ペニシリン30年ぶりの国産化と海底レアアース泥:中国依存から抜け出せるか
テレ東BIZ ダイジェスト薬の原料も、先端産業に欠かせないレアアースも、日本は多くを中国に頼っている。この動画は、テレビ東京の2つの番組をまとめたものだ。前半はMeiji Seika ファルマがペニシリンの国内生産を30年ぶりに再開しようとする取り組みを追い、後半は地球深部探査船「ちきゅう」による南鳥島沖のレアアース泥採掘と、その産業化の課題を専門家とともに検討している。両者に共通するのは、供給が止まったときに何が起きるのか、そして国内で作る価値はコストに見合うのか、という問いである。
中東情勢の混乱と医薬品の調達リスク
前半は3月上旬、東京・中央区の明治ホールディングス本社の場面から始まる。医薬品事業を担うMeiji Seika ファルマの社長が、海外担当者から緊急の報告を受けていた。2月にアメリカとイスラエルがイランへの軍事作戦を始めたことで、ロシア上空に続いてイラン上空も飛行できなくなり、多くの航空貨物が経由する中東の空港が機能を停止した。海上ではイランがホルムズ海峡を封鎖し、物流に深刻な影響が出始めていた。社長は、原料を運ぶ時間が長くなるので早め早めに動くよう指示し、「この後どうなるかまだ不透明」と話している。
番組によると、日本の医薬品はおよそ7割が原薬や原材料を海外からの輸入に頼っている。調達担当の清水さんは複数の輸送業者に電話やメールで状況を確認していた。清水さんは、患者に薬を届けられなくなることが一番の問題だと語る。こうした事態に備え、同社が進めていたのがペニシリンの国産化プロジェクトである。
1994年の撤退と、30年ぶりの再挑戦
明治製菓は1994年にペニシリンの国内製造から撤退した。それから30年以上を経て、国産化に向けて再び動き出した。番組はペニシリンを、1928年にイギリスの細菌学者フレミング博士が青カビから抽出した世界初の抗生物質であり、第二次世界大戦で多くの兵士を救い、日本では戦後GHQの指導のもとで大量生産技術が確立された薬だと紹介している。
製造再開は社長肝いりのプロジェクトだという。社長は、コスト競争力で中国に負けて撤退したのが31年前で、非常に悔しい思いをしたと振り返り、経済安全保障の観点から国内回帰を目指すと語る。鍵を握るのは59歳の技術者・山田浩一郎さんだ。30年前にペニシリン製造の中核を担った数少ない経験者で、定年までの1年でこの仕事を任された。山田さんは、ペニシリンとともに歩んできた自分が最後にまたその生産に関われることに運命を感じると話し、自分の知識が役に立つなら全て出し切りたいと語っている。番組はこれを、昭和の叩き上げから令和の新入社員へ技術を受け渡す取り組みとして描く。
明治製菓とペニシリンの歴史
本社の資料室には、1946年に取得したペニシリンの製造販売許可書が残されている。戦後の医薬品不足の中、明治製菓はシロップの容器を流用した瓶でペニシリンの培養を始めた。その後は得意とする発酵技術を生かし、ペニシリン由来の抗菌薬を海外に輸出するまでになった。1971年には岐阜工場が国内最大規模のペニシリン原薬工場として稼働し、最盛期には年間1000トンを超える量を製造していた。
転機は1985年のプラザ合意だった。急速な円高で国産ペニシリンは価格競争で苦しくなる。1988年には社内でペニシリン製造の存続をかけた原価低減プロジェクトが立ち上がった。与えられた期間はわずか1年で、当時30歳だった現社長もメンバーに選ばれた。社長自身は、柔軟な頭と体力を理由に選ばれたのではないかと話している。抜本的な技術改良でコストを下げ、中国の価格水準に対抗できるようにすることが目標だった。
しかし社長によれば、中国は競争力をつけ、技術も大きく向上した。結局ペニシリンの発酵生産をやめることになり、1994年の撤退で日本国内にペニシリンを製造する会社はなくなった。
中国が抗菌薬原料で世界トップに
