野村HD・奥田健太郎社長が語るアメリカ戦略:「トップ5に入れる分野」に人材と資本を集める

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概要

アメリカ進出から100年を迎え、2年連続で過去最高益を更新した野村ホールディングス。WBSの未公開インタビューで、奥田健太郎社長は好業績の理由、アメリカ市場の位置付け、そして大手金融機関がひしめくアメリカで野村がどう戦っているのかを語った。奥田社長の立場ははっきりしている。すべての分野で米大手行と勝負するのではなく、市場でトップ5に入れそうな分野に絞り、そこへ一流の人材と資本を集中させるというものだ。

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冒頭の予告部分では、NISAによる投資の広がりに触れたうえで、日本の市場や日本企業に関心を持つアメリカや海外の投資家、事業会社が「すごく増えてます」と述べている。今のタイミングは日本の企業、日本の金融機関にとって「すごく今有利」だという認識も示した。ただし、これらの発言の詳しい文脈は、今回の字幕の本編部分には含まれていない。

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創業期からの「グローバルな金融機関」という夢

インタビューは、この後ニューヨーク証券取引所で鐘を鳴らすという節目の場で行われた。奥田社長はまず野村の歴史を振り返った。野村は1925年12月に日本で創業し、その1年3カ月後にはニューヨークに事務所を開設している。そのため日本とアメリカでほぼ同じ長さの歴史を持つことになる。創業者の野村徳七氏は、当初からグローバルな金融機関になるという大きな夢を持っていたという。

アメリカ100年の節目に加えて、この2年間は業績が連続で過去最高となった。ホールセール部門ではアメリカが日本を抜き、収入が最も大きい地域になっている。奥田社長は、アメリカでしっかりビジネスができていることに社長として感慨があると語った。

聞き手は、ドル建て債券の取り扱いやソニーの米国上場時の主幹事といった実績に触れ、野村はアメリカ市場を一貫して重視してきた会社なのかと尋ねた。奥田社長によると、当初のニューヨーク事務所はリサーチ・調査が中心の業務だった。それでもアメリカは世界で最も大きなシェアを持ち、市場の厚みも深い。現在では新しい商品もアメリカから生まれる。日本やアジアなど他の地域ももちろん大切だが、アメリカに根を張ってビジネスをすることは創業当初のDNAに近いのではないか、と奥田社長は述べた。

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好業績の背景にある部門ごとのビジネスモデル転換

2年連続の最高益の要因について、奥田社長はまずビジネスモデルの転換を挙げた。奥田社長は2020年4月に社長に就任し、今年で7年目になる。ただ、モデル転換は前任者の時代から各部門で取り組んできたものだという。

国内のウェルスマネジメント部門では、顧客のニーズに合わせて世代別の対応を進めてきた。年齢の高い顧客には、安心して次の世代へ資産を移せるよう支援する。若い顧客には資産運用を提案する。トレーディングや投資銀行業務を担うホールセール部門では、なるべくバランスシートを使わず、安定した持続的な成長を目指す方向にビジネスを大きく変えてきた。アメリカ(この文脈ではグローバルと言ってもよい、と奥田社長は補足した)では、トップ5に入れるビジネスに集中して勝ちにいくモデルへ移行した。奥田社長は、こうした転換の成果がかなり出てきていると見ている。

あわせて、この数年は日本でも海外でも株式市場が好調で、債券市場も良かった。奥田社長は市場の追い風があったことを認めたうえで、社員が一丸となって取り組んできた成果が出ているとも強調した。

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資産効果とNISA、新しい投資家の参加

相場の上昇による資産効果について問われると、奥田社長は国内のウェルスマネジメント事業に触れた。野村證券の支店を通じて顧客と接するなかで、市場が上がり自分の資産が増えた投資家は資産効果を十分に感じているはずだという。若い世代もNISAを通じて少しずつ投資を続けるなかで、良い経験をしていると見ている。こうした人々が資本市場に入ってくることは、野村にとっても日本にとっても良いことだと述べた。

一方で、野村ホールディングスの業績そのものが資産効果でどれだけ押し上げられているかは「ちょっと分からない」と慎重に答えた。そのうえで、市場の好調と資産効果を背景に顧客の取引が活発になっていること、これまで市場に入っていなかった個人が参加してきていることは確かであり、業績に良い影響が出ていると思う、と説明した。

