カイハラの中空糸デニム「エアチューブ」で上下デニムを作った理由:MBが語る企画の経緯と生地の仕組み

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概要

ファッションYouTuberのMBが、自身のブランドの「アルティメイトファブリック」シリーズとして、カイハラデニムの生地を使ったデニムジャケットとデニムパンツを発売すると告知した。動画の中心的な問いは、「ヴィンテージらしい重厚な見た目の上下デニムを、日常で無理なく着られる着心地で作れるか」である。MBは、カイハラの新しい中空糸デニムがこの問題の答えになったと説明し、今回の上下デニムを「傑作中の傑作」と評価している。

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発売される4型

今回発売するのは、同じ生地を使ったジャケットとパンツで、それぞれヴィンテージ加工版とリジッド(未加工)版がある。価格はいずれも税込みで、MBの説明によれば次のとおりである。

  • AIR TUBE ヴィンテージデニムジャケット:4万5000円
  • AIR TUBE ヴィンテージデニムトラウザーズ:3万6500円
  • AIR TUBE リジッドデニムジャケット:3万6000円
  • AIR TUBE リジッドデニムトラウザーズ:2万9000円

受付期間は10月4日の夜9時から10月5日の夜11時まで。MBによれば、以前から企画していたデニムシリーズで、特にカイハラの素材に着目して作ったという。

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「ユニクロが使っている生地」というイメージへの反論

MBは最初に、視聴者の多くが「カイハラはユニクロが使っている生地だから、それほど良い生地ではない」と考えるだろうと予想し、それは「全然違う」と否定する。ユニクロが使っていることから安いデニムメーカーだと思われがちだが、ハイブランドも使っているというのがMBの説明である。

MBによれば、カイハラは国内のデニム生産会社の中でも屈指の品質を持ち、クロキと並ぶ二大巨頭だという。特徴として挙げたのは研究熱心さで、これまでデニムで表現できなかったことに取り組み、新しい生地を作ることに強く力を入れているメーカーだと話す。MB自身も一時期勘違いしていたが、カイハラは岡山ではなく広島県福山市にある、1893年創業の老舗である。いわゆる岡山デニムとは少し距離がある会社で、それが理由かどうかは分からないとしつつ、日本のデニムメーカーの中で最も新しい素材作りに熱心なメーカーであり、そのため海外ブランドにも好まれ、他にない素材を多数持っていると述べる。

今回の生地も、MBは他メーカーでは代替できない生地だとしている。生地自体もそれなりに高価だが、価格はかなり抑えたという。ユニクロはカイハラとの協業でさまざまな方法によりコストを下げているが、今回使った生地はユニクロでは使われていないため、安い生地を使っているわけではないとMBは強調した。

なお、企画の順序については、カイハラの生地が先にあって話が進んだのではないと説明している。MBがやりたいものがあったものの、それに合うデニム素材が見つからず、唯一カイハラが作っていた生地と企画が合わさったという経緯である。

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企画の出発点:美醜の価値観の変化と上下デニム

企画の背景として、MBはアメリカンカジュアルの存在感が高まっていることを挙げる。MBは「美醜の感覚」、つまり何を美しいと感じ何を醜いと感じるかにもトレンドがあると考えている。ここ10年ほどは、韓流アイドルのように肌が白く化粧をした、女性か男性か分からないような男性像が美しいとされてきた。それが最近は、長瀬くんのような男性的な見た目のほうがかっこいいという価値観へ変わりつつあるとMBは見ている。

MBはこれを、ここ10〜20年のジェンダーフリー的な考え方への反動だろうと推測する。男らしさや女らしさがタブー視され、男の子っぽい女の子、女の子っぽい男の子が評価される軸があったが、その反動もあってか、マニッシュな男性像が評価されつつあるという。ただしMBは、男らしい女性や女性らしい男性が良い・悪いと言っているのではなく、あくまで男性がかっこいいとされる価値観の中での変遷だと断っている。この流れの中で、ヴィンテージ、デニム、古着といったマニッシュなアイテムやカテゴリーが評価されているというのがMBの見立てである。

MB自身もこの変化を感じており、上下デニムの着こなしをずっとやりたかったという。イメージは往年のキムタクのようなスタイリングで、足元にはジャックパーセルやオールスターではなく、ローファーやブーツなどの革靴を合わせる。ハットをかぶってもよい。ドレス寄りのアイテムでカジュアルなセットアップを崩すという考え方である。

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パンツをスラックス仕様にした理由

一方でMBは、視聴者全員がハットを使うとは限らないため、デニムの上下でもなるべくきれいに見えるようにしたかったと話す。そこでパンツはスラックスライクなパターンにした。通常のデニムの5ポケットは横向きの口だが、今回はスラックスと同じ斜めポケットにしている。デニムでありながら上下で合わせても上品に見えることを意識したという。それでも足元は革靴で合わせてほしい、ハットをかぶればなお良い、というのがMBの提案である。