一方で中国は抗菌薬原料の世界トップになった。番組が映した中国の大手企業は、広大な化学工業団地の中にあり、火力発電所まで備えている。安い電気を使ってペニシリンなどを大量に生産し、20カ国以上に輸出しているという。今では日本も、抗菌薬原料のほぼ100%を中国からの輸入に頼っている。
その依存のリスクが現実になった例として、番組は千葉県の地域中核病院、東京ベイ・浦安市川医療センターを取り上げる。病院関係者は、ある日突然セファゾリンの供給が止まり使えなくなると知らされたと話し、「もう事件ですね。大事件みたいな」と振り返った。番組の予告では、抗菌薬がなくなれば救えるはずの人が救えなくなり、それは治療ができないのと変わらず、死に直結するという声も紹介されている。なお、このまとめ動画ではペニシリン編はここで終わり、国産化の進み具合や結果までは描かれていない。
「ちきゅう」が南鳥島沖からレアアース泥を引き上げる
後半は2月15日、静岡・清水港に入港した探査船「ちきゅう」の場面から始まる。全長210メートル、高さ130メートルの櫓を備え、建造費は560億円である。1カ月にわたる航海で、日本の最東端・南鳥島沖の水深約6000メートルの海底から黒い泥を採掘してきた。日本にとっての宝とまで言われるレアアース泥である。今後は成分分析を進め、来年2月に大規模な実証試験を行い、2028年度以降に国産レアアースの産業化を目指す計画だ。港には見物の住民も集まり、子どもが大きくなったときに小さい頃見に来たと言えるように来た、といった声が聞かれた。
番組によると、レアアースは世界の生産量の7割を中国が占め、日本も63%を中国から調達している。中国依存からの脱却に向け、内閣府主導で今回の採掘までに400億円の国家予算が投じられた。関係者は「歴史的な成果」と述べ、高市内閣の成長戦略の一つとして南鳥島での生産を進めるとしている。高市総理は施政方針演説で南鳥島周辺海域の海底レアアース資源の活用を急ぐと述べ、今月4日の岡山での街頭演説では、日本は今の世代も次の世代もレアアースには困らないとまで発言した。
発見者・中村教授が語る埋蔵量と成り立ち
レアアース泥を発見したのは東京大学の加藤・中村・安川研究室で、2011年のことだ。番組は、15年かけてたどり着いた今回の成功が本当に大きな意味を持つのかを確かめるため、中村教授を取材した。
中村教授によれば、レアアース泥は莫大な量が眠っている。現在調査している約2500平方キロメートルは日本のEEZ全体の1%未満にすぎないが、その範囲だけでレアアースとして1600万トンほどあると発表しているという。日本が1年間に使うレアアースは2万トンほどなので、番組はこれを800年分にあたる量だと説明する。元素別に見ると、LEDなどに使われるイットリウムは780年分、EVのモーターなどに欠かせないディスプロシウムは730年分にあたるとされる。
レアアースは17種類の元素の総称で、少量で素材の性能を高めることから「産業のビタミン」と呼ばれる。中村教授は、これらの元素はほぼ一緒に存在しているため分離が非常に難しいと話す。研究室では、非常口の表示などに使われる蓄光塗料の粉を見せ、明かりを消すとレアアースの働きで長く光り続ける様子を実演した。教授は、スマホや照明、車にも使われていると説明している。
研究で分かったのは、レアアースが意外なものに含まれていたことだ。泥の中の透明で青白い破片は魚の骨や歯のかけらで、レアアースはこれにくっついている。番組によれば、海底に積もった魚の歯や骨のカルシウムがレアアースを吸収する性質を持ち、3000万年以上かけて集まり濃縮されていった。中村教授は、太平洋中の泥を集めて研究していたので、それなりのものだろうと思っていたら比べものにならないほど良いものだった、と最初の分析の驚きを語っている。
中国産との違いと、産業化への懸念
期待の一方で懸念もある。中村教授は、研究用に少し採ってくることは簡単だが、産業として使うには大量に採って安定的に供給することが今後は大事になると指摘する。大量の採掘、輸送、抽出には莫大な費用がかかり、番組は中国のレアアースに比べて20倍のコストがかかるという試算もあると伝えている。
