少額から事業用不動産へ J-REITと不動産セキュリティトークンが変える個人の資産形成
テレ東BIZ ダイジェスト日本経済新聞社の特別企画「REAL ESTATE FRONTLINE」の第2回は、「個人でも参加できる不動産での資産運用」がテーマである。オフィスビルや大型商業施設、ホテルといった事業用不動産への投資は、これまで富裕層や機関投資家のものと見られてきた。番組ではそれがなぜ個人にとって身近になりつつあるのか、インフレの時代にどう向き合えばよいのか、個人の資金が都市や社会に何をもたらすのかを、3人の経営者が論じた。出演は、CBRE代表取締役社長の辻貴史氏、KJRMホールディングス代表取締役社長の鈴木直樹氏、KDX STパートナーズ代表取締役社長の中尾彰宏氏。進行はフリーアナウンサーの森本智子氏が務めた。
「貯蓄から投資へ」の受け皿としての不動産
冒頭で辻氏は、日本の個人が持つ預貯金は1000兆円を超えるとされると述べた。今後は物価が上がり、日本も本格的なインフレの時代を迎える。そうなると現金の価値は目減りすると考えられ、資産形成への関心が高まって「貯蓄から投資」の時代になる、というのが辻氏の見立てである。そのうえで、インフレに強い不動産に個人も参加できる枠組みを作っている2社の話を聞くのが楽しみだ、と議論の方向を示した。
2社の立ち位置:KJRMとケネディクス
鈴木氏によると、KJRMホールディングスは、グローバルなプライベート・エクイティ会社KKRの日本における不動産運用部門である。もともとは三菱商事とUBSの合弁会社として25年前に設立され、4年前にKKRグループに入った。上場J-REITの日本都市ファンド投資法人と産業ファンド投資法人、それに私募ファンドを運用しており、運用資産は約2兆8000億円にのぼる。隣のケネディクスグループとは競い合う関係にあり、両社とも国内最大級の不動産運用会社だという。
中尾氏が率いるKDX STパートナーズは、ケネディクスグループの中で不動産セキュリティトークン(ST)を専門に扱う会社である。ケネディクスは、不動産証券化の法規制が整い始めた1995年に設立され、昨年30周年を迎えた。現在の運用総額は5.5兆円で、J-REIT、私募ファンド、そして主に個人投資家向けに新しい投資機会を提供する不動産STの3つを事業の柱にしている。
J-REITの成り立ちと現在の規模
辻氏は歴史を振り返った。不動産が金融商品として扱われるようになったのは1990年代後半からで、バブル崩壊後の不良債権処理に伴って法制度が一気に整備された。不動産の証券化を進め、個人にも投資機会を提供するという目的で、2001年9月にJ-REITが発足した。
不動産投資には本来、多額の資金と専門知識が必要になる。しかし不動産を小口化して証券市場に上場したことで、一般の個人もプロが運用する不動産に気軽に参加できるようになった。J-REITは今年で25周年を迎え、上場銘柄は60近く、時価総額の合計は16兆円規模になった。辻氏は、金融商品として一つの地位を獲得したと評価している。
個人にとってのJ-REITの利点
鈴木氏は、J-REITが個人にとって「貴重な機会」である理由を具体的に説明した。アパート投資とは違い、オフィスビル、ホテル、商業施設、物流施設は金額が非常に大きい。個人が自分で買うのは資金面でも、購入機会を得るという面でもほとんど不可能だ。
J-REITでは、投資信託の枠組みの中に、普段は個人がアクセスできない優良物件を複数組み入れる。分散効果の効いたポートフォリオを作り、それを小口に分けて販売する。鈴木氏によれば、通常は1口10万円程度から投資できる。
鈴木氏がもう一つの利点として挙げたのは、手間がかからないことだ。株式と同じように証券会社の口座で、価格を見ながらタイミングよく売買できる。運用はプロの運用会社が担うため、建物のメンテナンス工事や借入れの手続きはすべて運用会社が行い、投資家は保有にともなう手間から「完全にフリー」になる。森本氏も、実物不動産なら金利上昇時に気になる借入れの心配がない点を指摘した。
個人の資金を扱う以上、透明性と信頼性が求められるのではないかという問いに、鈴木氏は、J-REITは不動産投資になじみのない個人でも安心して投資できるビークルとして設計されていると答えた。金融庁をはじめとする当局が受託者責任や遵法性を重視して枠組みを整えており、当局も運用会社も個人の信頼を損なわないようかなり注意を払っているという。
