トヨタ株を手放した理由と「見えない価値」 コモンズ投信・渋澤健会長が語る投資先を切る基準
テレ東BIZ ダイジェストテレビ東京の番組「社長、質問があります!」に、コモンズ投信の渋澤健会長がゲストとして出演した。コモンズ投信は、銀行や証券会社を通さずに投資信託を直接販売・運用する会社で、渋澤氏は渋沢栄一の子孫にあたる。質問役はワールドビジネスサテライトのキャスター豊島晋作、元トレーダーの志田憲太郎、個人投資家のちょる子、投資歴4年のタレント兒玉遥の4人である。第1回では、厳選した30社に投資するコモンズ投信が、なぜかつての投資先だったトヨタ株を手放したのか、そして投資先を「切る」判断を何を基準に下すのかが話題になった。渋澤氏の立場は一貫している。財務の数字よりも、人や社内の体制といった数字に表れにくい価値を重視するというものだ。
かつてトヨタに投資し、全売却していた
豊島が「トヨタはどう見ているのか」と尋ねると、渋澤氏は話してよいものか少しためらったうえで、実はトヨタは投資先に入っていたと明かした。現在は保有しておらず、全株を売却したという。
売却した年は覚えていないとしつつ、渋澤氏はきっかけとしてアメリカでのレクサスをめぐる問題を挙げた。その際、現在の会長が会見に出て、非常に苦しんでいる場面があった。渋澤氏はそれを見て、一人の人間としての見方にとどまらず、「そういう場で泣いてはいけない」というやや「ドライな見方」もしたと振り返る。
渋澤氏が引っかかったのは、会見から読み取れた社内の状況だった。この会社には技術もあり、経営の力もあるかもしれない。しかし、社内の対話力に問題があるのではないか。現場にそういう実態があることをトップが知らなかった、という形になっていたことから、それはどうかと考え、当時手放したという。
つまり、売却の理由は財務や売上ではなかった。当時は株価も多少下がっていたと渋澤氏は記憶しているが、判断の軸はあくまで社内体制にあった。社内体制の問題は、いずれ数字にも表れてくるというのが渋澤氏の考えである。
投資先を「切る」決断は「結婚生活」に近い
続いて、トヨタのような企業でも大胆に手放すことがあるなら、投資先を切ると決断するのはどんな瞬間なのか、という質問が出た。
渋澤氏はヘッジファンドとの違いから説明した。ヘッジファンドであれば、ある時点で即座に「スパッとアウト」という判断になるだろう。しかし長期投資では、そうした割り切った判断はほとんどないという。良いと思って長く付き合おうとしている会社について、駄目だと結論を出すのは簡単ではないからだ。渋澤氏はこれを結婚生活になぞらえた。
それでも最終的に手放すことはある。渋澤氏が挙げたのは、不正などの問題が起きたときに、するべきことにきちんと向き合ってくれない状態が続くケースだ。そうした対応が続けば、ある意味で信頼関係がそこで下がる。数字として表れにくい部分だが、手放す判断はそこから出てくるという。
30社の入れ替えは、ほぼ「見えない価値」で決まる
出演者の一人は「見えない価値」という言葉を「おしゃれな言葉」と受け止めたうえで、30社のポートフォリオは数字よりも見えない価値を重視して入れ替えているのかと尋ねた。
渋澤氏の答えは「両方」である。ただし、見える価値、つまり財務的な価値が悪化したという理由だけで入れ替えることは「ほぼほぼない」と述べた。
では見えない価値とは何か。社長が交代することはどれほど大きな要因なのか、30社のうち社長という要因は何割くらいを占めるのか、という問いに、渋澤氏は「全てです」と即答した。社長を重視していなければ投資判断はできない、という趣旨である。社長が交代するときは大きな局面であり、特に良い会社には当然良い社長がいるという。
渋澤氏は、企業の最も重要な見えない価値を一言で言えば「人」だと語った。ここでいう人は、社長やIR担当者に限らない。工場を訪れれば現場で働く人たちの様子が見える。そうした観察を繰り返すことで、この会社とは長年付き合えるのか、それとも違うのかを判断していくという。
現在のトヨタをどう評価するか
話題は現在のトヨタに戻った。売上や利益はかなりしっかりしている一方、株価はあまり評価されていないようだ、という指摘に対し、渋澤氏は、日本を代表する会社であることは間違いないとしたうえで、まだフルポテンシャルを見せていないような気もすると答えた。