それでも国産への期待が大きいのは、南鳥島沖のレアアースに中国産との違いがあるからだという。中村教授が挙げるのは2点だ。1つは、産業上重要で希少な重レアアースが非常に豊富なこと。もう1つは放射性元素を含まないことである。番組の説明では、中国で採れるレアアース鉱石は取り出す際に放射性物質が出て環境負荷が避けられないが、海底のレアアース泥は放射性物質をほとんど含まず、処理が簡単になる可能性がある。中村教授は、発見したときから良い資源だと分かっていたので日本の産業に役立ててほしいとずっと思ってきた、それがいよいよ形になりそうで嬉しい、一刻も早く産業に使えるよう開発を進めてほしい、と話している。
専門家の評価:大きな前進だが、すぐに国産化ではない
スタジオには、経済産業省で通商政策を担当し、現在は内閣府の国際標準戦略部会の委員も務めるコンサルタントの羽生田慶介氏が出演した。取材を担当した出演者は、魚の骨が長い時間をかけて海中のレアアースを取り込むという話が面白かったこと、レアアース泥の研究や調査で日本が進んでいることに期待したい一方で、教授が言うように産業化が一番の課題だと感じたことを報告した。
羽生田氏は、深海からレアアース泥を引き上げたこと自体は世界初であり、大きな前進だと評価する。ただし、引き上げたからといってすぐにレアアースの国産化になるわけではないと冷静に見るべきだという。製品として量産するまでには多くの課題が残っており、羽生田氏は「長期の戦略オプションができそうだ」という期待が正しい表現だと述べた。
最大の課題はコストだ。羽生田氏は、深海から採るだけでコストがかかり、海のものは陸のものより環境負荷が少ないとされるものの、環境に配慮しながら精錬すれば中国産の20倍になるという試算もあると説明する。政府は来年(2027年)に大規模実証を行い、2028年に産業化としているが、適正なコストで産業に定着するには10年、20年かかるという声も聞かれるという。
規模を広げればコストは下がるのか、下がらなくても続けるべきか、という問いに対し、羽生田氏は、設備の改善や規模の拡大で固定費が下がるので、ある程度は下がるとみる。ただ、政府が計画している事業の引き上げ目標は、採算が取れる量に比べてごく一部にとどまっており、中国と同じ水準まですぐにコストが下がることは期待しにくいという。それでも羽生田氏は、経済合理性がすぐに見込めないとして諦めた資源・エネルギー開発はこれまでたくさんあったと指摘し、地熱発電を例に挙げた。今回の高市政権にはしっかり開発していく意思が見られるので、期待したいと述べている。
中国の輸出規制、すでに製造業に影響
番組の最後は、中国のレアアース輸出規制が日本の製造業に与えている影響に移る。羽生田氏によると、いよいよ実際の影響を伝える報道が出始めた。レアアースを使う磁石メーカーには中小企業が多く、今年に入って中国からの輸入量が3分の1に激減したという話も聞かれるという。
羽生田氏が強調したのは、輸出が止まることよりも、遅れて先が読めないことの厄介さだ。中国は輸出審査を厳しくしており、許可が出ても納期が大きく遅れることがある。企業にとっては、来ないと言われればそれなりに対応できるが、来るには来るが遅れ、いつ届くか分からないのが一番困る。すでに顧客に納期を約束しているからだ。
特に不足しているのは永久磁石に使われるレアアースで、ネオジム、テルビウム、ディスプロシウムなどがある。用途は電気自動車のモーター、スマートフォン、軍事品と非常に幅広い。羽生田氏は、一部のレアアースが入らないだけで完成品が全部止まってしまう典型的な分野だと指摘した。海底のレアアース泥が実用化されるまで時間がかかる一方で、中国依存のリスクはすでに現場で表面化している、というのが番組の締めくくりの状況である。
3月上旬、東京・中央区にある明治ホールディングスの本社。9階のオフィスに慌ただしい動きが。「失礼します」「失礼します」。この部屋の主は医薬品事業を担うMeiji Seika ファルマの永里敏秋社長です。
