ロシアの日本人記者拘束、エトロフへの中国代表団、スターリンク制限――日露関係とウクライナ支援をめぐる米露の思惑
日テレNEWS2026年10月16日放送のBS日テレ「深層NEWS」は、二つの動きを取り上げた。一つはロシアで北海道新聞の日本人記者がスパイ容疑で拘束された事件で、もう一つはウクライナのエネルギー施設攻撃をめぐって米国とウクライナの溝が深まっている問題である。ゲストは防衛研究所研究幹事の兵頭慎治氏(ロシア政治・外交安全保障)と明海大学教授の小谷哲男氏(米国政治・外交安全保障)、コメンテーターは読売新聞編集委員の伊藤俊行氏。番組の問いは、ロシアがなぜ今このような手段で日本に圧力をかけるのか、そしてトランプ政権がウクライナ支援をどこまで政治的な道具として使っているのか、の二つである。
北海道新聞記者の拘束とFSBの主張
番組の説明によると、ロシア連邦保安局(FSB)は13日、極東サハリン州で北海道新聞の日本人記者をスパイ容疑で拘束したと発表した。FSBが公開した映像には、記者が泊まっていたホテルに踏み込む場面や、記者のものとみられるパスポートやパソコンが映っていた。FSBは、記者が北方領土と千島列島からウクライナでの軍事作戦に動員された兵士などの情報を集めており、日本の情報機関の指示でロシアの安全保障を脅かそうとしたと主張している。北海道新聞は当日の朝刊に編集局長名の声明を載せ、政府の指示に基づいて取材や情報収集を行うことはないと反論した。
兵頭氏はまず、これまでの事案との違いを指摘した。ロシアでの外交官やメディア関係者の拘束は、短時間拘束されてもすぐ国外退去を求められて終わるパターンがほとんどだった。ロシアと接する専門家の間では、中国のような長期の邦人拘束はロシアではないだろうと考えられていた。兵頭氏は、今回は長期化が懸念され、その考えを改めざるを得ないと述べ、ロシアでも中国並みの邦人拘束が起きうることを残念に思うと語った。
小谷氏は、ロシアが日本の外交的な反応を見ていると分析した。高市政権はロシアとの関係改善に向けた動きを見せていたが、8月のプーチン大統領のエトロフ訪問を受けて制裁を強める動きも見せている。ロシアは、関係悪化を受けて日本がウクライナ支援を強めるのか、逆に関係改善のために支援から手を引くのかを見ているのだろう、というのが小谷氏の見方である。
取材がスパイ行為とされる危うさ
伊藤氏は、ロシア当局が根拠を示さずに取材活動を情報機関の指示によるスパイ行為と主張している点を問題にした。日本の報道機関は権力から独立しており、検閲もない。ロシアが報道を統制し検閲している自国と同じ感覚で日本のメディアを扱っているとすれば、それは国柄の違いであり、とても容認できないという。
伊藤氏によれば、記者は国内外を問わず情報を集めて発信する。人々の生活や命に関わる懸念がないようにするためであり、当局が隠している情報でも取材し、必要なら発信するのが記者の仕事である。それをスパイと決めつけられるのは非常に危うい。ただ、これが近年のロシアのやり方だということは分かってきているので、北海道新聞の記者も細心の注意を払って取材していたはずだと伊藤氏は述べた。何を根拠に拘束したのかが示されていない以上、ロシアの威圧や政治的圧力という印象を持たざるを得ないという。
作り込まれた拘束映像は誰に向けたものか
FSBは記者の部屋に突入し、床に引き倒して拘束し、連行する様子までカメラで撮影していた。兵頭氏は、4分弱の映像がかなり作り込まれていることから、政治的メッセージを伝える思惑があったとみる。根拠の一つは、FSBと書かれたジャンパーを着た人たちが記者を取り押さえている点だ。FSBはソ連時代のKGBの系譜を引く諜報機関であり、通常の活動でそうしたジャンパーを着るはずがない。兵頭氏は、FSBの存在と活動をアピールする狙いがあったと読む。
アピールの相手について、兵頭氏は日本への外交的メッセージに加えて国内向けの面もあると指摘した。FSBはヨーロッパ方面でもハイブリッド攻撃などで活動を活発化させているとみられ、ロシア国内でも外国人だけでなくロシア国民に対する取り締まりを強めている。したがって今回の事案はサハリンや日本に限った話ではなく、国内の愛国的なムードを高める狙いもあるのだろうという。
映像には、ロシアの一方的なスパイ主張を正当化する「絵作り」もあったと兵頭氏は見る。ロシア語の文書があたかも秘密情報として入手したもののように映され、さらに記者がそのままモスクワへ移送され、拘置所に連れて行かれる様子まで含まれていた。兵頭氏はこれを用意周到に準備された映像だと受け止めた。
なぜサハリンなのか
北海道新聞はモスクワとユジノサハリンスクに支局を置いている。兵頭氏は、サハリン州がロシアにとって二つの意味で敏感な地域だと説明した。第一に、ロシア側では北方領土をサハリン州が管轄しており、日露間の懸案に直結する。第二に、戦争の長期化のなかで、サハリン州は前線への兵士の動員と犠牲がロシアの地方の中でも比較的大きい場所だと言われている。兵頭氏は、そうした実態が国内外に知られることをロシアは望んでいなかったのではないかと推測した。ただし、記者が実際にそうした取材をしていたかは分からず、ロシアの一方的な主張を受け入れるわけにはいかないと断ったうえで、一般論として述べたものである。
北海道新聞が狙われた理由については、兵頭氏は、自身の知る限りユジノサハリンスクに日本人を常駐させていたのは北海道新聞だけであり、北海道新聞だから狙われたというより、サハリンで日本人の常駐記者を対象にした結果そうなったのではないかとみる。北方領土問題への関心が高い北海道の新聞として日露関係の取材に熱心だったとは思うが、それ以上に標的にされる理由は思いつかないという。
正規の記者登録をしたうえでの取材と、スパイ行為をロシアが意図的に混同したのかという問いには、兵頭氏はロシアではスパイ行為の定義が広がっていると答えた。戦争の長期化に伴い国内の言論統制と統治の強化が進み、ロシア人自身も反戦的・反政府的な声を上げれば拘束される危険がある。プーチン政権が置かれたそうした状況のなかで、この種の事案がさまざまな形で起きているという見立てである。
WSJ特派員事件との類似と長期化の懸念
番組は過去の記者拘束例として、2019年に極東ウラジオストクで共同通信の日本人記者がロシア軍の機密情報を入手しようとしたとして一時拘束された件と、2023年3月にウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の特派員が米CIAの指示で情報収集していたとしてFSBに拘束された件を紹介した。WSJ特派員には懲役16年の判決が言い渡されたが、米露の身柄交換で釈放されている。
兵頭氏は、今回の拘束が長期化するとの見方が強まっているのは、WSJ事件との類似点が多いからだと説明した。地方でFSBにスパイ容疑で拘束され、裁判所と拘置所が同じ場所にあるモスクワのレフォルトボに移送され、2か月の勾留がすぐ決まる、という経過がここまで同じだという。インタファクス通信によれば、今回の記者もレフォルトボ拘置所に移送された模様だとされる。WSJの記者は懲役16年の判決を受け、拘束から1年半後に身柄交換で解放された。兵頭氏は、今回も同じような経過をたどることを懸念している。
小谷氏も、WSJの記者は勾留が何度も延長され、非公開の裁判で懲役16年となり、その後人質解放の一環で釈放されたと振り返り、これまでの流れを見る限り、有罪判決を前提に動いている可能性が高いと言わざるを得ないと述べた。
身柄交換という出口が日本にはない
日本はロシア側の誰かを拘束しているわけではなく、身柄交換で対応するのは難しいのではないかという問いに対し、小谷氏はWSJの記者も米露1対1では解放されなかった可能性が高いと指摘した。実際には米露だけでなく、ドイツ、ノルウェー、ベラルーシなど複数の国がそれぞれ拘束している人物を解放する大きなパッケージの中で解放された。最大の要素は、ドイツが元FSBの人物を拘束しており、プーチン大統領がその解放を強く求めていたことで、米国はこれをうまく利用したという。小谷氏は、日本がロシアのスパイを拘束しているとはおそらく考えにくく、同様の解決を目指すなら他国を巻き込んだパッケージが必要で、1対1の交換は難しいとの見方を示した。