出演者からは、2024年3月期に最高益を出したときと今期を比べると、半導体不足や関税などさまざまな問題があり、現在も中東情勢を抱えているにもかかわらず、生産・販売の実績が変わっていない点が一番強いと思う、という見方が出た。
渋澤氏はこれを「すごくいいポイント」と評価し、「レジリエント」という言葉で説明した。日本語では「強靭化」とも言われるが、要するに風が吹いたときに揺れることはあっても、折れずに元に戻れる力のことだという。周囲が騒いでいるときにも、問題はあってもやるべきことをきちんとやっているという意味で、トヨタのレジリエンスは「ピカイチ」だと述べた。
そのうえで渋澤氏は、長年付き合ってもよい会社だと判断できれば、トヨタを今後買ってもいいかもしれないと話した。ただし、自分は投資委員会に入っていないのでわからない、と留保も付けている。さらに、自動車であるため景気敏感株の面がある点にも触れた。
予告された論点:成績が振るわない期間をどう考えるか
番組冒頭の予告では、成績が悪い時期についてのやり取りも示されていた。投資家に「勝てなかった」と言われたらどうするのか、という趣旨の問いに対し、渋澤氏は3年間であれば全く気にしていないと答え、そうした期間を問題にする人には他のファンドに行った方がよいのではないか、という考えを示している。短期の成績に一喜一憂しないという姿勢は、ここでも投資先との長期の付き合いを重んじる考え方と重なる。
アクティブファンドを選ぶ理由と投資哲学への問い
終盤、志田は個人的な考えとして、アクティブ投信にお金を預けるメリットは基本的に「可処分時間の確保」と「心の安定化」だと述べた。そのうえで、数あるアクティブファンドの中からコモンズ投信を選ぶなら、投資哲学が大事になると指摘し、渋澤氏が最も大切にしている投資哲学は何かと問いかけた。この回はその問いで終わり、答えは次回に持ち越された。
トヨタとかどう見てるんですか?
トヨタは実はですね、入ってたんですよ。
じゃあ全売却されたと。
そういう場で泣いちゃだめだよね、みたいな。そういう意味でドライな見方もあって、その当時、手放しましたが。
それは別に売上とかの理由じゃなくて。
投資先としても不適格なんて、決断する瞬間ってどういう時なんですか?
結婚みたいなもんじゃないですか。
きちんとそこに向き合ってくれなかったとか。
投資家の皆さんも、勝てなかったよって言ったら、ちょっと移っちゃうかもしれない。
3年間だったら全く気にしてないです。他のファンドに行った方がいいんじゃないですかというふうに思います。
社長、質問があります。
ゲストは渋沢栄一の玄孫、渋澤健。銀行や証券会社を通さずに投資信託を直接販売・運用するコモンズ投信の会長を務める。
いらっしゃる前から盛り上がってました。どうぞお座りください。
よろしくお願いします。
お願いします。
ちょっと不思議な雰囲気なんですけれども。
なんか面接受けてる感じがします。
なるべくリラックスしていければなと思ってますけど。
渋澤会長に質問をぶつけるのは、ワールドビジネスサテライトキャスターの豊島晋作、元トレーダーの志田憲太郎、個人投資家のちょる子、投資歴4年のタレント、兒玉遥の4人。
厳選30社に投資するコモンズ投信。その投資先について豊島が切り込む。
トヨタとかどう見てるんですか?
トヨタは実はですね、言っちゃっていいんですか? 言っちゃっていいんですか?
入ってたんですよ。
何年か前に。じゃあ全売却されたってことですね。
うん。売却した年は忘れましたけど、実はアメリカでレクサスの問題があって。あったじゃないですか。
急加速問題ではなくて、急速でなくなって。
それで今の会長が会見に出て、非常に苦しんでらっしゃるシーンがあって。それを見て、一人の話ですが、そういう場で泣いちゃだめだよね、みたいな。そういう意味でドライな見方もあって。その時思ったのは、この会社ってもしかすると技術はあるし、経営の力もあるかもしれないけど、社内の対話力がもしかしたら、そういう実態があるっていうことを知りませんでした、みたいな、ちょっとなったので。
それはちょっとどうかな、みたいな感じで、その当時、手放しましたが。それは別に財務、売上とかじゃなくて。あの時もちょっとあれで株価が下がってましたっけね。ちょっとしましたけど。でも社内体制が、それがゆくゆく数字にも出てきますもので。
トヨタであっても大胆に手放す。ここで渋澤が大事にする損切りの基準を深掘り。
切る決断って、投資先としても不適格、決断する瞬間ってどういう時なんですか?
