している。ウクライナを支える米英仏も核保有国だが、ウクライナに通常兵器を供与し、通常戦争を戦えるようにしている。核保有国同士の衝突としては、インドとパキスタンの通常兵器による戦闘や、かつての中ソ対立もある。豊島氏の見方では、核を持っているからこそ核の使用を避けつつ通常兵器で戦うという可能性があり、「核保有国だからすべて核戦争になる」という見方は安直である。豊島氏は、米英仏がドイツ国内にあるとされる秘密の施設で、ウクライナでの戦争をモニタリングし関与しているという話にも触れている。
中国についても、豊島氏は台湾への軍事侵攻が行われるなら、通常戦力で制圧することが一つの選択肢として想定されていると説明する。米軍を牽制するために核による脅しを使う可能性はあるが、原則として通常戦力での戦闘を前提に軍備を整え、訓練を重ねているという。
冷戦期には、米ソが数千発規模の核兵器で睨み合っていたことで、両国間の大規模な通常戦争は起こらないとされ、実際に1950年代から90年代まで米ソは直接戦争をしなかった。豊島氏はこれを事実と認めつつ、その想定がもはや通用しない可能性を理解すべき時代に入ったと述べる。
大国間競争の時代への逆戻り
アップス氏は、世界が大国間戦争のない時代から、武力衝突も含みうる大国間競争の時代へ逆戻りしていると指摘する。豊島氏はここで、冷戦期に「大規模戦争がなかった」というのは大国同士の戦争がなかったという意味で、ベトナムやアフガニスタンなどでは戦争があったと補足している。アップス氏の見立てでは、19世紀や20世紀のように列強が軍事力を大規模に行使し、ときに戦い、ときに牽制し合いながら権力闘争を展開する時代が再び来た。
同様の議論として、豊島氏はケンブリッジ大学のブレンダン・シムズ教授の著書も紹介する。シムズ氏によれば、1990年代以降、とりわけ中国がWTOに加盟して「世界の工場」として安価な製品を世界に行き渡らせてからは、グローバル経済と経済合理主義が国際政治を左右する時代が続いた。多くの国が中国にビジネスチャンスを見いだし、中国自身も豊かになった。しかし今は、国際政治、つまり地政学が世界経済を左右する時代へ転換したという。
エルウッド氏の「戦争と平和のサイクル」
エルウッド氏は著書で、戦争と平和の循環を図で示している。戦争が起こり、平和条約が結ばれ、平和と安定(peace & stability)が訪れ、やがて不安定が増していき(growing instability)、再び戦争に至るというサイクルである。
豊島氏はヨーロッパ史に当てはめて説明する。1618年に始まった三十年戦争は、ヨーロッパの7人に1人ほどが死んだとされる苛烈な戦争で、1648年のウェストファリア条約で終わった。この条約で国家は互いの主権と領土を尊重することに合意し、いったん平和が訪れる。その後フランス革命とナポレオンの台頭で戦争が起こり、ウィーン会議で再び安定する。第一次世界大戦の後にはヴェルサイユ条約が結ばれたが、ヒトラーが台頭して第二次世界大戦に至った。
第二次世界大戦は約80年前に終わり、日本もサンフランシスコ講和条約に署名した。それ以降、大国間の大戦争がないという意味での平和が続いてきた。エルウッド氏は、今の世界が「不安定の増大」の段階にあり、大戦争の手前にいるのではないかと警鐘を鳴らしている。
これを受けて豊島氏は、自由な経済活動や余暇、民主主義を支えてきた平和は、自動的に続くものではないかもしれないと語る。豊島氏によれば、平和とは戦争が防がれている人工的な状態であり、それを守る意思と、守るためのコストを払う覚悟がこれまで以上に必要になる。危機を正しく認識し、正しく恐れることが議論の出発点になるというのが豊島氏の考えである。こうした動画には「戦争を煽っている」という批判も寄せられるが、豊島氏はそれを受け止めたうえで、海外の見方をかみ砕いて伝えることが日本にとって有益だと述べている。
同時多発する危機と「CRINKs」
豊島氏は、最大の危機は単一の大戦争というより、複数の危機が同時に発生することだと指摘する。日本を含む西側の自由民主主義国家にとってのリスクとして挙げられるのが「CRINKs(クリンクス)」で、中国(China)、ロシア(Russia)、イラン(Iran)、北朝鮮(North Korea)の頭文字を合わせた造語である。この4カ国は「動乱の枢軸(Axis of Upheaval)」とも呼ばれる。対テロ戦争の時代にアメリカの大統領が使った「悪の枢軸」になぞらえた呼び方で、現状変更勢力として今後の対立や戦争のリスクをもたらすと意識されている。
豊島氏は、この4カ国が強固な軍事同盟を結んでいるわけではないと注意を促す。それぞれに利害の対立があり、打算で結びついている部分もあって、価値観で結びつく面がある西側とは異なる。それでも結びつきは強まり、協力が進んでいる。北朝鮮は歩兵部隊を送り込み、ロシアのためにウクライナで戦わせている。豊島氏は、これは4、5年前には想像できなかったことだろうと述べる。中国とロシアは「無制限の協力関係」と呼ばれるほど習近平国家主席とプーチン大統領が緊密な関係を築き、現在アメリカと戦争をしているイランも、ロシアや中国から軍事支援を受け、両国の兵器を使っている。
豊島氏は、リスクの見え方はどちら側から見るかで異なると断ったうえで、欧米ではCRINKsが強いリスクと見なされていると説明する。イランとの戦争については、アメリカとイスラエルが仕掛けたもので、西側から見ても迷惑極まりない戦争だという認識が多いとも付け加えている。
発火点1:エストニアのナルバ
