第3次世界大戦は起きるのか:未邦訳の2冊から読む「次の大戦争」のリスクと発火点

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概要

テレビ東京の豊島晋作キャスターは、この解説で「第3次世界大戦は起こるのか」という問いを扱う。荒唐無稽に聞こえかねないテーマだが、豊島氏によれば、アメリカやヨーロッパの外交・安全保障関係者の間では、このリスクが現実のものとして意識されている。ロンドンやベルリンなどの書店には、学者、元政府高官、ジャーナリストが次の大戦争に警鐘を鳴らす本が数多く並んでいるという。豊島氏は出張先でそうした本を買って読み込み、まだ日本語訳が出ていない2冊を中心に、国際政治でどのような議論がなされているかを紹介している。

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取り上げる2冊と著者

1冊目は『Ten Steps to Prevent World War Three(第3次世界大戦を防ぐ10のステップ)』で、著者はトバイアス・エルウッドである。豊島氏の紹介では、エルウッド氏はイギリス保守党の元下院議員で、外務・防衛分野の政府ポストを歴任した。陸軍での経験を持つ安全保障の専門家でもある。

2冊目は『The Next World War: The New Age of Global Conflict and the Fight to Stop It(次の世界大戦:新時代の世界対立とそれを止めるための戦い)』で、著者はロイター通信で国際問題・安全保障を担当するコラムニストのピーター・アップスである。アップス氏はイギリス陸軍の予備役にも所属し、軍事と外交を長年取材してきた。

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「絵空事」ではなく、確率で語られるリスク

豊島氏によれば、2冊に限らず、学者の著作を含む同種の本には共通の前提がある。安全保障の専門家や学者の認識では、次の世界大戦はもはや絵空事ではなく、現実のリスクとして捉えられているという。アップス氏は著書の中で、今後10年間に大戦争が起こる確率をおよそ30〜35%と見積もっている。豊島氏は、日本政府が防衛費を10兆円近くまで増やしているのも、世界がこうしたリスクを懸念していることと重なると述べる。

「考えすぎだ」「恐怖を煽っている」という反応に対して、豊島氏は過去の例を挙げる。2001年9月11日より前に、複数の民間旅客機がビルやペンタゴンに突っ込むリスクがあると言っても、誰も信じなかったかもしれない。2022年2月より前に、ロシアが大規模な陸軍で隣国に攻め込む全面戦争が起こると言っても、一笑に付された可能性がある。さらに豊島氏は、2026年にAIが人類へのリスクになるとの懸念が高まって開発停止を求める声が強まり、テック株を中心に株価が急落したことも挙げ、前年にそれを予言しても相手にされなかっただろうと語る。何が起こり、何が絵空事なのかを判断するのは現代世界では極めて難しい、というのが豊島氏の立場である。

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世界大戦は必ずしも核戦争にならない

「次の世界大戦は核戦争になり人類が滅ぶのだから、起こりえない」という反論もありうる。豊島氏は、核戦争へのエスカレーションは最も警戒すべき可能性だと認めたうえで、通常兵器による大国間戦争も想定しておく必要があると強調する。

その根拠として豊島氏は、核保有国が実際に通常戦争を戦っている事実を挙げる。ロシアは核保有国でありながら、ウクライナで大規模な通常戦争を遂行している。ウクライナを支える米英仏も核保有国だが、ウクライナに通常兵器を供与し、通常戦争を戦えるようにしている。核保有国同士の衝突としては、インドとパキスタンの通常兵器による戦闘や、かつての中ソ対立もある。豊島氏の見方では、核を持っているからこそ核の使用を避けつつ通常兵器で戦うという可能性があり、「核保有国だからすべて核戦争になる」という見方は安直である。豊島氏は、米英仏がドイツ国内にあるとされる秘密の施設で、ウクライナでの戦争をモニタリングし関与しているという話にも触れている。

