金利5%台でも崩れない米国経済:村松一之氏が「良い金利上昇」と判断する理由

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概要

テレビ東京「モーサテサタデープレミアム」で、和キャピタルの村松一之氏が「アメリカ一強と世界経済のリスク」をテーマに解説した。聞き手は藤井由依アナウンサー。イラン情勢、エネルギー高、利上げ、長期金利5%台という厳しい外部環境のなかで、米国経済と企業業績がなぜ底堅いのか。足元の金利上昇は株式市場にとって「良いもの」なのか「悪いもの」なのか。村松氏はこの2点について、経済指標、業績予想、金利の分解をもとに見解を示した。番組タイトルにある「世界経済のリスク」の本格的な検証に入る前で字幕は途切れているため、本記事は米国経済の現状分析と金利上昇の評価までを扱う。

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前日の米国市場:悪材料のなかでのセクターローテーション

冒頭では前日の米国市場が確認された。主要3指数はそろって上昇し、ダウ平均は423ドル高の5万1654ドル、ナスダック総合指数は172ポイント高の2万7366、S&P500は46ポイント高の7811で取引を終えた。S&P500は3日ぶりの反発で、6日に付けた最高値を上回る場面もあった。前日に売られすぎていたとの見方からハイテク株を買い直す動きがあり、ダウは午後に上げ幅を広げ、一時500ドルを超えて上昇した。来週からは銀行を中心に主要企業の決算発表が本格化する。

村松氏は、オープンAIのAI関連の売上が当初の見込みをかなり下回っているのではないかといった悪材料も出ているとしたうえで、市場はセクターローテーションを繰り返しながら冷静に対応しており、比較的順調だと評価した。

債券市場では、米10年国債利回りが5.242%となった。原油先物が一時1バレル92ドル台まで上昇し、インフレへの警戒から国債が売られる場面があった。ただし、14日発表のCPIと15日のFRB議長の討論会を見極めたいという投資家も多かったという。ドル円は158円30銭台で、米金利の上昇を受けて円売りが優勢だった。日経平均は週中に7万円を超える場面があったものの、その水準を維持できなかった。

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外部環境が悪くても景気は底堅い

本題に入ると、村松氏は米国経済を「やっぱり強い」と表現した。強いと言えるのは、外部環境が厳しいにもかかわらず景気が高い水準で推移しているからだ。同氏が挙げた悪材料は次のとおりである。イラン戦争はまだ終わっていない。エネルギーショックはいったん落ち着いたように見えたが、第2波のような形で影響が続いている。年初の時点でFRBは利下げを示していたが、9月には利上げに転じ、年内の追加利上げも見込まれている。長期金利もかなり高い水準に張り付いたままだ。

それでも景気は高い水準を保っている。根拠として村松氏はまずISM景況指数の長期チャートを示した。製造業、非製造業ともに右肩上がりで推移している。トランプ大統領は公約でアメリカ製造業の復活を掲げていた。村松氏によれば、現状は大統領が描いた形の復活ではない。それでも経済指標を見る限り、米国の製造業は「結構もう復活してきてるな」と感じるほど好調だという。

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経営者マインドの明るさ

次に村松氏が示したのは、企業経営者の景況感である。大企業については、米国の大企業経営者が参加するビジネス・ラウンドテーブルの調査で、1年先の見通しの変化を確認した。外部環境が悪化しても底堅さを保っている。中小企業については中小企業楽観指数を示した。底に当たるバイデン政権時代と比べると、水準そのものがかなり高い。

村松氏は、トランプ政権の政策には色々あるとしつつ、規制緩和や好調な企業業績が経営者のマインドを明るくしており、これが経済の強さにつながっていると評価した。

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雇用:「採用しないが解雇もしない」状態は悪くない

雇用については見方が分かれると村松氏は認める。米国の労働市場はよく「ノーファイア・ローハイア」と表現される。企業は採用に積極的ではないが、リストラにも慎重だという意味だ。