伊藤氏もこれに同意し、日本単独で動いても出口はないだろうと述べた。そのうえで伊藤氏が問題視したのは、ロシアが日本を敵視しているというより軽視しているように見える点である。中国が日本を敵視した際には中国から日本への観光客が減ったが、ロシアからの観光客は増え続けており、昨年は倍になり、今年も8月までで前年比22%増えているという。一方で日本からはロシアへ行けない。ロシアから見れば日本は組みしやすく、敵視するまでもなく圧力をかけている可能性がある、というのが伊藤氏の見立てだ。だからこそ交換条件で日本が何かを譲ってしまうことは避けなければならず、同時に記者の安全も大事なので、各国を巻き込んだ対応を日本政府が考える場面だと述べた。
ロシア外務省声明と、制裁への「対抗」
ロシア外務省の報道官は13日、日本がロシアの安全保障を損なう目的で自国の記者に情報収集をさせようとするのは遺憾だと述べた。声明はさらに、日本の反ロシア政策による二国間協力の低下に加え、日本の再軍備化に対するモスクワの懸念に日本が耳を傾けようとしないことを踏まえ、今回の一件は日露関係をさらに悪化させる要因になると主張した。日本政府はこれに先立ち、制裁を逃れてロシア産原油を運ぶ「影の船団」への規制や、ロシアの軍事関係者ら9人・33団体の資産凍結を発表していた。
こうした日本の制裁への対抗として、これまでの短期拘束・国外退去から長期拘束へと一段引き上げたと見るべきかとの問いに、兵頭氏は、ロシアはそうとは言わないだろうが、政治的なニュアンスは出てしまっていると答えた。そのうえで、ロシア側の別の動きも想定されると述べた。日本人の入国禁止リストはこれまで何度か出ており、次のリストが出る可能性がある。また、ロシア国内の外国企業の資産をロシア政府が一時的に接収する動きがあり、15日付のプーチン大統領令でヨーロッパ企業について一部決定されている。日本企業や日系企業が次の対象になるのではないかという懸念もあり、日露関係がさらに悪化する可能性があるという。
兵頭氏はもう一点、ザハロワ報道官の「日本の再軍備化への懸念に耳を傾けようとしない」という表現は、中国がずっと使ってきたフレーズだと指摘した。プーチン大統領のエトロフ訪問以降に強まったロシアの対日強硬姿勢は、日本の動きだけに反応したものではなく、中国に寄り添い足並みをそろえながら日本に強硬な姿勢を示している側面がある、と留意を促した。
中国代表団のエトロフ訪問
記者拘束が発表されたのと同じ13日、中国の代表団が北方領土のエトロフ島を訪問したと発表された。代表団には中国・黒竜江省の政府関係者や企業経営者が参加し、ホテル事業や水産物の養殖など観光・インフラ整備に向けた投資候補地を視察した。茂木外務大臣は、北方領土があたかもロシア領であるかのように第三国が入域して活動することは受け入れられないとコメントしている。
兵頭氏は、背景にロシアの対日姿勢強化と中露連携があるとの見方が強まっていると述べた。これまでも中国系の民間企業が北方領土に入ってビジネスをしていることは確認されていたが、今回は地方政府関係者とはいえ代表団がエトロフを訪れた。兵頭氏は、北京とモスクワの間で了解がなければここまでの動きにはならないだろうとみて、プーチン大統領の訪問後に中国が政治的にエトロフへ足を踏み入れたことになると評価した。ロシアの中国依存が深まるなかで、日露関係に中国の影響力がどこまで広がるかが懸念されていたが、今回はその表れであり、今後この動きが強まることも懸念されるという。
一方、小谷氏はタイミングについて慎重だった。片方はロシアの情報機関、もう片方は中国の地方の経済関係の役人であり、同じ日に合わせるよう調整までしたのかは判断が難しいという。8月のプーチン大統領の訪問で外国からの投資を受け入れるというメッセージが出ており、その流れの中露協力がたまたま同じ日に重なったのではないか、というのが小谷氏の見方だ。ただ、結果として日本には二重の圧力になったと述べた。伊藤氏も、偶然だったとしても中露の連携ぶりがはからずも表に出たのであり、よほど用心しなければならないと述べた。
中露の間にくさびは打てるか
中露の連携を外交的に引き離すことは考えられないのかという問いに、兵頭氏は、これまでもうまくいかなかったうえ、戦争が続く限りロシアは中国の支援を必要とし、好むと好まざるとにかかわらず中国への依存を深めざるを得ないと答えた。そうなると力関係は中国が上になり、対日関係でもロシアが中国に引き込まれていく状況は、戦争が続く限り強まる可能性があるという。
小谷氏は、安倍政権もロシアとの関係を強化して中露協力が進みすぎないようにすることを目指したが、結果としてうまくいかなかったと振り返った。中露が本当の意味での同盟国になったとは思わないが、互いを必要とし、使えるパートナーだと考えていることは間違いなく、両者を離間させるのは現実的には難しいと述べた。
エネルギー施設攻撃をめぐる米ウ対立
後半はウクライナ情勢に移った。ロイター通信によると、13日夜から14日にかけてキーウや東部ハルキウなどがロシア軍の大規模攻撃を受けた。ゼレンスキー大統領は14日、弾道ミサイル39発と無人機120機以上が使われたと発表した。攻撃はエネルギー施設を標的とし、少なくとも60万人が停電の影響を受けたという。
これに先立つ11日、トランプ大統領はSNSで、ロシアとウクライナがエネルギー施設への攻撃停止で合意したと発表していたが、その後も大規模攻撃が行われた形である。ゼレンスキー氏は、ウクライナがロシアの製油所への攻撃を控えていたにもかかわらず、同盟国から弾道ミサイル攻撃の事前警告がなかったのは不公平だと不満を示した。この同盟国は米国を念頭に置いたものとみられる。米メディアは12日、ヨーロッパ当局者の話として、トランプ政権がウクライナと欧州の同盟国に対し、ロシアのエネルギー施設への攻撃を続ければ情報共有や米国製兵器の供給停止もあり得ると警告したと報じた。トランプ氏は13日、情報共有を停止したのかと問われ、ウクライナを支援し情報も共有している、戦争を終わらせるためにウクライナともロシアとも協力していると答えている。
トランプ氏は、ウクライナによるロシアの製油所への攻撃が世界的なディーゼル燃料価格の高騰を招いているとして攻撃停止を強く求めており、ゼレンスキー氏には何をしてもいいが製油所だけは攻撃するなと言った、標的はいくらでもあるのに攻撃した、米国の農家や牧場主に迷惑をかけている、と発言した。9日のプーチン大統領との電話会談後には、ロシアが30万トンを超えるディーゼル燃料を速やかに米国や国際市場に供給することで合意したと発表した。ゼレンスキー氏はこの合意を戦争を長引かせるための投資だと反発し、強いパートナーによる弱腰な決断だと批判した。番組冒頭では、ウクライナ軍がトランプ大統領の要請で停止していたロシアのエネルギー施設への攻撃を再開し、製油所で石油タンクが炎上する映像も紹介された。
早期警戒情報は止められたのか
トランプ氏の「情報を共有している」という主張と、ゼレンスキー氏の「事前警告がなかった」という主張は食い違っている。小谷氏は、実際のところはまだよく分からないとしたうえで、米国では法律上、情報共有を止める場合は議会への報告が義務付けられており、少なくとも議会にそうした報告はないので、政権としては止めていないという立場だと説明した。ただし、ウクライナが言っているのは事前通告がなかったということである。情報共有の枠組み自体は残っているが、今回は何らかの理由で事前通告をしなかったという可能性があり、そうであれば双方の主張は両立する。
小谷氏は、昨年2月28日にホワイトハウスでトランプ大統領とゼレンスキー大統領が口論した後、米国が実際に情報共有を一度止めた前例があると指摘した。そのためウクライナ側に相当な疑心暗鬼が広がっているのは間違いなく、大統領の指示でなくとも誰かが大統領を忖度し、一時的にウクライナに圧力をかけるためにやった可能性は否定できないという。技術的トラブルというより政治性があると見るべきかとの問いには、状況証拠からはその可能性があると答えた。トランプ氏がウクライナに、製油所攻撃をやるなら情報共有を止めざるを得ないと言ったという報道もあり、証拠があるわけではないが、何らかの意図が働いた可能性は否定できないとした。
兵頭氏は、この早期警戒情報がウクライナにとって極めて重要だと強調した。米国の弾道ミサイル早期警戒システムはロシアから発射されたミサイルの熱を探知し、着弾地点を予測する。事前に情報が提供されれば、ウクライナは迎撃の準備と効果的な態勢を早く整えられる。これが滞ればウクライナの迎撃態勢は大きく低下する。さらに、パトリオットの迎撃ミサイルがかなり少なくなっており、一部では10発未満になっているのではないかとの指摘も出始めている。数が限られるなかでいつ使うかは重要な判断であり、そこにも影響が出るという。しかも弾道ミサイルの早期警戒情報を出せるのは米国だけで、米国から遮断されればヨーロッパなどが代替することはできない。兵頭氏は、ウクライナはこの種の情報を米国に完全に握られている状況にあると述べた。
