食品用ラップより薄い膜で大気中のCO2を回収する 九州大学発スタートアップ「Carbon Xtract」の挑戦

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概要

地球温暖化が原因とされる豪雨や猛暑への対策は、すでに街のあちこちに組み込まれている。番組はまずその身近な例を紹介し、次に大気中のCO2を回収して資源として使おうとするスタートアップ、Carbon Xtract(カーボンエクストラクト)を取り上げる。同社の中心技術は、九州大学が発明した極めて薄い「ガス分離膜」である。スタジオにはCEOの森山哲雄氏とCTOの藤川茂紀氏が招かれ、MCの若林正恭氏と創業の経緯や研究への思いを語った。

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渋谷駅の「上る段差」と名古屋の浸水

番組の冒頭は、渋谷駅の地下入り口にある段差である。地下へ下りるはずの入り口なのに、手前で一段上るつくりになっていて、「段差注意」の表示まである。街で声をかけられた人の中には「設計ミス?」と首をかしげる人もいた。一方で、愛知県から来た男性は、水が入らないようにするためだとすぐに答えた。名古屋では先月の大雨で、地下鉄駅の改札付近まで水が流れ込んでいる。男性はその被害を見て、この段差の大切さが分かったという。

この構造は「マウンドアップ」と呼ばれる浸水対策だ。入り口を高くして、地下に水が流れ込まないようにしている。番組の説明によると、渋谷駅は坂に囲まれた地形のため、地下への入り口のほぼすべてにこの対策が施されている。

番組は、こうした対策が必要になった背景に異常気象があると説明する。この夏も千葉や北陸などが激しい豪雨に見舞われ、記録的な猛暑もあった。海外でもネパールの土石流など災害が相次いでいる。番組はこれらを、二酸化炭素などの温室効果ガスの増加による気温上昇や極端な大雨と結びつけて紹介した。若林氏は、自分が子どもだった40年ほど前と比べて明らかに暑くなり、雨の降り方もまったく変わったと実感を語った。

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雨庭、マンホールアンテナ、遮熱性舗装

渋谷以外の対策も紹介された。東京・下北沢には、子どもたちが遊ぶ広場の一角が周りより少し低くなっている場所がある。これは「雨庭」と呼ばれる広場で、雨水を一時的に貯めてゆっくり地面に染み込ませる。下水道や道路に流れ込む水の量を減らし、洪水や浸水を防ぐのに役立つという。番組によると、雨庭は都内のいたるところにある。

千葉駅前のマンホールには「マンホールアンテナ」が入っている。水位計と通信機器が組み込まれていて、下水道の水位をリアルタイムで監視できる。これまで見えなかったマンホールの中の水の状態が、外から分かるようになったわけだ。千葉市はこの情報をホームページで公開しており、パソコンやスマートフォンから誰でも確認できる。登録しておけば、水位が上がったときにメールで知らせが届く。千葉市の担当者によると、現在は計6カ所の水位を公開している。担当者は、浸水しそうなときに防水板や土のうを設置するかどうかの判断材料に使ってほしいと話した。避難行動の目安にもしてほしいという。

暑さ対策の例は道路だ。最近増えているグレーの舗装は「遮熱性舗装」と呼ばれ、路面の表面温度を下げる技術である。9月下旬にサーモグラフィーで比べると、黒い一般的な舗装との温度差ははっきり表れた。遮熱性舗装はおよそ38℃だった。番組の説明では、真夏なら路面温度の上昇を最大8℃抑えられる。

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大気からCO2を取り出すという選択

番組は続いて、温暖化そのものに立ち向かう企業を紹介する。Carbon Xtractは福岡市の九州大学に拠点を置き、2023年に創業した。社員は10人。CEOの森山哲雄氏(43歳)は大手総合商社の双日から独立した。

森山氏は、同社を大気からCO2を回収する技術を開発する会社だと説明する。二酸化炭素は一度放出されると、100年、200年という単位で生活圏の中に滞留する特性がある。そのため、これまで出たCO2がずっと積み重なってきたのが今の状況だという。番組のナレーションは、CO2はいまや排出量を減らすだけでなく、回収して利用する時代になっていると述べた。これまでは工場などから回収するのが一般的だったが、最近は大気中から直接取り出す技術も注目されている。Carbon Xtractはそこに挑む企業の一つである。