中国についても、豊島氏は台湾への軍事侵攻が行われるなら、通常戦力で制圧することが一つの選択肢として想定されていると説明する。米軍を牽制するために核による脅しを使う可能性はあるが、原則として通常戦力での戦闘を前提に軍備を整え、訓練を重ねているという。

冷戦期には、米ソが数千発規模の核兵器で睨み合っていたことで、両国間の大規模な通常戦争は起こらないとされ、実際に1950年代から90年代まで米ソは直接戦争をしなかった。豊島氏はこれを事実と認めつつ、その想定がもはや通用しない可能性を理解すべき時代に入ったと述べる。

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大国間競争の時代への逆戻り

アップス氏は、世界が大国間戦争のない時代から、武力衝突も含みうる大国間競争の時代へ逆戻りしていると指摘する。豊島氏はここで、冷戦期に「大規模戦争がなかった」というのは大国同士の戦争がなかったという意味で、ベトナムやアフガニスタンなどでは戦争があったと補足している。アップス氏の見立てでは、19世紀や20世紀のように列強が軍事力を大規模に行使し、ときに戦い、ときに牽制し合いながら権力闘争を展開する時代が再び来た。

同様の議論として、豊島氏はケンブリッジ大学のブレンダン・シムズ教授の著書も紹介する。シムズ氏によれば、1990年代以降、とりわけ中国がWTOに加盟して「世界の工場」として安価な製品を世界に行き渡らせてからは、グローバル経済と経済合理主義が国際政治を左右する時代が続いた。多くの国が中国にビジネスチャンスを見いだし、中国自身も豊かになった。しかし今は、国際政治、つまり地政学が世界経済を左右する時代へ転換したという。

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エルウッド氏の「戦争と平和のサイクル」

エルウッド氏は著書で、戦争と平和の循環を図で示している。戦争が起こり、平和条約が結ばれ、平和と安定(peace & stability)が訪れ、やがて不安定が増していき(growing instability)、再び戦争に至るというサイクルである。

豊島氏はヨーロッパ史に当てはめて説明する。1618年に始まった三十年戦争は、ヨーロッパの7人に1人ほどが死んだとされる苛烈な戦争で、1648年のウェストファリア条約で終わった。この条約で国家は互いの主権と領土を尊重することに合意し、いったん平和が訪れる。その後フランス革命とナポレオンの台頭で戦争が起こり、ウィーン会議で再び安定する。第一次世界大戦の後にはヴェルサイユ条約が結ばれたが、ヒトラーが台頭して第二次世界大戦に至った。

第二次世界大戦は約80年前に終わり、日本もサンフランシスコ講和条約に署名した。それ以降、大国間の大戦争がないという意味での平和が続いてきた。エルウッド氏は、今の世界が「不安定の増大」の段階にあり、大戦争の手前にいるのではないかと警鐘を鳴らしている。

これを受けて豊島氏は、自由な経済活動や余暇、民主主義を支えてきた平和は、自動的に続くものではないかもしれないと語る。豊島氏によれば、平和とは戦争が防がれている人工的な状態であり、それを守る意思と、守るためのコストを払う覚悟がこれまで以上に必要になる。危機を正しく認識し、正しく恐れることが議論の出発点になるというのが豊島氏の考えである。こうした動画には「戦争を煽っている」という批判も寄せられるが、豊島氏はそれを受け止めたうえで、海外の見方をかみ砕いて伝えることが日本にとって有益だと述べている。

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同時多発する危機と「CRINKs」

豊島氏は、最大の危機は単一の大戦争というより、複数の危機が同時に発生することだと指摘する。日本を含む西側の自由民主主義国家にとってのリスクとして挙げられるのが「CRINKs(クリンクス)」で、中国(China)、ロシア(Russia)、イラン(Iran)、北朝鮮(North Korea)の頭文字を合わせた造語である。この4カ国は「動乱の枢軸(Axis of Upheaval)」とも呼ばれる。対テロ戦争の時代にアメリカの大統領が使った「悪の枢軸」になぞらえた呼び方で、現状変更勢力として今後の対立や戦争のリスクをもたらすと意識されている。