「安定分配」から「インフレに負けない運用」へ
鈴木氏は、運用会社の側で大きな変化が起きていることも強調した。従来のJ-REITは、インフレに負けないことより、安定した分配金を出すことに力を入れてきた。これからはインフレの下で資産価格の上昇を投資家が享受できる運用に変わりつつあるという。
例として、鈴木氏は自社が運用する日本都市ファンドと産業ファンドが掲げる3つの目標を説明した。1つ目は「内部成長」で、既存の保有物件から得るキャッシュフローを、賃料の引き上げやコストの削減で増やすことである。2つ目は物件の入れ替えだ。各ファンドはそれぞれ100物件以上を保有しており、中には競争力や成長力が落ちた物件もある。それらを適宜売却し、将来性のある物件に入れ替えていく。3つ目は、売却で生じた売却益を投資主に還元することだ。
鈴木氏によれば、この方向転換は自社だけのものではない。J-REITの運用会社はこの数年で大きく舵を切っており、インフレ時代に資産の成長が期待できる運用に変わってきていると見ている。
不動産セキュリティトークンとは何か
続いて話題は、個人投資家の間で注目されている不動産セキュリティトークンに移った。中尾氏の説明では、セキュリティトークンとはブロックチェーンという技術で発行や流通を管理する有価証券のことで、デジタル証券とも呼ばれる。銀行預金なら銀行のメインフレーム、上場株式やJ-REITなら証券保管振替機構というように、これまでの金融取引は中央集権的なシステムで管理されてきた。ブロックチェーンでは、接続している各データベースが分散して取引を管理するため、安全かつ効率的に取引を管理できるという。
森本氏が「本気で理解したい」ので、もう少し分かりやすく説明してほしいと頼むと、中尾氏はJ-REITとの比較で説明し直した。
J-REITが失ったものをSTで取り戻す
中尾氏は、J-REITは素晴らしい商品であり、ケネディクスにとっても主力商品だと前置きした。簡単に売買でき、手間がかからず、税制上も優遇されている。ただ、不動産がもともと持っていた分かりやすさは薄れているという。「このホテルに泊まったことがある」「このオフィスで働いたことがある」から買いたい、という動機は、多数の物件をまとめたJ-REITでは成り立ちにくい。
もう一つの問題は価格の安定性である。中尾氏の見方では、不動産は本来ローカルなもので、安定した家賃が定期的に入れば、その価値は資本市場の影響をそれほど受けない。ところが上場商品になると、不動産自体が安定していても資本市場の影響で価格が乱高下することが多々ある。中尾氏は、J-REITは「金融商品化されすぎた」ために、分かりやすさや安定性という不動産の持ち味が少し損なわれたと表現した。
STでは、「あなたが投資しているのはこのビルです」という形で投資対象を明確にする。その分だけ規模は小さくなるが、デジタル技術を使い、上場しなくても小口で売買できる仕組みを整えた。小口であること、手間がかからないこと、証券会社で簡単に売買できることといった金融商品としての利点は維持しながら、投資対象が明確で、資本市場のノイズが入りにくく、不動産としての安定した価格形成が期待できる商品を、STの商品設計の柔軟性によって提供できるようになったと中尾氏は説明した。
中尾氏は両者の違いを料理にたとえた。J-REITは有名シェフが作るコースメニューで、一通り楽しめて安心して食べられる。STはアラカルトで、「今月は旬だからこれを食べたい」「デザートはお腹いっぱいだからいい」というように好きなものを選べる。美味しいものを食べたいという欲求は同じでも、自分でポートフォリオを組みたい人にはSTが向いており、そうした使い分けがされているのではないか、というのが中尾氏の見方である。
STはどこまで広がっているか
普及の状況について、中尾氏は自社の数字を挙げた。これまでに16本のSTを発行し、合計2600億円の不動産をST化した。購入した投資家は同社だけで延べ2万人を超える。
中尾氏は、拡大の理由は証券会社を通じて株と同じように買えるというアクセスの良さだけではないと見ている。単一物件の商品なので分かりやすく、理解しやすく、納得しやすい。資本市場のノイズが入りにくい不動産投資商品であることも、個人投資家に支持されているのではないかと述べた。
