堺雅人、17年ぶりの舞台へ 『スリーゴースト』初日前会見で語られた6年越しの世界初演

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概要

渋谷・PARCO劇場で、パルコ・プロデュース2026『スリーゴースト』の初日前会見が行われた。この作品は、劇作家サイモン・スティーヴンスがこの劇場での世界初演のために書き下ろした新作で、演出はショーン・ホームズが務める。会見には二人のほか、主演の堺雅人、倉科カナ、伊勢佳世、迫田孝也、sara、小日向星一、高畑淳子、段田安則が登壇した。

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話題の中心は、まだ誰も観たことのない戯曲をどう立ち上げてきたかだった。劇作家は「これまでで最も個人的な戯曲」だと語り、演出家は6年がかりの準備と直前まで続いた変更について話した。キャストはそれぞれの立場から、毎日内容が変わっていく稽古場の様子を振り返った。

18:23

劇作家サイモン・スティーヴンス:遠い文化のために書いたから、最も個人的な戯曲になった

スティーヴンスは冒頭の挨拶で、長年の協力者であるホームズと共に、PARCO劇場で新作を開幕できることを誇りに思うと述べた。さらに、自身が愛する町だという東京で初日を迎えられることも光栄だと話した。

司会から、6年前から準備してきた作品を日本で上演する思いと、日本人キャストの魅力を聞かれると、スティーヴンスは「なかなか複雑な、混ざった質問ですね」と前置きしてから答えた。これまでプロとして上演された自作の戯曲は38本になる。だから新作の開幕には慣れていてもおかしくないし、毎回同じしきたりを繰り返すだけになってもいいはずだという。それでも実際には毎回必ず驚きがあり、新しい作品を開けるたびに自分をさらけ出している感覚が強くなっていく、と彼は語った。

今回はその感覚が特に強いという。自分から遠い文化で上演される作品として書いたからこそ、これまでよりはるかに個人的な劇になった、というのがスティーヴンスの説明である。彼によれば、戯曲には自身の家族が登場している感覚がある。母親の存在が作中にあり、主人公の中には自分自身がいる。主人公の結婚生活には自分の私生活や結婚が重なり、娘の存在も確かに感じるという。自分の文化とは違う場所で作品を作ったからこそ、ここまで自分をさらけ出す戯曲にたどり着けたのではないか、と彼は振り返った。

スティーヴンスはこの話を時代の状況にも結びつけた。今は分断と孤立、恐怖に満ちた時代になりつつあり、ヨーロッパではナショナリズムが色濃くなっていると彼は見ている。だからこそ国を越えて旅をし、自分の場所ではない土地を訪れることが大事であり、そこで初めて自分の真実が見つかるのではないか、と述べた。そして、自分自身もこの戯曲の執筆を通して自分の真実を見つけられたと感じている、と語った。

日本人キャストとの仕事については、言葉にするのが難しいほどの喜びだったという。俳優たちを心から信頼しており、彼らが自分の戯曲と夢に命を吹き込んでくれたことが嬉しい、と話した。

23:14

演出家ショーン・ホームズ:6年の準備と「最後の瞬間まで変える」演出

ホームズにとって、パルコのために東京で演出する作品はこれが5作目になる。彼はこの戯曲を「挑戦しがいがあり、複雑でトリッキーで遊び心のある作品」と表現した。同時に、美しく、人の心を根底から揺さぶる戯曲だとも述べ、今夜初日の観客の前でそれが初めて命を得ることを喜んだ。

質問に答える際、ホームズはまず小さな冗談を挟んで会場を笑わせた。そのうえで、スティーヴンスとは25年来の友人であり、何度も一緒に仕事をしてきたと説明した。そのホームズから見ても、今回の作品は特にユニークだという。理由として挙げたのは準備の過程である。6年をかけるなかで、イギリスではイギリス人俳優によるリーディングを行い、東京では日本人俳優によるリーディングを行った。さらに東京で2月にワークショップを開き、美術や表現方法のアイデアを探った。ホームズは、プロデューサー陣が資金面だけでなく、自分たちを信じて情熱的に創作を支えてくれたことが何より大きかったと強調した。

ホームズは自分のことを、変更を好み、しかもかなり遅い段階まで変え続けるタイプの演出家だと認めた。そうしたやり方はカンパニーやクリエイティブチームにとって大変なこともあるという。それでも今回は、キャストもスタッフも勇気を持って取り組んでくれた。その献身のおかげで、作品をより良いものにしながらここまでたどり着けた、と彼は語った。

26:42

堺雅人:毎日が演劇学校、初日に緊張しないのは毎日緊張していたから

主演の堺雅人は、初日の緊張や意気込みは稽古初日からあまり変わっていないと話した。稽古の始まりから、その世界に飛び込むような気持ちで一場面ずつ作ってきた。その積み重ねが今日につながっている気がするという。1か月の稽古期間はあっという間で、夢のような日々であり、幸せな勉強の日々だったと振り返った。