次の大戦争の発火点(フラッシュポイント)として、豊島氏は2カ所を挙げる。1つ目は、エストニアのロシア国境近くにある人口5〜6万人ほどの町ナルバである。バルト3国はかつてソ連の一部で、ロシア語を話す住民が多い。ナルバはロシアに近いこともあり、住民の9割ほどがロシア系だという。エストニア政府は、ロシアに愛着を感じる住民への警戒からロシア語教育を制限する動きを見せている。テレビ東京の立花支局長がこの町に入って取材した動画も配信されている。
懸念されているシナリオは、ロシアが「エストニア政府がロシア系住民を虐げている」と言い出し、住民の救出を大義名分にナルバへ侵攻するというものだ。クリミアのときのように、正規軍ではない武装勢力の形で入る可能性も指摘されている。NATOの建前では、エストニアが武力侵略されれば北大西洋条約第5条が発動され、一加盟国への攻撃は全加盟国への攻撃と見なされる。しかし、ナルバのためにロシアと大戦争になるのは困ると考え、発動に待ったをかける加盟国が出るかもしれないという懸念がある。豊島氏はフランスなどを例に挙げかけたが、どの国かは分からないとしている。
そうなれば、プーチン大統領はNATOの結束が崩れたと判断し、エストニアの領土をじわじわと侵略したり、別の国境で動いたりするかもしれない。豊島氏は、ウクライナの隣国でEU加盟を目指す民主的な国(字幕ではモルドバと読める)も発火点になりうると述べる。小さなところを崩すことで、ロシアへの抑止力として機能してきたNATOの論理全体を揺るがし崩壊させる。それをロシアは狙っているのではないか、というのが豊島氏の説明である。
このためナルバの守りを固めることが、NATOにとって大きな課題になっている。エストニアは軍事力の大部分をナルバ方面に移す計画を進め、基地も建設している。ロシア領内を攻撃できる米国製のハイマースや韓国製のロケット砲を購入し、抑止力を高めようとしている。豊島氏によれば、エストニアは1〜2年でロシアが攻めてくるとは考えていないが、5年程度のスパンでは相当の注意が必要だと見ている。バルト3国は十分な空軍力を持たないため、他のNATO加盟国が前方展開して補っている。9月末からはリトアニア上空でトルコ、イタリア、スペインなどの空軍がF16やユーロファイターを持ち込み、大規模な演習を行ってロシアを空から牽制している。
発火点2:台湾海峡と「見捨てられるリスク」
2つ目の発火点は台湾海峡である。豊島氏は、ナルバと共通するリスクとして、トランプ政権が台湾を見捨て、防衛せず中国に渡すのではないかという懸念を挙げる。エストニアにロシアが攻めてきてもアメリカが参戦しなければNATOの結束に大打撃となるのと同じ構図だという。
見捨てられれば、台湾が自力でどこまで防衛できるかが問題になる。豊島氏が前回の動画でも伝えたとおり、アメリカから台湾への武器供与は数千億円から1兆円規模で遅れている。イランとの戦争で大量のミサイルを使っている事情もあるという。さらに米中首脳会談でも、台湾を明確に守ると示した痕跡はあまりない。トランプ大統領は台湾を自由世界の防衛対象ではなくディールの材料と見ていて、中国が良い条件を出せば台湾を譲り渡してもいいと考えているのではないか。そうした疑念が強まっていると豊島氏は説明する。
かつてダグラス・マッカーサーは台湾を「不沈空母」のような存在とし、アメリカの太平洋でのプレゼンス維持に重要な島だと述べた。アメリカの外交・安全保障コミュニティでも台湾の重要性は強く意識されてきた。しかし豊島氏は、少なくともトランプ大統領はそうは見えないと言う。次の大統領が共和党か民主党かにかかわらず、従来どおり台湾を重視するかどうかも正直分からなくなってきているという。
豊島氏は、2028年1月の台湾総統選挙にも注目する。現職の頼清徳総統の続投か別の人物かを含め、その結果を見て習主席が軍事行動を取るかどうかが意識されつつあるという。中国は侵攻能力の構築も進めており、ゴビ砂漠には台湾の桃園国際空港や総統府の実物大レプリカを作り、特殊部隊の襲撃訓練などを行っているとされる。在日米軍基地やアメリカの空母を模したレプリカもあるのではないかとも言われている。豊島氏は、こうした訓練から中国が台湾侵攻の意図を持っている可能性は極めて高いと見る。能力面では、中国の造船能力はアメリカの200倍を超えているのではないかという指摘が、今回紹介した本の中でもなされている。
アメリカは「二正面」に対応できるのか
豊島氏は、ヨーロッパと台湾という2つの発火点で同時に危機が起きた場合、アメリカはもはや二正面に対応できない可能性があると指摘する。その理由として、前回の動画で扱った弾薬不足の影響に加え、そもそもアメリカに応じる意思がなく、国内政治上の賛同も得られないかもしれない点を挙げている。
習近平主席の健康問題への注目
中国が武力行使の準備を整えたとしても、最後に問われるのは習近平国家主席の決断である。そのため、この夏から秋にかけて習主席の健康状態に世界の外交・安全保障関係者の注目が集まったと豊島氏は説明する。
豊島氏が紹介した報道によれば、2026年9月12日からインドで開かれたBRICS首脳会議の初日、開幕演説の途中でモディ首相が元気のない様子の習主席に2回ほど「OK?」と尋ね、習主席が頷くのを見て演説を続けた。ヒンドゥスタン・タイムズなどが報じている。その夜、習主席はモディ首相主催の晩餐会を欠席し、王毅外相が代わりに出席した。ウォール・ストリート・ジャーナルは、習主席が出席予定だったものの直前に取りやめ、関係筋は体調不良が原因だと話していると報じた。