それでも村松氏は、雇用は悪くないと判断する。失業率は4.2%前後で、歴史的に低い水準にある。一昔前までFRBは米国の完全失業率を5%台と見ていたので、現状は「ほとんど完全雇用」に近いという。非農業部門雇用者数の伸びは鈍化しており、3カ月平均で5万1000人にとどまる。村松氏は、移民の減少と高齢化を考えれば、米国経済が均衡を保てる十分なペースだと説明した。労働市場の状態が昔と変わっただけで、決して悪くないというのが同氏の見方である。

先日の雇用統計についても、ヘッドラインはやや悪化したものの、就業者数は40万人伸び、平均賃金には賃金インフレの兆候がほとんどなかった。村松氏は、米国にとってもFRBにとっても安心できる内容だったと評価した。

企業業績は「めちゃくちゃいい」

企業業績について村松氏は「めちゃくちゃいい」と言い切った。通常、EPS(1株当たり利益)の成長率は前年同期比5〜10%程度で推移する。これに対し、2023年第2四半期を底に伸びが加速してきた。村松氏によれば、2026年第2四半期は特殊要因を含むが、前年同期比53.7%増という高い伸びを記録した。来週以降に発表が本格化する第3四半期も約30%の成長が見込まれ、その後も高い成長が続く予想になっている。

グラフでは2027年第2四半期の伸び率が落ち込んでいるが、これは2026年の数字が高すぎた反動にすぎないと村松氏は説明した。通年では、今のところ30%近い増益が見込まれている。

村松氏が重視するのは、この予想が高金利、エネルギー価格の上昇、ホルムズ海峡の問題をすべて織り込んだうえで、むしろ上方修正されてきた点だ。経済と企業業績はともに今のところ極めて好調だと言ってよく、だからこそ悪材料が続いても株価は崩れていない、というのが同氏の見立てである。

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金利と業績のマトリックス

藤井アナは「今のところ」という条件に注目し、金利が上がり続ければ企業にとって痛手になるのではないかと尋ねた。村松氏は、金利上昇は基本的に常に株式市場にとってネガティブだと認める。これを自転車にたとえた。金利上昇は向かい風であり、こぐ力(業績)が強ければ負けないが、向かい風であることに変わりはない。

そのうえで村松氏は、横軸に企業業績の良し悪し、縦軸に長期金利の高低をとったマトリックスで局面を整理した。

  • 左上(金利高・業績悪):スタグフレーション型で最悪の局面。それまで株価がいくら好調でも、一度は必ず調整に入る。しかも反転のきっかけをつかみにくく、袋小路に入りやすい。ただし、基本的にはあまり起こらない。
  • 左下(金利低・業績悪):景気後退期によく見られる局面。中央銀行が利下げをするので金利は低い。株価はいったん下落するが、逆業績相場から利下げによる金融相場へ移る過程にあたる。市場は先を読むため、どこかで大きく反発する。村松氏はこの局面を買い場とみる。
  • 右下(金利低・業績良):いわゆる「株高・不況」。株価指数を構成するグローバル企業の業績は良いが、経済全体はあまり良くないため、中央銀行は利下げをする。株式市場はそれほどの利下げを必要としていないので強い追い風を受け、バリュエーションが上がってバブルに向かいやすい。村松氏は、株式市場と経済が乖離しているように見えることは珍しくないと付け加えた。
  • 右上(金利高・業績良):現在の局面。業績は絶好調だが、10年金利は5%を超え、一時は5.36%まで上がった。

右上の局面では、金利と業績の綱引きが起きている。金利の逆風は強まっているが、業績も強い。そのため、金利がなぜ上がっているのかという中身が非常に重要になる、と村松氏は述べた。

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結論は「良い金利上昇の部分が多い」

足元の金利上昇は良いのか悪いのかという問いに、村松氏は結論として「いい金利上昇の部分の方が多い」と答えた。同氏は、ここまでの米金利上昇を2つの段階に分けて説明した。

