太ももの筋肉と腸内細菌から見る健康寿命:川上泰雄氏と佐治直樹氏の解説
テレ東BIZ ダイジェストBSテレ東「いまからサイエンス」の健康をテーマにした2回分をまとめた動画である。前半では早稲田大学の川上泰雄教授が、シニア世代が自分の足で歩き続けるための運動習慣を解説する。後半では国立長寿医療研究センターもの忘れセンターの佐治直樹氏が、腸内細菌と脳の関係(腸脳相関)を説明する。聞き手はどちらも加藤浩次である。
「下半身を鍛えればいい」は正しいか
冒頭で加藤は、自分なりの運動理論として「とにかく下半身さえやっておけばいい」と語る。毎朝ベランダでスクワットをしているという(タバコを吸いながら、と付け加えてスタジオの笑いを誘った)。ジムでは見栄えのする上半身を鍛える人が多く、下半身はおろそかにされがちだというのが加藤の印象である。
川上氏はこの考えを「正しい」と認め、常々伝えたいメッセージだと応じた。理由として挙げたのは、人間が二足歩行の動物だという点である。立つのも移動するのも二本の足で行うので、動くことは結局、下半身を使うことが中心になる。多くのスポーツでも最終的に地面と接しているのは足であり、下半身をどうコントロールするかは人間にとって重要だと川上氏は説明した。
シニア世代は「下手に、しんどく歩け」
川上氏が今回のポイントとして挙げたのは、「いかにあまり上手じゃなく歩くか」である。人間はもともと歩くのが上手で、上手になりすぎた結果、普通に歩くだけではあまりエネルギーも筋肉も使わない。脳が楽に歩くためのプログラムを持っているから長距離を歩けるのだが、そのぶん筋肉への刺激にはなりにくい。
筋肉は刺激がないとだんだん小さくなり、いつしか歩けなくなる時が来る。そうならないために、普段の生活の中で少しずつ刺激を入れる必要がある。それが「しんどく歩く」、つまり「しんどいなと思いながら歩く」ことだと川上氏は言う。
具体例として最初に挙がったのは、駅で階段とエスカレーターが並んでいたら階段を選ぶことである。平地を歩くときも、とことこ歩くのではなく、大股で歩く、早足で歩く、蹴るようにして歩くといった工夫でしんどさを少し増やす。
スタジオで川上氏が実演した大股歩きのポイントは二つある。一つは後ろ足で地面をしっかり蹴り出すこと。足の指を使いながら最後まで蹴り出す感覚である。もう一つは、足が地面につくときに「ドーン」と強めに踏み、刺激を感じること。この着地では太ももの前側がよく使われるという。加藤が骨にも刺激を与えたほうがよいと聞くと述べると、川上氏も同意した。
ただし30分ずっと続けるのはしんどいので、「この10歩はやってみよう」という程度に時々取り入れ、それを積み重ねればよいと川上氏は話す。
日常動作に運動を組み込む
加藤が、歯磨きのときに腰を落として空気椅子のような姿勢をとる、つま先立ちで磨く、といった工夫でもよいのかと尋ねると、川上氏は「いいですね」と答えた。そのうえで、トイレで立ち上がる動作を2回繰り返すという例を挙げた。
加藤は、1日2回なら1年で730回、2年ならさらに倍になると計算し、侮れないと感心した。川上氏は、高齢者はこれが何十年も積み重なるので、若者よりもインパクトが大きいと述べた。
歩く速さと寿命、ふくらはぎの役割
川上氏によると、一生懸命急いで歩くのではなく、普通に歩いていて自然に速く歩けてしまう人は寿命が長いことが分かっている。逆に、歩く速度がなんとなく遅くなっている人は寿命が短いというデータが出ているという。歩く速度が速い人は筋肉量が多いと考えてよく、特に太ももの筋肉量と関係していると川上氏は説明した。
血液循環についても、筋肉の収縮によって行われるので、結果的に全身の代謝も上がるという。「ふくらはぎは第二の心臓」という俗説が本当かと加藤が尋ねると、川上氏は肯定した。先ほどの蹴り出しをしっかり行うことは、ふくらはぎのトレーニングになり、ふくらはぎのポンプを使って血液を体に巡らせる効果もあると述べた。
日常生活でほとんど使われない大腿四頭筋
川上氏の研究室では、起きてから寝るまでの1日にどの筋肉を使っているかを筋電図で測定した。その結果、太ももの前側の筋肉、特に大腿四頭筋は1日の生活の中でほとんど使われていなかった。大腿四頭筋は膝を伸ばす筋肉で、人が立ち上がるときに使う。
