役所広司の「七変化」とグローブ座での英語劇 Netflixシリーズ『俺のこと、なんか言ってた?』完成報告会の質疑
oriconNetflixシリーズ『俺のこと、なんか言ってた?』の完成報告会では、終盤に来場者からの質問に登壇者が答えるコーナーが設けられた。会場に並べたコースターの裏に番号付きの質問が書かれ、登壇者が引いた番号の質問を司会が読み上げる形式である。共演者の目に映った役所広司の姿、主人公・高瀬のように世界から忘れられたらどうするかという仮定の問い、撮影中の苦労や驚きの三つが話題になった。最後は、第1話冒頭のロンドン・グローブ座での撮影に役所が1年以上かけて備えた話へ移っていった。
共演者が選ぶ「この姿の役所広司」
最初に役所が引いたのは6番の質問だった。予告編で強い印象を残した役柄をはじめ、劇中では役所の「七変化」が見られる。共演者から見て特に衝撃的だった姿、気に入っている姿はどれか、という内容である。
登壇者からは「Tシャツ」「(白い衣装姿が)可愛い」といった声がまず上がった。ある共演者は、ロケバスで弁当を食べる役所の姿が個人的に好きだと答え、そのシーンに自分も参加していたと話を続けた。エキストラの集まりという設定のシーンで、出演者に弁当が配られて食べる場面である。撮影の直前、役所は弁当が置かれた場所へ行き、じっと弁当を見比べていた。後で聞くと、アジフライの大きさが一番良いものを探していたのだという。この共演者によれば、役所は一人で30個ほど、テントの中の弁当を漁るように見ていた。何をしているのかと思ったら、そこまで画にこだわっていたのだと話は締めくくられた。当の役所はこのことを覚えていないと答え、会場の笑いを誘った。
別の共演者は喫茶店のシーンを挙げた。役所は白いセーター姿で、メインのカップルの後ろで話している別のカップルの一人を演じている。その姿が本当に普通で、背景に溶け込んでいるのがすごかったという。司会は、ほかにも驚くような格好が本編に出てくると予告して、この質問を終えた。
世界から忘れられたら、まず誰に思い出してほしいか
続いて吉田羊が4番を引いた。主人公の高瀬のように、突然世界から自分のことが忘れられてしまったら、最初に誰に思い出してほしいか。その人にどんな一言をかけたいか、という質問である。
吉田はマネージャーを挙げた。自分の窓口としてさまざまな場所へ足を運び、営業してくれる人なので、まずその人に思い出してもらい、もう一度一から売り込みに行ってほしいという理由だった。
坂井真紀は少し迷ってから、自分の家族を選んだ。かけたい言葉は「お母さんだよ」で、信じてもらいたいと付け加えた。江口のりこも身内を挙げたが、理由は現実的だった。生活していかなければならないので、親族だからと頼んでお金を貸してもらうという答えに笑いが起きた。
上川周作も家族を挙げ、少し恥ずかしそうに打ち明けた。自宅の目覚まし時計に「おはよう、朝だよ、グッドモーニング」といった自分の声を録音しているという。忘れられたら、それを家族に聞かせて「これ俺の声だよ」と伝えたいと答えた。
誰も自分を知らなくなったら何をするか
賀来賢人が引いた3番は、本当に誰も自分を知らない状況になったら、まず何をしたいかという質問だった。
賀来は、今は普通に生活できていて特に困っていないと前置きした。そのうえで、俳優でなければやってみたかった古着屋を挙げた。髪を長くし、髭も伸ばしてやってみたかったという。
松山ケンイチは、俳優のスキャンダルを追いかけたいと答えた。誰も松山がいるとは思わないので、パパラッチの側に回り、どんな裏側が出てくるのかを見てみたいという発想である。磯村勇斗は、渋谷のスクランブル交差点でYouTubeを撮りたいと話した。信号が青になった瞬間に叫んだり、自撮り棒を持ってふざけたりして、周りから「また何かやってるよ」と見られるようなことをしてみたいという。
エキストラが「VIVANTの撮影?」と勘違い
最後に役所が引いた5番は、撮影中に一番苦労したこと、現場で驚いたことや思わず笑ってしまったエピソードを尋ねる質問だった。