キャスターが、侵攻開始から4年7か月が経っても米国の早期警戒情報なしにはミサイルを迎撃できない、つまりウクライナの急所なのかと問うと、兵頭氏は、ロシアのミサイルと長距離ドローンによる複合的な攻撃が続き、防空態勢もぎりぎりのところにあるなかで、米国の情報提供がどうなるかが、空からの攻撃に最後に耐えられるかどうかに大きな影響を与えているとの見方を示した。
スターリンクとスターシールドへの制限
さらに、ウクライナのベスクレストノフ大統領顧問は14日、スペースXがウクライナに提供している衛星通信サービスに制限が設けられたとSNSに投稿した。事前の通告はなく複数の作戦に支障が出たとし、無人機を時速160キロ以上で移動させると通信が遮断される不具合が報告されているという。ウクライナ軍はスターリンクの軍用版であるスターシールドを使って無人機を操縦している。ロイター通信は15日、米政府当局者らの話として、スターシールドの利用を制限する命令がホワイトハウス内部から出されたと報じた。マスク氏も14日、スターリンクの軍用版の速度や利用制限は最終的に米国の大統領が決定するとSNSに投稿し、米政府の関与を示唆した。ゼレンスキー氏は、スターリンクや情報共有をめぐって問題が生じているのは残念だ、我々は米国との協力関係を頼りにしていると述べている。
キャスターは、今年2月にウクライナでアゾフ第1軍団の兵站拠点を取材した際、倉庫にスターリンクなどの最新の通信機器が多くあり、兵士も東部の戦線で極めて重要な機材だと話していたことを紹介した。
小谷氏は二つのサービスの違いを説明した。スターリンクはウクライナがスペースXと直接契約しているもので、偵察、早期警戒、迎撃といった防御的な作戦に使われる。一方スターシールドは米軍がスペースXと契約し、それをウクライナに供与している形で、攻撃用のミサイルやドローンにはこちらを使うことになっている。攻撃は民間企業がやることではないというマスク氏の持論もあって、こうした使い分けになっているという。今回速度制限がかかったのはスターシールドの方とみられ、小谷氏は、攻撃的な作戦が一時的にできなかった可能性が非常に高いと述べた。通信障害が起きた時期、ウクライナはロシアの製油施設への長距離攻撃を控えていたので、それへの影響はおそらくなかったが、前線での中距離の攻撃には一定程度影響があったと考えられるという。
これがホワイトハウスからのメッセージなら、ウクライナに「いい加減にしろ」と言いたかったのかという問いに、小谷氏は、スターシールドはロシアの奥にある製油施設を攻撃するためにウクライナが使ってきたものであり、これを止めれば攻撃は物理的にできなくなると答えた。トランプ政権は製油施設への攻撃をやめろと言っているが、そのための手段を断つことでさらに警告し、圧力をかけた可能性があるという。誰の命令かについては、正直分からないとしたうえで、技術的な問題も絡むので大統領が直接判断したとは思えず、国防総省が誰かから指示を受けたのだろうと推測した。分かっている範囲では、ウクライナに製油所攻撃をやめろと言ってきたのはトランプ大統領とバンス副大統領であり、この二人の周辺から国防総省に何らかの指示が出た可能性は考えておく必要があるという。
ディーゼル価格をめぐるトランプ氏の「ナラティブ」
キャスターは、ディーゼル燃料価格の上昇は中東情勢、つまりホルムズ海峡の封鎖が原因だというのが世界のコンセンサスではないかと問いかけた。小谷氏は、トランプ大統領にとって、自らが始めたイラン戦争でガソリン、特にディーゼルの価格が上がっていることは、中間選挙を目前にして到底認められないのだと説明した。9月に入ってホルムズ海峡を通るタンカーの数や原油の量は確かに増え、戦前の8割近くまで回復した日もある。トランプ氏からすれば、ホルムズ海峡はもう通れていて問題はない、それでもディーゼル価格が上がるのはウクライナがロシアの製油施設を攻撃しているからだ、という理屈になる。今月初めのSNS投稿がまさにその内容であり、中間選挙での有権者へのアピールとして、悪いのはウクライナだと盛んに訴えているのだと小谷氏は述べた。
実際にウクライナの攻撃が価格上昇の原因なのかという問いには、小谷氏は、一般的な見方はホルムズ海峡と中東情勢が前提にあるというもので、ウクライナの攻撃が主な要因とはされていないと答えた。ただ、ホワイトハウスとトランプ政権の中ではすでにそうしたナラティブが出来上がっているという。それを打ち破って事実を進言できる人はいないのかとの問いには、やった瞬間に首が飛ぶので誰もやらない、今の政権はトランプ大統領に忠誠を誓う人だけで固められており、本当のことが伝わりにくくなっていると述べた。
伊藤氏は、仮にウクライナが攻撃をやめたとして中間選挙までに価格にどれだけ効果があるのか、また中間選挙が終われば政策は転換されるのか、と疑問を投げかけた。小谷氏は、攻撃をやめても2〜3週間で価格が劇的に下がることは考えにくく、トランプ氏がロシアと結んだディーゼル供給の合意も価格を下げるほどの量ではないので、実際の影響は大きくないだろうが、アピールにはなると答えた。キャスターは、供給量は30万トンの後、11月に50万トン、12月に100万トンとされるが、米国で消費されるディーゼル燃料の1日分にしかならないとも言われていると補足した。
トランプ氏とゼレンスキー氏の関係悪化
トランプ大統領は15日、米ニュースマックスのインタビューで、ウクライナのエネルギー施設攻撃再開を「恥さらし」だと述べた。小谷氏は、何度攻撃停止を申し入れても聞き入れられなかったことにトランプ氏は非常に怒っていると分析した。関係は昨年2月末の口論の時に戻った、あるいはそれより悪くなっている可能性が高く、ゼレンスキー氏もやや感情的にトランプ氏を批判する発言をし始めている。中間選挙の有無にかかわらず、二人の関係が修復される可能性は高くないと言われているという。プーチン大統領との電話会談での働きかけが効いたのかとの問いには、それも一部あったかもしれないが、トランプ氏からすればこれまでさんざん支援してきたのに中間選挙を前にした自分の要請を受け入れなかったことが許せないのだろうと答えた。
キャスターは、早期警戒情報やスターシールドの扱いを見ると、米国の支援は侵略への反対や人道・防衛支援ではなく、米国の外交方針に従わせるための政治的なレバレッジとして扱われているのではないかと問うた。兵頭氏は、米国というよりトランプ大統領の、と言うべきかもしれないとしたうえで、米ウ関係はこれまでも行ったり来たりしてきたと述べた。プーチン大統領にとって今の関係悪化は歓迎すべきものであり、トランプ氏をうまく抱き込みながら、次の中国でのAPEC首脳会議の場で米露首脳会談を行いたいという期待を示しているのだろうという。
兵頭氏はまた、マスク氏が14日のX投稿で、スターシールドの速度制限は自分の決定ではなく米軍、最終的には米大統領の決定だと述べたことに加え、トランプ氏のゼレンスキー氏への姿勢悪化を踏まえてか、ゼレンスキー氏に退陣を呼びかけるような内容も投稿していると紹介した。スターシールドの運用を含めて米ウ関係がどうなるか、それが今後の停戦交渉や選挙にどう影響するかに注目する必要があると述べた。
残された課題
最後に、ウクライナの軍事行動が米国の意図に縛られる構造的な弱点を、ウクライナとヨーロッパがどう補えるかを問われた小谷氏は、残念ながら早期警戒情報やスターシールドに代わる技術は今のヨーロッパには出せないと答えた。米国しか出せないという強みがある以上、米国は今後ウクライナとヨーロッパにさらに圧力をかけてくると考えられ、その関係をどう修復するかを考えなければならないという。
伊藤氏は日露関係について、邦人拘束への日本の対応は難しいと述べた。ロシアは中国と一部連動しているため、日本の態度だけでロシアの姿勢を変えさせられるのかという問題がある。加えて、トランプ大統領のロシア寄りの姿勢が出てきたことで、本来なら足並みをそろえるべき同盟国の日米の間も微妙になってきたと指摘して、番組の議論は締めくくられた。
ロシアの製油所で上がる火の手。石油タンクが炎上し、黒煙が上がっています。ウクライナ軍はトランプ大統領の要請で停止していたエネルギー施設の攻撃を再開しました。その狙いは。一方、日露関係が冷え込む中、ロシアでは日本人記者がスパイ容疑で拘束されました。