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野村の収益構造の中でアメリカが占める位置

聞き手は、最高益の要因としてアメリカ事業の好調を挙げ、現在の野村の稼ぎ方の中でアメリカがどう位置付けられているかを尋ねた。

奥田社長は事業を3つに分けて説明した。国内の支店で展開するウェルスマネジメント部門、株式・債券のトレーディングや引き受けを含むホールセール部門、そしてアセットマネジメント部門である。ホールセール部門では海外の利益が大きな比重を占め(発言では「2/3」と「約半分」の両方の表現が出ている)、そのうち半分以上がアメリカだという。ホールセール部門の地域別の利益はアメリカ、日本、アジア、ヨーロッパの順で、アメリカが牽引していることは事実だと奥田社長は述べた。

なぜアメリカが重要なのか。奥田社長は自身も約2年間アメリカで現地の社長を務めた経験を踏まえ、市場の深さと広さ、そして世界中から多くの参加者が集まっていることを挙げた。そのため、新しいサービス、新しい商品、AIやITを含む新しいテクノロジーが次々とアメリカから生まれる。野村のニューヨーク拠点の商品ラインナップにも新しいものがどんどん入ってくるという。それを作り、顧客のニーズを捉え、質の高いサービスを提供できるかどうかが勝負になる。アメリカで起きたことはその後アジアやヨーロッパでも必ず起きるので、アメリカ市場はとても大切だ、というのが奥田社長の説明である。

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すべてでは戦わない:「トップ5」に絞る選択と集中

ただし、すべての商品・サービスでアメリカの大手銀行と勝負するのは難しい、と奥田社長は認める。そこで野村は、勝てると考える分野、具体的にはアメリカ市場でトップ5になれそうな分野を選び、本当にトップクラスの人材を採用し、資本もある程度集中させている。

AIや半導体などでアメリカ市場の存在感が増すなか、日本企業にとってアメリカ攻略は避けて通れないのかという問いに、奥田社長は「その通り」と答えた。金融に限らず、自動車などさまざまな製造業もアメリカに根を張ってグローバルに事業を展開している。世界最大の市場でどれだけビジネスを進められるかは日本企業にとって大きな課題であり、それができれば次のグローバル企業がどんどん出てくるのではないか、と述べた。

さらに具体的な戦い方について、奥田社長は質問の背景には「これだけ金融機関がある中で、なぜ野村や日本の金融機関が選ばれるのか」という疑問があるのだろうと受け止めた。そのうえで、ビジネスモデル全体は広く持ちながら、株式の中でもデリバティブ(派生商品)系の分野に良い人材を入れて集中していると説明した。逆に「キャッシュ」と呼ばれる通常の株式売買は、アメリカではすでにかなり小さくしているという。

奥田社長は、アメリカは人材の流動性が高い市場だとも指摘した。野村がこのモデルで本気で取り組むことを理解してもらえれば、その部門には優秀な人材が多く集まる。その結果、その分野で高いシェアを取れているのだという。

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「コネクティング・マーケッツ・イースト・アンド・ウエスト」

奥田社長は、もう一つの強みとして、野村がよく使う標語「コネクティング・マーケッツ・イースト・アンド・ウエスト」を挙げた。アジアやヨーロッパの顧客をアメリカに連れてくる、日本の顧客をアメリカにつなぐといった、国境をまたぐ顧客の流れを重視しているという。

例として挙げたのが日本企業のM&Aである。奥田社長によれば、日本企業によるM&Aの金額のうち、毎年半分ほどがアメリカ向けだという。アメリカでしっかりした支援ができれば日本企業の役に立てるが、それができなければ日本企業の手伝いもできない。だからこそアメリカに強いチームを置き、専門性を高め、本当にトップの人材を採っている、と奥田社長は説明した。

また、アメリカ国内の顧客は必ずしも会社の名前で取引先を選ぶわけではなく、専門性のあるチームを求めて来る。野村がある分野で高いシェアを持ってビジネスをしていれば、顧客は来てくれる、というのが奥田社長の見方だ。