役所は、驚いたことはいろいろあるが「こういう場で言えること」として、自分の役がホームレスになる場面の話をした。看板を持ってアルバイトをするシーンで、役所は汚れた身なりで髭だらけだった。その場に大勢いたエキストラの一人が、「これはVIVANTの撮影をやっているのか」と口にしたという。役所はこれを「シーズン2をやっているのか」という意味だと受け取り、思わず笑ったと振り返った。
役所によれば、エキストラはその日どんな作品の撮影に行くのかを知らされていないので、そう思う人もいるのだろうという。登壇者の一人も、現場に行ってから「今日は死体で、ここに横になってください」と言われることがあると、エキストラの実情を補足した。司会はこれを受けて、その人は今もシーズン2を見ながら自分が出てこないと思っているかもしれないとまとめた。
グローブ座で「リア」を英語で演じるための1年以上の準備
司会に話を振られた金子文紀監督は、公表してよいかを確かめたうえで、第1話の冒頭について語った。ロンドンのグローブ座で、役所がリアを演じている場面から物語が始まるという。
監督によれば、海外で大勢のエキストラを使い、由緒あるグローブ座を押さえて何日間も撮影したこと自体が大変だった。ただ、監督が一番すごいと感じたのは役所の取り組みだった。役所は、イギリス人でも聞き取りにくいという400年前の特殊な英語で長い台詞を演じた。そのために1年以上前から準備を始め、完璧に仕上げてきたという。監督は3か月ほど稽古を見て完璧だと思っていたが、役所本人はまだ駄目だと言い続けた。最終的には、グローブ座で実際に演出を手がけている人たちも「すごい」と認めるところまで到達したと監督は話した。
役所はこの準備について、イギリス人の前で英語で芝居をして「この人は何を喋っているんだろう」と思われるのが嫌で必死だったと語った。
会場で起きた拍手
撮影の場に居合わせた吉田羊も、そのときの様子を語った。吉田によれば、イギリスの人々は小さい頃からシェイクスピアに親しんでいるため、たとえフィクションの長いドラマの一場面であっても、シェイクスピアの台詞を覚えて舞台で語るというだけで敬意を払うのだという。役所が最初のリハーサルでそのシーンを演じ、カットがかかると、会場から大きな拍手が起き、「素晴らしい」という声が上がった。吉田はそれに感動したと振り返り、質疑はこの場面の話で締めくくられた。
ここにいらっしゃってるご来場の皆さんから頂いた質問も、せっかくですからお時間の許す限り答えていただこうと思います。コースター並んでおります。裏をめくっていただきますと、質問とタイトルが、番号書いてあります。それを言っていただくと、私の方からどんな質問だったかを皆さんにぶつけたいと思います。役所さん、1枚。
裏返すんですか。はい。番号と。はい、6番。6番、はい、分かりました。役所さんの七変化。あ、そう。予告編でもインパクト抜群だった。じゃあ、それ表にして置いていただきまして。こんな質問でした。
予告編でもインパクト抜群だった熱波師をはじめ、劇中では役所さんの七変化が見られますが、共演者の皆さんから見て、この姿の役所さんは特に衝撃的だったという、お気に入りの姿はありますかと。これ、皆さん、この格好してるとか、この演じてるとか、これすごかったなとか、好きだなっていうのがあれば、ぜひ。皆さんあります? この姿の役所さんは衝撃だったなとか。
Tシャツ。白もかわいいですね。かわいい。あと僕、個人的にロケバスで弁当食べてる役所さんも好きですから。移動飯。移動飯してる役所さんです。
僕もシーン参加させていただいてますけども、すごいのが、エキストラの集まりの会のシーンなんですけど、弁当配られて食べるじゃないですか。シーン撮る直前に役所さんがお弁当があるところに行って、もうずっとこうやってお弁当見てるんですよ。後で聞いたら、実はアジフライのサイズ、一番ベストなものを探してたっていう。アジフライまでこだわるんだって。