「すごい安いですよ」「えらいことになってんな」「していただいたんですけど、問題としてはもう現在ペルシャに対……」。海外の担当者から緊急の報告を受けていました。
航空輸送に関しては、ロシア上空に続き、イラン上空も空域封鎖になって、中東諸国に空港発着する航空便や、運航が停止されているところがございまして。「1と2はちゃんと動いてますよ」と。
この混乱の原因は、2月にアメリカとイスラエルが開始したイランへの軍事作戦。そのため、多くの航空貨物が経由している中東地域の空港が機能停止に陥ったのです。さらに海上ではイランがホルムズ海峡を封鎖し、物流に深刻な影響が出始めていました。
いずれにしてもね、原料、そういうもので、やっぱりどうしても運ぶ時間が長くなってしまうから、ちょっと早め早めに、そこはちゃんと覚えてくれる。「はい。はい」。この後どうなるか、まだ不透明だし。
実は日本の医薬品のおよそ7割が原薬や原材料を海外からの輸入に頼っています。その調達を担っている清水さん、先が見えない状況に気を揉んでいました。
状況確認なんですけどっていうところで、イランの関係なんですけど、今後ってどうですかねっていうところなんですけども、まず1つ目が。複数の輸送業者へ現状確認の電話をかけ、さらにメールでも情報を集めます。
患者さんにお薬が届けられなくなって、等々と影響が出るというところも、やっぱり一番の問題だと思いますんで。
こうした海外から薬が調達できなくなる事態に備え、Meiji Seika ファルマではあるプロジェクトを進めていました。見せてくれたのは、「ペニシリンの種って言いますかね」。
明治製菓は1994年にペニシリンの国内製造から撤退しました。しかし30年以上の時を経て、再び国産化に向け動き出していたのです。
ペニシリンは20世紀最大の発見の1つと言われています。1928年にイギリスの細菌学者フレミング博士がアオカビの培養液から抽出した世界初の抗生物質。第2次世界大戦では戦場で多くの兵士の命を救いました。日本では戦後、GHQの指導のもと大量生産の技術を確立。人類の平均寿命を大きく引き上げた奇跡の薬です。
ペニシリンの製造再開はMeiji Seika ファルマ社長、永里さんの肝入りプロジェクト。
残念ながら、コスト競争力で中国に負けまして、撤退したのがもう31年前になります。非常に悔しい思いをいたしました。経済安保の観点からですね、日本に、国内回帰と。
30年ぶりの国産復活。その鍵を握るのが山田浩一郎さん。59歳の技術者です。30年前にペニシリン製造の中核を担った数少ない経験者です。
ペニシリンと共に生きてきましたんで、私も。最後にまたペニシリンの生産に携われるっていうのは、本当、運命感じてます。
1年に課せられたペニシリンの国産化。日本人の命を守る戦いに独占密着しました。
薬の原材料を中国に依存する現状。もし供給が止まったら。「抗菌薬がなくなることで、救えるはずだった人が救えなくなる。治療ができていないのと変わりはない。死に直結するので非常に怖い」。
30年前の撤退の裏にあった知られざる計画。「ペニシリンを何としてでも国内に残すべきだというんで、とにかく何とか粘って頑張ろうと」。今、リベンジが始まる。
定年迫る昭和のたたき上げから令和の新入社員へ。「私の持ってる知識が役に立つのであれば、全て出し切りたいっていう」。技と魂を伝える、復活、令和のペニシリン。
東京・中央区に本社を置く明治ホールディングス。資料室に展示されていたのが、明治が医薬品事業を始めるきっかけとなったものです。
こちらが1946年に取得したペニシリンの製造販売許可書です。
戦後の医薬品不足の中、明治製菓はこの瓶を使ってペニシリンの培養を始めました。実はこれ、シロップの容器を流用したもの。その後、得意の発酵技術を生かし、ペニシリン由来の抗菌薬を海外へ輸出するまでになります。