続いて示されたのは、研究室で何千人も測定してきたデータのグラフである。横軸は年齢、縦軸は太もも前側の筋肉量(グラム)を体重(kg)で割った指標だ。20代は筋肉が多いものの個人差も大きい。そこから徐々に減っていき、60歳ぐらいから減少が加速し、そのペースはおよそ2.5倍になる。川上氏は、普通に生活しているとこれが通常のパターンだと述べた。
グラフには80代・90代のデータもあり、デイサービスを利用する高齢者と、特別養護老人ホームで寝たきりの人が色分けされていた。寝たきりの人の多くは点線より下にあり、太ももの筋肉が体重1kgあたり10g程度になると、もはや立てない状態になるという。
川上氏は、この筋肉は加齢でじわじわ減り、60歳前後から急に減少が加速するのが特徴だとまとめた。立って歩くという最も重要な動作の鍵になる筋肉なので、保っておく必要があるという。番組のナレーションでは、川上氏によれば太もも前側の筋肉が多い人と少ない人とでは、寿命に最終的に20年近い差が出るとも紹介された。
家でやるならスクワット
この筋肉を維持するために、川上氏は速く歩く、階段を上るといった行動を少しずつ積み重ねることを勧めた。家の中でやるならスクワットが一番よいのかという加藤の問いには、座っている時間が多い生活では、そこから立ち上がる動作が最もよく行う運動であり、自分の体重を使うスクワットは一つのポイントになると答えた。ちょっとした体操に仕立てれば家の中で簡単にできるとも述べている。番組では、川上氏が西東京から依頼を受けて考案した運動プログラムのうち、太ももの前側に効く体操が紹介される流れとなっていた(動画内では体操の内容に入る前に後半へ切り替わる)。
後半:腸内細菌と認知機能
後半のゲストは佐治直樹氏である。国立長寿医療研究センターは病院と研究施設が連携し、高齢者を中心に治療と研究を行う施設で、佐治氏はそこで認知症の専門医として働きながら腸内細菌の研究もしている。番組の紹介によると、腸内細菌と認知症の関係を日本で初めて明らかにした研究者である。
冒頭の予告部分で佐治氏は、腸内細菌と認知機能にはしっかりした関係があり、細菌を制御することで認知機能を良い方向に導くことも可能になってきたのではないかと述べている。認知症にならないための食生活については、魚、キノコ、大豆、コーヒーが統計学的に有意に多かったという話が紹介され、一般的な日本食にコーヒーを加えることがポイントだとナレーションは伝えた。
腸内細菌はどこに、どれだけいるのか
加藤は、皮膚の常在菌のように体の表面は菌だらけだが、体内では腸にしか菌はいないのかと尋ねた。佐治氏は、口の中の歯周病菌などさまざまな臓器に菌はいるが、総量や影響を考えると腸内細菌が大きなウェイトを占めると答えた。腸内の菌の数については、学術的には約1000種類の細菌が1000兆ほどいるのではないか、と見積もりとして述べた。
菌が人間にとって必要な理由として、佐治氏は、自分の体だけでは代謝できないものを細菌が分解し、それを栄養として利用している面があると説明した。民族や地域ごとの腸内環境は、日本でも海外でも研究されている最近のトピックだという。
アフリカで2年間現地の食事をすれば現地の人と同じような腸内細菌になるのかという加藤の質問には、佐治氏は「それはちょっと分かりません」と答えた。そのうえで九州の研究者による調査を紹介した。ナレーションによると、九州大学とアジア各国の研究者が2009年から、日本を含む5つの国と地域で7〜11歳の児童約300人の腸内細菌を調べた。その結果、日本・中国・台湾など東アジアではビフィズス菌とバクテロイデスが多く、タイやインドネシアなど東南アジアではプレボテラが多いという違いが見られた。佐治氏は、東アジア系の腸内細菌はある程度似ているのだろうと述べた。
次世代シーケンサーと検査キット
腸内細菌研究が2000年代に活発化したきっかけは、次世代シーケンサーの登場である。佐治氏によると、以前の細菌研究は菌を培養する方法が中心で、シャーレでうまく育たない菌は調べられないという限界があった。次世代シーケンサーは細菌のDNAを調べるため死んだ菌も検出でき、解析が飛躍的にレベルアップした画期的な技術だと佐治氏は評価する。その結果、知られる菌の種類も増えていった。