ウクライナ侵攻を巡って見え隠れするアメリカ、ロシアの政治的意図を読み解きます。
深層NEWS、本日のゲストをご紹介します。ロシア政治、外交、安全保障に詳しい防衛省防衛研究所研究幹事の兵頭慎治さんです。お願いします。
よろしくお願いします。よろしくお願いします。
ホワイトハウスに独自の人脈を持ち、アメリカ政治や外交、安全保障に詳しい明海大学教授の小谷哲男さんです。お願いします。
よろしくお願いします。よろしくお願いいたします。
まずは日本人記者がロシアに拘束されたニュースからです。
13日、FSB、ロシア連邦保安局は極東サハリン州で北海道新聞の日本人記者をスパイ容疑で拘束したと発表しました。
FSBが公開した映像には、記者が宿泊するホテルに踏み込む瞬間や、記者のものと思われるパスポートやパソコンも映っていました。FSBは記者について、北方領土と千島列島からウクライナへの軍事作戦に動員された兵士などの情報を収集していた、日本の情報機関からの指示でロシアの安全保障を脅かす目的だったと主張しています。
一方、北海道新聞は今日の朝刊で編集の声明を掲載し、政府の指示に基づいて取材や情報収集を行うことはないと反論しています。
まず、日本人記者をスパイ容疑で拘束したその目的について兵頭さんにお伺いしたいんですが、それに加えて、これまでロシアが行ってきた邦人拘束事案と今回、何が異なるのか。この辺り、いかがですか。
これまでロシアで発生していた外交官とか、あるいはメディア関係者の拘束事案というのは、一時的に短時間拘束されても、直ちに国外退去を求められて終わるというパターンがほとんどだったんですね。
ですから、今回は残念ながら長期化が見込まれるわけでありますけれども、これまでロシアの場合は中国のような長期の邦人拘束はないであろうということで、我々ロシアと接する者は認識していたところがありますけれども、どうもその考えを改めざるを得ないというか、ロシアでも中国並みの邦人のですね。
念に思っています。
小谷さん、ロシアは今、日本の対応の何を見ているとご覧になりますか。
まずは外交的にどのように反応してくるのかということだと思いますし、より広い観点からは、高市政権はロシアとの関係を改善するような動きというのを見せていたわけですけれども、プーチン大統領の択捉訪問を受けて、制裁を強化するような動きなども見せているんですけれども、特にウクライナで変化があるのかどうか。ロシアとの関係が悪くなることによってウクライナ支援を強化するのか、それとも逆にロシアとの関係を改善するためにウクライナ支援から手を引く、そういう動きを見せるのか。この辺りも含めて見ているんだろうと思います。
伊藤さんにも伺います。ロシア当局は、この北海道新聞社の記者の取材活動について、日本の情報機関からの指示でロシアの安全保障を脅かす目的だったというふうに、根拠を示さず一方的に主張しているんですね。加えて、北海道新聞社はそれに対して、政府の指示に基づいて取材や情報収集を行うことはないというふうにしていると。ジャーナリストとしての取材活動がスパイ容疑に置き換えられて拘束される、この危うさについてはどういうふうに捉えていますか。
日本の報道機関は権力から独立していますし、検閲もないと、そういう大前提がありますよね。ロシアはそうではないのかもしれない。ロシアという国は報道を統制しているし、検閲も行っていると。同じ感覚で日本のメディアを扱っているんだとしたら、それは国柄の違いもあるし、我々としてはとても許容できないことです。
国内外を問わず、記者というのは情報を集めます。そして、それを発信するんですね。その情報を集める理由というのは、人々の生活とか命とか、そういうものに懸念があるようなことがないようにしているわけですよね。ですから、当局が情報を隠そうとしているんだったら、その隠している情報でも我々は取材して、必要であれば発信しなきゃいけない。それが我々の職業なんですよね。
それが我々の仕事なのに、それがスパイだという決めつけ方をされたら、これは非常に危ういんですね。危ういんですけれども、これがロシアのやり方だというのは近年分かってきているので、細心の注意を払って道新の記者も取材しているはずなんですよ。ですから、ちゃんと何を根拠にこういうことをしたのかというのも示されていませんよね。非常にロシアの威圧というか、政治的圧力というか、そういう印象を持たざるを得ないですね。
さて、この日本人記者の拘束には政治的な意図が垣間見えます。今回ロシア側が取った手法ですとか、ロシア外務省の声明から読み解いていきます。
FSBがスパイ容疑で北海道新聞社の記者を拘束した事案なんですが、このFSBは記者の部屋に突入して、床に引き倒して拘束して、さらに連行の様子まで、この一連をカメラで撮影しているんです。それはどうなんでしょう、前提で行っていたのかどうか、この辺りどういうふうにご覧になりますか。
4分弱の映像なんですけれども、かなり作り込まれているので、やはりこの映像をもって政治的なメッセージを伝えたいという思惑はあったんだと思うんですね。
これ、捜査に入るときに、FSBと書かれたジャンパーを着た人たちが日本人記者を取り押さえるということですけれども、実際、通常のFSBの活動をこういうジャンパーを着てやるはずがないわけですよ。
そうですよね。諜報機関ですからね。
諜報機関であり、ソ連時代のKGBの後継組織ということなので、今回はFSBの存在、活動をしっかりとアピールしたいという狙いがあったというふうに思います。
そうすると、この映像は何を誰に対してアピールしたいのか。これは外交的に日本に対してというのは当然あるんだと思うんですけれども、もう一つはロシア国内向けもあると思うんですね。今、FSBはヨーロッパ方面も含めて、かなりいろんな活動を活発化させている傾向があります。よく言われているヨーロッパへのいろんなハイブリッド攻撃、その他ですね、FSBが関与したと見られるような動きがありますし、ロシア国内でも今、FSBによる様々な、外国人のみならずロシア国民に対しても、かなり取り締まりが強化されている状態が高まっている。
ですから、ある意味、活動が活発化しているので、決してこれはサハリンだけの問題ではないし、あるいは日本に向けた話だけではないということでありますけれども、それを国内に向けて、愛国的なムードを高めていきたいという狙いもあるんでしょうし、映像の中身を見ていると、今回ロシア側が一方的に言っているスパイ活動、それを正当化しようとするような絵作りもあったと思うんですね。
例えば、「公用」と書かれたロシア語の文書がアップされていますけれども、あたかもこれを秘密情報として入手していたかのような形で映像も作り込んでいますし、さらに驚いたのは、そのままモスクワに移送されて、モスクワの拘置所に連れていかれる様子も実は出ているということなので、かなり用意周到に準備された映像ではないかというふうに思いました。
今回の拘束目的ということになると、FSBは記者について、北方領土と千島列島からウクライナの軍事作戦に動員された兵士などの情報を収集していたんだと、こういうことを主張しているんですね。どうなんでしょうか。この北海道新聞社はロシアでモスクワと、北方領土に近いユジノサハリンスクに支社を構えているということもあって、この地域での活動、ロシア当局としてはかなり敏感なんですか。
基本的には、日本の北方領土というのはロシア側はサハリン州が管轄しているので、当然、日本とロシアの間ではこの問題があるということなので、まずそこ、日露関係の上でセンシティブな部分があるというのが一つあります。
それからもう一つ、この戦争が長期化する中で、実はサハリン州というのは前線への兵士の動員、それから犠牲も地方の中では比較的大きい場所であるというふうに言われているわけですよね。ですから、おそらくその辺りが国内外で知られるということは望んでいなかったのではないか。もちろん、道新の記者がそういう取材活動をしたかどうかというのは分かりませんし、ロシア側の一方的な主張を受け入れるわけにはいかないんですけれども、一般論で言うと、やはりサハリン州というのはそういう二つの面で、FSBからするとかなり神経を尖らせていたのではないかというふうにも思われます。
そうすると、もちろん記者の取材活動の内容ということもさることながら、この地域に拠点を置くメディアであるということ。そのメディア活動を妨害したかったり、さらに萎縮させたかった。それが唯一、道新であって、たまたまこの記者の方になってしまったということなんですか。