Meiji Seika ファルマの岐阜工場。1971年に国内最大規模となるペニシリンの原薬工場として産声を上げました。最盛期には年間1000トンを超える量を製造していたのです。しかし1985年のプラザ合意により円高が急速に進行。国産ペニシリンは価格競争で窮地に陥ります。
1980何年かな。昭和63年だね。ペニシリンを何としてでも国内に残すべきだというんで、明治製菓の医薬品部門としてプロジェクトを組んで。
1988年、社内でペニシリン製造の存続をかけた原価低減プロジェクトが立ち上がりました。与えられた期間はわずか1年。永里社長はそのメンバーに選ばれたのです。当時30歳でした。
柔軟な頭と体力で、この難局の打開に向けたいと考える。要は柔軟な頭と体力で選ばれたんじゃなかろうかと。抜本的な技術改良をやってコストを下げる。いわゆる中国の価格レベルまで対抗できるようにしようということで、とにかく何とか粘って頑張ろうと。
しかし。「中国がすごく競争力をつけて、技術もすごく上がってきて、本当に残念なんですけど、ペニシリンの発酵をやめようということになった次第です」。
結局、1994年、明治製菓はペニシリンの国内製造から撤退。日本の国内でペニシリンを製造する会社はなくなりました。一方の中国は抗菌薬の原材料で世界トップに。
ここは抗菌薬の原料を作る中国の大手企業。広大な化学工業団地にあり、そこでは火力発電所も完備しています。安い電気を使ってペニシリンなどを大量に生産。この工場から世界の20カ国以上に輸出しています。今や日本も抗菌薬の原料のほぼ100%を中国からの輸入に頼っているのです。
東京ベイ・浦安市川医療センター。地域の中核病院です。薬の海外への依存。そのリスクを思い知らされる事態が起きました。
もう事件ですね。大事件みたいな。突然でしたね。セファゾリンが止まりますので使えません、みたいな話を受けました。
2月15日、静岡・清水港。入港してきたのは全長210メートル、そして高さ130メートルにも及ぶやぐらのような鉄塔を備えた船だ。建造費560億円をかけて作られた探査船「ちきゅう」。1カ月にわたり、日本の命運を握る物質を採掘してきた。
海底から採掘された黒い泥。これが日本にとっての宝とまで言われるレアアース泥。採掘した場所は日本の最東端、南鳥島沖の海底。水深はおよそ6000メートルだ。今後、成分分析を進め、来年2月、大規模実証試験を行い、2028年度以降に国産レアアースの産業化を目指す。
清水港に見に来ていた住民たちも期待を寄せる。「子供が大きくなった時に、ちっちゃい時に見に来たよって言えるように見に来ました」「またこれから清水が盛り上がっていくと面白いなと思う」。
レアアースは世界の生産量の7割を中国が占め、日本も63%を中国から調達している。脱中国依存に向け、内閣府主導で今回の採掘までに400億円もの国家予算が投じられている。
まさに歴史的な……が発生したのではないかと思います。いろんな経済成長戦略、高市内閣での成長戦略の方の17号としての、島での生産を進めてまいりたいと思います。
高市総理も今日の施政方針演説で発言を。「資源開発及び資源循環の取り組みを加速します。特に南鳥島周辺海域の海底のレアアース資源の活用に向け、取り組みを急ぎます」。
今月4日には岡山での街頭演説で、日本はこれから今の世代も次の世代もレアアースには困らないとまで発言していた。
レアアース泥を発見したのは東京大学の加藤・中村・安川研究室。今から15年前の2011年だ。ここから15年での大規模の成功は、高市総理が期待を寄せる通り、本当に大きな意味を持つのか。中村教授を取材した。この手前に。
まず気になるのが、どれだけレアアースがあるのかということ。「このレアアース泥は南鳥島沖にはどのくらい眠ってるんですか?」
レアアースの量として、レアアース泥としてはもう莫大な量が眠っていて、今調査している範囲で言うと、その約2500平方キロメートル、このEEZ全体の1%未満ぐらいで、レアアースとして1600万トンぐらいはありそうだっていうのを発表してるんですけども。