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重厚なヴィンテージデニムは着心地が悪い

企画を進める中で、MBはある問題にぶつかった。こうしたデニムは本格的な生地、本格的なヴィンテージの雰囲気のほうがかっこいいとMBも考えている。しかし、12.5オンスや13オンスといった重厚なヴィンテージデニムの上下で生活するのは、重くて硬く、着心地がかなり悪いという。

MBは具体的なメーカー名を伏せつつ、ある生地で本格的なサンプルを作ってみたところ、重くてきつく、硬かったと振り返る。日常でその上下を着るかと問われれば、着ない気がしたという。

MBはこの感覚を年齢と結びつけて説明する。10代や20代のころは気にしなかった服の重さや着心地を、30代を過ぎると気にし始め、40代、50代と年齢が上がるほど着心地の悪いものを避けるようになる。コートならずっと着ているわけではないので妥協できるが、デニムジャケットはインナーとしても使い、パンツは屋内でも屋外でもずっと履いている。そこに着心地を求めないのは酷だとMBは考えた。特にリジッドデニムは硬く重いため、上下で着る提案は男性には受け入れられにくいだろうという。

さらにMBは、日本人は見た目と同じくらい着心地や機能性を気にする民族だと語る。対比として挙げたのがフランス人で、体に反発するようなよく分からないシルエットでも気にせず着る傾向があり、それは服をアートピースとして捉える文化があるからだろうとMBは推測する。見た目の美しさに加えて、機能性、動きやすさ、着心地を同時に考えるのは職人気質な日本人らしさかもしれず、MB自身もそうだという。

こうした考えから、重厚なヴィンテージデニムで上下を作るのは「僕がやる仕事じゃない」とMBは判断した。そうした製品は世の中にそこそこあり、お金を出せば買えるからである。そこで、重厚なヴィンテージの雰囲気がありながら着心地が良く、日常的に着られる上下デニムを作ることにし、その鍵は生地だと考えた。

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重さと重厚感のトレードオフ

ただし、重厚に見えて軽い生地を作るのは難しいとMBは説明する。デニムは重さと厚さがあるからこそ、色や存在感が出る。オンスを軽くして薄くすると、どんどんデニムシャツのようになり、重厚感が足りなくなる。MBはこれを、どうにもしがたいトレードオフの関係だと表現した。

この問題の答えが見つかったのが、カイハラの生地展示会である。無数の生地の中からMBがすごいと感じたものが3つほどあり、その1つが今回使った生地だった。

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C型中空糸を使った「エアチューブデニム」

カイハラでの呼び名は「エアチューブデニム」だとMBは説明する(本人は「というのかな」と確認しながら話している)。エアチューブとは文字どおり中空、つまり中心に空間がある糸のことで、この生地は横糸にその中空糸を使っている。

一般的な中空糸は、アルファベットの「O」のような断面の中に空洞がある。ところがカイハラの生地の横糸は、O型ではなくC型の断面になっている。MBがカイハラから聞いた話では、C型の中空構造は生産工程で潰れにくく、厚みを保てるというエビデンスがあるという。O型の中空糸は生産工程の中でだんだん潰れてしまうため、軽さは出せても厚みがある程度失われ、ヴィンテージらしい重厚感を出すのは難しい。C型の中空糸を使えば、ボリューム感を維持したまま軽さを出せるという説明である。MB自身は直感的にはC型のほうが潰れそうでO型のほうが潰れにくそうに思えたが、実際は逆で、開いたC構造のため工程中に潰れることは基本的にないそうだと話している。

生地の重さは9.5オンスである。MBによれば、カイハラ側に比較データがあり、綿100%の通常のヴィンテージデニムで同じ厚さや張り感を出そうとすると、12.5オンスが必要になるという。つまり、先に話した12.5〜13オンスの分厚いヴィンテージデニムに相当する素材感を、9.5オンスで実現しているというのがMBの主張である。重厚でヴィンテージらしく、張りも厚みもあるのに、軽く柔らかく、上下で着ても楽だという。

MBはこれを、ユニクロなどが手がける裏がスウェットになった柔らかいデニムとは違うと強調する。そうした生地は柔らかく着心地が良いとされるが、風合いはどうしても損なわれ、少しチープになるとMBは見ている。今回の生地はスウェット生地ではなく、あくまでデニムであり、9.5オンスの中空糸デニムで12.5オンス級の重量感、張り感、厚さを実現している点がカイハラの技術だと説明した。

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縦糸、形態安定性、染色

横糸だけでなく、縦糸にも特徴があるとMBは話す。縦糸には、自然に変化するムラのあるリング糸を使っており、ヴィンテージデニム特有の自然な奥行きが生まれている。横糸と縦糸の両方に特徴のある糸を使うことで、見た目は重厚なヴィンテージ風でありながら、着心地が良い生地になっているという。

さらにMBは、中空構造の横糸によって速乾性も備えていると説明する。ノンストレッチだが、シルエットの保持力は綿100%と比べて圧倒的に高いという。綿100%のデニムは馴染んでくると言えば聞こえはいいが、どうしても型崩れが起こりやすい。それが良さになる場合もあるとMBは認めつつ、今回のデニムは中空構造のポリエステル糸が入っているため、型崩れをある程度抑えられるという。

