「決めない会議」と「愚痴」の価値:多重的な意思決定から見る日本の職場の無駄

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概要

番組がビジネスパーソン約150人に「無駄だと思う仕事」を尋ねたところ、さまざまな答えが寄せられた。元マイクロソフト執行役員の澤円、日本航空(JAL)の木頭祐一郎、業務改善やDXを手がける元山文菜の3人が、職場の無駄がなくならない理由と、それを減らす方法を語った。本人も無駄だと分かっているのに、なぜやめられないのか。これが議論の出発点である。

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現場から寄せられた「無駄」の声

アンケートには「会議が多い」「必要だったと感じることが少ない」といった会議への不満のほか、「毎日、日報を記入するが内容が毎回変わらない」「文章で埋めているだけ」といった声があった。司会側は、一つ一つを読むと本人たちは無駄だと分かっているように見えるのに、なぜなくせないのかと問いかけた。

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外資系の会議を見て驚いたインターン

澤はまず、自身の経験を紹介した。澤がいたマイクロソフトは無駄をそぎ落とした「筋肉質」な組織で、無駄はほとんどなかったという。そこで数年間、いわゆるJTC(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー)と呼ばれる日本企業の社員をインターンとして1年間受け入れていた。

そのうちの一人は澤に付いてシャドーイングをしていたが、まず会議のペースに驚いた。澤の会議は15分程度で、30分の枠を取っていても、決めることが決まれば10〜15分で終わらせる。そのとき「15分お返しします」という意味の言い方をするという。30分借りた時間のうち15分で済んだので、残りを返すということだ。予定は押さえておくが、早く終わればすぐに解放する。

インターンが次に驚いたのは、参加者全員が発言することだった。その人の会社では、会議で発言できる人は決まっており、質問をすると「会議の進行を遅らせるな」と怒られるという。さらに、会議で何かが決まるのを初めて見たと言った。社会人5、6年目、28歳前後の人が、それまで「決める会議」を一度も見たことがなかったのである。澤はこれに腰を抜かしたと振り返った。

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時間の損失は目に見えない

この状況で何が犠牲になっているのか。澤は、本人の時間だと指摘する。財布のお金が減れば物理的に分かり、千円札しか残っていなければ落ち込む。しかし時間が減っていくことには意外と気づかない。長い期間で見ればなおさら分からなくなり、気づいたときには膨大な時間が無駄になっている、というのが澤の見方だ。スタジオでは、会議に出ると仕事をした気分になり、「今日もちゃんと働いた、疲れた」と感じてしまうという声も上がった。

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大企業の多重的な意思決定と資料の作り直し

JALの木頭は、こうした話は社内にも「たくさんある」と認めた。大企業であるため意思決定プロセスが多重的になっており、最終決定に至るまでに同じような説明を何度も繰り返す。課長クラスから始まり、部長、担当役員、そして社長を含むトップへと上がっていくが、そのたびに資料が違うという。

それぞれの階層の人が言いたいことを言い、それをどんどん資料に盛り込んでいくと、何が言いたいのか分からない資料になる。最終段階で「なんだこれ、分からない」と言われて作り直しになることもある。

木頭は、パワーポイントにも「罪」があると考えている。見せ方や見え方には好き嫌いがあり、上の人の考え方によって毎回変わる。情報をたくさん詰め込みたい部長もいれば、その上の役員は「もっとシンプルに」「こんなに何十枚もいらない」と言って全部作り直しになる。そう考えると、本当にパワーポイントでいいのか疑問だという。

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スライドを禁じる会社の考え方

これに対し澤は、社内のレポートでスライドの使用を禁止している会社もあり、実はマイクロソフトもそうだったと話した。数字はダッシュボードで見られる状態にしておき、本当に必要なものは文章にする。アマゾンもこれを徹底していたと思う、と澤は述べた。スライドにすると、作ること自体が仕事になってしまうからだ。