リスクをどう考えるか
森本氏が、J-REITもSTも投資商品である以上、価格変動などのリスクがあるのではないかと問うと、辻氏は「リスクがない投資はない」と明言した。投資の話で「リスクはありません」と言われたら怪しいと思ったほうがいい、とも付け加えた。
そのうえで辻氏は、どちらの商品も不動産のプロが物件を目利きして取得し、保有期間中はしっかり運用し、最適なタイミングで売却するので、その専門性は一つの安心材料になると述べた。裏付け資産が不動産である以上、不動産のリスクは考えなければならない。辻氏が挙げたのは、テナントが抜けて収入が落ちること、金利の上昇や維持コストの上昇によってコストが増えること、そして経済環境の変化や災害などで物件の価値が下がることである。
それでも辻氏は、株式投資と比べれば不動産のリスクの幅は小さいと考えている。さらにインフレの時代には家賃も上がっていく。新しく物件を建てようとすると建築コストが今は高いため、既存の物件を買うことでインフレによる成長を取り込める。この点で不動産には魅力がある、というのが辻氏の主張である。
経済社会に組み込まれる不動産と「好循環」
最後のテーマは、インフレ時代の投資判断の軸と、不動産投資と都市開発の可能性である。今後、不動産投資への資金流入は爆発的に大きくなっていくのかという問いに、辻氏は、流れが大きく変わったと感じるのは、不動産の資金が日本の経済社会の発展に組み込まれつつある点だと答えた。そして、経済や社会の発展に組み込まれた不動産の価値は目減りしないと考えている、と述べた。
辻氏が例に挙げたのは、優秀な人材が力を発揮できる最新鋭のオフィス、eコマースを支える物流施設、テクノロジーの進化を支えるデータセンター、ライフサイエンスなどの研究施設、そしてエネルギーインフラである。経済の営みの基礎には必ず不動産がある。個人の資金が不動産を通じて社会のインフラに投資され、経済と産業が発展し、インフレが回って個人の賃金や所得も上がっていく。辻氏はそうした好循環ができることを望んでいると語った。社会の価値が上がれば、投資家のリターンも増える。
投資判断の軸はトータルリターン
インフレ圧力が昨年あたりから強まる中で、投資家はどんな判断基準を持つべきか。鈴木氏の答えは「トータルリターン」だった。分配金から得るインカムと、保有するJ-REITなどの価格上昇によるキャピタルリターンを合わせたものがトータルリターンである。鈴木氏は、運用会社としてこれを確保することを目線に運用しており、投資家にもこの両方を合わせて見てもらうのが最も良いポイントだと述べた。前半で語られた、安定分配からインフレに負けない運用への転換と対応する考え方である。
開発型STと地方の不動産:お金以外の価値をどう組み込むか
都市開発への影響について、中尾氏はSTの商品設計の柔軟性をあらためて強調した。現在のSTは既存の不動産を裏付けとするものが中心だが、今後はこれから開発する不動産の資金をSTで集める「開発型」の商品も考えられるという。
さらに中尾氏が挙げたのが、地方にあるスタジアムや美術館のような資産だ。機関投資家向けの商品では扱いにくいが、個人投資家が中心で単一物件の商品であるSTなら対象にできる可能性がある。投資商品である以上、一定の経済的リターンは大切だとしたうえで、中尾氏は、たとえばスタジアムを本拠地とするサッカーチームの年間チケットが1枚無料でもらえるといった特典を例に出した。そうすれば不動産を実際に利用でき、体験的な価値や情緒的な価値を投資と結びつけられる。いまは投資資金とつながっていない地方の資産にこうした仕組みを使えば、地方創生といった社会課題の解決にもSTが役立つのではないか、と中尾氏は考えている。
森本氏が、ふるさと納税にも少し似た感覚だと応じると、中尾氏は、自分が育った町やゆかりのある町の不動産は、その人にとって単なるキャッシュフローの塊ではないはずだと答えた。STは投資家と投資対象の距離が非常に近い商品なので、金銭だけでなく志や思いも含めて商品に組み込んでデザインできる。それがSTの面白さであり、社会貢献につながる使い方もできるのではないか、と述べた。開発型や地方資産を対象にしたSTは、中尾氏が今後の可能性として語ったもので、すでに実現した事例として紹介されたわけではない。
