2026年秋冬の海外コレクションは「ヘリテージリバイバル」――げんじが読み解くムード、シルエット、色、アイテム

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概要

メンズファッションのYouTuber、げんじによる2026年秋冬(26AW)トレンド解説の「海外編」である。この回では、海外コレクションの画像を見ても何が起きているのか分かりにくい状況を、「ムード」「シルエット」「シーズンカラー」「アイテム」の4テーマに分けて解説する。「これがトレンドだから着ればいい」と結論から入るのではなく、海外の一流ブランドで何が起きているのかを先に理解してもらい、日本の街での着こなしは続く「国内編」で扱うという構成だ。

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チャンネルの位置づけについても触れている。最近は学生向けの発信をやめ、20代後半から30代、40代に向けて、年齢に合った大人のかっこよさを解説するチャンネルにリブランディングしたという。トレンド解説は独自の視点によるオリジナルの内容で、検索やAIへの質問では出てこない実用的な解説にしていると話者は述べている。

前季からの流れ:フォーマルがさらに深まった

げんじは前年の25AW海外コレクション解説で、「フォーマルの流れが確実に来ている」と話していた。当時の日本では、装飾的でカジュアルなファッションを街中でもよく見かけ、SNSでも派手な提案をする人が多かった。それでも海外コレクションはフォーマルへ向かっていた、というのが前回の見立てである。

26AWではその流れが続いたうえで、フォーマルの深みがさらに増したと話者は見る。根拠として挙げたのは、各ブランドが発表するテーマの共通点だ。今季は多くのブランドが、自分たちの歴史やルーツに立ち返り、それを現代の感覚でアップデートするアプローチを取っていた。単なるクラシック回帰ではない。何十年、何百年と続いてきたブランドのルーツに敬意を払いながら、現代的に取り入れたコレクションが多かったという。

げんじはこの流れを「ヘリテージリバイバル」、つまり伝統の再解釈と名付けた。世界的に使われている言葉ではなく、自分で名付けたものだと明言している。シリーズで毎回トレンドを英語の一言でまとめてきたことに合わせた命名であり、本人は「めちゃくちゃしっくり来る」と言う。

プラダ:過去と現在が透けて重なる服

最初の具体例はプラダだ。ミウッチャ・プラダとラフ・シモンズが打ち出したコンセプトは、古い絵の上に新しい絵を描いたとき、下の絵が透けて見える現象を服で表現するものだったと紹介される。

実際のルックには、畳みジワが入ったもの、着込んだように擦り切れたトレンチコートやブルゾン、表地が剥がれてチェックの裏地が浮かび上がるものがあった。げんじは、過去と現在が重なり合うこの表現こそがヘリテージの再解釈そのものではないかと見る。普通なら「アイロンをかけ忘れたのか」「破れている」と思われかねないディテールだが、アイロンで焼き付けたようなカフスやヴィンテージ加工のブルゾンを挙げ、「かっこよすぎ」と評価している。

ディオール:ジョナサン・アンダーソンのアーカイブ再読

これはプラダだけの話ではないとして、次にディオールを取り上げる。26AWは、ジョナサン・アンダーソンにとって就任2シーズン目のコレクションだった。話者によれば、アンダーソンはディオールのアーカイブ、つまり過去のアイテムにさらに深く踏み込んだ。

コレクションは、20世紀初頭のデザイナーであるポール・ポワレへのオマージュを軸に、「現代に蘇る貴族」をコンセプトに掲げた。バージャケットにネルシャツを合わせてフォーマルとカジュアルの境界を意図的に崩し、過去の時代の軍服のモチーフであるエポレットを刺繍で再現した。過去のアーカイブを今の目線で読み直す試みが随所に見られたとして、げんじはこれもヘリテージリバイバルだとまとめている。

ゼニア:世代を超えるワードローブ

3つ目の例はゼニアである。話者によれば、エドアルド・ゼニアが初めて手がけたコレクションのテーマは「世代を超えるワードローブ」で、祖父から自分まで4世代が袖を通せるような、時代を選ばない服を提案した。

