引退馬・城・商店街を宿にする 「地域の宝」を観光資源に変える3つの試み

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概要

テレビ東京の「LBS ローカルビジネスサテライト」は、日本経済新聞社とTXN系列5局が共同で地域の新しいビジネスや知られざる技術を取材する企画である。この回のテーマは「観光で育てる地域の宝」。北海道日高町で元競走馬と泊まれる牧場、城下町を丸ごとホテルにした愛媛県大洲市、空き店舗を客室に変えた東大阪市の布施商店街の3つの事例を取り上げた。スタジオでは、日本総合研究所主席研究員で地域エコノミストの藻谷浩介氏が、佐々木明子アナウンサーとともに事例を読み解いた。

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元競走馬を眺めながら泊まる牧場

最初の事例は、北海道日高町の「Yogibo ヴェルサイユリゾートファーム」である。動画で話題になったのは、クッションに寝そべる往年の競走馬アドマイヤジャパンの姿だった。牧場の一角にはトレーラーハウスがあり、これが宿泊施設になっている。窓からは、障害G1レースで史上最多の9勝を挙げたオジュウチョウサンが見える。ほかにもG1を制した馬など、多くの名馬に会うことができる。

牧場で暮らすのは元競走馬などおよそ60頭で、来場者は競馬ファンを中心に年間2万人を超えるという。

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引退馬の行き場を作るために「お金を生む仕組み」を作る

代表の岩崎さんは、実家が馬の生産牧場だった。岩崎さんによると、引退馬には厳しい現実がある。役目を終えた後の状況が不安定で、行方が分からなくなる馬が多かったという。

番組によれば、引退する競走馬は年間およそ7000頭で、その3割以上は乗馬用や繁殖用といった役割を与えられない。飼育には1頭あたり最低でも月10万円かかる。岩崎さんは「どうにかしてお金を生み出さないと、この子たちは最後まで余生を過ごすことができない」と話し、その費用を稼ぐために馬に観光資源になってもらうことにした。

こうして宿泊施設がオープンした。トレーラーハウスは一棟貸しで1泊5万円から。馬を眺めながら食事ができるカフェや、名馬の手入れ体験もあり、餌やりもできる。ニンジンだけで5000円である。グッズも大きな収入源で、名馬タニノギムレットが蹴って壊した木柵を再利用したお守りやキーホルダーが人気だという。ビーズソファーを手がけるYogiboなど13社のスポンサーや個人サポーターの支えもあり、牧場は黒字経営になっている。

さらに2029年をめどに、福島県双葉町に滞在型リゾートを建設する構想もある。岩崎さんは、お金を生み出す仕組みをもっと押し上げ、他の牧場がそれをまねしてこうした牧場を増やしてくれればいい、と語った。

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藻谷氏「競走馬は本来、観光資源にならない」

スタジオで藻谷氏は、自分はいろいろなものを見てきたがサラブレッドの実物は見たことがないと話し、映像の馬の美しさに触れた。そのうえで、競走馬は本来観光資源にはならないと指摘した。少しでもストレスを与えたり病気がうつったりすれば競走に使えなくなるため、育てている人は厳重に隠しているからだという。だからこそ、実際に走っていた競走馬を間近に見られるこの取り組みは素晴らしいと評価した。

藻谷氏の見立てでは、馬好きの人はたくさんいるのに、これまでそれを観光にうまく生かせていなかった。本物の馬と触れ合いたいのにできなかった客と、馬を養いたいのに養いきれなかった人のニーズが、ここでうまくかみ合ったのだという。

藻谷氏は立地にも触れた。日高地方は気候も草の生えている雰囲気もイギリスと同じで、新千歳空港から車で行けばいきなり「日本のイギリス」に着き、そこに本物の競走馬がいる。海外旅行に行かなくても海外を味わえる、という見方である。

イノベーションのヒントとして藻谷氏が挙げたのは、牧場主の立ち位置だ。普通の牧場主はプロの馬を生産するのが大変で、馬はよく知っていても客には目を向けていない。プロとして馬を知る人が、客の目を見ながら、まだ誰も見ていない客のニーズに気づく。そこから新しい展開が始まると藻谷氏は述べた。

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引退馬の活躍の場は全国に広がるか

佐々木アナが、福島の第2の牧場のように引退馬の活躍の場が全国に広がる可能性を尋ねると、藻谷氏は、競馬にゆかりのある場所は全国にあるので可能だと答えた。特に予定地の双葉町は旧相馬の地域で、相馬といえば相馬野馬追がある。数百騎の馬に人が乗って合戦を再現する行事を何百年も続けてきた土地であり、まさに馬にゆかりがある。馬にゆかりのある神社などは全国にあるので、ぜひ各地に広がってほしいと語った。

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大洲市:城下町そのものをホテルにする

2つ目の事例は、江戸時代に城下町として栄え「伊予の小京都」とも呼ばれる愛媛県大洲市である。町は訪日観光客を中心に賑わっている。彼らの多くが泊まるのが、古民家を活用した「NIPPONIA HOTEL」だ。町に点在する古い建物が客室になっており、いわば城下町が丸ごとホテルになっている。例えば犬と泊まれる部屋は、1泊1室2人で8万円からである。

極めつきは、城に泊まる「城泊」だ。2020年に全国で初めて実現した。宿泊客は鉄砲隊に盛大に出迎えられ、大洲城の「一日城主」として城で過ごす。食事は国の重要文化財の建物で地元の和牛や海鮮などを味わい、寝室は城の天守である。料金は1泊1組2人で132万円。今年9月までに69組が宿泊した。

こうした取り組みで大洲の知名度は上がり、2025年度の観光客はおよそ50万人と、5年前の1.6倍に増えたという。

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空き家の増加から始まった古民家再生

ただ、10年ほど前の大洲は人口減少で空き家が増え、多くの古民家が取り壊されようとしていた。その再生を担ってきたのが、官民で立ち上げた観光地域づくり法人「キタ・マネジメント」である。宿泊施設だけでなく、古民家の雰囲気を楽しめるカフェや、瀬戸内地域の工芸品などを集めた店も展開し、これまでに古い建物35棟を手がけてきた。

担当者は、施設を町全体に分散させることで、観光客が自然と町の中を回遊する仕組みを作っていると説明する。地域に根ざした観光や体験を実現できているのではないか、と話した。

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布施商店街:商店街を丸ごとホテルに見立てる

3つ目の事例は、東大阪市の布施商店街である。午後3時ごろになると、スーツケースを引く人が次々と現れる。ここは「SEKAI HOTEL」というホテルで、商店街の空き物件を活用した「商店街丸ごとホテル」になっている。

商店街のあちこちに設けた客室は23室ある。例えば元和菓子店の客室は、昔の看板を残したままリノベーションされている。商店街の眺めが売りの広い部屋は1泊2人で3万円ほどだ。

チェックインの際に渡されるのは町の地図で、商店街のおすすめスポットを案内している。コロッケが70円で買える店なども紹介される。大浴場の役割を果たすのは昭和33年創業の銭湯で、夕食には地元の人で賑わう店を勧める。さらに、2軒目の店での1杯目をホテルが負担する仕掛けも用意されている。客室・浴場・食事を商店街の既存の店に割り振ることで、宿泊客を商店街の中へ送り出す仕組みである。