1600万トンの量ですよね。日本が1年間で使うレアアースは2万トンほど。南鳥島沖の海底にあると見込まれているのは800年分にもなる量だ。
レアアースって17元素、総称されてるだけのことがあって、ほぼ一緒にいて、その分離するのは非常に難しいんですけども。
そもそもレアアースとは17種類の特定の元素のことを指し、少量で素材の性能を高めることから産業のビタミンとも呼ばれている。
この緑の粉の方は蓄光顔料って言って、夜光塗料とか、非常口とかに貼ってある。光を吸収して夜に光る。「はい。はい」。これ今もう光ってるんですけど、こうやって暗くすると分かります。
実際に明かりを消すとご覧の通り、レアアースの力で長時間光るのだという。
やっぱりもう本当に日常生活に必要なテクノロジーのものには欠かせないんですね。「そうですね。思いますね。スマホとかもそうだし、照明とかも全部、この辺の照明もほぼ使ってると思いますし。乗ってきた車とかにも使われてますしっていう」。
例えばLEDなどに使われるイットリウムは780年分。EVモーターなどに欠かせないディスプロシウムは730年分など。南鳥島沖には大量のレアアースが眠っているという。
研究で分かったのは、レアアースが含まれているのは意外なものだったということ。「透明もいっぱいあります。青白い、ちょっと透明な破片みたいなの」「そうですね。入ってるんですけども、これが魚の骨とか歯の破片なんですが、これにレアアースが実はくっついてるということが分かってます」。
実はレアアースは海底に堆積した魚の歯や骨などのカルシウムに吸収される性質を持つ。3000万年以上の年月をかけてレアアースが集まり、濃縮されていったのだ。
初めて研究室で分析した時は、その存在を信じられなかったという中村教授。「それまでに世界中の泥を、太平洋中の泥を集めて研究してたんで、どの辺ぐらいの、ものなのかなと思ってたら、全然比べ物にならないぐらいいいものだったんで、それはちょっと予想外だったのと、どうやってそういうものができるのかなみたいな方は、すごく興味はそそられました」。
期待が集まる一方で懸念もある。その中、いわゆる産業って言われるところですんで、ちょっと取ってくることは簡単にできるんで、僕らも研究して、ちょっと取ってきて研究するっていうのは困らないんですけど、産業化という部分で、大量に取ってきて供給するっていうところが、今後は大事になるかなと思いますね。
産業化のために大量のレアアースの採掘、輸送、そして抽出には莫大な費用がかかる。中国のレアアースに比べて20倍のコストがかかるという試算もある。ただ、国産への期待は大きい。南鳥島沖で取れるレアアースには中国のものと大きな違いがあるというのだ。
やっぱり1つは産業上重要で、より希少な重レアアース、重い方のレアアースっていうのが非常に豊富だっていうところが1つと、あともう1つは、放射性元素がないっていうところで。やっぱり陸上のレアアースは、そこの処理に四苦八苦してるところがあるので。
中国で取れるレアアースの鉱石は、取り出す際に放射性物質が発生し、環境への負荷が避けられない。一方、海底のレアアース泥は放射性物質をほとんど含んでいないといい、その処理が簡単になる可能性があるというのだ。
見つけたその時から、その発見者の1人として、やっぱりこれは非常にいい資源だということは分かってきたので、ぜひ日本の産業に役立ててほしいっていうのは、もう本当に見つけた時からずっと思ってるということなので。それがいよいよ形になりそうだっていうところで、本当に嬉しく思っていて、これ一刻も早くですね、やっぱり産業に使えるように開発するっていうところを進めてほしいっていうのが、今、願ってるところになります。
ゲストは経産省で通商政策を担当し、現在は内閣府の国際標準戦略部会の委員でもある、オウルズコンサルティンググループの羽生田慶介です。よろしくお願いします。「よろしくお願いします」「お願いいたします」。
松葉さん、今回取材してみてどうでしたか?