豊島氏は、この4カ国が強固な軍事同盟を結んでいるわけではないと注意を促す。それぞれに利害の対立があり、打算で結びついている部分もあって、価値観で結びつく面がある西側とは異なる。それでも結びつきは強まり、協力が進んでいる。北朝鮮は歩兵部隊を送り込み、ロシアのためにウクライナで戦わせている。豊島氏は、これは4、5年前には想像できなかったことだろうと述べる。中国とロシアは「無制限の協力関係」と呼ばれるほど習近平国家主席とプーチン大統領が緊密な関係を築き、現在アメリカと戦争をしているイランも、ロシアや中国から軍事支援を受け、両国の兵器を使っている。

豊島氏は、リスクの見え方はどちら側から見るかで異なると断ったうえで、欧米ではCRINKsが強いリスクと見なされていると説明する。イランとの戦争については、アメリカとイスラエルが仕掛けたもので、西側から見ても迷惑極まりない戦争だという認識が多いとも付け加えている。

17:33

発火点1:エストニアのナルバ

次の大戦争の発火点(フラッシュポイント)として、豊島氏は2カ所を挙げる。1つ目は、エストニアのロシア国境近くにある人口5〜6万人ほどの町ナルバである。バルト3国はかつてソ連の一部で、ロシア語を話す住民が多い。ナルバはロシアに近いこともあり、住民の9割ほどがロシア系だという。エストニア政府は、ロシアに愛着を感じる住民への警戒からロシア語教育を制限する動きを見せている。テレビ東京の立花支局長がこの町に入って取材した動画も配信されている。

懸念されているシナリオは、ロシアが「エストニア政府がロシア系住民を虐げている」と言い出し、住民の救出を大義名分にナルバへ侵攻するというものだ。クリミアのときのように、正規軍ではない武装勢力の形で入る可能性も指摘されている。NATOの建前では、エストニアが武力侵略されれば北大西洋条約第5条が発動され、一加盟国への攻撃は全加盟国への攻撃と見なされる。しかし、ナルバのためにロシアと大戦争になるのは困ると考え、発動に待ったをかける加盟国が出るかもしれないという懸念がある。豊島氏はフランスなどを例に挙げかけたが、どの国かは分からないとしている。

そうなれば、プーチン大統領はNATOの結束が崩れたと判断し、エストニアの領土をじわじわと侵略したり、別の国境で動いたりするかもしれない。豊島氏は、ウクライナの隣国でEU加盟を目指す民主的な国(字幕ではモルドバと読める)も発火点になりうると述べる。小さなところを崩すことで、ロシアへの抑止力として機能してきたNATOの論理全体を揺るがし崩壊させる。それをロシアは狙っているのではないか、というのが豊島氏の説明である。

このためナルバの守りを固めることが、NATOにとって大きな課題になっている。エストニアは軍事力の大部分をナルバ方面に移す計画を進め、基地も建設している。ロシア領内を攻撃できる米国製のハイマースや韓国製のロケット砲を購入し、抑止力を高めようとしている。豊島氏によれば、エストニアは1〜2年でロシアが攻めてくるとは考えていないが、5年程度のスパンでは相当の注意が必要だと見ている。バルト3国は十分な空軍力を持たないため、他のNATO加盟国が前方展開して補っている。9月末からはリトアニア上空でトルコ、イタリア、スペインなどの空軍がF16やユーロファイターを持ち込み、大規模な演習を行ってロシアを空から牽制している。

22:16

発火点2:台湾海峡と「見捨てられるリスク」

2つ目の発火点は台湾海峡である。豊島氏は、ナルバと共通するリスクとして、トランプ政権が台湾を見捨て、防衛せず中国に渡すのではないかという懸念を挙げる。エストニアにロシアが攻めてきてもアメリカが参戦しなければNATOの結束に大打撃となるのと同じ構図だという。

