スーパー再編で増える「飛び地」の買収 明治大・白鳥和生教授が読む各社の狙い

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概要

食品スーパー業界でM&Aによる再編が相次いでいる。物価高と人口減少のなか、生き残るスーパーの条件は何か。日本経済新聞で流通・小売業界を長く取材し、現在は明治大学ビジネススクール教授の白鳥和生氏が、最近の買収事例を読み解いた。白鳥氏が注目するのは、これまでのチェーンストアの定石から外れた、商圏をまたぐ「飛び地」の統合である。

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再編を促す「規模を持たないリスク」

番組はまず直近の動きを紹介した。先月、ライフコーポレーションがアルビスの買収を発表した。4月には、ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が、オリンピックグループの買収を発表している。

買収が相次ぐ理由について、白鳥氏は国内市場の縮小とコスト上昇を挙げる。日本は2008年をピークに人口減少に入り、国内マーケットは縮んでいる。一方で、人件費、物流費、店舗の建設費は上がっている。単独ではこうした投資を賄えない。白鳥氏は、規模を持たないリスクを多くのスーパー経営者が感じていることが再編の背景だとみる。

規模を大きくする意味として、白鳥氏は物流をまとめて運ぶことと、デジタル投資の共通化を挙げた。消費者の多くがスーパーのアプリを使っているが、各社が単独でアプリを開発するのは難しい。一緒になれば共同で開発できる、という説明である。

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ライフ×アルビス:物流拠点の外へ出る理由

ライフコーポレーションは首都圏と近畿圏を中心に300店舗余りを展開している。これまでは比較的小規模な食品関連企業の買収にとどまっていたが、今回初めてスーパーそのものを買収する。

白鳥氏によると、ライフの岩崎社長は数年前までM&Aにあまり積極的ではなかった。しかし去年ごろから積極的な発言が増え、社内にM&Aの推進組織も設けたという。

買収先のアルビスは北陸を地盤とするスーパーで、ライフの既存商圏とは離れている。白鳥氏は、スーパー業界では物流拠点を中心に周りに店舗を配置するのが成功の定石であり、飛び地への出店はこれまであまり見られなかったと指摘する。

それでも今回の買収に踏み切った狙いとして、白鳥氏は商品力の相互補完を挙げる。北陸の新鮮な野菜や魚を首都圏に運べる。逆に、ライフが力を入れるオーガニック・ナチュラル系ブランド「ビオラル」は女性に人気があり、これを全国に広げられる。店舗が重ならないので、相乗効果が見込めるという見立てである。

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ブルーゾーンHD:ヤオコーが小型店のノウハウを求める

ヤオコーなどを傘下に持つブルーゾーンホールディングスも、首都圏と愛知県の地域スーパーを買収した。

白鳥氏はヤオコーを、埼玉県川越市発祥で惣菜に強く、支持を広げてきたスーパーだと紹介する。ただしヤオコーは郊外で売り場面積がおおむね800坪クラスの大型店を展開しており、200〜300坪程度の小さな店舗で都市部のマーケットに出たいという課題を抱えている。

そこで、小型スーパーを持つ文化堂や、愛知県や浜松地域で300坪クラスの店舗で30億円を売る繁盛店を展開するデライトホールディングスを傘下に入れた。白鳥氏は、小型店のノウハウを手に入れることに効果を期待しているのではないかとみている。

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トライアル×西友:「時間をお金で買った」

福岡を地盤とするトライアルホールディングスは、首都圏の西友を買収した。トライアルはデジタル技術を活用した独自の経営で知られる。

白鳥氏はこの買収を「なかなか高い買い物」だったとしつつ、首都圏で1店舗ずつ出店していくより、時間をお金で買ったものだと評価する。西友が持つ駅前の立地や長年の顧客層を一気に手に入れ、九州から首都圏へ進出できたことにメリットがあるという。

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飛び地を支える「裏方」としての総合食品卸

商圏をまたぐ買収にはコストやリスクが伴うのではないか、という問いに対し、白鳥氏は意外に指摘されない要素として総合食品卸の存在を挙げた。

白鳥氏が示した規模は、三菱食品が約2兆円、国分グループ本社が約2兆円、日本アクセスが約2兆2000億円である。物流網や商品調達力の大きな「裏方」がいるため、飛び地でも物流や商品調達ができる。白鳥氏はこれが飛び地統合の後押しになっていると説明する。

白鳥氏によれば、本来チェーンストアの基本法則は、物流拠点を軸にインクが染み渡るように出店していくことだ。それによって物流距離が短くなり、地元の仕入れが機能してきた。今回の動きはその意味でチャレンジではあるが、強い企業同士が統合する形の飛び地出店は非常に注目されるという。

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屋号と地元の品ぞろえを残す「連邦型」の統合

キャスターからは懸念も示された。地域密着のスーパーが買収後に同じような店になってしまえば、地元の店がなくなり、看板が変わるのは寂しい。品ぞろえが地元向けから東京や大阪向けに変わってしまえば困る、というものだ。

これに対し白鳥氏は、最近の再編では屋号を残し、売り場もあまり変えないケースが多いと説明する。ナショナルブランドと呼ばれる一般のメーカー品は一緒に仕入れる。一方で、その地域で食べられている魚や野菜については地元の仕入れを守る。白鳥氏はこうしたバランスを取る統合を、一律にそろえる形ではない「連邦型」と表現した。地域のニーズを外さないための統合の仕方だという見方である。

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中小スーパーの生き残りは「地域シェア」にある

大手同士の再編が進めば、大手ばかりが生き残り、小さな地域スーパーは厳しくなるのではないか。この問いに白鳥氏は、そうした面はあると認めたうえで、地域でのシェアという視点を示した。

例として挙げたのが岩手県である。白鳥氏によると、岩手県に限ればイオングループはスーパーのトップシェアではない。北海道に本社を置くアークス傘下のベルジョイスが約3割のシェアを持っている。

3割のシェアを持つ地域トップの企業には、メーカーも卸もイオングループより良い条件を出し、一緒に取り組みたいと考えるかもしれない、と白鳥氏は説明する。地元で人口が減るなかで地域のシェアまで落とせば二重に苦しくなるが、地域のシェアを守れば存在感を発揮できる。これが白鳥氏の見方である。

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残された論点:食料品減税は追い風か

番組の終盤では、政府が来年4月から2年間の食料品の消費税減税を計画していることに触れ、これがスーパーにとって必ずしも追い風ではないとの見方が示された。ただし、その理由はこの後の放送で扱われるとされ、今回の映像では語られていない。