小野寺氏ウクライナ訪問の舞台裏と、ロシアの民間施設攻撃をめぐる「新ドクトリン」:深層NEWS 10月9日
日テレNEWSBS日テレ「深層NEWS」の10月9日放送では、元駐ウクライナ大使の松田邦紀氏、元陸上総隊司令官の髙田克樹氏、防衛研究所研究幹事の兵頭慎治氏をゲストに迎え、キャスターの右松健太氏、コメンテーターの飯塚恵子氏(読売新聞編集委員)とともに議論した。テーマは大きく二つある。一つは、松田氏が全日程に同行した小野寺元防衛大臣のウクライナ訪問で何が見えたのか。もう一つは、キーウの橋やドネツク州の路線バスなど民間施設への攻撃を強めるロシアの狙いである。番組冒頭では、当日発表されたノーベル平和賞についても意見が交わされた。
ノーベル平和賞はナビ・ピレイ氏に:国際法秩序へのメッセージ
番組の放送中、日本時間の午後6時過ぎに、ノーベル平和賞が南アフリカの国際法学者ナビ・ピレイ氏に決まったと伝えられた。ピレイ氏は元国連人権高等弁務官で、南アフリカ高等法院で白人以外の女性として初めて判事となった。ICC(国際刑事裁判所)の判事やルワンダ国際刑事裁判所の所長も務めている。選考委員会は、ICCの赤根所長らがトランプ政権から制裁を受けている現状を念頭に、裁判官が制裁を受け機関が攻撃にさらされる中で、勇気と決意を持つ人物が必要とされているとしてピレイ氏の業績をたたえた。
松田氏は、国際法の秩序が揺らぎ、意図的に壊そうとする勢力がいる中で、ノーベル委員会が最大限の敬意を払って決めたものだと受け止めた。自身の解釈としては「ほとんどICC、ICJといったものに対する平和賞」だと述べた。髙田氏も、トランプ氏の標的となっているICCに関わった人物を選んだことに、法の支配を念頭に置いた選考を見た。
兵頭氏は、当初は赤根所長自身が受賞対象になるのではという見方もあったが、結果的にICCの元判事が選ばれたことについて「ギリギリの判断」だった可能性に触れつつ、法の支配に基づく国際秩序が重要だというメッセージは十分に感じ取れたと語った。
飯塚氏はより踏み込み、トランプ大統領への強烈な「アンチテーゼ」を象徴する受賞だと評した。人権高等弁務官は国連事務総長が任命する人権分野の最高責任者であり、現職のフォルカー・テュルク氏はトランプ政権を批判し続けている。今年6月にはサッカー・ワールドカップを前に、アメリカの移民取り締まりを改善すべきだという強いメッセージも出した。ピレイ氏自身は直接トランプ批判をしていないが、このポジションにいた人物が受賞したことには、アメリカも含めて人権問題についてより明確な理想を掲げるべきだというメッセージが込められていると飯塚氏は見る。さらに、今年2月に誰がイランに対する戦争を始めたのかを考えるべきだとし、平和賞で評価されるべきは紛争解決によってどれだけ人々に平和が広がったかであって、「自分がこれをやった」という主張ではないとして、受賞にふさわしいというトランプ大統領の主張は当たらないと述べた。右松氏は、トランプ氏のICC批判や制裁がかえってICCの存在意義を国際社会に再認識させたのであれば、強烈な皮肉として刻まれるだろうと付け加えた。
小野寺訪問団の目的:3文書改定と「21世紀の戦争」を現場で学ぶ
今月1日、小野寺元防衛大臣はキーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した。松田氏は日本から全日程に同行している。
松田氏によれば、最大の目的は、政府・与党が年末に向けて取り組む安全保障3文書の改定に生かすことだった。ドローンやAIといった新技術の導入と、それに伴う戦術・作戦術・戦略面での変化、いわば「21世紀の戦争」について、現場の関係者から話を聞き視察する。加えて、戦時下のウクライナで急速に確立しつつあるドローンをはじめとする防衛産業と、それを支える研究機関、企業、政府、金融機関などの「エコシステム」の実態を見て、日本の安全保障に生かせる教訓を持ち帰る狙いがあった。開戦以来ウクライナを支援してきた日本の立場を、議員団の訪問という形でウクライナ政府と国民に示すことも目的の一つだったという。
ウクライナ側の受け止めについて松田氏は、日本との関係をさらに強化したい思いがあったと説明する。8月初めの在外公館長会議の場で、ゼレンスキー大統領が外交団に対し、日本との関係はもっと発展できるはずだと激励したこともあった。あまり知られていないが、欧米各国はこの数年、政府間の交流に加えて議員外交を積極的に展開してきたという。国民に直接選ばれた議員団を受け入れることで日本国民に感謝を伝えたいという思いに加え、小野寺議員をはじめ同行議員がいずれも自民党内の安全保障の専門家であることから、欧米諸国に比べて弱かった防衛分野での協力について議論を深めたい意識がウクライナ側にあった、というのが松田氏の見立てである。