これを受けて重病説が巻き起こったが、豊島氏によれば、現時点でそれを裏付ける証拠は一切出ていない。習主席は誰にも支えられずに飛行機のタラップを上り下りする姿が確認されている。9月21日からは予定どおりアメリカを訪問し、ホワイトハウスでの歓迎式典と米中首脳会談に臨み、元気な様子だったという。トランプ大統領もタイム誌のインタビューなどで健康不安説を否定し、首脳会談は非常に良かったと述べた。
それでも豊島氏は、習主席の健康状態には今後も相当の注目が集まると見ている。台湾をめぐる決断における習主席の比重が大きいことに加え、中国では最高指導者の健康情報が国家機密として扱われ、共産党トップの後継者問題も絡むためである。動画は、この後継者問題に触れたところで途切れている。
テレ東ワールドポリティクス、豊島晋作です。今回は、第3次世界大戦は起こるのかという、やや荒唐無稽にも聞こえるテーマでお送りしていければと思います。実際に第3次世界大戦、次の世界大戦が起こる可能性があるのか、もしあるとすれば、どのようにそれを防いでいくべきだというふうに私たちは考えていけばいいのかということについての解説となります。
なぜこのような解説をお届けするかと言いますと、実際に今、アメリカですとかヨーロッパの安全保障・外交関係者の間で、そういったリスクが現実のものとして意識されているということと、同時にアメリカですとかヨーロッパの書店なんかに行きますと、そういった次の世界大戦、大きな戦争のリスクについて警鐘を鳴らすような本が数多く並んでいるんですね。そういった本は学者ですとか政府の高官、あるいはジャーナリストなどが手掛けた本が多いんですけれども、実際に私、出張などの際に、ロンドンですとかベルリンとか、いろんなところの書店でそういう本を買ってきて読み込んできましたので、その内容を一部お伝えしていくということになります。
具体的には、それらはまだ日本では現時点では出版されていませんので、それをひもといていくんですが、国際政治においてどういった議論がなされているのか。1つがこちらの『Ten Steps to Prevent World War Three』という、第3次世界大戦をどうやって防ぐかという本。こちら、トビアス・エルウッドという人が書いた本になります。そしてもう1つ、今回ご紹介するのがこちら、『The Next World War: The New Age of Global Conflict and the Fight to Stop It』ということで、どうやってその次の世界大戦を止めていくかという本。こういった2冊の本、まだ翻訳が出ていないということで、今回この内容を中心にお伝えしていければと思います。
まず、こちらの本を書いたトビアス・エルウッドってどういう人かと言いますと、イギリスの外務・防衛担当、国防政務次官を歴任しました、保守党の元下院議員でもあります。陸軍での経験を持つ安全保障問題の専門家ですね。そしてこちらの本、『The Next World War』を書いたのがピーター・アップスという、ロイター通信の国際問題・安全保障担当のコラムニストです。イギリスの陸軍予備役にも所属していて、軍事・外交政策を長年取材してきた人物でもあります。
ということで今回お伝えしていくんですが、ちょっと解説の前にお詫びがございます。前回のワールドポリティクスの解説動画、「アメリカ軍は弾薬不足か」というテーマで、かなり冒頭の音楽が大きすぎるというご指摘をいただきましたので、すみません、申し訳ありませんでした。今回の解説動画では少し音楽を抑えめにしておりますので、どうぞご容赦いただければと思います。
そして、解説の前にもう1つ、完全な宣伝です。私の4冊目の本、『なぜ誰も戦争を止められないのか 国際政治学で読み解く日本人の未来』という本が12月に発売となります。これは、日本が今後直面する戦争のリスクについて、どう向き合って考えていけばいいのかについて、ニュースキャスターの立場をやや超えて、かなり踏み込んだ内容になっておりまして、かなりご批判をいただくことがあるかもしれないんですけれども、自分なりに踏み込んで、いろんなことを、今回イランでの戦争がどう展開したのか、今後の台湾を巡るリスクですとか、そういったことについても率直に、国際政治学という1つの学問の枠組みから書かせていただきました。こちら、今Amazonで予約注文も始まっておりますので、概要欄に詳細をご覧いただければと思います。宣伝で失礼いたしました。
さて、本題ですけれども、まずは、こちらのピーター・アップスなどの本、これらの本両方なんですけれども、他にも数多くの本があります。学者が書いたものなんかもあるんですけれども、基本的に今の世界の安全保障の専門家、あるいは学者などの認識からしても、次の世界大戦、第3次世界大戦が起こるかというのは、もはや絵空事ではないということで、もう現実のリスクとして基本的には認識されており、特にピーター・アップスなどはこちらの本で、今後10年間で大戦争が起こる確率、発生確率は、大体30%から35%だと指摘をしています。つまり、もう絵空事でなく、現実的なリスクとしてそこにあるという理解、認識があるわけですね。
ですので、日本政府もそれに備えるために防衛費の増額、10兆円近い増額になっているわけなんですが、10兆円ぐらいまで大きくしているわけなんですけれども、そういったことに備えている。世界がまさにそれを懸念しているということなわけですね。