この検査は高価だが、腸内細菌を知りたい人は多く、佐治氏の病院で研究した際も希望者が多かったという。現在は薬局などで腸内細菌検査キットが販売されており、便を採取して送ると菌のレポートが返ってくるサービスもある。番組では、菌の種類やバランス、改善のアドバイスまで受け取れるキットが紹介された。
脳から腸へ:ストレスとお腹の不調
本題の腸脳相関について、佐治氏は「脳腸相関」と「腸脳相関」の両方の言い方があり、自分は腸から脳への方向に関心があるので「腸脳相関」と呼ぶことが多いと説明した。情報のやりとりは双方向で、同じ経路ではないが、脳から腸へ、腸から脳へ、それぞれ影響しているという。
脳から腸への例は、ストレスを感じるとお腹が痛くなったりトイレに行きたくなったりする現象である。佐治氏は、視床下部から下垂体を経るホルモンのシステムなど、その神経の仕組みが論文で解明されつつあると述べた。ナレーションでは、ストレスホルモンが分泌されて自律神経の働きも変わり、それが腸を刺激して下痢や便秘を起こすことがあると補足された。
腸から脳へ:迷走神経とパーキンソン病
腸から脳への経路の一つとして佐治氏が挙げたのは、迷走神経を伝わって神経の病気に関わる物質が上がっていくという学説である。例として紹介されたのがパーキンソン病だ。パーキンソン病では脳の黒質の神経細胞が死んでドーパミンが出なくなり、動作が鈍くなる。その原因とされるアルファシヌクレインという物質は、元をたどると腸から上がってきているという研究があり、パーキンソン病が腸から来ているのではないかという研究が大学病院などで進められているという。
ナレーションは、パーキンソン病の原因はまだ完全には分かっていないとしたうえで、患者の多くが発症前に長年便秘だったことが判明しており、腸で生じた異常なタンパク質が迷走神経を通って黒質の神経細胞に障害を起こすという説が注目されていると伝えた。
血流に乗る代謝産物
もう一つの経路は血流である。佐治氏によると、腸内細菌が活動して出す物質(代謝産物)が血流に乗って脳に作用するシステムがある。ナレーションでは、悪玉菌が作るアンモニアやインドールといった代謝産物が血液を通じて全身や脳に運ばれて炎症を起こし、認知機能に悪影響を及ぼす可能性があると説明された。
これを聞いた加藤が、腸から菌の物質が上がっていくのはあまりいいことがないのかと言うと、佐治氏は菌の種類によると答え、良い物質も上がっていくと述べた。加藤が良い物質は何をしているのかと尋ねたところで、動画は途切れている。
今日のいまからサイエンスは。「あんまり上手じゃなく歩くか、みたいなのがポイントになる」「シニア世代はしんどく歩け」。シニア世代必見、健康寿命を延ばす運動習慣。
「60ぐらいになってくるとですね、そこから減りが加速するんです」「ガクンってなってますね」「すごいですね」。60歳から急激に衰える重要な筋肉とは。寝たきりにならない対処法もレクチャー。精密なデータで解明、運動の新常識とは。
今日は最新スポーツ科学から見えてくる私たちの体と健康を深掘ります。最新トークにワクワク。いまからサイエンス。
加藤さん、今回のテーマはこちらです。いつまでも自分の足で歩く、シニア世代必見、最新スポーツ科学で解明された正しい運動習慣ということですね。
もう僕は僕なりの理論を出してるんですよ。加藤さん流運動習慣理論。そうそう、とにかく下半身さえやっときゃいいっていう。もう僕は毎朝スクワットしてるんですよ。すごい。ベランダでタバコ吸いながら。どっちだろう、健康なんだろうか、不健康なんだろうか。でも足の筋肉を鍛えるの、いいって聞いたことありますよね。
もう俺も絶対それだっていうことは、自分の中で分かったんですよ。それが本当に正しいのか、それが全然違うのか、さらに最新なこと。これを本当に知りたいですよね。そしたら今のうち、50代、60代、70代でもいいですけれど、80代でもいいのか。そうです。でもそれをやれば自分で歩いて、ずっと行動できるっていうのはやっぱり大事ですからね。大事です。健康寿命を延ばすという意味でも、聞いていきたいなというふうに思います。体のメカニズムに迫っていきます。