そうですけど、こう入るというか。そうです。1人で30個ぐらいですよ、弁当こう漁って。何やってんのかと思ったら。何やってるのかと思ったら、そうです。だからそこまで絵にこだわられてるっていう。
役所さん、すごい、素晴らしい。なんかその。覚えてない。覚えてないですか? アジフライが大きいやつ、アジが大きいやつだっつって探し回ってましたけども。なるほど。素晴らしい。
他に何か、役所さんのこの姿とか、この格好よかったなとか。
私、喫茶店のシーンで、白セーターで、メインカップルの後ろで話しているカップルの役。本当にね、普通なんですよ。もうね、背景と化している。役所さんが背景なんです。そうなんです。あれはすごい。
それ以外にも、ええっていう格好もされたりしてるんで、これね、本編お楽しみください。じゃあ、吉田さんもちょっと1個、引いていただいて。
4番です。4番、分かりました。これ、高瀬川のように突然世界から自分のことが忘れられてしまっているとなったら、皆さんは一番最初に誰に自分のことを思い出してほしいですか? この人はとにかく思い出してほしい。その人にどんな一言をかけたいですかと。じゃあこれ引いた吉田さん、まず聞いてもいいですか?
私はマネージャーさんに思い出していただきたいです。私の窓口としていろんなところに足を運んで営業してくださる方なので、まずはその方に思い出していただいて、また一から売り込みに行っていただきたいなと思います。
まさに今後の高瀬川のようにっていう。はい。そうですね。坂井さん、何かあります? 忘れられてる、坂井って忘れられてるって。
どうしましょう? どうしようってなって。じゃあ、自分の家族に。
家族に。どんな言葉をかけてみたいですか? 思い出した家族に。お母さんだよって言います。信じて。
江口さんとか何かあります? 忘れられてしまってる、江口のりこ。
私もやっぱり身内ですかね。
そしてやっぱり、なんで忘れてるの、みたいな感じで語りかけるというか。
やっぱ生活していかなきゃいけないんで、お金を借ります。
まずは親族から、貸してって、借りました。上川さん、何かありますか? 忘れられてるわって。
僕もやっぱ家族ですかね。恥ずかしいんですけど、家の目覚まし時計、僕の声録音してて。
そんなことやってるんですか?
はい。「おはよう。おはよう。おはよう。朝だよ。グッドモーニング」っていう声を録音してるんで、「これ俺の声だよ」って言いたいです。
なるほど。分かりました。家族にこれ聞かせて思い出してもらう。分かりました。じゃあ賀来さんも、もう1個質問引いてみましょうか、せっかく。
3番です。3番。なるほど、こういう質問でした。もし本当に自分のことを誰も知らない状況になった、高瀬になったとしたら、まず何をしたいですかっていう。誰に思い出してほしいですか、さっきでしたけども。賀来さん、誰も知らない、じゃあまず何をしよう。
何します? でも別に今そんな困ってないんですよね。なんて言うんだろう。普通に生活できてるからな。なんだろう、自分のことを忘れてしまったら、みんな。古着屋とかやりますね。古着屋やりたかったんです。俳優じゃなかったら古着屋さんやってみたかったから。古着屋で、長い髪にして、髭生やしたかったです。
分かりました。松山さん、何かあります? 自分のこと、また誰も知らなくなってしまったって。
どうしようかな。俳優のスキャンダル追うかな、じゃあ。どういうふうに裏側が出てくるんだろう、みたいな。
そうか、誰も松山さんがいると思わないから。
はい。やってみたいな。パパラッチする側に回ってみたい。
回ってみたい。分かりました。磯村さん、どうですか? みんな忘れちゃってるよ、俺のことってなったら。
渋谷のスクランブル交差点で、YouTubeとか撮りたいですね。ふざけてるような、信号が青になった瞬間に叫ぶとか。自撮り棒持ったりとか、周りから「うわ、またなんかやってるよ」とかって。やりたいかな。
分かりました。ありがとうございます。じゃあ役所さん、最後にもう1個、もうちょっとだけ時間あるんで、行ってみましょうか?