12:10

ホールセール部門の米国収益が伸びる理由とリスクマネジメント

聞き手は、直近の決算でホールセール部門の収益の4割近くを米国が占めていることに触れ、なぜここまで伸ばせたのかを改めて尋ねた。

奥田社長がまず挙げたのは、顧客のニーズをしっかり捉えられていることだった。顧客基盤はアメリカだけではない。アジアやヨーロッパの投資家がアメリカに投資する際の支援もしている。野村はグローバルに連携して顧客に対応しており、アジアの顧客にアメリカのビジネスやヨーロッパのサービスを提供することが、結果としてアメリカの利益を押し上げる構図になっているという。そのうえで、専門性の高い一流のチームを持つ分野でうまくビジネスを作っていることを挙げた。

もう一つの理由はリスクマネジメントである。奥田社長は、野村もアメリカで100年やってきたが、大恐慌に始まり、市場の大きな振幅はアメリカ発のものが多いと指摘した。そのため、なるべく利益の振れ幅を小さくできるよう、リスクマネジメントの質を上げて顧客に接していくことが重要だと述べた。冒頭で語った「安定的で持続的な成長」とも結びつく考え方である。

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デリバティブで提供しているのは「商品」ではなく「ソリューション」

成長の柱の一つとされるデリバティブについて、聞き手は具体的に何をしているのかを尋ねた。

奥田社長はいくつかの例を挙げた。株式を普通に買えば価格は上下するが、一定の下げ幅以上は損が出ないようにするヘッジを手伝う。流動性の低い株式を一度に大量に集めようとすると価格が上がってしまうため、時間や買い方を分散させて平均的な購入コストを下げる。顧客が持ち込む一定量の投資資金について、デリバティブを活用して効率よくトレーディングできるようにする。こうした取り組みは株式に限らず、先物などさまざまな派生商品で行っているという。

聞き手が、機関投資家や年金基金に株を売って手数料を得るのが基本だと理解していたが、デリバティブは株価が下がっても損が出ない商品を野村が作って提供するという理解でよいか、と確認した。奥田社長は少し修正した。これは「ヘッジの取引」であり、商品を作っているかというとそれは別だという。例えば大阪や東京にある日経平均先物のような取引で、下がっている局面で反対売買をしていく。必ずしも何かの商品を提供するだけではなく、こうしたソリューションを手伝っていると理解してほしい、と説明した。

ヘッジのニーズの具体例として、奥田社長は分かりやすい数字を示した。株式を100で買ったとき、98で売る権利を持っておく。実際には90まで下がる可能性もあるが、98で売る権利があれば、権利を買うための価格はかかるものの、損失は100と98の差だけで済む。聞き手が、逆に株価が上がった場合はその権利を買うための「手数料」を少し払うだけという理解でよいかと尋ねると、奥田社長は「手数料というかプライス」だと訂正した。価格の設定や期間を変えるなど、顧客のニーズに合わせてヘッジを組み立てていくのだという。

こうした提案は顧客とのやり取りの中でニーズを聞き出し、積み重ねていくものなのかという問いに、奥田社長は、顧客のニーズを聞き、アイデアを提供し、議論するという「極めて基本的な作業の繰り返し」だと答えた。これはホールセールのトレーディングに限らず、個人顧客の支援や、法人向けの引き受け・M&Aでも同じだという。

18:35

グループ全体のリスクマネジメントとシナリオ作り

聞き手は、そうした取引にもリスクがあるのかと尋ねた。奥田社長は、リスクマネジメントはデリバティブに限った話ではないと答えた。野村グループ全体の収入、利益、コストは市場の変動に大きく影響される。市場が大きく動いても収入があまり落ち込まず、利益が大きく下がらないようにコントロールすることを、野村ではリスクマネジメントと呼んでいるという。

具体的には、例えば今後半年にどのようなシナリオが考えられるかをしっかり作り、それぞれに備えてヘッジなどの措置を取り入れている。奥田社長は、リスクマネジメント部門は現在かなり高いクオリティで運営できていると評価した。

19:39

残された問い:アルケゴス損失とデリバティブのリスク

インタビューの終盤、聞き手は奥田社長の就任間もない時期に起きたアルケゴス関連の損失に触れた。聞き手は、あれもデリバティブの一種であり、現物を買っていたわけではなく、取引の中でアルケゴスの信用力を超えて損失が膨らみ、デフォルトに至ったと理解しているとして、こうしたリスクもやはりあるのではないかと問いかけた。

デリバティブを成長の柱に据える戦略と、過去に経験した大きな損失をどう両立させるのか。この問いに対する奥田社長の答えは、今回の字幕には含まれておらず、質問の途中で収録部分は終わっている。