絵空事とか、そんなことはないだろう、考えすぎじゃないか、恐怖をあおっているとか、いろんなことを言われるかもしれませんけれども、今から思い起こしてみますと、2001年の9月11日のテロの時、複数の民間旅客機がペンタゴンに突っ込む、アメリカ議会、あるいはホワイトハウスを目指して突っ込むんですが、実際にビルに民間旅客機、複数機をハイジャックすると突っ込むリスクがあるって言ったとしても、おそらく誰も信じなかったか、そんなことは絵空事だと一蹴された可能性もあったかと思います。
また同時に、2022年の2月より前の時点で、ロシアが大規模な陸軍で隣国に地上侵攻を行う、全面戦争が始まる。それが起こるんだって言ったとしても、いやいや、そんなことは起こることはないだろうというふうに、おそらくしてきたかもしれませんし、また2026年、今年ですね、AIが、人工知能が人類へのリスクになる、人類を滅ぼすリスクになるかもしれないということが意識されて、開発に対するストップをかけるべきなんじゃないかという懸念が高まって、株価が急落する、テック株を中心に急落するということを、例えば去年とか昨年にそういったことを言った人がいたとしても、誰も相手にされなかったのではないかと思います。
ですので、絵空事というのはなかなか難しいんですけれども、現代世界においては、一体何が起こるのか、何が絵空事なのか、ではないのかというのを判断するのは極めて難しいですし、現実に今の世界大戦リスク、大戦争リスクというのはそこにあるというふうに認識されていますので、決して絵空事のリスクではないということは、お伝えしておかなければならないかもしれません。
そして、第3次世界大戦、次の世界大戦というワードを出しますと、いやいや、世界大戦が次に起こるとすれば、それは核戦争になるので、核によって人類が滅ぶのであるから、滅ぶ可能性が高い以上、そういったことは起こり得ないという議論が当然出てくるかと思います。もちろん、核戦争へのエスカレーションというのは当然あり得ますし、その可能性を最も危惧しなければいけないんですけれども、ただ、実際は通常兵器による戦争ということも、やはりまず想定しておかなければいけないということが重要なんですね。
これはなぜかと言いますと、具体的には第3次世界大戦が、すなわち核戦争になるとは限らないということですね。もちろんエスカレートのリスクはありますけれども、通常兵器による大国間戦争になるという可能性が厳然として存在しているということだからなんですね。まず原理的には、核保有国、これロシアもウクライナも中国もイギリス、フランスなどもそうなんですけど、インドとかパキスタンもそうですけれども、核保有国というのは現に通常戦争を戦っているわけですね。ロシアがそうですけど、核兵器を持っているからこそ、核兵器の使用を避けながら、通常兵器で戦っていく可能性が今後あるんだということですね。そのリスクを見つめ直さなければいけないということですね。
実際、先ほど申しましたように、ウクライナ戦争というのは、ロシアは核保有国ですけれども、大規模な通常兵器による戦争というものを現実として遂行しています。そして欧米、イギリス、フランス、アメリカ、ウクライナを支えている側も核保有国ですけれども、基本的に通常兵器をウクライナに供与して、ウクライナが通常戦争を戦うことを可能にしているわけですね。なので、核保有国が向かい合う戦争においても、基本的には核使用がなされずに、そのまま通常兵器による戦争が行われる可能性があるということですね。
実際には、核保有国同士、例えばインドとパキスタンなどの核保有国同士の戦争でも通常兵器による戦争がありましたし、ソ連と中国の対立もありました。ですので、基本的に核保有国だからといって全て核戦争になるとか、そういった段階分けはやはり安直で、通常兵器による戦争を想定しなければいけない状況はあるということですね。
実際にイギリス、フランス、アメリカなどは、ドイツ国内に「ピット」という秘密の基地があると言われていまして、そこの施設の中に入って、ウクライナの戦争、通常兵器による戦争をどうモニタリングしていくか、非常に干渉していたりとかするということなんですけれども、一方で中国ですね。中国も台湾に軍事侵攻するかどうかが今注目されていますけれども、これも基本的に中国は、もしやるとしても通常戦力によって軍事侵攻を行って、台湾侵攻を行い、台湾を制圧するということを1つの選択として挙げているということですね。もちろん核による脅しも、アメリカ軍を牽制するために使う可能性はあるんですけれども、原則としては通常戦力の戦闘を想定して、軍事力の構築、あるいは軍事訓練をさまざま行っているということですね。ですので、通常兵器による戦争を想定しなければならない。
そして、かつて冷戦期は、アメリカとソ連が膨大にあるような数千発同士の核兵器を持ってにらみ合っていた時期というのは、それらの核兵器によって大規模な通常戦争が消滅したという認識がありました。これは米ソ両超大国間の核保有国の間では、大規模な通常兵器の戦争は起こらないというふうにされていて、実際にそのとおりのことが起こったわけですね。50年代、60年代、70年代、80年代、90年代まで、基本的には米ソは直接戦争をしなかったわけですね。これは事実です。しかし今、こういった想定があっても、もはや通用しない可能性があるということを理解しておくべき時代に入ったということですね。なぜならば、現に核保有国が通常戦力を行使しているから。これは相手によりますけれども、ただ、やっぱりそういう可能性を想定しなければならない時代になったということが言えるかと思います。