私が知る限り、ユジノサハリンスクで日本人を常駐させていたのは北海道新聞だということなので、北海道新聞が何かあって狙われたというよりも、結果的にサハリンの場合は北海道新聞になってしまったんじゃないかというふうに思うんですね。
むしろ、これまでも日露関係の取材とかは、確かに北方領土問題、これは北海道は非常に関心が高いところもあって、熱心にやっていたというのはそう思うんですけれども、しかしながら、それ以上何か北海道新聞がターゲットに遭うような、それはちょっと私自身も思いつかないということがありますので、やはり今回は日本人の常駐記者というのが唯一いたというところで、今回の事案に発展したのではないかというふうに思っています。
とにもかくにも、FSBが動員兵ですとか、さらに志願兵、こういった情報を集めていたこと、そのことをスパイ行為だというふうに見ているわけですよね。ただ一方で、正規の記者登録を行った上での現地ということですが、私たちからすると取材活動であるんだということは、紛れもない事実になると思うんですね。正規の取材とスパイ行為だということを、ロシアが分かってはいたものの、あえて意図的に混同させて今回摘発に踏み切ったと、そういうふうに言えるんですか。
ロシアの場合は、スパイ行為というのは非常に定義が今、広がってしまっているわけなんですね。戦争が長期化する中、国内の言論統制、それから統治の強化というのも強めていますから、外国人のみならず、ロシア人自身もなかなか反戦的な、あるいは反政府的な声を上げられないし、それを上げようとすると、いろんな形で拘束される危険というのは出てくると思いますので、戦争が長期化する中、プーチン率いるロシアの、ある意味、置かれた状況下の中で、この手の事案というものがいろんな形で発生しているんじゃないかというふうに思います。
そして、ロシアが記者を拘束した過去の事例を見ておきます。その中には今回の北海道新聞社の記者の例と類似点も指摘されています。2019年には極東ウラジオストクで共同通信の日本人記者が、ロシア軍の機密情報を入手しようとしたとして一時拘束されました。23年3月にはウォール・ストリート・ジャーナルの特派員が、アメリカのCIA、中央情報局の指示で情報収集していたとして、FSBにスパイ容疑で拘束されました。拘束されたアメリカ人特派員は禁錮16年の有罪判決が言い渡されましたが、昨年、アメリカとロシアの身柄交換で釈放されました。
気になるのが、このときもCIAの指示で情報を収集していたとしてロシアが一方的に主張して、FSBが拘束したんですよね。今回の主張とやや重なる感じがするんです。これはどういうことでしょうか。
今回の日本人記者の拘束が長期化するんじゃないかという見方が強まっているのは、ウォール・ストリート・ジャーナルのアメリカの特派員の事案と今までのところがかなり類似しているということなんですね。まず地方でFSBによってスパイ活動をやっていたということで拘束されて、その後、モスクワのレフォルトボという、裁判所と刑務所が同じところにあるんですけれども、そこにすぐに移送されて、2か月の勾留がすぐ決まるという、ここまでが同じような形でたどってきているというところがあります。
今回もあれですよね。インタファクス通信によりますと、今回の北海道新聞社の記者も、まずこのレフォルトボ拘置所に移送された模様だということなんですよね。
はい。ですから、そういう意味において長期化の懸念があり得るということと、それから、ウォール・ストリート・ジャーナルの記者の場合は禁錮16年という判決を受けたんですけれども、その後、身柄交換という形で拘束1年半後に解放されるという状況だったので、今回の日本人の場合も、そういう長期化をたどることを懸念いたします。
小谷さんに伺います。ウォール・ストリート・ジャーナルの特派員、今お話があったように、その後、懲役16年の判決が言い渡されたということ。今回もそういった同じような事例をたどるのかどうか、この後の可能性、どういうふうにご覧になりますか。
ウォール・ストリート・ジャーナルの記者と、これまでのところかなり扱いが似ているということで、このウォール・ストリート・ジャーナルの記者の場合は、まず勾留が何度も何度も延長されて、その後、非公開の裁判にあって、16年の懲役刑ということになって、その後、人質解放の一環で解放されることになったんですが、これまでの流れを見ると、もう有罪判決まで出るという前提で動いている可能性がやはり高いのかなと言わざるを得ないと思います。
その点で、前回は身柄交換で釈放されたわけですが、日本側として対応しづらい状況にもありますよね。日本が身柄交換で交換できる、そういったロシア側の誰かを捕らえているわけではないですよね。
このウォール・ストリート・ジャーナルの記者も、実はアメリカとロシア、1対1では解放されなかった可能性が高いんですね。解放された理由は、アメリカとロシアだけではなくて、そこにドイツだとかノルウェーだとかベラルーシだとか、いろんな国が、それぞれ拘束している人物を解放するという大きなパッケージの中で解放されたんです。
一番大きかったのは、ドイツが元FSBの人物を拘束していて、プーチン大統領が彼の解放を強く求めていたということで、それをうまく利用して大きなパッケージにしたんですけれども、もしウォール・ストリート・ジャーナルの記者と同じような扱いが必要になるとすれば、似たようなパッケージ、他国を巻き込んだような形でやらないと、今、日本が誰かロシアのスパイを拘束しているかというと、おそらくしていないと思うので、なかなか1対1では交換は難しいんじゃないかなと思いますね。
伊藤さん、まさに他国も巻き込んだ形で問題解決に挑まざるを得ない状況かもしれないと。いかがでしょう。
小谷さんのおっしゃるとおりだと思います。日本単独で動いても、これは多分出口がないので、どういう格好で国際協力していくかなんですけれども、問題はロシアは日本を敵視しているというよりも軽視しているような感じがしてならないんですね。例えば、中国は日本を敵視しましたという場面がありましたね。そうすると、中国から日本に観光にも来なくなると。
でも、ロシアの観光客って増えているんですよ。ずっと増え続けて、去年は倍になって、今年も8月まで22%、去年より増えていると。どんどんロシアの人は日本に来ている。日本は一方で行けないわけですね。中止勧告があって。
ただ、ロシアから見ると日本はくみしやすい、別に敵視しなくても大したことないんだと思って圧力をかけている可能性があるので、その交換条件みたいなことで、何か日本が譲ってしまうようなことをしないように、まずしなきゃ。一方で、もちろん記者の安全というのは大事ですから、そこを踏まえて小谷さんがおっしゃるように、いろんな国を巻き込んで対応をこれから日本政府が考えていかなきゃいけない場面だと思います。
また、今回の北海道新聞社の記者の拘束について、ロシア外務省は声明を発表しています。今月13日、ロシア外務省の報道官は日本に対し、ロシアの安全保障を損なう目的で日本が自国の記者に情報収集させようとするのは遺憾だと述べました。また、日本の反ロシア政策による2国間協力の低下に加え、日本の再軍備化に対するモスクワの懸念に耳を傾けようとしないことを踏まえ、今回の一件は日露関係をさらに悪化させる要因となると主張しています。
日本政府は、制裁を逃れてロシア原油を輸送する「影の船団」に対する規制ですとか、さらにはロシアの軍関係者、9人33団体の資産凍結を発表しています。兵頭さん、こういったような日本からのロシアに対する圧力というか制裁、このいわゆる仕返しのような格好で、今回、短期拘束でこれまで国外追放すればよかったものが、長期化の拘束ということで一段上げてきたというふうに見た方がいいんですか。
ロシア側はそうとは言わないんでしょうけれども、そういう政治的なニュアンスというのは出てしまっているんじゃないかと思うんですね。ただ、これとは別にまた何らかのロシア側の動きというのは想定されるのではないかということで、例えば日本人の入国禁止リストというのはこれまで何度か出ていますけれども、また次のリストが出るとかですね。
それから、ちょっと懸念されるのは、ロシア国内の外国企業の資産を一時ロシア政府が接収するという、実際にこれはヨーロッパの企業で、15日付のプーチン大統領の大統領令で一部決定されています。ですから、そこに日本企業、あるいは日系企業辺りが次の対象になってしまうんじゃないかという懸念も実はありまして、今後、日本とロシアの関係がさらに悪化していく可能性があるというふうに思います。
