ペニシリン30年ぶりの国産化と海底レアアース泥:中国依存から抜け出せるか

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概要

薬の原料も、先端産業に欠かせないレアアースも、日本は多くを中国に頼っている。この動画は、テレビ東京の2つの番組をまとめたものだ。前半はMeiji Seika ファルマがペニシリンの国内生産を30年ぶりに再開しようとする取り組みを追い、後半は地球深部探査船「ちきゅう」による南鳥島沖のレアアース泥採掘と、その産業化の課題を専門家とともに検討している。両者に共通するのは、供給が止まったときに何が起きるのか、そして国内で作る価値はコストに見合うのか、という問いである。

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中東情勢の混乱と医薬品の調達リスク

前半は3月上旬、東京・中央区の明治ホールディングス本社の場面から始まる。医薬品事業を担うMeiji Seika ファルマの社長が、海外担当者から緊急の報告を受けていた。2月にアメリカとイスラエルがイランへの軍事作戦を始めたことで、ロシア上空に続いてイラン上空も飛行できなくなり、多くの航空貨物が経由する中東の空港が機能を停止した。海上ではイランがホルムズ海峡を封鎖し、物流に深刻な影響が出始めていた。社長は、原料を運ぶ時間が長くなるので早め早めに動くよう指示し、「この後どうなるかまだ不透明」と話している。

番組によると、日本の医薬品はおよそ7割が原薬や原材料を海外からの輸入に頼っている。調達担当の清水さんは複数の輸送業者に電話やメールで状況を確認していた。清水さんは、患者に薬を届けられなくなることが一番の問題だと語る。こうした事態に備え、同社が進めていたのがペニシリンの国産化プロジェクトである。

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1994年の撤退と、30年ぶりの再挑戦

明治製菓は1994年にペニシリンの国内製造から撤退した。それから30年以上を経て、国産化に向けて再び動き出した。番組はペニシリンを、1928年にイギリスの細菌学者フレミング博士が青カビから抽出した世界初の抗生物質であり、第二次世界大戦で多くの兵士を救い、日本では戦後GHQの指導のもとで大量生産技術が確立された薬だと紹介している。

製造再開は社長肝いりのプロジェクトだという。社長は、コスト競争力で中国に負けて撤退したのが31年前で、非常に悔しい思いをしたと振り返り、経済安全保障の観点から国内回帰を目指すと語る。鍵を握るのは59歳の技術者・山田浩一郎さんだ。30年前にペニシリン製造の中核を担った数少ない経験者で、定年までの1年でこの仕事を任された。山田さんは、ペニシリンとともに歩んできた自分が最後にまたその生産に関われることに運命を感じると話し、自分の知識が役に立つなら全て出し切りたいと語っている。番組はこれを、昭和の叩き上げから令和の新入社員へ技術を受け渡す取り組みとして描く。

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明治製菓とペニシリンの歴史

本社の資料室には、1946年に取得したペニシリンの製造販売許可書が残されている。戦後の医薬品不足の中、明治製菓はシロップの容器を流用した瓶でペニシリンの培養を始めた。その後は得意とする発酵技術を生かし、ペニシリン由来の抗菌薬を海外に輸出するまでになった。1971年には岐阜工場が国内最大規模のペニシリン原薬工場として稼働し、最盛期には年間1000トンを超える量を製造していた。

転機は1985年のプラザ合意だった。急速な円高で国産ペニシリンは価格競争で苦しくなる。1988年には社内でペニシリン製造の存続をかけた原価低減プロジェクトが立ち上がった。与えられた期間はわずか1年で、当時30歳だった現社長もメンバーに選ばれた。社長自身は、柔軟な頭と体力を理由に選ばれたのではないかと話している。抜本的な技術改良でコストを下げ、中国の価格水準に対抗できるようにすることが目標だった。

しかし社長によれば、中国は競争力をつけ、技術も大きく向上した。結局ペニシリンの発酵生産をやめることになり、1994年の撤退で日本国内にペニシリンを製造する会社はなくなった。