今日のゲストはスポーツ科学のトップランナー、早稲田大学の川上泰雄教授。アスリートからシニア世代まで体の中を見える化し、身体能力の向上を目指す注目のサイエンティスト。
今回の見どころはこちら。川上先生の興味深いスポーツ科学の最新研究にとことん迫ります。まずは1つ目。普段からできる歩き方で寿命が変わる。
先生、本日はよろしくお願いします。よろしくお願いします。よろしくお願いします。今、冒頭で言ってたんですけれど、下半身をとにかくやるべきだっていうのはどうですか。はい、正しいですね。やったぜ。常々メッセージとして伝えたいと思ってるところ。
本当ですか。これ、だから大体ジムとか見てると、みんな上半身やりますよね、先生。そうなんですよね。だから上半身で大胸筋つけたりとか、上腕二頭筋つけて、やっぱり鏡見てこうやりたいから、ついてんぞ、みたいな。分かります。イメージめちゃくちゃありますよ。でも下半身おろそかにしてる人って結構いますよね。そうなんですよね。結構鍛えて上半身つくと見栄えがいいから、つい自分でやりたくなるんですよね。
でもやっぱり下半身が大事っていうのは、先生、ちょっとこれをね、なんとなく僕、勝手に思ってて、それやってたんですけど、メカニズム的にはどういうことになりますか。
そうですね。二足歩行で、そもそも立ってるのも二足じゃないですか。移動も二足で歩きますから、結局動くってことは使うことが中心になるんですよね。なので、やっぱりどうしても大切になってきますし、大体多くのスポーツは飛んだり跳ねたりしますけど、最終的に地面と接してるのは多くの場合、足なので。この下肢で、それをどうコントロールするかっていうのは、やっぱり人間にとって重要なところになるかと思います。
やっぱりそういうことか。シニア世代の方もこの番組を見ていただいてると思うんですけれど、やっぱりシニア世代の方も歩くとか、そういうことをやるべきだってことですか。そうですね。今日のテーマはその辺のところになってきますけど、いかにあんまり上手じゃなく歩くか、みたいなのがポイントになるかと思います。何ですか、上手じゃ。
人間って歩くの上手なんですよ。元々。元々上手になってくるんですけど、上手になりすぎちゃって、あんまりエネルギー使わないんですね、筋肉を、歩くだけだと。なので、むしろ逆に下手くそに歩いちゃうみたいなところが、特にお年寄りに必要なテクニックになってくると思います。
先生、何を言ってんですかって話だけど、上手に歩かない方がシニア世代はいいってことですか。単純に言っちゃうと、そうなると思いますね。マジ、俺もうそこ知りたいんだけど。しんどく歩くっていうんですかね。しんどいなと思いながら歩くような歩き方がいいかなと思います。
そうなると筋肉量が保たれる、もしくは筋肉がついて、後々歩行がちょっと不自由になったりすることはないということですか。加藤さんのおっしゃる、その筋肉をつけるっていう時に刺激を与えないとダメじゃないですか。普通に歩くだけだとなかなか刺激にならないんですよね。人間うまくできて。なので筋肉がまだあるうちはいいんですけど、だんだん刺激がないと筋肉が小さくなって、いつしか歩けなくなっちゃうっていう時が来るんですよね。
そのために、普段の生活の中で刺激をちょっとずつ、ちょっとずつ入れるみたいな生活が必要だと思います。それが、しんどく歩くみたいなところ。シニア世代はしんどく歩け。先生、教えてもらっていいですか。早速ですけど、具体的にどういうことをしたらいいんですかね。
例えば電車に乗るじゃないですか。その時、目の前に階段とエスカレーターがあると、どっち使いますか。エスカレーター使います。ちょっと荷物多かったりとか、暑いなと。若いんだからさ。そこで逃げてます。そっち。そこでちょっと階段を使うのが、例えばしんどくするのの1つだと思いますね。階段を歩けということ。階段を登る、降りるみたいなところが、1つしんどさのポイントになりますね。