それからもう一つ、ザハロワ報道官の、日本の再軍備化の懸念に耳を傾けようとしないという表現というのは、かなり中国がずっと言っているフレーズなんですね。ですから、今の日露関係の悪化、特にロシアの対日強硬姿勢が強まっているというのは、プーチン大統領の択捉訪問以降、決して日本の動きだけを見て強めているのではなくて、中国に寄り添いながら、足並みをそろえながら、日本に対して強硬な姿勢を示している側面もあるということは、我々、留意しておいた方がいいんじゃないかと思います。
今お話に出た中国の代表団が、実はロシアが実効支配する北方領土の択捉を訪問しました。日本を挑発するロシア、そして中国の思惑は。
日本人記者の拘束が発表された13日、中国の代表団が北方領土の択捉島を訪問したと発表がありました。代表団には中国・黒竜江省の政府関係者や企業経営者が参加し、択捉でホテル事業や水産物の養殖など、観光インフラの整備に向けた投資候補地などを視察しました。茂木外務大臣は昨日、中国の代表団による択捉訪問について、北方領土があたかもロシア領であるかのような、第3国から入域して活動することは受け入れられないとコメントしています。
お伺いしますが、択捉といえば今年8月、プーチン大統領が初めて訪問したということもありましたが、なぜ択捉島に中国代表団は訪れたんでしょうか。
先ほどお話ししたように、ロシアの対日姿勢の強化、その背後に中露の連携があるんじゃないかという見方が、ちょっと強まっているということだと思います。これまで北方領土は、中国系の民間企業が入って、そこでいろいろなビジネスをやるというのは確認されていたわけでありますけれども、今回は地方の政府関係者とは言いながら、代表団が択捉を訪問したということで、これは北京とモスクワの間で了解がないと、なかなかここまでの動きにはならないというふうに思われます。
プーチン大統領の訪問の後、黒竜江省の地方政府関係者と言いながらも、政治的に中国が択捉に足を踏み入れたということになろうかというふうに思います。実は北方領土問題というのは、当然、日本とロシアの間の問題ということでありますけれども、今、ロシアはかなり中国依存が深まっているというところもあって、日露関係に中国の影響力がどこまで拡大してくるのかというのが、一つ懸念されていたところでありますけれども、今回、択捉にこういう形で中国が関与してくるという、これが示唆されるということになりますので、今後この動きが強まってくることも懸念されます。
小谷さん、日本人記者の拘束発表と同じ日だったわけなんですね。これはやはり中露連携で日本揺さぶりみたいなことが言えるんでしょうか。
このタイミングは、なかなか判断は難しいと思うんですけれども、一方ではロシアの情報機関で、一方では中国の地方の、しかも経済関連の役人ということなので、ここが果たして同じ日に調整してまでやったのかなというのはあります。
ですから、今回の流れはやはり8月のプーチン大統領の訪問を受けて、外国からの投資を受け入れるといったメッセージがあったわけですので、それで中露の協力ということでやっていたのが、たまたま同じ日に重なったということなのではないかと思いますが、ただ結果として、日本にとっては二重の圧力になってしまったということではないかと思いますね。
伊藤さん、いかがでしょうか。
兵頭さんがご説明いただいたとおり、中国とロシアの、密月とまで言わないですけれども、連携ぶりがくしくも出てしまったということですよね。ですから、これは偶然だったとしても、我々、よっぽど用心してかからなきゃいけないと思うんですね。
今、中露は利害が一致しているから、こういろいろ連携していると思うんですけれども、例えば中露が利害が対立しているようなところに働きかけて、この連携を離するということは、あまり考えても仕方ないことですか。
これまでもなかなかそれがうまくいかなかったというところもありますし、やっぱり戦争が続いている間は、ロシアからすると中国からの支援というのは必要になりますから、好むと好まざるとにかかわらず中国への依存、これは深めざるを得ないと。そうすると、やっぱり力関係で中国が上になってしまいますから、対日のところでも中国に引き込まれていくという状況というのは、戦争が続く限り、残念ながら強まっていく可能性があるんじゃないかというふうに思います。
小谷さん、どうなんでしょう。今、この中露の関係において、何か外交圧力でここを離間させるということは、なかなか難しいですかね。
それは例えば安倍政権も、ロシアとの関係を強化することによって、中露の協力が進みすぎないようにするということを目指してきたわけですが、やはり結果として、それはうまくいってこなかったということでしょうし、中国とロシアが本当の意味での同盟国になったとは思いませんけれども、しかし今、お互いを必要としている、お互いを非常に使えるパートナーだと思っていることは間違いないと思いますので、そこを何かしらのやり方で離間させるというのは、現実的には難しいんだと思います。
さて、ウクライナ軍が無人機の運用で使用するスターリンクの軍用版に、ホワイトハウスが制限をかけたとの報道が出ています。その真相に迫ります。
ロイター通信によりますと、今月13日夜から14日にかけて、ウクライナの首都キーウや東部ハルキウなどがロシア軍による大規模な攻撃を受けました。ゼレンスキー大統領は今月14日、この攻撃には弾道ミサイル39発と120機以上の無人機が使われたと発表。攻撃はエネルギー施設を標的としたもので、少なくとも60万人が停電の影響を受けたということです。
空襲警報が鳴ってから爆発が起きるまで、あっという間でした。
この攻撃に先立つ11日、トランプ大統領は自身のSNSで、ロシアとウクライナがエネルギー施設への攻撃停止で合意したと発表していました。しかし、その後も大規模な攻撃が行われた形です。
ゼレンスキー氏は、ウクライナがロシアの製油所に対する攻撃を控えていたにもかかわらず、同国から弾道ミサイル攻撃の事前警告がなかったとして、不公平だと不満を示しました。この同国とは、アメリカを念頭に置いたものと見られます。
CNNは12日、ヨーロッパ当局者の話として、トランプ政権がウクライナとヨーロッパの同盟国に対し、ロシアのエネルギー施設への攻撃を続ければ、情報共有やアメリカ製兵器の供給を停止することもあり得ると警告したと報じました。13日、ウクライナへの情報共有を停止したかと問われたトランプ氏は、
我々はウクライナを支援し、情報も共有している。戦争を終わらせるために彼らともロシアとも協力している。
一方、トランプ氏はウクライナによるロシアの製油所への攻撃が、世界的なディーゼル燃料の価格高騰を招いているとして、攻撃停止を強く求めています。
ゼレンスキーには好きにやっていいが、製油所だけは攻撃するなと言った。標的はいくらでもある。それなのに攻撃した。世界、アメリカの農家、牧場主に迷惑をかけているのだ。
9日、プーチン大統領と電話会談したトランプ氏は、ロシアが30万トンを超えるディーゼル燃料を速やかにアメリカや国際市場に供給することで合意したと発表しました。一方、ゼレンスキー氏は9日、この合意に対し、戦争を長引かせるための投資だと反発。強いパートナーによる弱腰な決断だと批判しました。
ウクライナとアメリカの溝が浮き彫りになる中、新たな問題も浮上。
通信によりますと、ウクライナのベスクレストノフ大統領顧問は14日、イーロン・マスク率いるアメリカの宇宙開発企業スペースXが、ウクライナ軍に提供している衛星通信サービス、スターリンクに制限を設けたと明らかにしました。ウクライナ軍はスターリンクを使って無人機を運用していますが、高速移動時に通信が途切れる不具合が発生したということです。ベスクレストノフ氏は、事前の通告はなく、複数の作戦に支障が出たとしています。
これについてゼレンスキー氏は、
スターリンクや情報共有を巡って問題が生じているのは残念だ。我々はアメリカとの協力関係を頼りにしている。
同じ14日、マスク氏はスターリンクの軍用版について、速度や利用制限はアメリカの大統領が最終的に決定するとSNSに投稿。アメリカ政府の関与を示唆しました。ロシア産ディーゼル燃料の輸出合意、そしてミサイル情報の共有不足とスターリンクの制限。ウクライナへの協力を絞る動きを見せるアメリカ。その思惑に迫ります。