シャドーストライプ、アースカラーのパレット、ロング丈でゆとりのあるシルエットには70年代の空気感が漂っていた。クラシックなアイテムを現代のオーバーシルエットで再解釈したシーズンだという。げんじは、ヘリテージを受け継ぐ行為そのものをコンセプトにした点で今季を象徴するブランドだと位置づけ、ヘリテージリバイバルという言葉がかなりしっくりくるコレクションだったと述べている。

シルエット:ボトムもトップスも細身へ移行中

これまでのシリーズではシルエットの話を短くまとめることが多かったが、今回は深く話す必要があるとげんじは言う。

その理由として、26AWの解説でありながら、すでに発表が始まっている27SSのコレクションに言及する。中でも大きな話題になったのが、再びプラダだった。全ルックがスキニースタイルで、レザーからシアー素材まで様々な素材でスキニーを落とし込んでいた。2000年代にモダンなスキニースタイルを確立したラフ・シモンズだからこそ、どのブランドよりもこのスタイルに説得力を出せたのではないか、と話者は見る。

26AWに話を戻すと、プラダはクラシカルなスタイリングを軸にしながら、細身のウールスラックスを多く打ち出していた。プラダ以外でも、ディオールやサンローランがワイドボトムの中にスリムなボトムを混ぜる提案をしていたという。

この細身化はボトムに限らない。げんじは、大きな流れとしてはフォーマル回帰があり、その中で上半身のシルエットも、アウター、トップスを問わず徐々に細身が増えていると説明する。どのブランドを挙げてもいいほどだとしつつ、オーラリー、アワーレガシー、プラダなどで細身のトップスやアウターの提案が多かったと例を挙げた。

ただし話者は留保もつけている。あくまで「移行してきている」という話であり、26AWはスキニーしかあり得ない、ピタピタの上半身しかあり得ないということではない。ファッショントレンドを牽引する海外の一流ブランドがその方向に動いている、という指摘にとどめている。

シーズンカラー:アースカラーを軸に、鮮やかな差し色

ヘリテージをまとうシーズンにふさわしい色として、げんじはブラウン、キャメル、テラコッタ、オリーブグリーンなどのアースカラーをベースカラーに挙げる。

ただし単調にならないのが今季らしいところだという。26SSから続くレッドや、パープルなどの鮮やかな色が加えられていた。クラシックな要素だけではどうしても地味になりがちで、海外コレクションの発表でも特にそうなる。そこに鮮やかな色を足すことで、「クラシックだけど地味じゃない」、現代的で上品なスタイルに仕上げていたと話者は解説する。

最も強い色はブラウン系、ヘリテージ素材との相性

今季最も強いカラーとしてげんじが挙げるのはブラウン系、具体的にはブラウン、キャメル、アンバー、テラコッタである。ベージュやキャメルなど呼び方は異なるが、要は温かみのある色で、ほぼ全ブランドに共通して登場した、今季を象徴する色だという。

話者はここで素材の話にも触れる。素材にも時期やトレンド感があり、たとえばナイロンの強い素材感は伝統という文脈からは外れる。ヘリテージファブリックを考えると、ツイードやウールが今年はよりおしゃれで上品に見えるシーズンであり、茶系の温かみのある色はそうした素材と相性がいい。その結果、70年代や80年代のようなノスタルジックなムードに合わせた配色になっている、というのがげんじの説明だ。動画ではブラウン、キャメル、テラコッタのルックが順に示され、テラコッタについては特に総柄の使い方が印象的だったとしている。

オリーブグリーン、レッド、パープル

オリーブグリーンについては、26SSではビビッドなグリーンが差し色として登場していたのに対し、今季は各ブランドから少しずつ出てきているミリタリーアイテムの影響もあり、くすんだ、ほっこりするようなオリーブが多かったという。