中村先生にいろいろと、レアアースがどのようにして成り立っているのかっていうお話を主に聞いてきて、それがすごく面白くて。魚の骨がすごく長い時間をかけて海にあるものを吸着しているっていうお話はすごく面白かったですし、レアアース泥の研究だったり調査自体は、日本がすごく進んでいるっていうお話は、この先期待したいなというところではあるんですけども。
でも先生がおっしゃっていたように、やはり産業化への課題っていうところが今は一番大きいのかな。この先どうなるのか、注目したいところではあるんですよね。なので、まずは羽生田さん、このレアアース泥の引き上げについて、どう評価されますか?
まず深海からレアアース泥を引き上げられたこと自体、初ですから、それ自体はすごい前進ですよね。ただ、引き上げられたからといって、すぐにレアアース国産化というわけではないっていうのは、やっぱり冷静に見なきゃいけないとは思います。製品として量産化するまでには、クリアしなければいけない課題がたくさん残ってますんで、長期の戦略オプションができそうだと、こういう期待っていうのが正しい表現になりますよね。
やっぱり大量に引き上げる上で一番課題になってくるのは、コスト面でしょうか?
そうですね。まず深海から取るっていうだけでコストがかかりますし、やっぱりしっかり環境配慮。海のものは陸のものよりも少し環境負担が少ないとされてるんですが、それでも環境配慮しながら精錬すると、さっきあったように、コスト面では今中国で取ってるのよりも20倍になっちゃうとかですね。このぐらい大きい試算ではありますというところです。
政府は2027年、来年に大規模実証して、次の年、28年に産業化って言ってるんですけども、しっかりしたコストで産業に定着するまでには、やっぱり10年とか20年とか覚悟しなきゃっていうふうな声が聞かれますよね。
大規模化して10年、20年、定着したらコストは下がってくるものなのかどうか。それと、下がらなかったとしても、やっぱり続けるべきものなのかどうか、いかがですか?
ある程度コストは下がります。設備が改善されたり、規模が増えていけば固定費が下がってきますので、ある程度は下がると思ってます。ただ、今政府が計画してる事業だと、引き上げ目標がそもそも採算が取れる量の1/1ぐらいにしか、まだ目標も設定してませんから。そういう意味だと、すぐ中国と同じ水準までコストが下がるっていうのは、ちょっと期待しづらいというふうには思います。
ただ、すぐに経済合理性が期待できないから、ちょっとやめとこうみたいなふうに諦めた資源エネルギー開発って、これまでいっぱいあったんですよね。地熱発電とか、そういうのがあるという意味だと、今回、高市政権っていうのは、これをしっかり開発していくっていう意思が見られますんで、期待はしたいですよね。
レアアース泥の採掘に成功し、国産化に希望が見えてきましたが、実用化には時間がかかります。羽生田さん、そんな中、中国の輸出規制による製造業に対する影響っていうものが、少しずつ出てきているようですね。
そうですね。いよいよ実影響の報道が出始めましたよね。磁石メーカー、磁石を作ってるメーカーとかはレアアースを使うわけですが、中小企業が結構多くてですね。そういうところの話を聞くと、今年に入って中国からの輸入量が3分の1に激減したとか、こんな報道なんかも聞かれるようになりました。
中国は輸出審査を厳しくしてるわけですけど、仮に輸出許可が出ても納期がすごく遅れるとかあるので、企業からすると、来ないって言ってくれたらそれなりの対応をするんですけど、来るんだけれども遅れるし、いつ来るか分からないっていうのが一番困って。お客様に約束しちゃってるので、困るみたいですよね。
特にどの分野のレアアースが今足りてない状況なんでしょうか?
やっぱり永久磁石と言われる部分ですね。それに使われるレアアースで、レアアースの名前としてみれば、ネオジムとかテルビウムとかディスプロシウムとかあるんですけども、使い道としては電気自動車のモーターとか、スマホにも使われますし、軍事品にも使われますし、すごく幅広いので、一部のレアアースが入らないだけで完成品が全部止まっちゃうっていう典型的なジャンルですよね。
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