ゼレンスキー大統領は13日、首都のエネルギー施設がロシアの弾道ミサイルの攻撃を受けたと発表しました。アメリカを念頭に、同国から弾道ミサイルに関する事前警告がなかったと不満を表明しています。小谷さん、一方でトランプ大統領は、我々はウクライナを助けており、機密情報を共有していると述べていて、主張が食い違っているわけですよね。どっちが正しいんでしょうか。
これは今のところ、まだよく分からないんですけれども、今アメリカは法律に基づいて、もし情報共有を止めるならば、議会に報告しなければならないということが義務付けられているんですね。少なくとも議会にそういう報告はないので、政権としては情報を止めていないと。ただ、ウクライナが言っているのは、事前通告がなかったということなんですよね。
情報共有の枠組み自体は残っているんだけれども、ただ今回に関しては事前通告を何らかの理由でしなかったという可能性はあって、そうすればウクライナ側の主張とトランプ大統領の主張が両方とも重なるということにはなるんですが、昨年2月28日、ホワイトハウスでトランプ大統領とゼレンスキー大統領が口論した後、実際にこれを止めているんです。一度。
ですから、いわば前例がありますので、ウクライナ側には相当な疑心暗鬼が広がっているのは間違いないと思いますし、トランプ政権側で、大統領の指示でなくても誰かが大統領を忖度して、一時的にウクライナに圧力をかけるためにやったという可能性も、やっぱり否定できないとは思います。
そうすると、今のお話の中で言うと、枠組みとしては存在しているけれども、その範囲の中で質、量を制限したということは、可能性としてあり得るということなんですか。
それはあり得ると思いますし、1年半前も一応やっていますので、意図的にやった可能性は否定できないと思います。
何か技術的なトラブルで情報が伝達されなかったというよりは、やっぱりここに政治性というのがあるというふうに見た方がいいということですか。
状況証拠からいくと、やはりその可能性はあると思います。ウィトコフ特使もウクライナ側に対して、製油施設の攻撃をやるなら情報共有を止めざるを得ないということを言ったという報道もあるので、その証拠があるわけではありませんけれども、何らかの意図が働いた可能性はやはり否定できないと思います。
兵頭さん、原因はまだ分からないというところもありますが、ただ、ウクライナにとって、この早期警戒情報というのはどれほど重要なのか。この辺り、いかがですか。
これはもう極めて重要ということなんですね。アメリカの弾道ミサイルの早期警戒システムは、どういう内容かと言いますと、ロシアから発射されたミサイル、その熱を探知して、予測するということなので、事前にウクライナ側に情報提供がこれまでできていれば、迎撃の準備、そして効果的な体制、これを早く確立することができるということだと思います。
これが滞ってしまうと、ウクライナ側の迎撃体制が大きく低下するということになりますし、それから今、パトリオットがかなり少なくなってきているということで、一部の見方によると、もう10発未満になっているんじゃないかという指摘が出始めていますけれども、そうすると、どういうタイミングで使うのか使わないのか。それって本当にもう数が少なくなってくるので、重要な判断になってくるわけじゃないですか。そこにおいても影響が出てくるということだと思います。
それに、この弾道ミサイルの早期警戒情報というのはアメリカだけなんですね。ですから、アメリカから遮断されてしまうと、ヨーロッパなどの国が代替することができないということになりますので、そういう意味において、アメリカに完全にその手の情報というものを握られてしまっている状況に、ウクライナは置かれているということだと思います。
そうしますと、侵攻開始から4年7か月がたっても、なおやはりウクライナとしては、アメリカの早期警戒情報がないと、こういったミサイルを迎撃できない。つまり、ウクライナにとって急所みたいなところなんですね。
ですから、今、ロシアによるミサイル、あるいは長距離ドローンによるかなり複合的な攻撃というのが続いているわけであって、かなり防空体制もぎりぎりのところにありますので、アメリカの情報提供というのが果たしてどうなってくるのかということが、結構ウクライナにとっては、空からの攻撃に最後のぎりぎりのところでどう耐えるのかという、そこに大きな影響を与えているのではないかと思われます。
さらに、ウクライナが戦場で不可欠な通信手段として使用しているスターリンクにも制限がかかっているといいます。ウクライナのベスクレストノフ大統領顧問が14日、SNSに、アメリカの宇宙開発企業スペースXがウクライナに提供している衛星通信サービス、スターリンクに制限が設けられたと投稿。事前の通告はなく複数の作戦に支障が出た、無人機を160キロ以上で移動させると通信が遮断される不具合が報告されている、などとしています。
ウクライナ軍はスターリンクの軍用版であるスターシールドを使用し、無人機を操縦しています。ロイター通信は15日、アメリカ政府当局者らの話として、スターシールドの利用を制限する命令がホワイトハウス内部から出されたと報じています。
私、今年2月にウクライナでアゾフ第1軍団の兵站拠点を取材したんですね。このとき、倉庫に行ってみますと、スターリンクといった最新の通信機が多くあったんですね。話を聞いた兵士も、やはり東部の戦線で極めて重要な機材だというふうな話をしていたのが非常に印象に残っているんですが、小谷さん、実際に一部の作戦が中止されたんだということがあったようです。通信制限によるウクライナにとっての実害、これはどういうふうに捉えますか。
スターリンクに関しては、ウクライナが直接スペースXと契約しているんですけれども、もう一つ、スターシールドという、まさに軍用のスターリンクと呼ばれているものは、米軍がスペースXと契約して、それをウクライナに供与しているという形なんですね。
違いは、スターリンクの方は防御的な作戦のために使うと。偵察ですとか、早期警戒ですとか、迎撃ですね。攻撃に関しては、イーロン・マスクの持論もあって、それは民間企業がやることじゃないということなので、攻撃用のミサイル、ドローンに関しては、このスターシールドを使うということになっています。
今回はどうもスターシールドの方に速度制限がかかって、一定の速度を超えると通信が途絶えるということなんですね。つまり、攻撃的な作戦をすることが一時的にできなかった可能性が非常に高いと思います。通信障害があった際は、ウクライナはロシアの製油施設への長距離攻撃を控えていたので、おそらくそれには影響はなかったと思いますが、中距離の攻撃、特に前線には一定程度影響があったと考えられます。
これはアメリカが、ホワイトハウス内部からこういった指示があったというようなことも伝えられているわけですよね。そうすると、ホワイトハウスからのメッセージだとするならば、ウクライナにもういい加減やめろということを暗に言いたかったと、そういうことになるんですか。
まさにこのスターシールドというのは、これまでウクライナが遠いところにある、ロシアの奥にある製油施設を攻撃するために使ってきたものですので、これを止めるということは、それが物理的にできないということなんですね。ですから、今トランプ政権は施設の攻撃をやめろと言っていますが、そのための手段を断つということによって、さらにウクライナに対して警告をしている、圧力をかけた可能性がやっぱりあると思います。
これはホワイトハウスからということですが、誰の命令だと思いますか。
これは正直分かりません。これもやっぱり大統領が直接そういう判断を下したとは、ちょっと思えないんですね。
やっぱり技術的な問題も絡んできますので、ですから、ペンタゴンが誰かから指示を受けたということなんでしょうけれども、少なくとも分かってる範囲では、これまでウクライナに対して製油所への攻撃をやめろと言っているのはトランプ大統領とバンス副大統領のこの2人。この2人の周辺にいる人たちからペンタゴンに何かの指示が出たということは、可能性としては考えておく必要はあると思います。
これ、トランプ大統領はしきりに製油施設への攻撃をやめろと言いますよね。その根拠としてはディーゼル燃料の価格が上がってるからだと。ただ、これ、ディーゼル燃料の価格の上昇っていうのは、ウクライナがロシアを攻撃してるからというよりは、中東情勢、つまり情勢によってホルムズ海峡の封鎖というものが原因なんじゃないかっていうのは、言ってみると世界のコンセンサスですよね。この辺りのトランプ大統領の認識は一体何なんでしょうか?