そして、ピーター・アップスというのは今回、もはや世界というのは「戦争のない時代」、これはかぎ括弧付き、先ほど冷戦期は通常兵器による大規模戦争がなかった。これは大国間戦争がなかったという意味であって、実際、ベトナム戦争ですとかアフガニスタンなんかでも戦争がありました。イラン戦争もありましたけれども、基本的には今までその大国間戦争はないという時代から、大国間競争、これは場合によっては武力衝突も含むものになるわけなんですが、そういった時代に逆戻りしている。あたかも19世紀、20世紀のように、列強諸国が軍事力を大規模に行使して、時に戦いながら、時に牽制し合いながら、国際政治を展開していく、権力闘争を展開していく時代が再びやってきたというような時代になったと指摘しているわけなんですね。
同じようなことは、ケンブリッジ大学のブレンダン・シムズという教授が『The Return of the Powers』という本でも指摘していることですね。このケンブリッジ大学のシムズが書いたのは、つまりグローバル経済というものが、昔は国際政治を左右してきた時代があった。特に90年代以降ですね、中国がWTO、世界貿易機関に加盟してからは、中国がもう世界の工場ということで、安いものを全世界に行き渡らせるという意味で非常に大きな役割を果たしたわけなんですけれども、非常に多くの国が中国をビジネスチャンスにしましたし、しかも中国も世界の工場としてかなり外貨を稼いで、国が豊かになってきたわけなんですが、そのようにグローバル経済が基本的に国際政治を左右していく。グローバリゼーションですね。経済のグローバル化、経済的な合理主義が国際政治を左右していた時代があったんだけれども、今はもはや、その国際政治そのものが、あるいはよく言われる地政学が、世界経済、グローバル経済を左右する大国間競争の時代になったという転換が起こったわけですね。つまり、経済的な原理が世界を動かした時代から、もう政治が世界を動かす、国際政治の時代がやってきたというようなことを展開し、議論しているわけでもありますね。まさに地政学が重要になったということも言っているわけですけれども。
そして、このトビアス・エルウッド、こちらの本を書いた元イギリス政府高官ですけれども、彼はいわゆる戦争と平和のサイクルというのを、この本の中でこのように示していまして、これはどういうことかというと、戦争から平和に至って、またもう1回戦争が起こるようなサイクルを、このように分かりやすく図で示しているわけなんですけれども、1番下のところで戦争が起こります。これは例えば第2次世界大戦とかでもそうですけれども、起こると、その後平和条約が結ばれます。平和条約が結ばれると、世界はある程度、平和と安定がやってくるんですが、その後やはりその平和と安定した秩序が不安定になっていくということですね。「Growing Instability」ということになっていくんです。
これが例えばヨーロッパで言いますと、1618年に30年戦争という非常に大きな大戦争がありまして、これはヨーロッパでは7人に1人ぐらいの人が死ぬというぐらいの苛烈な戦争だったわけなんですけれども、その30年戦争が1618年に始まって1648年に終わって、1648年に、世界史を勉強した方はご案内かもしれませんけれども、ウェストファリア条約というのが結ばれます。ウェストファリア条約というのは、国家は主権を持って領域と領土があるので、それを不可侵なものとしてお互い尊重していこうね、ちょっと戦争はやめようねというようなことを合意していくわけですね。
しかし、それで一旦ヨーロッパ世界は平和になるんですけれど、もちろんその後も平和が続いていないけれども、その後いろんなことが起こってきます。例えばフランス革命が起こって、ナポレオンが台頭してきて、ナポレオンが革命戦争を始めたりするとか、いろんなことが起こって、その後またウィーン会議とかがあったりして、条約で世界がまたもう1回、一旦安定をして平和になっていく。あるいは第1次世界大戦が起こって、その後いわゆるヴェルサイユ条約という平和条約が結ばれるんですけど、ヒトラーが台頭してきて、結局また第2次世界大戦になると。こうぐるぐる回るようなサイクルというのを、ずっとやってきたと。
今の世界も同じようなもので、第2次世界大戦が80年前に終わりました。これでサンフランシスコ講和条約というのが結ばれて、日本も署名しているわけなんですけれども、ここから確かに1940年以降、概ね大国間の戦争、大戦争がなかったという意味においては平和だった時代が来たわけですね。しかし、今の世界はどこにいるかと言いますと、この「Growing Instability」、今だんだん不安定になってきつつあって、大戦争の前に今、世界はいるんじゃないかという危惧が高まっているわけですね。なので、少なくともトビアス・エルウッドは、そういう状況に今の世界があるということを指摘して、警鐘を鳴らしているわけです。まさに日本もここに立っている。もちろん世界の一部ですから、立っているという中で、かなり危機感が高まっているわけなんですけれども、こういったサイクルに今いるのではないかと。なので、第3次世界大戦、次の戦争が意識されているということですね。
ですので、我々が今、当たり前に続いてきた平和というものを改めて考え直す必要があると。平和というのは、今、平和のもとに私たちは自由に経済活動したり、いろんな余暇を楽しんだりですとか、民主主義があったりするわけなんですけれども、この自由で平和な社会というのは、自動的に今までどおり続いていくものではないんじゃないかということですね。やはり平和ですとか、この自由な社会、民主的な社会を守る意思と、それを守るためにコストを払う覚悟というのが、これからより一層必要になってくると。平和と言いますと、もうすでにそこにあるものなんですけれども、基本的には戦争のない状態、戦争が防がれた状態なわけですね。その戦争が防がれた人工的な社会状態なわけなんですけれども、これをどう守っていくかということ。そこの抑止力を考えていかなければいけない事態になったということですね。