5番。5番、分かりました。撮影中、一番苦労されたことは何でしょう? また撮影現場で、まさかこんなことがと驚いたこと、思わず笑ってしまったエピソードがあれば、ぜひともお聞きしたいですと。役所さん、ありました? 驚いた、あと苦労したっていうことで。
驚いたこととかエピソードはいろいろありますけど、こういう場で言えることはですね、僕はホームレスになった時にバイトしてるんですね、看板持って。その時、エキストラの方がたくさんいるんですけど、僕はもうホームレスだから、汚れて髭だらけのシーンなんですけど、エキストラの方が、これはVIVANTの撮影をやってんのか。シーズン2をやってんのかっていうような意味だと思うんですけど。そう思いますよね、多分。もう笑いましたね。
これ、扮装がね、VIVANTだという。分かりました。
エキストラの人たちはね、今日どんな撮影に行くか、知らされてないんですよね。だからそういう人もいるんだと思いますね。
そうですね。現場行ったら、「じゃあ今日死体で」って言われるんで。「ここ横になってください」っていう、その場で。
じゃあその方は今、もうシーズン2をずっと見て、出てこないなって思ってる可能性があるっていう。分かりました。
あと他にも何かあります? 大変だったっていう、覚えてることとかっていうの。大丈夫でしょうか、皆さん。このシーンは大変だったなとか、笑っちゃう、すごいなと思ったなとか、言えそうなこと、思い出していること、何かあります? このシーンはすごい。監督も何か覚えてる、このシーン撮るの大変だったなとかって、何か覚えてる?
言っていいんですよね。大丈夫ですか? 1話の冒頭がロンドンのグローブ座で、役所さんがリアを演じてるっていうところから。これ言っていいんですよね。
そこは大丈夫ですかね? はい。
もちろん撮影もすごい大変。海外でやって、エキストラもいっぱいいて、グローブ座っていうとても由緒ある場所を押さえて、そこで何日間も撮影するっていうことも大変ですし、何よりも役所さんがそれを英語で、しかもその英語は400年前の、なまった、イギリス人でも聞き取りにくいような英語、すごく特殊な英語を完璧にマスターした上で、すごい長い文をやってくださったんです。
1年以上前から準備をして、完璧なんですよ。でも3ヶ月ぐらいでも稽古見て完璧と思うんだけど、ご本人はまだダメだって言って。でも最後は本当にグローブ座の演出をやってるような方たちも見て、すごいっていうところまでやってくださっていて、これが一番すごいと思いました。
これ、役所さん、そんなご苦労があったんですか? 1年以上前から準備してっていう。
そう、必死ですよね。イギリス人の前で英語で芝居してね、この人何を喋ってんだろうと思われるの嫌だなと思ったんで。吉田さんも会場で見てくださって。
そうですか。いかがでした?
それに関連して言うと、やっぱりイギリスの方って小さい時からシェイクスピアに馴染んできてらっしゃるので、それが例えばフィクションで、長いドラマのワンシーンであろうと、やっぱりシェイクスピアのセリフを覚えて舞台に立って喋ってるっていうだけでリスペクトがあるんですよ。なので一番最初にリハーサルで役所さんがワンシーンをおやりになった時に、カットかかったら会場から大拍手が起きたんです。「素晴らしい」って言って。もうあれは感動しましたね。
本当にこれ、素晴らしいものになっております。
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