あと、普段、平地歩行の時も、普通にとことこ歩いてるとあまり筋肉って使わないんですよね。だからちょっと大股で歩いてみるとか、早足で歩いてみるとか、ちょっと蹴るようにして歩いてみるとか、いろんな工夫でそのしんどさをちょっと増やして。
大股で歩くっていうのはどのぐらいですか。どんな感じ。先生、ちょっと前でやってもらっていいですか。確かに。どういう感じですか。ここで川上先生が、普段からできるしんどく歩くレクチャー。
普通ってこういう感じで歩くじゃないですか。こういう歩きってあまり筋肉使わないんですよ。特に太ももの部分が。脳が筋肉を使わないように楽に歩こうとしてるっていうことですか。そうですね。そういうプログラムができちゃってる。だから人間は長距離歩けるんですけど。それをあえて、こう。
ちょっと早めだ。早いな。早いですね。若いですね、先生、歩き方が。あえてやってんのか。腕も振ってますかね。手を振ると足もついてくるので。あとは、蹴るっていうのは。蹴るのは最後に足をですね。蹴る時にしっかり踏み出すっていうんですか、これをやっていくみたいな。指を使う感じですか。そうですね。足の指を使いながら最後まで蹴り出すみたいな。
あと、早く歩く時、ドンって足が地面につきますけど、ドーンとちょっと感じながら。こう、ドーン、ドーンみたいな。ここは太ももの前側をよく使う。これ、なんか刺激与えた方がいいって言いますね。骨にもね。そうですね。このドーンと、最後のバッていうこの蹴り出しの両方をうまく工夫すると、いい大股歩きになると思います。
もうじゃあ、普段、通勤とかお買い物とかでもそれをやればいいね。そうですね。もうあいつ何焦ってんだと思われるかもしれないけど。でもずっと、例えば30分やるとしんどいじゃないですか。時々入れるみたいな感じですかね。この10歩はやってみよう。そんなもんでいいんですか。はい。それを積み重ねていく。
大股で歩く時のポイントは、後ろの足をしっかりと蹴る。足が地面につく時には強めに踏んで刺激を感じることが大切なんだそうです。他にも日常生活の中でできる運動習慣はたくさんあると言います。
歯磨きしてる時にちょっと姿勢を低くして、空気椅子みたいにして、こうして歯磨きするとか、例えばつま先立ちで歯磨きするとか、そういうことでもいいんですか。いいですね。例えばトイレで用を足したら、こう立つじゃないですか。これを例えば2回やるとか。
でも面白い。考えたら1日に1回、2回行くとしたら、365×2だから730ってことですよ。すごい、いっぱい。倍。それが2年になったらさらに倍。そうですね。これは侮れないですね。侮れない。全然侮れない。お年寄りはそれがもう何十年と積み重なってきますから、若者よりもインパクト大きいですよね。
これって何か寿命とかにも影響したりする。そうなんです。実は、一生懸命早く歩くんじゃなくて、普通に歩いてる状態で、思わず普通に早めに歩けちゃってる人っていう方は、寿命が長いことが分かってます。歩く速度が速い人は寿命が長い。はい。逆に歩きがなんとなく遅くなっちゃってる方は、寿命が短いっていうデータが出てます。
歩く速度が速い方っていうのは筋肉量が多いって考えていいですか。はい。加藤さんのおっしゃる下肢の、特に太ももの筋肉の量と関係してることが分かってるんですね。それが強いと自然に速く歩けるし、歩けちゃうということですかね。はい。
プラスアルファ、血の巡りっていうのはありますか。はい。そういう血液循環も筋肉の収縮で行われますから、結果的には全身の代謝も上がりますし、いい方に行くと思いますね。だからよく言われるのは、ふくらはぎが第2の心臓みたいなことを言うじゃないですか。ふくらはぎがポンプの役目をして、心臓以外で全身に血を巡らしてるんだって。これは本当ですか。
はい。なので先ほどの、例えば蹴り出しをしっかりやるみたいなのは、そのポンプをうまく回す1つの工夫にもなります。ふくらはぎのトレーニングになってるから。にもなりますし、ここのポンプを使ってどんどん血液を体に巡らすみたいなところの効果もあると思います。
続いてはこちら。大切なのは意外な筋肉。鍛えるためには。