つまり、危機を正しく認識して正しく恐れる。それが議論の出発点になるかもしれません。こういった動画を作りますと、どうしても「豊島、戦争をあおっている」とか、「本当に危機をあおっているのか」、ご批判もいただくわけなんですけれども、それはそれでしっかりと認識しつつも、やはり正しく今の世界がどういう状況なのかということを、なるべく海外の見方なんかをかみ砕きながら、こうやってお伝えしていった方が日本にとってもいいんじゃないか、私たちが議論の出発点とする上でもいいのではないかということなんですね。
ただ、大戦争、第3次世界大戦などと言いましても、最大の危機というのは、何か単一の1つの、どんと大きな戦争というよりも、複数の危機が同時に発生するということ。これが今の世界にとって大きな課題なのではないかとも言われているわけなんですね。これは具体的にどういうことかと言いますと、今の西側の民主主義国家、日本も含みますけれども、自由民主主義国家にとってのリスクとなっていると言われるのが、いわゆる「CRINK」という国家群になります。これは、チャイナ、中国のC、ロシアのR、そしてイランのI、そしてノースコリア、北朝鮮のNKを足し合わせる造語なんですけれども、これがいわゆる「Axis of Upheaval」、つまり動乱の枢軸とでも言いますか、かつて対テロ戦争の時、アメリカでは「悪の枢軸」という言葉を当時のジョージ・ブッシュ大統領が使っていましたけれども、今回、今言われているのはいわゆるこの「Axis of Upheaval」、動乱の枢軸というものが、国際政治におけるリスク要因、現状変更勢力として、今後の戦争のリスクをもたらすものになるのではないか、対立をもたらすものになるかと意識されているわけですね。
ただ、この4カ国というのは、強固な軍事同盟を別に形成しているわけではありません。それぞれの利害対立もありますし、仲良くない部分がありまして、打算的に結びついている部分などもあるかと思います。西側民主主義国家は、ある程度価値とか理念において結びついている部分もありますので、そういうところは違うところではあったりするんですけれども、しかし、この4カ国は相当結びつきを強めていまして、かなり利害が重なってきていて、協力が進んでいるわけですね。
実際に北朝鮮軍は陸軍の兵士、歩兵部隊を、ロシアのためにウクライナに送って、ロシアのために戦っているわけですね。こんなことが4、5年前に想像できたかというと、おそらくできなかったと思います。そして中国とロシアも、もはやいわゆる無限の協力関係と言われるぐらい、習近平主席とプーチン大統領がかなり緊密な関係を築き上げているということですね。そして今、アメリカとの戦争を戦っているイランも、ロシアですとか中国と非常に仲のいい、緊密な関係を結んでいまして、軍事的な支援を受けていたり、両国の兵器を使っていたりするわけなんですね。
ですので、このCRINKという存在が国際政治において、これはどっちのサイドから見るかによってリスクというのは見方が異なるんですが、西側民主主義国から見ると、少なくとも欧米社会においては、このCRINKというのが非常に強いリスクとして見なされている。その中におけるこのI、イランと今アメリカが戦争している。その戦争に関しては、アメリカとイスラエルが完全に仕掛けた、西側からしても迷惑極まりない戦争だという認識が多いわけなんですけれども、そのイランもこの中に入っているということなわけですね。
では、それら、このCRINKのリスクを意識した際に、発火点というもの、フラッシュポイントと言われるわけなんですが、次なる戦争の発火点となるものが2つあるというふうに、今世界では指摘されています。その1つ目が、やはりこのナルバ。エストニアの、ロシアとの国境の近くにある、人口が5万人から6万人の大体小さな町なんですね。ここが1つの発火点になるのではないかとも言われています。
ここはロシア系の住民が多い。かつてバルト3国、エストニア、ラトビア、リトアニアはソ連邦の一角だったこともありまして、伝統的にロシア系の住民が多く住んでいて、ロシア語を話す人たちが住んでいて、このナルバに関しては、やはりロシアに近いということもあって、住民の9割超がロシア系の住民だったりするわけですね。ただ、エストニアはやはりこういった住民たちのロシアに対する帰属意識が非常に強いですので、先日、テレ東BIZでも配信しました、テレビ東京ロンドン支局の立花局長が実際にこの町に入って取材していまして、その動画も上がっていますけれども、こういった、自分たちはロシアに愛着を感じるんだということで、エストニアとしては、その教育、ロシア語の教育を制限するような動きになったりとかしていく。
エストニアと言いますと、電子国家として非常に有名で、私も首都タリンに一度取材したことがあるんですけれども、こういったところに行くと、やっぱりエストニアがあまりいろんなものを取材させないような様子もあるようでございます。そういった中で、住民の暮らしなんかに、もしエストニア政府がロシア系を虐げているというようなことをロシアが言い出して、その住民を救出するみたいな大義名分を立てて、このナルバに侵攻するんじゃないかということが言われているわけですね。