結び:ポートフォリオの一部を超えた関わり方
番組の最後に森本氏は、個人が不動産と関わる意味は、ポートフォリオの分散先として組み込むことにとどまらないと振り返った。不動産は日本のインフラやテクノロジーの進化と深く結びついており、今後は地方創生にも個人が関われる可能性がある。J-REITの「インフレに負けない運用」への転換、STによる単一物件への投資、そして体験価値を組み込んだ地方資産への投資構想が、その可能性を具体的に示す論点として提示された。
多額の資金がなくても不動産の投資に関わることができる。
不動産投資に馴染みのない個人の皆様にとっても安心して投資ができる。
実際、個人投資家の方には広がってきてる。我々だけで、延べ2万人以上の投資家の方々がSTをご購入いただいてると。不動産の資金がやっぱり日本の経済社会の発展に組み込まれつつあるなと思ってます。
さあ、ということで始まりました。リアルエステートフロントライン、MCの森本智子です。この番組は不動産投資の最前線から都市と経済の未来を考える特別企画。2回目となる今回は、不動産投資が社会貢献になる、個人でも参加できる不動産での資産運用、その新潮流というテーマでお届けしてまいります。
これまで一部の富裕層や機関投資家だけが扱っているというイメージが強かった、大型商業施設やホテルなどを対象にした事業用の不動産投資ですが、今それが変わりつつあるようなんです。その背景には少額から参加できる不動産投資信託、J-REITの認知の高まり、さらにはテクノロジーの進化があると言います。そこで今回は、不動産投資から見えてくる資産形成の新潮流、インフレの不動産投資をどう考えればいいのか、そして個人投資家の参入が市場や社会にどんな影響を与えるのかという視点で議論をしてまいります。
さあ、それでは早速、今回のゲストの皆さんをご紹介します。まずはCBRE代表取締役社長、辻貴史さんです。よろしくお願いいたします。
はい。第1回目に続き、第2回目もよろしくお願いします。CBREの辻でございます。
はい、お願いします。
今、日本では、個人が保有する預貯金、もう1000兆円を超えると言われています。これから物価も上昇し、インフレの時代を日本でも本格的に迎えるわけですけれども、その中で現金の価値というのは逆に目減りをするというふうに考えられています。今後ますます、資産形成の関心が高まって、まさに貯蓄から投資の時代を迎えることになります。
その中で、この本当にインフレに強い不動産というところに、個人の方も参加できるような枠組みを作っておられるお二人と今日はお話ができるということで、大変楽しみにしてまいりました。よろしくお願いします。
はい。よろしくお願いいたします。さあ、そして続いてはKJRMホールディングス代表取締役社長、鈴木直樹さんです。よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
鈴木さん、まずこのKJRMホールディングスの会社、どういった会社なのかというのをちょっと教えていただけますか?
はい。KJRMホールディングスですけれども、グローバルなプライベートエクイティの会社のKKR、皆様ちょっとお聞きになったこともあると思うんですが、KKRの日本の不動産運用の部門になっている会社でございます。元々は三菱商事とUBSの合弁会社で、25年前に会社を設立しておりますけれども、4年前にKKRグループに入りました。
私どもは、隣にいらっしゃるケネディクスのグループ様と競い合って、国内最大級の不動産運用会社というふうになっておりまして、今、日本都市ファンド投資法人、それから産業ファンド投資法人という2つの上場J-REIT、それから私募ファンドの運用をさせていただいておりまして、今、約2兆8000億円の資産の運用をさせていただいてる、そんな会社でございます。
はい。今日は色々とお話を伺わせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
そして、KDX STパートナーズ代表取締役社長、中尾彰宏さんです。中尾さん、よろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
中尾さん、まず今回初めてなので、会社、どういったことをやってらっしゃるのかというのを少しお伺いできますか?