一般的な方法は、吸着剤などでCO2を捕まえて回収するものだ。同社のやり方はこれと違う。森山氏は、中心となる技術は九州大学が発明した「ガス分離膜」だと説明した。CO2を分離する性能は世界トップレベルの膜だという。

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厚さ約30ナノメートルの膜と回収装置の実演

この膜を中心になって開発したのが、CTOの藤川茂紀氏(55歳)である。藤川氏は九州大学の教授でもある。藤川氏によると、現在作っている中で最も薄い膜は約30ナノメートルで、食品用ラップの300分の1ほどの薄さだ。インフルエンザなどのウイルスよりもさらに薄いという。

回収装置の中には、この膜を貼り付けたフィルターが入っている。膜は酸素や窒素よりもCO2を多く通す性質があり、空気をろ過するようにCO2を集められる。装置の上部から入った空気が膜のフィルターを通り、ポンプで吸い込まれる仕組みだ。

番組では実際に装置を動かした。スタートを押すとポンプが動き出し、空気中から二酸化炭素を少しずつこし取っていく。画面のグラフでは、紫の線が部屋のCO2濃度、赤い線がこし取った後のCO2濃度を表す。赤い線は回収を始めた直後から上がっていき、CO2が集まって濃度が高くなっていく様子が確認できた。

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「不可能」と思われていた薄膜化

番組によると、薄い膜でCO2を回収する技術は世界でも類を見ない。ただし藤川氏は、膜を薄くすればよいこと自体は昔から知られていたと話す。自分たちが最初に考えたわけではないという。問題は、薄くすると破れやすく、欠陥もできやすいことだった。そのため、基本的には不可能だと思われていたという。

藤川氏らはこの壁を越えるため、10年以上研究を重ねて、ようやく技術を形にした。膜が薄く性能も高いので、装置を小さくできるのも特徴だ。同社は、さまざまな場所でCO2を回収して利用することを目指している。

森山氏は、世の中では脱炭素が叫ばれ、炭素が悪者扱いされがちだと指摘する。そのうえで、自分たちが考えているのは、必要なときに必要な場所でスイッチを入れればCO2が出てくるような仕組みだと話した。せっかく大気中にたくさんあるのだから、うまく利活用しながら循環する社会を作りたいという。番組はこれを、いつでも、どこでも、誰でもCO2を回収して利用できる循環型社会と表現した。

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商社の新規事業から独立へ

スタジオで若林氏は、VTRを見ると単純に「この装置をもっと増やしてほしい」と思ってしまうと感想を述べた。そのうえで二人の関係を尋ねた。

森山氏は総合商社に勤めていた2021年から、社内で新規事業に取り組んでいた。環境がどんどん変わる中で、脱炭素に関する新しいビジネスを作ろうと考えたという。大学の先生方の優れた技術を探すうちに、藤川氏と出会った。

大企業からの独立を止められなかったかと若林氏が聞くと、森山氏は、会社にはもちろん最初は止められたと答えた。「本当にいいのか」と言われたという。一方、妻は、好きな仕事にしっかり取り組んでいること自体が大事だと考えてくれた。そして「ダメだったら私が稼ぐから」と言ってくれたと明かした。

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研究者の動機は「息子に言いたい」

自分の研究が社会で使われそうなところまで来て、うれしいかと聞かれた藤川氏は、思いを語った。大学には素晴らしい研究がたくさんあるが、社会と密接に結びつく研究は意外に多くない。藤川氏はそう話した直後に「少ないことはない」と言い直しつつ、そういう面があると述べた。

藤川氏のきっかけは、東京オリンピックのころに見たテレビ番組だ。ある建設会社の人が、自分の子どもに「これはお父さんが作ったんだぞ」と話している場面があった。藤川氏も、自分の研究の成果を息子に「お父さんが作った」と言いたい。それが大きなモチベーションの一つだという。

13:34

天気予報で「温暖化」と言うべきか

番組の後半は、地球温暖化の現状の解説に移る。若林氏は、天気予報で「暑くなりましたね」と言うときに、正直に「温暖化」と言えばいいのにと思うと話した。地球温暖化でこうなっています、とはあまり言わないので、もっと言ったほうがいいのではないか、という問題提起である。子どもの頃と比べて本当に暑くなったという若林氏の実感に、解説役の新美陽大氏は「その通り」だと応じた。

若林氏がこのままいくともっと暑くなるのかと尋ねると、新美氏は、このままいけばもっと暑くなると答えた。この動画はそこで終わり、温暖化がどこまで進むのかという問いを残している。