【朝も洗顔料使うべき?】いる人・いらない人の肌質見分け方を解説!資生堂『洗顔キャンセル界隈(?)』に警鐘も、SNSでは賛否両論…!プロの見解は?
かずのすけ朝起きたときの洗顔に洗顔料を使うべきか、それともぬるま湯だけで済ませるべきかという議論が、SNSを中心に活発に行われている。資生堂のプレスリリースを契機に再燃したこの問題について、洗浄科学を専門に研究してきた美容化学者のかずのすけ氏が、皮膚科学的なデータや肌質、スキンケアの組み合わせをもとに見解を示した。極論として「洗顔料の過度な使用は避けるべき」という立場を取りつつも、画一的に要不要を決めるのではなく、個人の肌状態や生活習慣に応じて判断する必要性を説いている。
資生堂のリリースと「洗顔キャンセル界隈」をめぐる議論
議論の発端となったのは、資生堂が2024年6月に発表した新製品のプレスリリースである。同社が15〜29歳の女性を対象に実施した調査において、「2人に1人が朝は洗顔料を使用しない」という結果が示され、そうした行動がSNS上で「洗顔キャンセル界隈」として顕在化していると表現された。これに対し、ネット上では「朝も洗顔料を使うべきだ」という意見と「ぬるま湯洗顔で十分である」という意見が対立し、大きな話題を呼んだ。
かずのすけ氏は、まず「洗顔キャンセル界隈」という言葉の使われ方に違和感を示す。「風呂キャンセル界隈」のように、本来入るべきだと理解しつつも疲労や精神的な事情から自虐的に使われる言葉と異なり、朝に洗顔料を使わない層は「使わない方が肌の調子が良い」という意図的な判断で行っているケースが多いと指摘する。
また、2人に1人が洗顔料を使っていない現状について、かつて主流だった「朝晩しっかりと洗顔料を使うべき」という美容常識からの大きな変化であると評価する。15年ほど前は洗顔料の使用が一般的だったが、過剰な洗浄による肌荒れへの危機感から、洗顔を減らすアプローチや「肌断食」「オフスキンケア」といった手法が広まった。しかし現在は、洗顔を控えすぎるあまりに必要な皮脂まで落とせず肌荒れを起こす人も現れるなど、極端から極端へと振れやすい傾向にある。そのため、0か100かの二元論に陥らず、適切な塩梅を見極めることが重要だと述べている。
「夜の間に皮脂が酸化する」説の科学的検証
朝の洗顔料使用を推奨する論拠として頻繁に挙げられるのが、「就寝中に分泌された皮脂が酸化して過酸化脂質となり、肌に悪影響を与えるため洗顔料で落とす必要がある」という説である。しかし、かずのすけ氏はこの言説について、科学的なエビデンスに乏しく過大評価されていると反論する。
根拠として挙げられたのが、1991年にポーラが発表した論文「角層中における過酸化脂質および表皮脂質の分布と洗浄による除去」のデータである。この研究では、紫外線が当たらない屋内環境で過ごした場合と、紫外線が当たる屋外環境で過ごした場合の過酸化脂質の生成量を比較している。
- 屋内生活(紫外線なし):24時間経過後でも、過酸化脂質の量は初期値と比べてわずかに増加する程度にとどまる。就寝時間の6〜8時間程度であれば、発生する過酸化脂質はさらに少なく、肌に深刻な害を及ぼす量には達しにくい。
- 屋外生活(紫外線照射あり):直射日光にさらされた環境では、わずか6時間で過酸化脂質の量が初期値の約5.1倍に急増する。
皮脂の酸化を劇的に促進させる主因は紫外線であり、日光に当たらない就寝中に大量の過酸化脂質が生成されるとは考えにくい。空気中の酸素によってわずかに酸化が進む可能性はあるものの、その程度の汚れであれば、ぬるま湯による洗顔や化粧水での軽い拭き取りで十分に除去可能である。したがって、「寝ている間の皮脂酸化を防ぐために強力な洗顔料が必須である」という主張は行き過ぎであると結論付けている。
基本原則は「洗顔料は1日1回」――肌質による向き不向き
かずのすけ氏は、肌への物理的・化学的負担を考慮すると、洗顔料の使用は「1日1回」にとどめるのが基本であると提唱する。かつての洗顔料の多くはアルカリ性で脱脂力の強い純石けんベースだったため、1日2回使用するとバリア機能を大きく損なうリスクがあった。現在ではマイルドなアミノ酸系洗浄成分なども普及しているが、界面活性剤を用いて肌を洗う行為そのものが一定の負担を伴う点に変わりはない。
肌質ごとに見た洗顔料の要不要は、次のように整理される。
- 朝の洗顔料が不要な可能性が高い人
- 敏感肌、乾燥肌、アトピー肌:もともと皮脂分泌が少なくバリア機能が低下しやすいため、朝も洗顔料を使うと肌の乾燥や粉ふき、肌荒れを誘発しやすい。ぬるま湯洗顔や化粧水の拭き取りで済ませるのが適している。
- 朝の洗顔料が必要な可能性が高い人
- 思春期の男女:生涯の中で皮脂分泌量がピークに達する時期であるため、夜に洗顔していても朝には多くの皮脂が分泌される。肌質が乾燥気味であっても、分泌過多によるニキビや肌荒れを防ぐため洗顔料を使うのが無難である。