ただし、スライドを使うこともある。その場合はテンプレートががっちり決まっていて、フォントサイズまですべて固定されており、全世界から集める資料も同じフォーマットで作る。そうすると見るべき場所が決まっているので、すぐに判断できる。資料の作り直しをしなくて済む、というのが澤の説明である。

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愚痴を集めて改革のデータにする「グーチング」

元山は、約20年にわたり業務改善やDXに携わってきた立場から、アンケートには皆が書いてくれる一方で、実際に現場に入って「何が問題か」「どこを改善したいか」と聞いても、なかなか答えが出てこないと語った。現場の人は、自分がこれまでやってきた仕事を無駄だとは言いづらいからだ。

ところが、インタビューの合間や飲み会、ランチの場では、皆が職場の愚痴を言っている。「なんであんなことをやらされているんだ」という声はたくさんある。そこで元山は愚痴をとても大事にしており、プロジェクトに入ると最初に「グーチング」を行う。

グーチングでは、5、6人から多くても10人ほどの、一緒に働いているメンバーが集まり、ポストイットに愚痴を書いて一斉に出し合う。そのデータを元に業務プロセスを洗い出し、具体的にどんな業務をしているのかを細かく言語化して見える形にし、課題として整理する。ファシリテーション型でデータを集めることで、メンバー全員の「やるぞ」というスイッチを入れる狙いもある。「そんなのやってられない」と現場に言わせて気持ちを高め、そこで出た生データを元に解決策のプロジェクトを進めていく。

スタジオからは、愚痴は生産性がないから言わないほうがいいと思っていた、という反応があった。元山は、大切なのは言語化することだと強調した。空中戦で終わらせては目に見えないので意味がなく、言葉にして残す必要がある。

もう一つの約束は、人の悪口を言わないことだ。元山は「人を憎まず仕組みを疑う」のが業務改善だと述べた。上司の悪口が一番盛り上がりそうだという声には、それは本当に居酒屋でやってもらえばいい、グーチングでは仕組みの愚痴を言おう、と返した。

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JALのスマートハンドリング:倉庫の動きを可視化する

後半は、社員のウェルビーイング日本一を目指すJALの取り組みに移った。司会側は、手荷物を無人で預けられるようになるなど航空会社は取り組みが早い印象だとしつつ、まだスピード感が物足りないのかと尋ねた。木頭は、表側ではお客様自身に手続きをしてもらっているが、裏側では人が走り回っている実態がある、と答えた。

そこで進めているのが「スマートハンドリング」である。木頭はサッカーやラグビーを例に説明した。選手のユニフォームにチップが入っていて、選手が一生懸命走っているが無駄な動きが多いのか、動きは少ないが的確にプレーに絡んでいるのかをアナリストが分析し、振り返りをして翌日の試合につなげる。これと似たことを、貨物倉庫の現場でやろうとしているという。

具体的には、倉庫で働く人のヘルメットとフォークリフトにチップを付け、動きを可視化する。無駄な動きがあれば作業のレイアウトを変えて最短距離で仕事ができるようにしたり、あちこちに人が偏っていれば原因を確かめたりする。最適な動きで楽に作業し、皆が早く帰れる仕組みを導入したい、と木頭は話しており、現在取り組みを進めている段階だという。

スタジオからは、サボっているのがばれてしまう、例えば喫煙エリアにずっといる人が分かってしまうのは問題にならないか、という質問が出た。木頭は、そうした目的に使うものではないとしっかり説明しておく必要があると答え、社内の理解が大事だという認識が共有された。

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人の手を離れていく仕事はどれか

最後に、JALでこれから人の手を離れていくと考えられる仕事はどれか、というクイズが出された。選択肢は「A パイロット」「B キャビンアテンダント」「C 整備士」「D 空港のお客様対応スタッフ」で、いずれもサービスの中核を担う仕事である。司会は児嶋に答えを求めたところで、この配信版は終わる。正解とJALの考えは、ここでは明かされていない。