IDCフロンティアへのサイバー攻撃 犯行声明とみられるメッセージから犯人像と対策を探る

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概要

ソフトバンクの子会社IDCフロンティアのクラウドサービスがサイバー攻撃を受け、物流、自治体、インフラまで幅広い分野に影響が出た。日本テレビ『追跡取材 news LOG』(10月10日放送)は、犯行声明とみられるメッセージを入手し、サイバーセキュリティ会社に分析を依頼した。番組では、メッセージから見える犯人像を探り、スタジオでは専門家とゲストが、日本が標的になる理由と、国・企業・個人がとれる対策を議論した。

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クラウド利用者の画面に表示された犯行声明

番組が入手したメッセージは、IDCフロンティアのクラウドサービス利用者の画面に表示されたものである。「インフラを取った。あなたのクラウドは我々のものだ」という趣旨の文言のほか、日本語で「復旧の唯一の方法は私たちとの交渉です」とも書かれていた。

IDCフロンティアは、データなどを保管するインターネット上の空間であるクラウドを提供している。その一部が攻撃を受け、サービスを利用するJR東日本や日水物流など495の企業や自治体に次々と影響が出たと番組は伝えた。

取材に応じたクラウドサービスの利用者によると、クラウドのログインページにアクセスすると、このメッセージが自動で表示されるようになっていた。サーバーの再起動や設定変更ができなくなり、通常の運用を続けられなくなったという。利用者は、攻撃を受けたと知ったときの心境を「正直大変なことになった」と振り返った。

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埼玉のスーパーと飲食店に及んだ影響

攻撃の影響は食品の流通にも及んだ。番組が埼玉県のスーパーを訪ねると、店の代表のもとに卸売業者から、障害が発生したことを詫びるメッセージが届いていた。食品大手・ニッスイグループの日水物流で入荷と出荷が止まったためで、その原因はIDCフロンティアがサイバー攻撃を受けて起きたシステム障害だった。

このスーパーは飲食店からの注文も直接受けている。店の壁に貼られたメモには「トラウトサーモン入荷未定」と書かれていた。スーパーに発注していた飲食店を訪ねると、店主は「サイバー攻撃になったので入らない」と聞かされたといい、そのときは「困ったな」と思ったと話した。手元の在庫は残りわずかで、在庫が尽きるのではないかと気をもんだという。番組は、サイバー攻撃の脅威が日常生活にも及び始めていると伝えた。

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「7分間」で暗号化したという主張

番組は、顧客企業のセキュリティを24時間365日監視するセキュリティ会社の監視センターを訪ね、犯行声明とみられるメッセージを分析してもらった。

担当者がまず注目したのは、「国家規模のクラウドを解体するのに7分間」という記述である。担当者は、これはあくまで攻撃者側の主張だと断ったうえで、たった7分ですべてのクラウドのシステムを暗号化したと書かれていると説明した。そして、非常に速く効率よく壊したのであれば、非常に高い技術力を持ったやり方だろうと見立てた。

次に注目したのは、メッセージ中央の「実行せよ」という文言の下に、アルファベットや記号が2行にわたって並んだ部分だ。担当者によると、1行目は脅迫文ファイルの名前とその場所の探し方、2行目は見つけたファイルの表示方法を示しており、基礎的なコマンドで手順を教えている。担当者はこれを「ここまでしないと分からないでしょ」という、上から目線のメッセージだと評した。

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ロシア系ランサムウェアグループの可能性

メッセージを送ったのは誰か。担当者は、身代金を要求するランサムウェアの手口を使うロシア系犯罪グループである、という印象を持っていると述べた。

その根拠に挙げたのは、攻撃したデータ量に関する記述である。メッセージにある「PB」はペタバイト、つまりギガバイトの1000倍のさらに1000倍の単位で、それほどの桁の情報をすべて暗号化したと主張している。担当者によれば、大量のデータを攻撃したとあえて強調する手口はロシア系犯罪グループの特徴だという。「もう時間がない、どうしようもない、交渉するしかない」と相手を焦らせ、追い詰めるような作りにするのが、ロシア系ランサムウェアグループに共通する行動だと担当者は説明した。

目的については、中心メンバーが逮捕されると非常に豪華な暮らしをしていることが分かる場合があり、私利のためにやっているのではないかと言われている、と担当者は話した。

今後の見通しについて、担当者は厳しい見方を示した。攻撃者のレベルはこれからさらに上がり、金融機関並みの対策でなければホームページすら守れない時代がまもなくやってくるという。担当者は、金融機関レベルは相当に高い水準だが、それに近い水準でなければ守れないことを認めてもらうしかない、と語った。

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スタジオで語られた「被害の実感のなさ」

スタジオには、ゲストの石原氏と東京大学准教授の斎藤幸平氏が出演し、サイバーセキュリティに詳しい日本プルーフポイントの専門家が解説に加わった。

被害が相次ぐ状況について、ゲストの一人は、生活者の側にまだ被害の実感がないと率直に語った。サーモンが届かないという食堂の話は分かる。しかし、クラウドやランサムウェアと言われても、難しい記号が並んでいるという程度の認識しかない。JR東日本が影響を受けたと聞いても、電車は止まっていない。次に何が起きるのか、この問題の重要性を自分たちはつかみきれていないのではないか、という問題提起である。司会者も、被害の全体像をまだ実感を持って把握しきれていないように思う、と応じた。