はい。我々はケネディクスグループの中で、不動産セキュリティトークンを専業に扱ってる会社なんですけれども、ケネディクスグループ自体は、投資家の皆様からお金を預かって、不動産で投資運用する不動産アセットマネジメントとか、不動産の運用会社と呼ばれる、そういうビジネスを営んでる会社でございまして、1995年という、不動産の投資商品、いろんな証券化の法規制が整い始めた黎明期に設立された会社でございまして、昨年30周年を迎えております。
その中で、現在運用してる不動産の総額は5.5兆円という、国内でも最大級の規模を運用してるんですけれども、それを3つの柱、鈴木さんのところもやられてるJ-REITとか、あと私募ファンド、そして3つ目が、新しいデジタル技術を使って、主に個人投資家の方々向けに新しい不動産投資機会を提供する不動産セキュリティトークン。この3つを事業の柱として不動産を運用してる、そういう会社でございます。
多分セキュリティトークン、初めて聞いたなという方もたくさんいらっしゃると思うので、その辺り、今日はじっくりと本編でお話を伺えればなと思っております。
はい、よろしくお願いします。
よろしくお願いいたします。
さあ、今回はこちらの3名と共に、なぜ不動産投資が身近なものになりつつあるのか、そして個人投資家の参加によって社会や都市がどう変わっていくのかについて、理解を深めていけたらいいなと思っております。
まずは、なぜ不動産投資が身近になってきているのかについて整理したいなと思うんですが、辻さん、以前、不動産投資というと多額の資金を持つ一部の層、機関投資家の方が扱うものというようなイメージがある方も多いと思うんですけれども、それが今、変わりつつあるということですよね。
そうですね。元々、不動産が金融商品として扱われるようになったのは、1990年代の後半からでございます。いわゆるバブル崩壊後の不良債権の処理に伴って、法制度も一気に整備されました。そして、不動産の証券化の推進と、個人にも不動産への投資機会を提供しようということで、2001年9月に発足したのがJ-REITでございます。
本来、不動産投資というと多額の資金がいる、専門知識も必要になるということなんですけれども、不動産を小口化して証券市場に上場することによって、一般の個人の方もプロが運用する不動産に気軽に参加できる。そういうふうになりました。
J-REITも今年で25周年ですかね。今ではもう60近い銘柄が上場しておりまして、時価総額の合計も16兆円規模になっています。もう金融商品としては、1つの地位を獲得したかなというふうには思ってます。
そうですね。J-REITが登場して、だいぶ個人の皆さんにとって不動産というのが身近になったという感覚はありますよね。鈴木さん、今、個人の方がこういった多額の資金がなくても不動産の投資に関わることができるという時代になってきてるわけですもんね。
今、辻さんからご説明ありました通り、個人の方にとっては、なかなか普段はアクセスできないような投資機会に投資いただけるという本当に貴重な機会を、まさに20数年前に制度ができて、できたというようなことになっています。
どういうふうに貴重な機会かと言いますと、普通のアパート投資とかではなくて、例えばオフィスビルでありますとか、ホテルであるとか、商業施設、それから物流施設。こういったものは、やはり非常に金額が大きいですので、普通の個人の方が自分で買われるというのは、金額的にもそうですし、そういう機会を取るということも、ほとんど不可能というような状況かと思います。
ところが、このJ-REITというビークルでありますと、いわゆる投資信託というフレームワークの中に、こういった優良物件、普段は個人投資家がアクセスできないような優良物件を複数入れて、分散効果も効かせた形でポートフォリオを作りまして、これを小口に販売するということで、この小口になったものを個人投資家が取得できる。つまり、この優良物件のポートフォリオ、分散の効いたポートフォリオに、非常に少額から投資ができるというような仕組みになっています。
今、J-REITですと、大体、普通ですと一口10万円ぐらいから投資ができますので、大体の方は比較的簡単に投資ができますし、もっといいところは手間がかからないというところですね。買う時も通常の株式と同じように証券会社の口座を通じて、本当にタイムリーに価格を見ながら買うことができますし、これはプロの運用会社、我々みたいなものになりますけれども、が運用をいたしますので、投資家の皆様は持っていることに対する手間というのはほとんど必要ありません。
個人の投資家様が不動産のエクスポージャー、特に優良な不動産についてのエクスポージャーを持ちたいという意味では、まさに理想的なビークルになっている。これがJ-REITになっています。
改めてですけど、個人の方が不動産を自分のポートフォリオに入れたいと思うと、やっぱり実物だと管理したりとか手入れしたりとかというのも必要ですけど、それも必要なくなります。金利が上昇した時に、やっぱり実物だとちょっと気になったりもするわけですけれども、借り入れの部分とかそういう心配もないし、本当に小口で個人投資家の方が気軽に重要な物件の投資家として関わることができるという。
おっしゃる通りです。
そうですよね。
まさにこの建物のメンテナンスのための細かい工事であるとか、借り入れのための手続き、こういったものは全て我々の方でやらせていただきますので、投資家の皆様はそういったところの手間からもう完全にフリーで投資をしていただけるというような形になっています。
ただ、やっぱり個人のお金を扱う投資という存在で、市場には透明性、信頼性というのが求められると思います。そうした中で、個人の投資家の方から資金を預かってJ-REITを運用しているという信頼性の部分、そういったところは特に重視してらっしゃるわけですよね。