前に調べたんですけど、1日起きてから寝るまでどういった筋肉を使うかっていうのを、電極で測って調べたんです。そうすると、1日の生活の中で、この太ももの、特に前側の筋肉はほとんど使われないんです。もものここですか。はい。このももの前側の大腿四頭筋という筋肉。ももの筋肉ですけど、特に前側の、これをやる。立ち上がれる筋肉は、この大腿四頭筋があるから。膝を伸ばす筋肉。ここを使って立ち上がってるってことですね。そうです。
実はあまり使われていないという大腿四頭筋。詳しく調べると驚きのデータが。これ何ですか。これは研究室でずっと何千人も測ってる、個々の方のデータなんですけど、この横軸は年齢です。対象者の方のね。縦軸は太ももの前側の筋肉の量をグラムで示して、その体重で割ってる指標なんですけど。
そうすると20代の方は筋肉いっぱいついてますよね。ただ個人差も多いですよね。これが徐々に徐々に減ってきて、60ぐらいになってくるとですね、そこから減りが加速するんです。ガクンってなってますね。落ちます。2.5倍ぐらいに加速しちゃうんですね。なので、普通に生活してるとこれが通常のパターンになります。
もちろん個人差はありますけど、その先に例えば80代、90代になってくると、緑とか青のプロットがありますけど、緑の方はデイサービスを利用されてるお年寄りで、青の方々は特別養護の、寝たきりの方です。そうすると点線で示してるようなところの下に来るような青の方が多いですけど、そうなってくると太ももの筋肉は体重1kgあたり10gぐらいになっちゃって、もはや立てないという状態になってきます。
なので、この太ももの前側の筋肉って、加齢でじわじわ減ってきて、でも60歳ぐらいからストンと加速してしまうみたいな特徴がある。なので、やっぱり取っておかないと、何しろ一番重要な立って歩くってことがどうしてもできなくなっちゃう、鍵になる筋肉だとは思います。
川上先生は、太ももの前側の筋肉が多い人と少ない人では、最終的に寿命に20年近くもの差が出てくると言います。
ここをキープですね。そうなんです。それに、速く歩くとか階段を登るとかっていうのをちょっとずつ積み重ねるっていうのが、ゆくゆくは大きな効果になるっていうふうに考えています。そうか。だから基本的に、何か家で運動しようとした場合、スクワットぐらいが一番いいですか。
そうですね。家の中で体重を使ってできることっていうと、やはり起居動作ですから。座ってることが多いでしょうから、そこから立ち上がるみたいなところは一番よくやる運動かと思うので、そのスクワットっていうのは1つのポイントかと思いますね。それを例えばちょっとした体操に仕立てちゃうみたいなことも、家の中で簡単にできる。
川上先生は西東京から依頼を受けて運動プログラムを考案。今回はその中で特に太ももの前の筋肉に効果がある体操を教わります。
腸内細菌と認知症に驚きの関係があることを日本で初めて明らかにした、国立長寿医療研究センターの佐治直樹先生。「腸内細菌と認知機能っていうのはしっかり関係があって、細菌を制御することで、認知機能とかを良い方向に位置づけることも可能になってきたのかなと」。
腸内細菌が脳に影響を与えるという腸脳相関。その意外なシステムとは。「細菌によって自分の脳が変わるってことですか」「そういうことになりますね」。腸の環境を整えると幸せホルモンの分泌を助け、精神の安定効果が期待できるなど、脳にいいことがたくさんあるんです。
「腸内細菌が脳をドライブするっていうのはですね」「腸内細菌が脳をドライブする。それちょっと面白いですね。僕の意思っていうのは菌なのか」。そして認知症にならないための食生活にも驚きの事実が。「魚介がいいんだな、やっぱり」「魚、キノコ、大豆類、コーヒーっていうのが、やはり統計学的には有意に多かったっていう話になると」。ポイントとなるのは一般的な日本食にプラスして、なんとコーヒーを飲むこと。
初めまして、加藤浩次です。初めまして、佐治と申します。よろしくお願いします。よろしくお願いします。頂戴します。お願いします。国立長寿医療研究センターでよろしいですか。佐治先生、よろしくお願いします。よろしくお願いします。
国立長寿医療研究センターは病院と研究施設が連携し、高齢者を中心に治療と研究の両方を行っている施設。佐治先生はここで認知症の専門医として働きながら、腸内細菌の研究も同時に行っている二刀流のサイエンティストなんです。