ナルバに侵攻しますと、ナルバにもし軍事的に入っていきますと、これはクリミア侵攻の時のような、パラミリタリー、いわゆる正規の軍事侵攻じゃないような格好で、武装力で侵攻する可能性も指摘されているんですが、いずれにせよロシアがもしこのエストニアを武力侵攻、武力侵略したとしますと、これは北大西洋条約第5条の条文が発動されて、1締約国に対する攻撃は全締約国に対する攻撃だというふうに見なされて、NATO全加盟国がロシアと戦うというのが、今、基本的には想定されています。それがNATO、北大西洋の軍事同盟の建前なんですが、もしロシアがこのエストニアのタリンに侵攻したとしても、もしかすると北大西洋条約第5条が発動されないんじゃないかという危惧が今されているわけなんですね。
なぜなら、他の国からしますと、例えばフランスとかいった国は、分かりませんけれども、いやいや、ちょっとナルバのためにロシアと大戦争になるのは困る、嫌だというふうに言って、5条の発動に待ったをかける加盟国がいるかもしれない。賛同しない加盟国が出るかもしれないということなんですね。するとどうなるかというと、プーチン大統領、ロシアは、もうやっぱりNATOの結束は完全に崩壊しているなということで、じわじわと今度はエストニアをまた領土侵略していく。あるいは別の国境から、モルドバもあり得ますね、フラッシュポイントとして。ウクライナの隣国ですけれども、民主的な国家でEUへの加盟を目指していますけれども、そういったところもフラッシュポイントになってくるかもしれない。
そうすると、もうNATOという枠の方が事実上崩壊するわけですね。ロシアに対する抑止力として機能していたものが、小さいところのブロックを崩すことによって、全体のロジックをもう揺るがして崩壊させてしまう。それをロシアは狙っているんじゃないかと。なので、ナルバに関する守りをどう固めるかというのが、NATOにとって非常に大きな今の課題となっていまして、特にバルト3国は、特にエストニアも、今、ナルバに軍事力の大部分を移そうというような計画も進んでいますし、基地も建設しています。ですので、エストニア軍の守りもかなり強化する方向になっていまして、エストニア軍はロシア領を攻撃できる兵器を、アメリカ製のハイマースミサイルですとか、いわゆる韓国製の多連装ロケット砲なんかを購入して、対抗力、抑止力を強めようとしているわけなんですね。
エストニアとしても、この1年、2年ぐらいですぐにロシアがやってくるとは思っていないんですが、今後はやっぱり5年ぐらいのスパンをかけては相当注意しなければいけないということで、基本的には防衛の強化、抑止力を高めることを目指している。実際、エストニア、ラトビア、リトアニアは、特にエストニアもそうなんですが、十分な空軍力を持っていないんですね。なので、それは他のNATO加盟国が空軍力をちゃんとここに前方プレゼンスをして、ロシアを牽制しようということで、リトアニア上空では9月末から大規模な空軍の演習が行われまして、これはトルコ空軍、イタリア空軍、そしてスペイン空軍などの戦闘機による、F16とかユーロファイターとかが乗り入れてきて、その上空でデモンストレーションというか、訓練をやって、ロシアを空から牽制するというような動きが、実際にこの秋、今、足元で起きているわけなんですね。これはそちらの時の映像なんですけれども、なので、ロシアの空軍力、軍戦力を牽制することが、今、実際に起こっているということですね。
そして、これが1つ目、ナルバというフラッシュポイントについて、今、バルト3国を中心にお伝えしましたけれども、もう1つの次の世界大戦、第3次世界大戦のフラッシュポイント、発火点になり得る場所というのが、こちら台湾海峡ですね。やはり台湾海峡。これはエストニアのナルバもそうなんですけれども、やはりこのトランプ政権が台湾を見捨てるんじゃないか、もはや防衛しないんじゃないか。アメリカはもう台湾を守らず、中国に渡すのではないかという懸念が高まっているというリスクも1つあるわけなんですが、これはエストニアのナルバも一緒です。エストニアにロシアが攻めてきても、結局アメリカが参戦しないということは、もうNATOの結束にとって大打撃になりますので、そういうことなんですけれども、こちらの台湾海峡においても、アメリカに見捨てられるリスクがあるかもしれないということですね。
そうなりますと、基本的には台湾は相当自力でどこまで防衛できるのかというのが課題になってくるわけなんですが、実際に今、前回の動画でもお伝えしたとおり、台湾に対するアメリカの武器というのは、数千億円レベルとか、もう1兆円ぐらいのレベルまで、武器の供給が今遅れているわけですね。イランで大量のミサイルを今使っていますので、アメリカはそういった事情もあったりする中で、台湾に対するなかなか供与が進まない。
そして、トランプ政権、先ほど申し上げているとおり、見捨てるリスクが指摘される理由というのは、米中首脳会談でも、台湾を明確に自分たちは守るんだというようなことを示された痕跡はあまりないということで、基本的にはトランプ大統領は台湾を、防衛する、自由世界を守る1つの対象ではなくて、もはやディールの1つに挙げているんじゃないかと。中国と良いディールが結べるんだったら、何かいい条件を中国が政治的に出すんだったら、台湾を中国に譲り渡してもいいと思っているんじゃないかという疑念が強まっているということなんですね。ですので、そこが1番今リスクとして意識されているということなんですけれども、こうなりますと日本の安全保障にも大きな影響が出ますので、先ほどご紹介した私の本にも、そういったところのリスクについても、日本が台湾問題にどうリンクしてくるか、台湾を巡る戦争のリスクがどうリンクしてくるかも書いているわけなんですけれども、その辺りをどう見るか。