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中国が抗菌薬原料で世界トップに

一方で中国は抗菌薬原料の世界トップになった。番組が映した中国の大手企業は、広大な化学工業団地の中にあり、火力発電所まで備えている。安い電気を使ってペニシリンなどを大量に生産し、20カ国以上に輸出しているという。今では日本も、抗菌薬原料のほぼ100%を中国からの輸入に頼っている。

その依存のリスクが現実になった例として、番組は千葉県の地域中核病院、東京ベイ・浦安市川医療センターを取り上げる。病院関係者は、ある日突然セファゾリンの供給が止まり使えなくなると知らされたと話し、「もう事件ですね。大事件みたいな」と振り返った。番組の予告では、抗菌薬がなくなれば救えるはずの人が救えなくなり、それは治療ができないのと変わらず、死に直結するという声も紹介されている。なお、このまとめ動画ではペニシリン編はここで終わり、国産化の進み具合や結果までは描かれていない。

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「ちきゅう」が南鳥島沖からレアアース泥を引き上げる

後半は2月15日、静岡・清水港に入港した探査船「ちきゅう」の場面から始まる。全長210メートル、高さ130メートルの櫓を備え、建造費は560億円である。1カ月にわたる航海で、日本の最東端・南鳥島沖の水深約6000メートルの海底から黒い泥を採掘してきた。日本にとっての宝とまで言われるレアアース泥である。今後は成分分析を進め、来年2月に大規模な実証試験を行い、2028年度以降に国産レアアースの産業化を目指す計画だ。港には見物の住民も集まり、子どもが大きくなったときに小さい頃見に来たと言えるように来た、といった声が聞かれた。

番組によると、レアアースは世界の生産量の7割を中国が占め、日本も63%を中国から調達している。中国依存からの脱却に向け、内閣府主導で今回の採掘までに400億円の国家予算が投じられた。関係者は「歴史的な成果」と述べ、高市内閣の成長戦略の一つとして南鳥島での生産を進めるとしている。高市総理は施政方針演説で南鳥島周辺海域の海底レアアース資源の活用を急ぐと述べ、今月4日の岡山での街頭演説では、日本は今の世代も次の世代もレアアースには困らないとまで発言した。

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発見者・中村教授が語る埋蔵量と成り立ち

レアアース泥を発見したのは東京大学の加藤・中村・安川研究室で、2011年のことだ。番組は、15年かけてたどり着いた今回の成功が本当に大きな意味を持つのかを確かめるため、中村教授を取材した。

中村教授によれば、レアアース泥は莫大な量が眠っている。現在調査している約2500平方キロメートルは日本のEEZ全体の1%未満にすぎないが、その範囲だけでレアアースとして1600万トンほどあると発表しているという。日本が1年間に使うレアアースは2万トンほどなので、番組はこれを800年分にあたる量だと説明する。元素別に見ると、LEDなどに使われるイットリウムは780年分、EVのモーターなどに欠かせないディスプロシウムは730年分にあたるとされる。

レアアースは17種類の元素の総称で、少量で素材の性能を高めることから「産業のビタミン」と呼ばれる。中村教授は、これらの元素はほぼ一緒に存在しているため分離が非常に難しいと話す。研究室では、非常口の表示などに使われる蓄光塗料の粉を見せ、明かりを消すとレアアースの働きで長く光り続ける様子を実演した。教授は、スマホや照明、車にも使われていると説明している。

研究で分かったのは、レアアースが意外なものに含まれていたことだ。泥の中の透明で青白い破片は魚の骨や歯のかけらで、レアアースはこれにくっついている。番組によれば、海底に積もった魚の歯や骨のカルシウムがレアアースを吸収する性質を持ち、3000万年以上かけて集まり濃縮されていった。中村教授は、太平洋中の泥を集めて研究していたので、それなりのものだろうと思っていたら比べものにならないほど良いものだった、と最初の分析の驚きを語っている。