- 強靭な肌質、重度の脂性肌:皮脂の分泌量が多く、1日2回洗顔してもバリア機能への影響が少ないタイプは、朝も洗顔料を使って皮脂をリセットした方が調子を保ちやすい。
なお、朝に洗顔料を導入する場合でも、夜と同じような高洗浄力の石けん系を重ねて使う必要はない。コカミドプロピルベタインなどの両性界面活性剤や、ラウロイルメチルアラニンNaなどのアミノ酸系界面活性剤を主剤とした、マイルドなジェル、ミルク、泡タイプの洗顔料を選ぶことで、肌への負担を抑えながら余剰な皮脂だけを取り除くことができる。
前夜のスキンケア内容によって変わる朝洗顔の必要性
肌質だけでなく、前日の夜にどのようなスキンケア化粧品を使用したかによっても、翌朝の洗顔強度は左右される。
朝の洗顔料使用が推奨される代表例が、高濃度のレチノール製品を夜に使用した場合である。レチノールは紫外線に当たると変質し、肌への刺激やトラブルの原因になる性質がある。低濃度の配合品であればぬるま湯洗顔でも対処できるが、高濃度の製品を塗布して就寝した場合は、朝の光を浴びる前にマイルドな洗顔料を用いて肌表面に残った成分を洗い流しておくことが望ましい。
反対に、朝の洗顔料を省略しやすいのが、高濃度のビタミンC誘導体やアスタキサンチンといった抗酸化作用の高いスキンケアを前夜に取り入れている場合である。これらの成分が肌表面の皮脂の酸化を抑えるため、就寝中の皮脂変質のリスクがさらに低下する。かずのすけ氏自身の体感としても、抗酸化成分を取り入れた翌朝は毛穴の開きや皮脂の不快感が目立たず、ぬるま湯洗顔すら省いて化粧水の拭き取りのみで問題なく過ごせる日が多いと語る。
夜の洗顔手順とのバランスと、化粧水拭き取りの注意点
1日のスキンケアの全体像から朝洗顔の役割を捉え直すことも欠かせない。
仕事の疲労などで夜に洗顔できずに寝落ちしてしまった場合は、朝に洗顔料を使用することで「1日1回」のサイクルが保たれるため問題ない。また、夜のメイク落としにおいて、クレンジング剤を使用した後にダブル洗顔(洗顔料での泡洗顔)を行わないケースや、植物油脂等を用いたオイル洗顔をティッシュオフだけで終了させているケースでは、肌表面に油分やメイク残りが付着している可能性がある。夜にダブル洗顔を省いて肌への摩擦負担を減らした分、翌朝にマイルドな泡洗顔を行ってリセットするという手順は理にかなった選択肢となる。
朝に洗顔料を使わず「化粧水の拭き取り」で済ませる場合、かずのすけ氏は物理的な摩擦への注意を強く促している。
- コットンには化粧水を裏まで染み込むほどたっぷり(10滴程度)含ませる。
- 肌の上を滑らせて擦る(スライドさせる)のではなく、優しく押さえるように「ポンポン」とパッティングしながら皮脂や汚れを吸着させる。
- 小鼻の脇や毛穴の詰まりが気になる部位のみ、ごくわずかに押し込むように拭き取る。
角層は摩擦に弱いため、擦る動作を日常的に繰り返すとバリア機能の破壊を招く。拭き取りを行う際は「滑らせず押さえる」動作を徹底することが不可欠である。
強力な朝洗顔が招く日中の皮脂分泌とメイク崩れ
「日中のテカリやメイク崩れを防ぐために、朝こそ洗顔料で皮脂を根こそぎ落とすべきだ」という考え方に対しても、洗浄科学の観点から注意が促された。
1994年の資生堂の研究「頭皮皮脂分泌量に関する研究」のデータによると、皮脂の分泌速度は皮膚の洗浄条件によって大きく異なることが示されている。有機溶剤(アセトン)を用いて皮膚を完全に脱脂した場合、顔面の皮脂量はわずか約130分(約2時間)で洗浄前の水準まで急激に回復する。これに対し、水のみで洗浄した皮膚では、その後の皮脂分泌の立ち上がりが非常に穏やかである。
つまり、朝に強力な洗顔料を用いて皮脂をごっそり落としてしまうと、肌は急激に皮脂を補充しようとし、洗顔後2時間ほどの間に皮脂の分泌スピードが急加速する。その結果、日中の早い段階で皮脂崩れやテカリが発生しやすくなり、メイクのノリを悪化させる原因になり得る。
皮脂分泌を抑えて日中の化粧持ちを保ちたい場合は、むしろ朝は水やぬるま湯のみの洗顔にとどめるか、表面に浮いた余分な油分だけを穏やかに落とすマイルドな洗顔料を使う方が合理的である。
洗浄科学から導く朝洗顔の結論
朝の洗顔料が必要か否かという問いに対する結論は、万人共通の正解が存在するのではなく、「約半々の割合で要・不要が分かれる」というものである。
- 洗顔料が不要な人:乾燥肌、敏感肌、アトピー肌、夜に抗酸化スキンケアを使用している人。ぬるま湯洗顔や低刺激な化粧水パッティングで肌を守るのが適している。
- 洗顔料が必要な人:思春期で皮脂量が多い人、極度の脂性肌、夜に高濃度レチノールを使用した人、夜にクレンジングのみでダブル洗顔を行わなかった人。ただし使用する場合も、脱脂力の強すぎる製品は避け、アミノ酸系やベタイン系などのマイルドな洗顔料を選択することが推奨される。
「朝は全員洗顔料を使うべき」「使わないのは不潔である」といった極端な言説に惑わされず、自身の肌質、季節、前夜のスキンケア内容を観察した上で、適切な洗浄強度を選択することが重要である。