そうですね。J-REITというのは、一般の不動産投資に馴染みのない個人の皆様にとっても安心して投資ができるというようなビークルになっている。これは金融庁様をはじめとした当局も非常に重視をして、受託者責任でありますとか、遵法性のところでありますとか、こういったところをきちっと整備したような枠組みになっていて、そういう意味での個人の皆様からの信頼というのを損なわないような体制というのを、当局もそうですし、我々運用業者もかなり注意をしてやっているというようなビークルになります。
同時に、私ども運用業者としましては、今、大きな変化が起きています。従来はインフレに負けないというよりは、安定した分配金を出していくというところに注力をした運用をしてきました。これからはインフレに負けない、つまりインフレの下でしっかりした資産価格の増加を投資家の皆様に享受していただけるような運用というのに変わってきておりまして、例えば私どもの日本都市ファンド、産業ファンドでありましても、今、3つの大きな運用の目標を持ってやってます。
1つは、内部成長と我々の言葉で言いますけれども、既存の保有している物件群のポートフォリオからのキャッシュフローの成長ですね。賃料を上げたり、コストを引き下げることによってキャッシュフローを増やしていこうと、こういうようなこと。
それから、例えば私どもの運用しているファンドですと、それぞれ100物件以上ポートフォリオの中に入っておりますので、中にはちょっと競争力が落ちている、成長力が落ちているような物件があります。こういったものは適宜売却をしていって、将来性のあるような物件に入れ替えていく。
それから最後に、この物件を売却した時に売却益が出てきますけれども、これを投資主の皆様にお返しする。こういったことを通じて、インフレに負けないような運用、これをできるように我々、運用を大きく変えてきております。これ、私どもだけではなくて、J-REITの運用会社はこの数年来、皆さん大きく方向転換をしてきてるところでして、そういう意味では今までのREITではなくて、インフレの時代にしっかりとした資産の成長が期待できるような運用に変わってるんじゃないかなというふうに言えると思います。
ええ、進化してるんですね、日々。そして、先ほどから何度もお話が出てきましたけど、個人投資家の方に今注目されているのが、不動産をデジタル証券化した不動産セキュリティトークンということで、まずどういうものなのか、どれぐらい今、個人投資家に広がってるのか、その辺り教えていただけますか?
はい。セキュリティトークンというのは、簡単に申し上げると、ブロックチェーンという最新のデジタル技術を使って、発行や流通が管理されている、そういう有価証券のことを申します。ですので、セキュリティトークンと呼ばれたり、あとデジタル証券、こういう名称で呼ばれることがあります。
このブロックチェーンというのは何かと言うと、金融取引を安全かつ効率的に行うためのデジタル技術でございまして、例えばJ-REITもそうですし、上場有価証券とか預金、そういった金融取引、これまでは中央集権的なシステムで取引されてると。例えば銀行預金であれば、その銀行さんのメインフレームと呼ばれるシステムであったり、J-REITや上場株式であれば保管振替機構という、そういうところで取引が管理されてるんですけれども、ブロックチェーンの場合はそういった中央集権的ではなくて、そのブロックチェーンに接続している各データベースが、それぞれ分散して取引を管理するということで、安全なんですけれども、かつ効率的にその取引を管理することができるということになってます。
もうちょっと分かりやすく、ごめんなさい。私、本気で理解したいです。
そうですね。例えば、すいません。ちょっと鈴木さんの前にあれなんですけど、J-REITとの比較で申し上げると、J-REITは素晴らしい商品です。ケネディクスもやってますし、メインの商品なんですけれども、個人投資家の方々からすると、やはりJ-REITというのは簡単に売買できますし、手間もかからない、税も優遇されてるというメリットはあるんですけれども、元々、例えば不動産が持ってたような分かりやすさ、このホテル泊まったことあるとか、このオフィスで働いたことある、だから買いたいみたいなものとか。
あと、やっぱり上場してると色々、資本市場の影響を受けて、不動産は安定してても、上場してる商品の価格は乱高下してしまうということが多々あって。そうすると、本来、不動産というのは非常にローカルなもので、安定してる家賃が定期的に入ってくれば、不動産自体の価値というのはそれほど資本市場の影響を受けるものではないんですけれども、J-REITは金融商品化されすぎたがゆえに、こういった分かりやすさとか安定性という不動産が持ってる持ち味が少し損なわれてしまって。
不動産、自分が何に投資してるか明確な、あなたが投資してるのはこのビルですよという形で投資対象を明確にする。その分、規模が小さくなるんですけれども、そこのコストは新しいデジタル技術を使うことで、上場せずとも小口で売買できるような仕組みを整えることで、金融商品としての小口であったり、換金性であったり、手間がかからない、証券会社で簡単に売買できるといったところは維持しながら、個人投資家の方々でも自分が何に投資してるか明確、かつ資本市場のノイズが入りにくい、不動産としての安定的な価格形成が期待できる。こういった商品を、先ほど申し上げたセキュリティトークンが持つ商品設計の柔軟性を使うことで、新たに提供することが可能になってるという形です。
ですので、J-REITとの比較で言うと、J-REITというのは、ある種、料理に例えると、有名なシェフが提供するコースメニューみたいな形になってまして、それがあることで一通り楽しめますと。有名なシェフが作ってるので安心して食べられますと。我々はアラカルトで自分の好きなものを選んでいただきながら、両方とも食の欲求を満たす、美味しいものを食べたいというところは同じなんですけど。
今月は旬だから、これ食べたいなとかで選んでいただいて、ちょっとデザートはお腹いっぱいだからいいやみたいな、そういうアラカルト的な選び方をされる、自分でポートフォリオを組みたいという方にはセキュリティトークンが向いてると。そういう使い分けをされてるんじゃないのかなというふうに思います。
実際、個人投資家の方には広がってきてるんですか、今?