ヘッジファンドの時には、黙ってた瞬間、スパッとアウト、みたいな感じだと思うんですけど、投資やってると、それはほとんどスパッていう判断はなくて。いいと思ってる会社と長くお付き合いしようとしてるのに、だめだっていうところってね。だから結婚生活みたいなもんじゃないですか。
そうですか。やるじゃないですか。だけど、それでやっぱり最後のところには、何か不正があった時とか、何かあった時に、こういうことをちゃんとやらなきゃいけないんじゃないですか、っていうことに、きちんとそこに向き合ってくれなかったとか、そういうのが続くと、やっぱりそれっていうのは、ある意味で信頼関係がそこで下がるわけじゃないですか。
より見えない価値なんですね。なかなか数字として現れてないところ。
見えない価値ってすごくおしゃれな言葉だなって思いましたけど、30社選んでるポートフォリオっていうのは、見える価値よりも、数字とかよりも、見えない価値を重視して入れ替えとかをやっているってことなんですか?
両方なんですけど、だけど見える価値、つまり財務的な価値が、っていうことだけの理由ではほぼほぼないですね。
見えない価値って何を言うんですか? 例えば社長が変わったと。社長っていうファクターはどのぐらい大きいですか?
大きいですね。
30社のうち、社長ファクターは何割ぐらい? 社長がいいなっていうのは。
全てです。じゃないと、だって投資しないです。だから本当に社長が変わる時っていうのは大きいですし、特にいい会社だったら結構いい社長が当然いるわけで。私も一言で、企業の最も重要な、最大の見えない価値は何かっていうと、それは人だと思うんですよね。
社長とか、そのIRの人たちだけではなくて、例えば工場に行くと、工場の現場の人とかですね。そういうところが見えるとか、そういうことを繰り返していくことで、じゃあこの会社は長年お付き合いできる会社なのか、それともやっぱりちょっと違うのかなっていうので判断。そういうところが出てくる。
では現在のトヨタを渋澤はどう評価するのか。
今のトヨタはどうですか? 今の会長、章男会長の下、売上、利益はかなり相当しっかりしてると。株価はちょっと、かなり評価はあんまりされてないようですけれども。
そうですね。日本を代表する会社で間違いないと思うんですけど、多分フルポテンシャルをまだ見せてないような気もちょっとしません?
でも24年3月期の最高益を出した時と今期と、いろいろなことが、半導体が足りないとか関税とか、いろいろなことがありましたけど、今も中東の問題あるけども、一番強いなと思うのが、生産、販売、結果変わってないんですよ。
そう。それはすごくいいポイントで、どっちかっていうとレジリエント。レジリエント。だからずっとその30年でも、日本では強靱化って言うんですけど、ちょっと難しいこと。要するに風が吹いた時にちょっと揺れるかもしれないけど、折れないで元に戻ってきます。
耐久力があるみたいな、そういうことですよね。
だからレジリエンスっていう意味では、本当にピカイチだと思いますし。その時のみんながこう、だった時に、いやいや、あるけど、これもあるよね、みたいな感じで。まさにこう、じゃないですけど、きちんとこうやってらっしゃるっていう意味では、全然、長年お付き合いしていいような会社だと思ったら、トヨタ、今後買ってもいいかもな。
分かんない。私も投資委員会に入ってないので。
でもこれ単純に思うと、景気敏感株な面があるんです。やっぱり自動車なんで。なので、例えばいいお話を聞いていて、アクティブ投信へお金を預けるメリットとしては、基本的にはやっぱり可処分時間の確保と心の安定化だっていうのは、個人的には思ってたところでございまして。その中で、数あるアクティブファンドの中でもコモンズ投信さんを選ぶとするならば、投資哲学が大事だと思うんですよね。一番大切にされてる投資哲学ってどんなものですか?
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