見捨てられれば、台湾が自力でどこまで防衛できるかが問題になる。豊島氏が前回の動画でも伝えたとおり、アメリカから台湾への武器供与は数千億円から1兆円規模で遅れている。イランとの戦争で大量のミサイルを使っている事情もあるという。さらに米中首脳会談でも、台湾を明確に守ると示した痕跡はあまりない。トランプ大統領は台湾を自由世界の防衛対象ではなくディールの材料と見ていて、中国が良い条件を出せば台湾を譲り渡してもいいと考えているのではないか。そうした疑念が強まっていると豊島氏は説明する。

かつてダグラス・マッカーサーは台湾を「不沈空母」のような存在とし、アメリカの太平洋でのプレゼンス維持に重要な島だと述べた。アメリカの外交・安全保障コミュニティでも台湾の重要性は強く意識されてきた。しかし豊島氏は、少なくともトランプ大統領はそうは見えないと言う。次の大統領が共和党か民主党かにかかわらず、従来どおり台湾を重視するかどうかも正直分からなくなってきているという。

豊島氏は、2028年1月の台湾総統選挙にも注目する。現職の頼清徳総統の続投か別の人物かを含め、その結果を見て習主席が軍事行動を取るかどうかが意識されつつあるという。中国は侵攻能力の構築も進めており、ゴビ砂漠には台湾の桃園国際空港や総統府の実物大レプリカを作り、特殊部隊の襲撃訓練などを行っているとされる。在日米軍基地やアメリカの空母を模したレプリカもあるのではないかとも言われている。豊島氏は、こうした訓練から中国が台湾侵攻の意図を持っている可能性は極めて高いと見る。能力面では、中国の造船能力はアメリカの200倍を超えているのではないかという指摘が、今回紹介した本の中でもなされている。

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アメリカは「二正面」に対応できるのか

豊島氏は、ヨーロッパと台湾という2つの発火点で同時に危機が起きた場合、アメリカはもはや二正面に対応できない可能性があると指摘する。その理由として、前回の動画で扱った弾薬不足の影響に加え、そもそもアメリカに応じる意思がなく、国内政治上の賛同も得られないかもしれない点を挙げている。

26:16

習近平主席の健康問題への注目

中国が武力行使の準備を整えたとしても、最後に問われるのは習近平国家主席の決断である。そのため、この夏から秋にかけて習主席の健康状態に世界の外交・安全保障関係者の注目が集まったと豊島氏は説明する。

豊島氏が紹介した報道によれば、2026年9月12日からインドで開かれたBRICS首脳会議の初日、開幕演説の途中でモディ首相が元気のない様子の習主席に2回ほど「OK?」と尋ね、習主席が頷くのを見て演説を続けた。ヒンドゥスタン・タイムズなどが報じている。その夜、習主席はモディ首相主催の晩餐会を欠席し、王毅外相が代わりに出席した。ウォール・ストリート・ジャーナルは、習主席が出席予定だったものの直前に取りやめ、関係筋は体調不良が原因だと話していると報じた。

これを受けて重病説が巻き起こったが、豊島氏によれば、現時点でそれを裏付ける証拠は一切出ていない。習主席は誰にも支えられずに飛行機のタラップを上り下りする姿が確認されている。9月21日からは予定どおりアメリカを訪問し、ホワイトハウスでの歓迎式典と米中首脳会談に臨み、元気な様子だったという。トランプ大統領もタイム誌のインタビューなどで健康不安説を否定し、首脳会談は非常に良かったと述べた。

それでも豊島氏は、習主席の健康状態には今後も相当の注目が集まると見ている。台湾をめぐる決断における習主席の比重が大きいことに加え、中国では最高指導者の健康情報が国家機密として扱われ、共産党トップの後継者問題も絡むためである。動画は、この後継者問題に触れたところで途切れている。