そうですね。今、我々ですと、これまで16のSTを発行して、2600億円の不動産をST化したんですけれども、我々だけで延べ2万人以上の投資家の方々がSTをご購入いただいてるという形になってます。
これは証券会社を通じて株と同じように簡単に買えるというところもあるんですけれども、投資のしやすさというのはそういうアクセスの良さだけではなくて、単品ですので、やっぱり分かりやすい、理解しやすい、納得しやすいという部分もありますので、そういうアクセスの良さだけではなくて、単品の資本市場のノイズの入りにくい不動産投資商品ということで、その辺の分かりやすさといったものも個人投資家の方々に支持され、ここまで順調に拡大してきてるんではないのかなというふうに思っております。
辻さん、ただこれ、やっぱりJ-REITもそうですけど、今回のセキュリティトークンもあくまで投資商品なので、特に価格の変動もあるでしょうし、色んなリスクが考えられると思いますけれども、その辺りというのはやっぱり個人投資家も気をつけなきゃいけない。
そうですね。基本的にリスクがない投資はないですね。投資話で「リスクありませんよ」と言われると、これは怪しいと思った方がいいんじゃないかなと思うんですね。ただ、専門性という観点から、両商品とも不動産のプロが目利きをしっかりして取得をして、その期間、運用をしっかりして、ベストのタイミングで売却するということはやりますので、そういう専門性ということの安心はまずあるのかなと思います。
あと、一般的に不動産のリスク、つまりJ-REITも不動産STOも裏付け資産は不動産なので、不動産のリスクというのを考えないといけないんですけど。不動産のリスクというのはいくつかありますけど、基本的にはテナントさんが抜けたりして収入が落ちるということと、あとは金利が上がったり、その物件の維持コストが上がる、コストが上がるということですね。最後に、経済環境の変化とか、例えば災害とかもあって物件の価値が落ちるという、こういうところがやっぱりあるんですけれども。
株式の投資もリスクがある。それと比べると、僕は非常にリスクの幅は小さいということで、かつ、このインフレの時代でもありますから、家賃も上がっていきますし、新しい物件を作るとなると、やっぱり建築コストも今、高いんですね。なので、既存の物件を買うということによって、インフレの成長を取り込んでいくという意味では、不動産というのは魅力があるんじゃないかというふうに思います。
はい。最後のテーマに移っていきたいんですけれども、ここまでは不動産投資の新潮流、課題について色々お話を伺ってきたんですけれども、ここからはインフレ時代に必要な投資の判断軸、それから不動産投資と都市開発の可能性についてお伺いしたいなと思います。
辻さん、この不動産投資の形も色んな多様化をしてると思うんですけれども、そこに今、大きな資金が流入しているという、今まさに、これからもっとそれが爆発的に大きくなっていく過程みたいな、そういう感じなんでしょうか?