もちろんトランプ大統領とすれば、自分が始めたイラン戦争によってガソリン価格が上がってる、特にディーゼル価格が上がってるということは、今の中間選挙を目前にして、それはとても認められないわけですね。
一方、9月に入ってからホルムズ海峡を通るタンカーの数、それから原油の量というのは確かに増えたんです。戦前の8割近くまで回復した日もありますので、トランプ大統領からすれば、もう原油は通ってるんだと。ホルムズ海峡は問題がないんだと。それでもディーゼル価格が上がるのは、ウクライナがロシアの製油施設を攻撃してるからなんだと。それがまさに今月初めだったと思いますけども、トランプ氏がSNSに投稿した内容でしたので、中間選挙での有権者へのアピールということもあって、悪いのはウクライナだということを盛んにアピールしてるんだと思います。
それはトランプ大統領の頭の中の1つの構図、出来上がった構図かもしれませんが、実際に世界のディーゼル燃料の価格が上がっているのは、本当にウクライナがロシアの製油施設を攻撃してるからなんですか?
いや、これはやはり一般的な見方は、そもそも今のホルムズ海峡、中東情勢があった上でということなので、一般的にはウクライナによるロシアへの攻撃が主な要因ということにはなってないと思いますけれども、少なくともホワイトハウスの中、トランプ政権の中では、そういうナラティブが出来上がってるということになります。
そのナラティブを打ち破って、言ってみると今みたいな事実をきちんと進言できる人がもういないということですか?
もうそれはやった瞬間に首が飛びますので、誰もやらないですし、今はもうトランプ大統領に忠誠を誓う人たちだけで政権を固めているので、本当のことっていうのがなかなか伝わりにくくなってます。
伊藤さん、どこまで評価できるかあれです。誤った情報をトップに伝えて、それでもって政策判断が決まり、そしてそれが1つのウクライナに対するまた別のメッセージになるという、この悪循環をどう捉えればいいのか、いかがですか?
そもそも、今仮にウクライナがロシアに対する製油所の攻撃をやめたとして、中間選挙にどれだけ価格に効果があるんでしょうかっていう疑問がありますよね。それから、じゃあ中間選挙が終わったら今の政策を転換するのか、あるいは側近たちがもういいやっていうことになるのか。この辺りがよく分からないんですけども、どうご覧になってますか、小谷さん。
今、ウクライナがロシアの製油施設の攻撃をやめたとして、2週間、3週間で劇的に価格が下がるということは、やはり考えにくいと思いますし、トランプ大統領がロシアと結んだ、30万でしたっけ、30万バレルでしたっけ、の軽油では、とても価格を下げる効果もありませんので、実際には大きな影響はないんでしょうけれども、少なくともやっているアピールというのにはなるということだと思いますね。
この30万トン、11月は50万トンで12月100万トンって、これ、アメリカで消費するディーゼル燃料の1日分にしかならないというふうにも言われていて、なかなか苦しい状況がトランプ大統領に見て取れるわけなんですが、トランプ大統領は15日にアメリカのニュースマックスのインタビューで、ウクライナの攻撃再開に対して「恥さらしだ」と述べたわけなんですね。これ、ウクライナ側がエネルギー施設に対する攻撃を再開したことを受けての話なんですが、今トランプ大統領はゼレンスキー大統領に対してどういうふうに見てるんですか?
やはり何度も攻撃停止を申し入れても聞き入れなかったということで、非常に怒っているという状況だと思います。昨年2月末の口論になった時に戻った、あるいはそれよりも関係は悪くなっている可能性が高いですし、ゼレンスキー大統領もやや感情的に、今トランプ大統領を批判するような発言をし出していますので、この先もう中間選挙があるなしにかかわらず、この2人の関係が修復される可能性はあまり高くないというのが言われてます。
これ、プーチン大統領と電話会談を行いましたが、そこでのいわゆるプーチン大統領の打ち込みが相当効いたんですか?
それは一部あったかもしれませんけれども、トランプ大統領からすれば、これまで散々支援してきたにもかかわらず、この中間選挙にトランプ大統領の要望を受け入れなかったということが、やはり許せないんだと思います。
兵頭さん、早期警戒情報の共有ですとか、さらにスターリンクの速度制限問題と、これ、アメリカの支援のあり方、それ自体が、もはや侵略の否定とか、人道とか防衛支援とかそういうことではなくって、もうアメリカの外交方針に従わせるための政治的レバレッジ、こういうふうなものとして扱われてるんじゃないかというふうに思っちゃうんですが、どうでしょうか?
アメリカのっていうよりも、トランプ大統領のっていうふうに言った方がいいのかもしれませんけれども、これまでもウクライナとアメリカの関係も、やっぱり行ったり来たりがかなりあるわけですよね。それによって、プーチン大統領からすると、今の悪化してる状況っていうのは歓迎するということで、さらにまたトランプ大統領をうまく抱き込みながら、次の中国でのAPECサミットでは米露首脳会談、これをやりたいっていう、こういう期待を示してるんだろうというふうに思います。
先ほどイーロン・マスクさんの話が出たんですけども、14日、ご本人のXの投稿では、今回のスターシールドの速度制限に関しては、自分の決定じゃなくて米軍、さらには最終的にはアメリカ大統領の決定だっていうことをツイートしてるっていうことと、それに合わせて、トランプ大統領のゼレンスキー大統領に対する姿勢が悪化してることを踏まえてか、ゼレンスキー大統領に退陣を呼びかけるような内容も実は投稿して。その点も含めて、やはり今後、イーロン・マスク氏のスターシールドの運用も含めて、アメリカとウクライナの関係がどうなっていくのか、それが今後の停戦交渉、さらには戦況にどういう影響が出てくるのか、注目する必要があるんじゃないかと思います。
この後も引き続きお話を伺ってまいります。
今ウクライナではビバルディ作戦も進行中です。ウクライナの軍事行動がアメリカの意図に縛られてしまうという、この構造的な弱点について、小谷さん、今後ウクライナ、そしてヨーロッパはどういうふうに補完ができるのか、どういうふうにご覧になりますか?
残念ながら、早期警戒情報ですとか、それからこのスターシールドに代わるような技術っていうのは、今ヨーロッパでは出せないですね。ですから、そこはもうアメリカしか出せないという強みがあるので、この先アメリカはウクライナ、それからヨーロッパにさらなる圧力をかけてくると思いますから、その関係をどう修復するのか考えていかなければならないと思います。
伊藤さん、そして日露関係も含めていかがでしょうか?
邦人拘束という話になりましたけども、なかなか日本の対応は難しいと思うんですね。というのは、ロシア側は中国とちょっと連動してるところがあるので、日本の態度だけで変えさせることができるのかっていうのが1つ。あと、アメリカ、トランプ大統領のロシア寄りの姿勢が出てきたので、本来であれば同盟国の日本とアメリカの足並み、ここはそろわないといけないんですけども、そこはちょっと微妙になってきたかなっていうふうに思います。
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