げんじはこの色を自分の感覚とも結びつける。ユニクロ:Cのアウター紹介で「これめっちゃええ」と感じたものがあったこと、サードチャンネルでオリーブみのあるパンツを買ったことを挙げ、大ヒットの人気色ではないが、このあたりの色が新鮮に感じられてくると話す。

レッドの差し色は26SSの解説でも取り上げたが、26AWではむしろ増えているという。ブラウンやグレーに合わせてコーディネートに力強いアクセントを加える色として相性が良く、多く提案されていた。

パープルは、海外コレクションでは強い差し色として使われていたが、それ以上に、パープルを主役にしたパンツやアウター、マフラーなどが見られ、新鮮だったとげんじは言う。

海外の派手なルックを日本の着こなしに置き換える

ここまでの画像は派手に見えるかもしれないと認めたうえで、げんじは自身が今年のSSや25AWに着たコーディネートを色別に示している。ブラウン、キャメル、テラコッタに近い色、オリーブグリーンの例で、オリーブについてはア プレッセのノーカラーアウターが自分にとって新鮮度が高かったと述べ、展示会動画でもオリーブグリーンに惹かれていたと話す。

パープルは去年は着ていないとしつつ、以前パープルのニットやシャツをリリースしていたことに触れ、大人のパープルは改めて提案したいと話した。日本人が実際に着ている色に置き換えると想像しやすくなる、というのがこのパートの趣旨である。

柄:チェックが少しずつ増えている

カラーの最後は柄だ。チェック柄は以前からリリースされてはいたが、今季は確実に前シーズンより多く提案されていたという。様々な柄物がある中で、複数のブランドに共通した強い柄がチェックであり、グレンチェックのようなヘリテージ感の強いクラシックなチェックが、アウター、シャツ、パンツと幅広く使われていた。

げんじは、ユニクロのスラックスを紹介した動画で「ベージュのチェックのパンツが一番いいかも」と興奮していたのも、鮮度が高く、これからのおしゃれな人たちの気分に合いそうだったからだと振り返り、その背景に海外コレクションでのチェックの増加があると説明している。

アイテム1:テーラードジャケット

アイテムのパートについて、げんじは今季のムードそのものに関わる重要な部分だと前置きする。ヘリテージの再解釈を体現したアイテムが増えたからこそ、ヘリテージリバイバルと言わざるを得ない、という位置づけである。

その筆頭が、昨年よりも2年前よりも確実に増えたテーラードジャケットだ。26SSでも取り上げたが、リラックス感のあるシルエットは引き継ぎつつ、今季はより細身で構築的な形へ変化していたと話者は見る。テーラードジャケットの中でも最もフォーマル度が高いと言えるピークドラペルのデザインが多く展開されていた。素材はツイードなどのクラシカルなものをはじめ、コーデュロイやレザーが目立ち、先ほどのチェックと掛け合わせたジャケットも多かったという。

げんじは自身のブランドでの経験にも触れる。昨年、リドム(LIDNM)でキャメルっぽいコーデュロイのジャケットを提案したところ瞬く間に完売し、夏にも薄手のコーデュロイを使ったアイテムをリリースした。コーデュロイがファッション感度の高い人にとって新鮮で、次のおしゃれを体現する素材だったからこそ人気が過熱したのではないか、と本人は見ている。

アイテム2:レザーはダークブラウンへ、種類も広がる

次のトレンドアイテムはレザーだ。オーバーサイズが大流行したのと同じくらい、レザーが欠かせないシーズンが今も続いているとげんじは言う。ただしその大きな流れにも変化が見え、結論としてダークブラウンのレザーが大幅に増えているという。リドムからもダークブラウンのスウェードジャケットが出ると告知している。