そうですね。流れが大きく変わってるなというふうに思うのは、不動産の資金がやっぱり日本の経済社会の発展に組み込まれつつあるなと思ってます。つまり、日本の経済とか社会の発展に組み込まれてる不動産は、価値が目減りしないというふうに僕は思います。
例えば、優秀な人材が能力を発揮できるような最新鋭のオフィスであったりだとか、Eコマースを支える物流施設、テクノロジーの進化を支えるデータセンターとかですね。あとはライフサイエンスなどの研究施設の充実、あとはエネルギーインフラなんかもあると思いますけれども、経済とかの営み、こういった基礎には必ず不動産が存在します。
個人投資家さんの資金が不動産を通じて、そういう日本の社会のインフラにしっかり投資されて、日本の経済と産業が発展し、健全なインフレが回転して、個人の賃金も所得も上がっていくという、こういう好循環ができると本当にいいなというふうに思ってます。
個人投資家の目線で言うと、経済成長に乗っかって、それがひいては社会インフラとか公共のためにもなるわけですから、そこにうまくいっていくみたいな。
そうです。かつ、リターンもそれによって、日本の社会の価値が上がっていくとリターンも増えるという、こういった好循環を作れるといいなと思います。
ありがとうございます。鈴木さん、今の時代、特に去年辺りからですかね、インフレの圧力がどんどん強まっているんですけれども、不動産投資に向き合う投資家というのは、どういった判断基準が必要になってくるのか、その辺りはいかがでしょうか?
私ども、トータルリターンという言い方をしてまして、投資家の皆様は、このインカムですね、毎期来る分配金からのインカムの収入、プラス保有している、J-REITならJ-REITの価格の上昇のキャピタルリターン。この両方を足したものがトータルリターンということで、これがしっかり確保できるような目線で私ども運用してますし、投資家様にも見ていただくのが一番いいポイントなんではないかなというふうに思っています。
中尾さん、こうした今の不動産投資の動き、それから実際に都市開発にどういう影響を与えるのか、その辺りというのはいかがなんでしょうか?
そうですね。都市開発という意味では、不動産セキュリティトークンは先ほど申し上げた通り、新しいデジタル技術を使うことで、これまでできなかったような商品が商品化できる、そういった商品設計の柔軟性が強みなんですけれども。そういった意味では、現在は既にある不動産を裏付けとしたセキュリティトークンが中心なんですけれども、今後は開発型の不動産セキュリティトークン、これから開発しますよといった不動産の資金をセキュリティトークンを通じて集めたり。
あとは個人投資家の方々中心で、単品の商品ですということもあって、例えば機関投資家向けの商品だとなかなか難しいような、地方にあるスタジアムとか美術館、馴染みの深いものであって。もちろん投資商品ですので、一定のリターンという経済的なリターンは大切なんですけれども、個人投資家の方々であればそれに加えて、そのスタジアムでプレーしてる、ホームグラウンドにしているサッカーチームの年間チケットが1枚無料でもらえますよとか、そういうものがあれば、やっぱり不動産を利用して使うことができますので。
そういった不動産の体験的価値とか情緒的な価値、そういったものを、今、なかなか投資資金と結びついてないような地方のアセット、ここに結びつけることで、地方創生といった社会課題の解決にも、不動産セキュリティトークンを使えるんではないのかなというふうに思ってます。
そういった意味で、不動産セキュリティトークンというのは投資家と投資商品の不動産の距離が非常に近い商品ですので、そこの間には単に金銭だけの関係ではなくて、志というか思いというか、そういったものも含めて投資商品の中にデザインすることができる。それがセキュリティトークンの面白いところではないかなというふうに思ってますし、社会貢献にも資する、そういう使い方ができるんではないのかなというふうに考えてます。
面白いですね。勢と、なんかちょっと似た感覚。
そうですね。そういったものともうまく使いながら、やはり自分の育った町とかゆかりのある町、そこにある不動産というのは、その人にとっては単なるキャッシュフローの塊ではないはずなので、そこをうまくデザインすることができれば、そこにまた新しい機会が生まれるんではないのかなというふうに考えてます。
なるほど。さあ、ここまでは、個人投資家を巻き込む形で進化してきた不動産投資の現状、それから課題についてお話をいただきましたが、あっという間に時間が過ぎてしまいまして。今回の回って、個人投資家が不動産とこれからどうやって関わっていくのかという時に、単純にポートフォリオの1つとして、分散化として組み込む、それはもちろんなんですけれども、それだけじゃなくて、やっぱり不動産というのが日本のインフラだとかテクノロジーだとか、そういった進化にもさらに深く結びついていて、さらに地方の創生というところにも今後、個人が関わることができる。すごく新しい可能性みたいなのを皆さんに教えていただいて、非常に私も勉強になりました。ありがとうございました。
今日は本当にお三方に、すごく学びの多いお話を伺うことができました。どうも皆さん、ありがとうございました。
ありがとうございました。
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