創作の過程については「毎日が演劇学校みたいだった」と表現した。教わったことは多すぎて何から話せばいいか分からないほどで、これからの次の仕事、その次の仕事で必ず思い出すことがたくさんあるだろうという。

堺は、今日あまり緊張していない理由に、他の登壇者の話を聞きながら気づいたと語った。毎日緊張していたからだ、というのである。稽古場では、何かが起きるとホームズが演出を変え、キャストがすぐに反応してまったく違う芝居になり、それを見てホームズがまた変える。その繰り返しが毎日続いた。堺によれば、どの時点でも観客に見せられるほどの仕上がりになっていて、毎回本番並みの質だった。ドキュメンタリーとして撮り続けても絶対に面白かっただろう、とも話した。

堺が今回あらためて学んだのは、言葉と物語を信じてそこに立ち続けることの力だった。ホームズが誰よりもスティーヴンスの言葉を信じていて、その気持ちにキャスト全員が引き寄せられていった気がするという。技術はもちろん確かで、勉強もたくさんしたが、最後は気持ちなのだ、と堺は語った。そして「部活みたいな感じで終わっちゃうんですけど」と照れながら、技術と気持ちのどちらも大事だと学んだと締めくくった。

28:44

倉科カナ:作っては壊す実験の日々と、台本を持たない共演者へのプレッシャー

倉科カナは主人公の妻・花を演じる。挨拶では、スティーヴンスの脚本、ホームズの的確で実験的な演出、美術・照明・音楽、そして俳優陣の素晴らしさを挙げた。美術や照明、音楽、俳優の身体とせりふが重なっていくにつれ、幻想の世界と現実が重なって揺れていく。その美しい世界がとても好きだと話し、観客の反応が楽しみだと語った。最後に報道陣へ「よきようにお書きください」と投げかけ、会場の笑いを誘った。

創作について倉科は、スティーヴンスの脚本は読めば読むほど深く、演じれば演じるほど「そうだったのか」という気づきをもたらしてくれると述べた。ホームズとの稽古は毎日が実験的で、作っては壊すことを繰り返しながら、作品はどんどん良くなっていったという。その過程に演劇ならではの自由さと表現の可能性を感じ、より演劇を好きになる日々だったと話した。

印象に残ったエピソードとして倉科が挙げたのは堺のことだった。まだ立ち稽古ではなく読み合わせの段階なのに、堺は膨大なせりふをすべて覚えて台本を持っていなかった。それが大きなプレッシャーになったと笑いながら明かした。スティーヴンスも、誰も台本を持っていないことに触れていたという。

30:18

伊勢佳世・sara:答えをくれない劇作家と、1歩で変わる景色

花の姉・ミカを演じる伊勢佳世は、稽古が本当にあっという間で、このメンバーでもっと稽古していたいのが正直な気持ちだと話した。稽古を重ねるほど、スティーヴンスがものすごく懸命に書いた本なのだと感じたという。だからそれに応えたい気持ちで、ホームズとともに作ってきたと語った。

伊勢によれば、スティーヴンスに「ここはどういうことなんですか」と尋ねても「僕も分からない」と返されることがあった。そのため、あまり質問できなかったという。それでも、そうか、自分で悩んで考えるしかないのだと納得したと話した。ホームズは次々に演出を変え、そのたびに伊勢も挑戦し直した。その一つひとつが無駄ではなく、たどってきたすべてが今の人物像になっているという。本来なら他の現場でも自分の力でこういう稽古ができればいいのにと思いつつ、今回はホームズの力を借りて多くの可能性を探れたのが豊かな時間だった、と振り返った。

saraは、稽古初日からつけ始めた作品ノートが、本番が始まる前にもう1冊終わりそうだと明かした。稽古が面白すぎて、毎日帰り道で興奮しながら「すごいものを見た」と感じる日の連続だったという。他の俳優の芝居を見ている時間も長かった。そのなかで、たった1歩外に立つだけで、あるいは「ここは見ないで」「ここは逆に見て」というホームズのノート一つで、関係性も景色も言葉の温度も変わったと語った。演技が大好きな人間として、こんなに面白い創作の現場にいられることが毎日幸せだったという。挨拶では、今日にしかない瞬間が必ずあるはずで、その爆発のようなものを観客と同じ空間で共有したいとも話した。

32:55

迫田孝也・小日向星一:百面体のような戯曲と、ガムの失敗

主人公の友人を演じる迫田孝也は、挨拶で稽古中の心境を擬音たっぷりに語った。本番が近づくにつれドキドキバクバクしてきたが、昨夜はすやすや眠れた。ところが今日になると体はガチガチ、膝はガクガクになってきた、という具合である。通訳が「翻訳しづらい」と漏らし、会場は笑いに包まれた。