ダークトーンだけでなく、カラフルなパレットのレザーアイテムも増えていた。アイテムの幅も広がっており、15年前のげんじの印象では「レザー=ライダース」、多くの人が想像するのもレザーブルゾンくらいだったが、今季はレザーのテーラードジャケット、レザーパンツ、レザーコート、レザーダウンまで提案されていた。値段は張るが、特別に一品持っておきたいアイテムだと話者は述べる。

一方で、コレクションに出てくるタイトなロング丈のレザーのようなものは取り入れるのが難しいとも言う。取り入れやすい例として、昨年リドムでも人気だったレザーのカーコートを挙げる。ブルゾンより圧倒的に長い面積でレザーを楽しめるアイテムであり、これからの気分に合う人が多いのではないかと話している。

アイテム3:ロングコートとトレンチコートの復活

ロング丈のコートも多くのブランドで共通して提案されていた。特に印象的だったのはテーラリングをベースにしたもので、テーラードジャケットの増加の流れから、チェスターコートが多く見られたという。プラダはダブルのロングコートを展開し、ゼニアはロング丈でゆとりのあるシルエットに70年代の空気感をまとわせていた。

さらに、ヘリテージを受け継ぐという今季のテーマを体現するように、ヘリテージアイテムの代名詞とも言えるトレンチコートが海外コレクションで復活の兆しを見せていたと話者は言う。

げんじはトレンチのルックを例に、ここまでの話が集約されていると説明する。プラダの上半分がパープルのトレンチ、ベージュ、ブラウンの靴、トレンチの中から覗く赤いジップなどを挙げ、どれも相性がいいのはなぜかと視聴者に問いかける。答えは「中和」だという。クラシカルで綺麗めすぎるフォーマルなスタイリングの中に、ベージュを入れて柔らかくし、赤やパープルといったカジュアルな色を入れることで中和している。コレクションなので飛ばしたスタイリングも多いが、綺麗めとカジュアルのバランスが整ったシーズンだったと話者は評している。

アイテム4:ミドルレングスアウターとコーデュロイ

続いてはミドルレングスのアウターだ。げんじが何度も伝えてきたように、今はショート丈アウターのトレンドが強く来ている。その反動として、ミドルレングスの提案が非常に多かったという。

コーデュロイは、先のテーラードジャケットでも触れたが、今季の素材トレンドとして急上昇したアイテムと位置づけられる。ブランドごとに素材感へアップデートを加えたコーデュロイが多く、ブラウンやフォレストグリーンなど今季のカラートレンドとも相性がいい。ジャケットからパンツまでアイテムの幅も豊富だったと話者は説明している。

アイテム5:マフラーとスカーフ

最後のトレンドアイテムはマフラーとスカーフなどのネックウェアだ。少しコンパクトなサイジングのカシミアスカーフやマフラーなど、首元に表情を加えるアイテムが一気に増えたという。げんじ自身も、動画には出していないがアワーレガシーのスカーフなどを買ったと明かしている。

26SSからあった提案ではあるが、秋冬はより確実に増えるだろうと話者は見る。男性は秋冬でもネックウェアなしで過ごせてしまうが、巻いたほうが楽しく、おしゃれで、新しい気分になれる。バッグに付けるなど様々な付け方を楽しむ人が増えるのではないか、という予想である。無難に落ち着かせるのではなく、上品にまとめるためのアイテムとしても重要だという。

げんじ自身は3年ほどマフラーを付ける習慣がなかったが、昨年マフラーを巻いたスタイリングが自分の中で新鮮に感じられた。「丁寧な感じ」がしたといい、その丁寧さこそが今季重要になるのではないかと述べている。

結論:伝統をどう着て、どう選ぶか

げんじは26AW海外コレクションの方向性を、改めて「ヘリテージリバイバル」と一言でまとめる。伝統的なものをただ伝統的に着るのではなく、全体として再構築・再解釈し、どう着るか、どう選ぶか、どう買うかが問われるシーズンになる、というのが結論である。

日本の街で具体的にどう取り入れるかは、すでに内容をまとめてあるという国内編で扱うとして、動画は締めくくられている。