第1段階は、2年金利を中心とする短期金利の上昇である。年初の市場は年2回程度の利下げを織り込んでいた。しかしインフレの再燃や原油高などから、今では利上げを、それも複数回を織り込むようになった。グラフでは7月ごろから2年金利が急上昇している。村松氏自身は、年内にもう1回程度の利上げがあり、それで打ち止めになるとみている。

村松氏は、この2年金利の上昇はすでに終わったと考えている。市場は来年9月までに3回の利上げを織り込み済みで、2年金利はひとまず4.8〜5%程度で決着した。この先、短期金利の上昇に引っ張られて長期金利が上がる展開にはならないという。FRBが利上げを見送る、あるいは原油価格が下がれば、2年金利はむしろ低下する。短期金利主導の長期金利上昇は一服した、というのが同氏の見方である。

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5年先5年金利の急上昇が示すもの

第2段階は、5年先を起点とする5年金利(5年先5年金利)の上昇である。村松氏は、米国の中期的な強さや潜在成長率が反映される金利だと説明した。この金利はゆっくり上がってきたが、足元で急上昇している。

AIなどによって米国の潜在成長率が上がるのではないかという議論は以前からあった。そこにウォーシュFRB議長が、現在の米国の金利水準は経済にダメージを与えていないと発言した。村松氏はこれを、今の高い金利水準に見合う成長力が米国にあると言っているのと同じだと解釈する。そうであれば、今の金利上昇は悪い形で起きているのではなく、将来の米国経済の強さに見合う水準へ戻る動きであり、悪い金利上昇とは言えない。藤井アナが自転車のたとえに戻して「こぐ力があるから向かい風も越えていける」とまとめると、村松氏はそれが自分の見解だと応じた。

タームプレミアムの上昇をどう見るか

一方で村松氏は、悪い金利上昇に当たるタームプレミアムも上がってきていることは否めないと認めた。米10年国債のタームプレミアムは現在90ベーシスポイント程度で、少し前の60ベーシスポイントから30ベーシスポイントほど急に上昇した。

ただし村松氏は、長期の平均と比べればまだ高くないと指摘する。米10年国債のタームプレミアムの長期平均は100ベーシスポイントを超えている。しかもその期間には、FRBの国債買い入れで人為的に抑えられていた時期が含まれる。1990年代の平均は200ベーシスポイントを超えていた。これらを踏まえ、90ベーシスポイントという水準は上昇してはいるものの、悪い金利上昇を示すタームプレミアムとは言えないと村松氏は述べた。

「AI・半導体」が意味するもの

視聴者から、業績の良さはAI・半導体関連によるものかという質問が寄せられた。村松氏は、AI・半導体がキーワードであることは認めつつ、5年先5年金利が織り込んでいるのはAI・半導体企業そのものの好業績ではないと説明した。市場が織り込んでいるのは、AIが社会に幅広く浸透することで米国全体の力が増す姿だという。例として、製薬会社の生産性向上、製造業へのロボット導入、ソフトウェアの強化を挙げた。

ただし村松氏は、それが本当に実現するかどうかは分からないと留保した。5年先の金利はそうしたシナリオを織り込んでいるにすぎない。市場がその姿を描き、FRBも同じ見方をしているという段階だ。

企業は耐えられても、個人は耐えられるか

最後に、別の視聴者から、金利上昇は住宅関連に悪影響を与えるのではないか、住宅ローン金利の上昇は悪い金利上昇と考えられるかという質問が寄せられた。藤井アナは「企業は耐えられるとして、個人は耐えられるのか」と問いを整理した。

村松氏は、個人にとっては「最悪」だと答えた。米国の住宅ローン金利は7%を超えている。米国の住宅ローンは30年固定が一般的で、今から組もうとすると7.4%程度という「ちょっと信じられないような水準」になるという。実際に住宅ローンの申請件数は大きく減っており、村松氏はそれも当然だと述べた。

字幕はここで途切れている。企業業績の強さが金利上昇を吸収している一方で、高金利の負担は家計、特に住宅市場に集中している。この点が、番組が掲げた「アメリカ一強」のリスクを論じる入り口として残された。