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中国産との違いと、産業化への懸念

期待の一方で懸念もある。中村教授は、研究用に少し採ってくることは簡単だが、産業として使うには大量に採って安定的に供給することが今後は大事になると指摘する。大量の採掘、輸送、抽出には莫大な費用がかかり、番組は中国のレアアースに比べて20倍のコストがかかるという試算もあると伝えている。

それでも国産への期待が大きいのは、南鳥島沖のレアアースに中国産との違いがあるからだという。中村教授が挙げるのは2点だ。1つは、産業上重要で希少な重レアアースが非常に豊富なこと。もう1つは放射性元素を含まないことである。番組の説明では、中国で採れるレアアース鉱石は取り出す際に放射性物質が出て環境負荷が避けられないが、海底のレアアース泥は放射性物質をほとんど含まず、処理が簡単になる可能性がある。中村教授は、発見したときから良い資源だと分かっていたので日本の産業に役立ててほしいとずっと思ってきた、それがいよいよ形になりそうで嬉しい、一刻も早く産業に使えるよう開発を進めてほしい、と話している。

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専門家の評価:大きな前進だが、すぐに国産化ではない

スタジオには、経済産業省で通商政策を担当し、現在は内閣府の国際標準戦略部会の委員も務めるコンサルタントの羽生田慶介氏が出演した。取材を担当した出演者は、魚の骨が長い時間をかけて海中のレアアースを取り込むという話が面白かったこと、レアアース泥の研究や調査で日本が進んでいることに期待したい一方で、教授が言うように産業化が一番の課題だと感じたことを報告した。

羽生田氏は、深海からレアアース泥を引き上げたこと自体は世界初であり、大きな前進だと評価する。ただし、引き上げたからといってすぐにレアアースの国産化になるわけではないと冷静に見るべきだという。製品として量産するまでには多くの課題が残っており、羽生田氏は「長期の戦略オプションができそうだ」という期待が正しい表現だと述べた。

最大の課題はコストだ。羽生田氏は、深海から採るだけでコストがかかり、海のものは陸のものより環境負荷が少ないとされるものの、環境に配慮しながら精錬すれば中国産の20倍になるという試算もあると説明する。政府は来年(2027年)に大規模実証を行い、2028年に産業化としているが、適正なコストで産業に定着するには10年、20年かかるという声も聞かれるという。

規模を広げればコストは下がるのか、下がらなくても続けるべきか、という問いに対し、羽生田氏は、設備の改善や規模の拡大で固定費が下がるので、ある程度は下がるとみる。ただ、政府が計画している事業の引き上げ目標は、採算が取れる量に比べてごく一部にとどまっており、中国と同じ水準まですぐにコストが下がることは期待しにくいという。それでも羽生田氏は、経済合理性がすぐに見込めないとして諦めた資源・エネルギー開発はこれまでたくさんあったと指摘し、地熱発電を例に挙げた。今回の高市政権にはしっかり開発していく意思が見られるので、期待したいと述べている。

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中国の輸出規制、すでに製造業に影響

番組の最後は、中国のレアアース輸出規制が日本の製造業に与えている影響に移る。羽生田氏によると、いよいよ実際の影響を伝える報道が出始めた。レアアースを使う磁石メーカーには中小企業が多く、今年に入って中国からの輸入量が3分の1に激減したという話も聞かれるという。

羽生田氏が強調したのは、輸出が止まることよりも、遅れて先が読めないことの厄介さだ。中国は輸出審査を厳しくしており、許可が出ても納期が大きく遅れることがある。企業にとっては、来ないと言われればそれなりに対応できるが、来るには来るが遅れ、いつ届くか分からないのが一番困る。すでに顧客に納期を約束しているからだ。

特に不足しているのは永久磁石に使われるレアアースで、ネオジム、テルビウム、ディスプロシウムなどがある。用途は電気自動車のモーター、スマートフォン、軍事品と非常に幅広い。羽生田氏は、一部のレアアースが入らないだけで完成品が全部止まってしまう典型的な分野だと指摘した。海底のレアアース泥が実用化されるまで時間がかかる一方で、中国依存のリスクはすでに現場で表面化している、というのが番組の締めくくりの状況である。