染色もカイハラ独自の技術で、濃い色と薄い色のコントラストを鮮やかに再現する独自の染色法を使っているとMBは述べた。

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重ね着ができる上下デニム

この生地によって、MBが特に可能性を感じたのが重ね着である。9.5オンスなので、実際の着心地はデニムシャツに近い軽さがある。一方で見た目は重厚で、生地にもしっかり厚みがあるため、着膨れしにくいという。

MBが実演で見せたのは、デニムジャケットの上にクルーネックのカーディガンを重ねる着こなしである。このカーディガンはミラノリブで、おそらく来月発売する予定だという。ほかにも、デニムの上からニットやジャケットを羽織るスタイリングがしやすいと説明した。

MBによれば、デニムジャケットを内側に着る着こなしは、古着の世界やフレンチカジュアルでよく見られる。しかし実際にやってみると、デニムの厚さ、硬さ、重さのせいで、上に着るものとの兼ね合いで着膨れしやすく、組み合わせが難しい。エアチューブデニムは着心地が軽く、膨らみも馴染むため、デニムジャケットの上にニットやジャケットを重ねられるという。MBはこれによって、デニムジャケットやデニムパンツの可能性が広がったと語った。

MBは、上下デニムをやりたいと思いながらも、結局着なくなる、上に重ねられない、作るのが難しいと感じていたこと、また我慢してヴィンテージデニムを着なければならないと思っていたことを振り返る。そこにカイハラのデニムが役立ったと述べ、他のブランドが手をつけていない新しいことに挑戦するカイハラらしさが、まさに今回の生地に表れていると評価した。リジッド版も、見た目は着心地が悪そうなのに、実際は軽くて着心地が良いという。

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ディテールの設計:生地を生かし、男臭さを残す

MBによれば、生地の良さを損なわないよう、今回は余計なことをあまりしていない。

パンツは、上下で合わせたときにさまになるよう、スラックスらしいシルエットにし、ポケットなどにもスラックスのディテールを取り入れた。ただしバックポケットなどはデニムそのままにしている。そこまでスラックス寄りにすると、アメカジらしい男臭さがなくなるため、ディテールは慎重に組んだという。オレンジステッチもある程度太い番手の糸を使い、男臭さを出している。

ジャケットは、トラッカージャケットそのままの作りだとMBは説明する。歴史的なトラッカージャケットのディテールは基本的にいじらず、調整用のシンチバックや糸の太さなども、ほぼそのまま再現している。シルエットはオーバーサイズではなく、スタンダードを基本にしながら、今のトレンドを取り入れて肩幅などをわずかにゆったりさせた、比較的標準的なボックスシルエットである。MBはこれを、ベーシックだがシルエットの見栄えが違い、ヴィンテージらしいリアルな雰囲気がありながら「おじさんたちにも優しい」服に仕上げたと表現した。

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価格について:「売れなくても悔いはない」

MBは今回の価格について、かなりサービスしていると話す。特にヴィンテージウォッシュ版は、ここまで染色や加工にこだわって5万円を切るのは、今の物価や工場の工賃を考えると割とありえないというのがMBの見方である。リジッド版は加工していないぶん安いのは当然だが、素材単価や作業内容からするとかなり安いとMBは述べる。デニムジャケットは縫い合わせるパーツが多く、工程も複雑で、縫う場所を見れば分かるとおり手間がかかるという。

一方でMBは、今回のデニムは売れなくてもまったく悔いはないと言い切る。自分が欲しかったから作ったのであり、伝わらなくてもいいという。最近はそうした自分の欲しいものに偏りすぎている気もするとも認めている。先週のセットアップスーツも最高の出来だと思っているが、価格が高くなりすぎて多くの人に届かないかもしれないと考えつつ、それでも発売に踏み切ったという。それに比べて今回は価格がかなりこなれているため、手が届きやすいのではないかとMBは話した。自身もデニムはこの上下をずっと着ることになると思うと語っている。

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リジッドか、ヴィンテージウォッシュか

MBが最大の悩みどころとして挙げたのは、リジッドとヴィンテージウォッシュのどちらを選ぶかである。MBは、きれいな印象のリジッドを好む人のほうが多いのではないかと予想する。エアチューブデニムでもしっかり色落ちするため、リジッドから育てていくこともできる。その楽しさがリジッドの魅力だという。

一方、ヴィンテージウォッシュ版は、職人がプロの加工によって風合いをしっかり出したもので、MB自身はこちらをかなり気に入っている。黒縁の眼鏡などを合わせるとかっこいいとも話した。どちらを選ぶかは難問であり、視聴者にもぜひ悩んでほしいというのがMBの言葉である。

最後にMBは、この生地はカイハラでもまだ出たばかりだと説明した。MBたちが初めて紹介されたのは昨年の後半で、そのとき確保した生地だという。そのため、まだ商品化しているブランドは多くないだろうとMBは見ている。手元に届けば、風合いがこれほどきれいなのになぜこんなに軽いのかと驚くはずで、デニム好きほど驚くだろうとMBは語り、動画を締めくくった。