台湾は、特にかつてダグラス・マッカーサーという、GHQのトップだった司令官は、不沈空母のようなもので、アメリカが太平洋においてプレゼンスを維持する重要な島なんだと言っていたわけですし、アメリカの外交・安全保障コミュニティでは台湾の重要性というのは極めて強く意識されていたんですが、今は違うと。トランプ大統領は少なくともそうはあまり見えませんし、もしかするとトランプ大統領の後を、次もし共和党の大統領、民主党かも分かりませんけれども、アメリカの次の大統領が本当に台湾を今までどおり強く意識するかというと、それも正直分からなくなってきているという問題意識もございます。
特に台湾は2028年の1月に総統選挙があります。今の頼清徳総統が今、総統ですけれども、その次の総統なのか、頼清徳総統の続投なのかということも含めて総統選挙がありますが、この2028年の1月の総統選の結果を見て、習近平主席がどう動くのか、軍事行動を取るのかということも意識されつつあるということなわけなんですね。
実際に中国は、その台湾に侵攻するための能力を構築しつつありまして、ゴビ砂漠という中国内陸部の砂漠には、台湾の桃園空港ですとか、国際空港ですとか、台湾総統府のレプリカを砂漠に作って、同じサイズで作って、そこに対する攻撃訓練、特殊部隊の襲撃訓練ですとか、攻撃訓練を実際に行っていたりする。これは在日米軍基地も一部あるんじゃないか、アメリカの空母のモデルのレプリカもいっぱいあるんじゃないかと結構言われているんですが、そういったところに中国人民解放軍は実際に軍事攻撃の演習をすることで、かなり練度を高めて能力を構築しているということなんですね。
ですので、こういった意図が、かなり台湾侵攻の意図を持っている可能性が極めて高いということと、中国は能力の上でも、造船能力というのがもはやアメリカの200倍を超えているのではないかというような指摘も、今日ご紹介した本の中でされているわけなんですが、そういった物理的な能力構築、軍備力の増強、そして意図、両面をもって中国が台湾を取りに来るリスクが今意識されている。これがフラッシュポイントになっているということです。
この2つのフラッシュポイントについても、つまり台湾とヨーロッパ、この2正面で危機が同時に起こった時に、アメリカはこの2正面にはもはや対応できない可能性があるということですね。それは先日の動画でお伝えした弾薬不足の影響もあるかもしれませんし、そもそもアメリカがそれに応じる意思がないかもしれないという、国内政治上の、もう賛同も得られないかもしれないということがありまして、そこがかなり意識されていると。
ここで、中国がもし仮に武力行使の準備を整えるとすれば、それはやはり最後に問われてくるのは習近平国家主席の決断になるわけなんですね。ですので、最近、特にこの夏から秋にかけて、主席の健康状態というものに非常に注目が集まりました。具体的には、やっぱり習主席が何を考えているか、何の決断をするかというのが、今後、国際政治にクリティカルな影響を与えるので、世界の外交・安全保障関係者が注目していたわけなんですけれども。
具体的に言いますと、2026年、今年の9月12日からのBRICS首脳会議、インドで開かれましたけれども、初日、この首脳会議の中で開幕演説の途中で、モディ首相が、習主席がちょっと元気がない様子だったので、2回ほど「大丈夫ですか」、そういうふうに尋ねたわけですね。大丈夫ですかと尋ねた。しかし、習主席がうなずくのを見て、演説を続けていったということなんですけれども、こういった内容をヒンドゥスタン・タイムズなどが報じているわけなんですが、この夜、習主席はモディ首相が主催する晩餐会を欠席したわけですね。その理由も、すぐにきちんとした理由が明らかにならなかったということで、代わりに王毅外相が出席したということですね。
ウォール・ストリート・ジャーナルなどによりますと、習主席は晩餐会に当然出席予定だったんだけれども、直前に取りやめたと報道していて、関係筋は体調不良が原因だと言っていたということなんですね。ですので、重病説などが巻き起こったわけなんですけれども、ただ現時点において、重病説を裏付けるような証拠というのは、まだ一切出ていません。見つかっていないと。習主席は実際に誰にも支えられずに飛行機のタラップを上ったり下りたりしている様子が確認されたことと、また9月21日からは予定どおりアメリカを訪問しまして、ホワイトハウスでの米中首脳会談に臨んだからですね。ホワイトハウスでの歓迎式典にも出席したということなんですけれども、そこで米中会談が予定どおり行われまして、その時、習主席は普通に元気な様子だったということで、トランプ大統領も習主席の健康不安説を否定しています。タイム誌のインタビューなどで習主席の健康不安説を否定しまして、首脳会談は非常に良かったとも述べているわけなんですね。
ただ、やはり今後も習主席の健康状態に関しては、注目は相当集まるのではないかと思います。習主席の決断、台湾を巡る決断というのは非常に大きいということと、やはり最高指導者の健康情報というのは、基本的に習主席は特になんですが、やっぱり国家機密扱いということもありますし、今、中国共産党のトップという、後継者が……。
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