創作について迫田は、スティーヴンスの戯曲に「百面体」のようなイメージを持っていると話した。稽古で分かったつもりになって帰り、翌日また臨むと、他の俳優が演じるシーンがまったく違う表情を見せている。ただしそれは別の物語になっているわけではない。芯は同じまま、さまざまな表情を見せてくれるのだという。そこにホームズがおそらくひらめきで変更を加え、物語はさらに違う顔を見せていった。初日以降も『スリーゴースト』はいろいろな表情を見せてくれるはずで、それを楽しみたいと述べた。

小日向星一は、共演者たちを「いい意味でお芝居の化け物のような方々」と表現し、有意義で豊かな稽古だったと話した。印象に残ったエピソードとして挙げたのは、自分の食べ癖である。ホームズに呼ばれるとき、自分はたいてい何かを食べていて、何度も笑われたという。ある日、堺との二人のシーンが突然始まったとき、小日向は油断してガムを噛んでいた。小さいガムだからばれないだろうとそのまま続けたところ、堺がアドリブで「何をもぐもぐ食べてんだ」と挟んできた。動揺した小日向はせりふが全部飛んでしまったという。

14:26

高畑淳子:初めてのシルクと、劇作家の母親像

主人公の母を演じる高畑淳子は、PARCOが用意したシルクの衣装で登壇した。シルクの衣装はもちろん初めてで、きっとこれが最後だと笑わせた。前日のプレビューを観た友人からは、「すごく素敵なものを作っている君たちが羨ましかった」というメールが届いたと紹介した。

高畑は、自分の役はスティーヴンスの母親がモデルではないかと感じたという。スティーヴンスは時々母親の話をしており、昔は劇場に来なかった母が、彼が戯曲を書くようになってから時々来るようになったと話していた。高畑はそれをイメージにしたと語った。またホームズがスピーチで、新作が出来上がる喜びは何にも代えがたいと話したとき、「本当にお芝居の国の人なんだ」と感じ、涙が出そうになったという。

高畑は、最初に台本を読んだときは自分の出番の少なさに「これしか出とらんのかい」と思ったと明かした。それでも今は「もう十分です」と言う。一番腹が立ったのは堺がとにかく大量のせりふを喋り続けることだ、と冗談めかして語り、それが素晴らしいので楽しみにしてほしいと続けた。

創作の過程については、71歳になって記憶の衰えと戦っている自分には大変な挑戦だと率直に話した。ATMに行ってお金を取らずに帰ってしまうこともあるという。稽古では、今自分はどこにいるのか、どこにはけるのか、いつ出るのか、という日々だった。それでも自分が必要とされているのだからと考え、二人の演出と戯曲に乗り、この芝居で「遊べる」よう身をさらしていきたいと語った。

16:27

段田安則:世界初演だから「83億人の中で僕しかいない」

ミカと花の父を演じる段田安則は、司会に名前の読みを間違えられ、「ダンダです」と訂正するところから挨拶を始めた。前日は「こっそり」プレビューをやったと言いかけて、こっそりではないと自分で訂正した。昨日はドキドキしたが、今日は2回目だからそうでもないと思っていたのに、記者会見のようなことになって緊張してきた、と会場を笑わせた。

段田もスティーヴンスとホームズに、イギリスという世界の演劇の国の人だという印象を受けたという。そして、この作品が世界初演であることに触れ、独特の口上を述べた。世界には83億の人口がいるが、この役ができるのはその中で自分しかいない。将来はもっといい俳優が演じるかもしれないが、今は失敗しようが何しようが自分しかいない。そう思って気楽に務めたい、というのである。続けて段田は、「17年ぶりの舞台を務めます」と堺の話題をさらうように言い添えた。堺は「びっくりした」と驚き、会場は笑いに包まれた。

創作について聞かれると、段田は英語は話せないが、同じ演劇をやっている者同士という感覚があったと話した。センスは人それぞれ千差万別だが、信頼して一緒に仕事ができたという。もう一ついいことを言おうとしたが忘れてしまった、と締めくくった。

36:13

「観方のマニュアルはまだない」:堺雅人から観客へ

会見の最後に、司会は堺に観客へのメッセージを求めた。堺は、初めての作品なので観方のマニュアルがまだないと話した。悲劇かというと悲劇でもなく、これから何劇という名前がつけられていく芝居だと思う、だから観方も含めて探ってほしい、と呼びかけた。

堺によれば、キャスト自身もよく分からないまま稽古場で芝居をしてきた。劇場に入り、前日のプレビューで観客の前で演じると、また全然違う芝居になったという。だからそれは観客の責任でもある、と堺は笑いを交えて語った。何をすればいいというものではないが、一緒に作っているという気持ちで、世界で初めて生まれるものを楽しんでほしい。きっと見たことのないものが見られるはずだ、と結んだ。