僕、そもそもから聞きたいんですけど、菌って表面にも常在菌みたいなのがいるじゃないですか。我々の皮膚、どんだけ洗っても、落ちるけど菌は必ずついている。顔にもついてるし、菌だらけですよね、表面。そうですね。それで生きてて、体内には菌って腸にしかいないんですか。他の臓器にいるんですか、菌っていうのは。
いろんな臓器にいます。例えば口の中の歯周病菌とかもありますし、あと皮膚の話もありましたし。ただ菌の総量とかの影響で見ると、やっぱり腸内細菌は結構大きなウェイトを占めていると。一番菌が住みやすいというか、大量に住んでるのが腸であると。はい、そうです。ということですね。
これ、腸の中に、大腸ありますけど、どのぐらいの数の菌がいるんですか。学術的には1000種類ぐらいの細菌が、1000兆ぐらいあるのかな。数で言うとそのぐらいなのか。1000種類で1000兆の菌がいると。菌ってやっぱり人間にとって大事っていうか、必要なものということですよね。
そうですね。動物もそうだと思うんですけれども、自分の体だけでは代謝できないものなどを、その細菌が分解して栄養にして使っているっていうこともありますので。日本もそうですし、海外でも民族とかそれぞれの地域の腸内細菌の環境っていうのが研究されていて、割と今トピックなところかと思います。
それは世界中で食べ物も気候も違うから、腸内にいる菌もその地域によって全然違うってことですか。はい、それはありますね。そうなると僕が例えばアフリカとかに行って、現地の食べ物を2年ぐらい食べると、その現地の人と同じような腸内細菌になってくるということ。
それはちょっと分かりませんけれども、面白い研究がありまして、九州の方の先生が東南アジアとか、海外の子供の腸内細菌を調べた時に、日本とか台湾とか、東アジアの子供は同じような菌のグループで、東南アジアはやっぱり違ってたっていう話があるんで。だから多分、地域住民である程度やはり東アジア系は似てるのかなっていうところはあるそうです。面白いですね。
九州大学とアジア各国の研究者たちが、2009年から日本を含む5つの国と地域で、7歳から11歳までの児童およそ300人の腸内細菌を調査したところ、日本に加え中国、台湾といった東アジアの地域ではビフィズス菌とバクテロイデスという種類の菌が多く、タイやインドネシアなど東南アジアの地域ではプレボテラという種類が多いなど、その特徴に大きな差が出たと言います。
実は腸内細菌の研究は2000年代に入って非常に活発に行われるようになってきました。そのきっかけとなったのが次世代シーケンサーと呼ばれる装置の開発。これにより腸内細菌のDNAが高速で解析できるようになり、世界中の研究者がこぞって腸内細菌研究に参加するようになったんです。
その機械で便を調べることができるっていうことですか。そうですね。これは次世代シーケンサーっていう機械になりますけれども、2000年頃から普及したシステムになりまして。過去、細菌の研究というと培養って、菌を生やすっていう方法だったんですね。シャーレに塗ったりするような。そうすると、うまく生えない菌とかもあったので限界があったんですけれども、この機械は細菌のDNAを調査できるので、死んだ菌でも分かりますし、解析が飛躍的にレベルアップしたという意味で、画期的な技術だと思います。
こういう技術があって、やっぱりどんどん、もっといるじゃん、もっといるじゃんって、数も増えてきたってことですね、発見のね。そうですね、おっしゃる通りです。そうしたらもう自分の腸がどんな状態なのか、結構すぐ分かるってことですかね。
これはちょっとお高い検査なので。一般的に腸内細菌を知りたいっていう方、結構いると思うんですね。私の病院で研究した時に、割と皆さん知りたいっていう方が多かったんですね。今はそういった方に、薬局とかで腸内細菌検査キットっていうものが発売されていて。あるんですね。それを使って提出すると、菌のレポートが返ってくるっていうようなサービスが今できてるんですね。
便を取って。検便みたいなもので、割と簡易的なものと使う場合もあり、研究でも両方使い分けたりとかしてると思います。へえ。
