血液型を問わず使える「人工血小板」:防衛医科大学校・木下学教授が語る血液不足と災害医療

YouTubeで開く ↗
概要

献血者が減るなかで、輸血に使う血液をどう確保するのか。BSテレ東の科学番組「いまからサイエンス」に、人工血小板研究の第一人者である防衛医科大学校の木下学教授が出演し、MCの加藤浩次、テレビ東京アナウンサーの古旗笑佳と話した。番組の冒頭では、少子化などで献血者数が年々減っていること、これまでにない規模の血液不足が迫っていることが示される。木下教授が開発した人工血小板は、血液型に関係なく投与でき、保存期間は約1年だという。教授はこれが災害医療や救急医療を大きく変えうると主張した。

5分で読めます
2:17

輸血は「3つの成分」に分けて行われている

加藤は当初、人工の血液ができれば輸血はすべてそれで済むのではないかと考えた。木下教授によると、現状はそう単純ではない。出血した患者には、水分にあたる「血漿」、酸素を運ぶ「赤血球」、血を止める「血小板」の3つの成分を入れる必要があるからだ。

血漿は基本的に水分と考えてよいが、血液を固める「凝固」の働きを持つ成分も含んでいる、と教授は説明した。番組のナレーションによれば、止血は次の順で進む。まず傷口付近の血管が縮んで血流を緩め、そこへ血小板が集まって血栓となり傷口をふさぐ。最後に血漿中の凝固因子が傷口を固める。大きなけがでは止血のために血小板などの輸血が必要になり、現在の日本ではその血液はすべて献血でまかなわれている。

献血された血液がどう扱われるのか、加藤が尋ねた。教授によると、検査に加えて、血液は赤血球・血小板・血漿の3つに分けられる。手術でよく見る赤いバッグは赤血球のバッグで、これとは別に血漿のバッグと血小板のバッグがある。加藤と古旗は、採った血をそのまま輸血していると思っていたと驚いた。教授によれば、40〜50年ほど前は採った血液をそのまま入れていた。今は「成分輸血」といって、3つの成分をバランスよく入れる方法がとられている。

5:15

血小板だけがストックできない

3つの成分のなかで問題になるのが血小板である。教授は、病院には血小板がほとんどストックされておらず、必要になると血液センターに連絡して持ってきてもらうと語った。

理由は保存期間の差にある。教授の説明では、献血由来でも血漿は1年以上、赤血球は約1か月もつ。一方で血小板は長くても1週間ほどしかもたない。さらに血小板も血液型をそろえて投与するのが望ましく、日本では同じ血液型の人のものを集めるよう推奨されている。保存がきかないうえに血液型ごとに分けて備える必要があるため、いざというときに血小板が足りなくなるおそれがある、と番組は整理した。

7:17

室温で1か月もち、揺らす必要もない

ここで木下教授は実物の人工血小板をスタジオで見せた。白い液体である。教授によれば有効期間はおよそ1年で、室温でも約1か月はもつ。番組はこれを「血液のおよそ50倍長持ち」と紹介した。教授がとくに重視するのは室温で1か月もつ点で、大規模災害のときにはこれが非常に大事になると述べた。

保管方法の違いも大きい。通常の血小板は温度を管理しながら揺らし続けないと止血の機能が失われ、出た血が止まらなくなる。人工血小板はただ置いておける。加藤が、固まらないのはなぜかと聞くと、教授はこの状態でも液体のまま保たれると答えた。ナレーションによれば、人工血小板はほとんどがリポソームという脂質でできていて、常温でも固まらない性質を持つ。

8:47

被害の中心ほど医療資材が届かない

人工血小板が災害医療にどう効くのか。教授は熊本地震を例に挙げた。電気が乏しい状況では、使える電気は被災者の冷房や他の物資の保存に回したい。そう考えると、室温で1か月保存できることには大きな意味がある、と教授は言う。通常の血小板は1週間しかもたないのだから比べものにならない、という加藤の言葉に、教授は「もう圧倒的ですね」と応じた。

教授は東日本大震災やネパールの土石流にも触れ、被災地のいちばん中心部が最も医療を必要とする一方で、医療資材を最も届けにくい場所になると指摘した。災害が起きてから運ぶのでは、本当に必要な場所で使えない。だからあらかじめ拠点ごとに分散して置いておくのがよい、というのが教授の考えである。番組は2024年の能登半島地震で道路の陥没などにより救助・救援が妨げられた例を挙げ、人工血小板を分散配置しておけば、物資が届かなくても多くの命を救える可能性があると伝えた。

血液型を問わない点も、備蓄のしやすさにつながる。加藤が、A型・B型・AB型・O型の区別がなく誰にでも使えるということかと確かめると、教授はそのとおりだと答えた。血液型ごとに分けて備蓄しなければならない今のやり方は煩雑で、量も多く必要になる。その点で人工血小板は大きく違う、と教授は述べた。

11:04

次の課題は乾燥粉末化

加藤はさらに、ドローンで無人輸送するプログラムをあらかじめ用意しておくような使い方はできないかと尋ねた。教授は、今後はそうなっていくだろうと答えた。そのうえで、もう秘密にする必要もないと思うと前置きし、アメリカも取り組んでいて自分たちも挑戦していくと言って、人工血液を乾燥粉末にする構想を明かした。粉末にすればドローンで運べるうえ、保存期間も延びる。教授は、次世代の人工血液は乾燥させる必要があるだろうと見ており、その分野ではアメリカやヨーロッパとの新たな競争になると語った。

11:53

救急車の中から止血を始める

人工血小板は災害時だけでなく、日常の救急医療でも役立つと教授は言う。交通事故で大量に出血した人のもとに救急救命士が駆けつけても、その場で患者の血液型はわからない。血液型を問わずに投与できれば、従来は救命救急センターで行っていた止血の根本的な治療を最初の段階から始められる。教授はこれを「まさに夢の血液、夢の治療革命」と表現した。

ナレーションによると、現在は病院に着いてから医師が血液型を判断し、そのあとで血小板を輸血して止血しながら治療する。人工血小板が使えるようになれば、救急車で運ぶ間に救命士が止血を行い、病院に着いてすぐ治療に入れる。一刻を争う救命医療で、大幅な時間短縮が期待できるという。

ここまで聞いた加藤は、天然の血小板と人工血小板がこれほど違うことはわかったとしたうえで、そもそも人工血小板とは何なのかを尋ねた。教授が仕組みの説明に入ろうとしたところで、この映像は終わっている。