9:16

日本にロシア系グループが多く来る理由

プルーフポイントの専門家は、日本に来ているランサムウェアグループにはロシア系が多いと説明した。例として挙げたのが、昨年アサヒグループホールディングスが被害を受けた攻撃である。このときのグループはQilin(キーリン)と名乗っていた。専門家によると、Qilinは自分たちを祖国ロシアを愛する理想主義者だとし、祖国のために戦っていて、金は単なる手段にすぎないと主張していた。専門家は、日本がロシアに経済制裁を行っていることへの報復とも思える攻撃が多い、という見方を示した。

日本は狙われていると考えるべきか、という問いに、専門家は「日本は特に激しい」と答えた。他の国も現在狙われているが、日本はこれまで言語の壁に守られてきた。ところが今は、攻撃者がAIを使うことで、日本の状況やシステムの構成を言語の壁を越えて把握し、攻撃できるようになっているという。さらに、日本はここ数年デジタル化を急速に進めてきたため、インターネットからアクセスできるシステムが山ほどある。専門家は、日本は今が狙いどきだと各国の攻撃者が思っているかもしれない、と述べた。

10:53

「どうしたらいいのか」という不安と、ネットの開放性をめぐる議論

斎藤氏は、今日いちばん聞きたいのは結局どうしたらいいのかだ、と切り出した。政府はマイナンバーカードなどで個人の情報を集め、企業は誰が何を買ったかといった、見られたくない情報も大量に集めてきた。そこへAIを使った攻撃が加わり、しかもAIの性能は猛烈な速さで上がっている。今はまだ序の口で、これから世界中から日本に攻撃が来るとしたらどうすればいいのか、非常に不安だと語った。

スタジオでは、問題はインターネット空間で起きている以上、どこで歯止めをかけられるのか、インターネットを使わないことしか手がない状況なのか、という問いも出た。専門家は、隣国の中国が政府主導でインターネットとの境界に「グレートファイアウォール」を設けている例を挙げ、日本は開かれた状態にあると説明した。

これに対してゲストからは反論が出た。中国が情報を閉じていることを日本は普段批判し、日本は民主主義だからそうしないと言っている。それなのに、情報を囲い込む方が正しい、あるいはそうせざるを得なくなる、ということなのか、という問いである。

専門家は、インターネットは誰でも自由にやり取りできるオープンな場だったからこそ発展したが、今はそれが裏目に出ている状況だと述べた。そして自動車の例を挙げた。自動車が日本に広まり始めた頃は運転免許すら不要だった。しかし普及するにつれて交通ルールやガードレール、免許制度ができた。インターネットについても、こうしたことをゆくゆくは考えていかなければならないという。今後は、自由な部分と安全な部分のバランスをどうとるかが求められる、というのが専門家の立場である。

ゲストからは、鉄壁の守りの中で国家が情報を左右するようになれば、国の意思が強く働き、これまで明らかにならなかったものが表に出て見られるようになるというインターネットの良さが失われる、という懸念も示された。

14:03

能動的サイバー防御法と、国の体制の課題

では、国は本当に守ってくれるのか、企業や個人は何をすべきか。この問いに専門家は、ちょうど今月から能動的サイバー防御法の運用が始まったことを挙げた。これにより国が率先して被害企業から情報を集めている段階だという。

専門家によると、これまでの日本政府は固まった硬い情報しか外に出さなかった。しかし今は、「まだ一部の組織での傾向だが」といった形で、早い段階から情報提供を始めている。これまでの日本政府とは違って機動力が出てきた、と専門家は評価した。

一方で、政府内の担当機関を今後もっと大きくする必要があるのではないか、という指摘には、専門家も同意した。人員も権限もまだ足りないのが実情だという。ゲストからは、国の権限強化には日本人の反発も強く、自分たちは何を取るのかを選択しなければならない、という意見が出た。司会者も、その価値判断をしなければならない局面に来ているのかもしれない、と応じた。

15:16

基本的な対策の徹底と、攻撃者の公表

番組は対策をまとめて示した。企業がとるべき対策は、アカウントやパスワードの管理、バックアップ、ソフトウェア更新を欠かさないことである。国の側は、これまでより積極的に情報を共有するようになったことに加え、攻撃者の名前の公表や、攻撃に使われたシステムの封鎖といった手段がある。

攻撃者の公表について、専門家はアメリカの取り組みを紹介した。攻撃者が誰で、どのような手法を使っているかを公表することで、攻撃者に「もうばれている」と思わせ、攻撃を思いとどまらせるやり方だという。

企業側については、足元のサイバーセキュリティをきちんと整えることが大事だと専門家は強調した。今来ている攻撃のほとんどは魔法のような新しい攻撃ではない。従来からある攻撃の手口が、AIによって速く、量も大きくなっているだけとも見ることができる。だからこそ、セキュリティの基本が改めて大事だという。

16:18

3連休に注意すべき二つの点

放送日から始まる3連休について、専門家は注意点を二つ挙げた。

一つ目は、連休中はシステム管理者やセキュリティ管理者が休みで社内にいないことが多い点である。攻撃者にとっては、侵入した企業の中で感染をどんどん広げる絶好のチャンスになる。発見が2〜3日遅れるため、被害の範囲を大きくできるという。

二つ目は、連休明けに大量のメールを処理しなければならない場面である。急いでメールを処理しているときに、紛れ込ませた詐欺メールをクリックさせる手口がよく見られるという。専門家は、会社に戻って大量のメールをさばくときこそ、普段と違うところがないかに気をつけ、なるべくクリックしないようにしてほしいと呼びかけた。

番組は、攻撃の局面は変わってきているが、対策は基本的なことを徹底するのが大事であり、3連休は特に注意が必要だ、という話で締めくくった。一方で、自由で開かれたインターネットと国による防御の強化をどう両立させるかという問いについては、スタジオでも価値判断を迫られている段階だという認識が示されるにとどまり、答えは出ていない。