こちらが薬局やネットなどで手に入る腸内細菌の検査キットの1つ。便を採取して送付することで、腸内細菌の種類やバランスなどが分かり、さらには改善のためのアドバイスなども受け取ることができると言います。
そしてここからが本題。腸内細菌と脳の関係について伺います。今日はだから脳と腸の相関関係ですよね。相関だ、脳腸、腸脳。両方言い方がありまして、脳腸相関っていう言い方と腸脳相関っていう言葉が、両方一応ヒットします。私の場合は腸から脳に行くという方に興味を持ってるので、腸脳相関とお話をすることが多いです。
ということですか。それがお互い情報を出し合ってるんですか。それとも腸が一方的に出して脳が処理してるんですか。両方あると思います。それはデータがありまして、脳から腸に行く経路で腸の動きがコントロールされてるところもありますし、腸から脳に行く経路で脳の機能に影響するところもありますので、同じ道ではないけども、それぞれ相互に関係してるというところかと思います。
それってどんな指令を出し合ってるんですか、例えば。上から下に行く場合は、例えばストレスを感じるとお腹が痛くなったりとか、トイレに行きたくなったりとかしますね、っていうのがあります。これ、最近論文が出てまして、やはり脳と腸をつなぐ神経の仕組みが解明されてるんですね。視床下部っていうところから下垂体っていう、分泌のシステムを介して行くっていう、そういった経路が1つ。
緊張した時や不安な時にトイレに行きたくなる現象は、脳で作られるストレスホルモンや自律神経が関係していると言われています。ストレスを感じると視床下部から下垂体を経てストレスホルモンが分泌され、自律神経の働きも変化。これが血液に乗って腸を刺激し、自律神経も作用して下痢や便秘の症状を起こすことがあるんだそうです。
では逆に、腸から脳に刺激が行くパターンにはどんなものがあるんでしょうか。腸から脳に行くのは。腸から脳に行くのは、腸から迷走神経っていうものを伝わって、神経の病気に関わる物質が上がっていくっていうような学説もあります。
パーキンソン病っていう病気があるんですけれども、お年の方で手が震えたりとか、動作が鈍くなる方がいると思うんですけど、それは脳の中で黒質っていうところの神経細胞が死んでしまうと、ドーパミンっていうものが出なくて、動きが鈍くなっちゃうんですね。これはパーキンソン病ですけども、この原因はアルファシヌクレインっていう物質が神経にたまって、傷んでしまうんですけども、元をたどるとそのアルファシヌクレインは腸から上がってきてるっていうような研究もありまして。今、パーキンソン病が腸から来てるんではないかという研究が大学病院とかでなされています。
パーキンソン病は手足が震えたり動作が鈍くなる難病で、はっきりとした原因はまだ完全には分かっていません。しかし近年の研究では、パーキンソン病になった患者さんの多くが発症前に長年便秘を患っていたことが判明。腸で発生した異常なタンパク質が、腸から脳につながる迷走神経を通り、ドーパミンを産生する黒質の神経細胞に障害を起こし、ドーパミンを作れなくしてしまうという説が注目されているそうです。
さらに神経の経路以外に、他にも腸から脳への経路があると言います。血流に乗っかっていくパターンもあります。腸内細菌がいろいろ活動して出てきた物質を代謝産物と言うんですけども、これが血流に乗っていって脳の方に作用するっていうようなシステムもあります。要するに、菌が出した物質が血液に乗って脳に行ってるっていうことでよろしいですか。はい。
腸内細菌は人間が食べたものを餌として分解し、様々な代謝産物を作り出します。中でも悪玉菌が作り出すアンモニアやインドールといった代謝産物は、血液を介して全身や脳に運ばれて炎症を起こし、認知機能などに悪影響を及ぼす可能性があるんだとか。
じゃあ、腸から菌が上がっていくと、あんまりいいことないんだな、今聞いて。種類によると思います。もちろん、いい物質も上がっていって。いいことは何をしてるんですか。
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