現職時代に小野寺防衛大臣を支えた髙田氏は、小野寺氏が当時から現場を大事にし、隊員との会話を通じて温度感を政策に反映する姿勢を持っていたと振り返り、それが今回の訪問につながったと見ている。兵頭氏は、先月の森衆院議長の訪問、国民民主党の玉木代表の訪問も含め、議員外交による連帯表明がウクライナ側から評価されていると指摘した。3文書改定を前に、新たな戦い方を自ら経験しているウクライナから現場の声を聞き取ることは重要なタイミングであり、迎撃用・防衛用ドローンの技術協力について話し合いができた点も大きな収穫だったと述べた。
列車は3度緊急停止:11時間の予定が18時間に
小野寺氏は自身のXで、訪問の詳細を投稿している。一行はポーランドのヘウムから列車でウクライナに入った。所要時間は11時間の予定だったが、ロシア軍の空襲のため到着まで18時間かかった。小野寺氏は、移動中に突然列車が停まり、車掌が「すぐに車外に出て」と叫び、着の身着のままで途中駅のシェルターに誘導されたと書いている。
投稿写真に写る松田氏は比較的落ち着いた様子に見える。松田氏によれば、9月前半にもウクライナを訪問しており、その際にも列車の緊急停止と車外退避を一度経験していた。ウクライナ防空軍と国有鉄道との連絡体制や、車両ごとに1人いる国有鉄道職員の対応を知っていたため、多少落ち着いていられたという。
今回は列車が3回緊急停止し、3回とも車外退避を命じられた。写真や映像にあるのは3回目のシェルター避難で、映像のない2回目は、レール脇の夜露に濡れた草むらの中を移動し、列車から離れた場所で避難した。寒さという点では屋外避難のほうがずっと厳しく、シェルターは比較的暖かかったが、シェルターに避難するということはそれだけ緊急性が高かったとも言えると松田氏は説明する。3度の避難で睡眠も削られたが、外国人もウクライナ人の乗客も落ち着いており、鉄道や駅の関係者の誘導体制もしっかりしていたので、不測の事態なく列車に戻れたという。
飯塚氏から、開戦当初の2022年と比べて安全が悪化した実感はあるかと問われると、松田氏は、開戦当初と現在ではロシア側の攻撃対象とその背後にある意図が大きく変わったと答えた。地上戦で苦戦する中、ウクライナを支援する欧米からの人や物の移動を阻害したいという狙いで、鉄道や関連する通信への攻撃を行っているという趣旨だが、発言の後半は放送上で途切れている。
ゼレンスキー大統領が再現した「世界で一番有名なセルフィー」
小野寺氏はXに、会談後、ロシアの侵略を受けた際に大統領が勇気を示した「世界で1番有名なセルフィー」の場所を訪ねたところ、大統領自らが案内し、参加者全員を入れて再現してくれたと投稿している。
松田氏はこの振る舞いに三つの意味を読み取った。首都への空襲が続く中、危険を冒して連帯を示しに来た日本の議員団への敬意。大統領一流のユーモラスなホスピタリティ。そして、ウクライナを支援する国の指導者たちが危険な状況でも訪問し支援を約束していることを、国内外に明確に示したいという意図である。映像の持つインパクトは大きく、松田氏のもとには前任地の香港やパキスタンの知人からも「見たよ」と連絡が来たという。右松氏が、指導者は逃げないという当時のメッセージが国民を鼓舞し今につながっていると述べると、松田氏は、指導者だけでなく、日本をはじめ支援する国々も逃げないというメッセージだったと応じた。
学ぶべきは武器そのものより「エコシステム」
協議の中で最も印象に残ったことを問われた松田氏は、ドローンやAI、ミサイルそれぞれの説明やウクライナ側の期待もさることながら、戦時下のウクライナがどのように新しい武器弾薬の研究開発と量産化を進めたのか、その全体のエコシステムを官・民・学が協力して作り上げた過程を知れたことが極めて大きな教訓だと答えた。一例として、新しい武器の開発から生産までのリードタイムを、かつての数年から現在は2か月まで縮めたという。
右松氏は、こうした仕組みは侵略されるという強烈な圧迫感の中で生まれたもので、環境の違う日本に実装するのは難しいのではないかと問うた。松田氏は、戦時だからこそ作り上げられた面はあるとしつつ、分析していけば、日本国内で普段は別の分野で培われてきた研究開発の成果、すなわち汎用品・汎用技術を、防衛や、平時の治安維持、防災といった日本の様々なニーズに合わせて受け入れることはできると考えたと述べた。
飯塚氏は、安保3文書改定に向けて知見を得るという明確な目的があった点で意義があり、その内容は高市首相をはじめ政府内にも伝わったはずだと評価した。一方、ゼレンスキー大統領にとっても、日本を含むG7や西側社会から支援を受け、寄り添われていることを示せた点で大きなメリットがあったと見る。
髙田氏が知りたい軍事的な中身:デルタ、周波数、継戦能力の尺度
髙田氏は、日本がウクライナから学ぶべき知見を軍事的な観点から具体的に挙げた。第一に、開戦から4年7か月の間に現場のニーズを吸い上げて作られたとされる戦場管理システム「デルタ」の中身である。デルタは米軍のメイブン・スマート・システムとプロトコルを共通化し、相互に学習できる状態になっていると聞いており、そこに日本が入り込む余地があるのかどうかを知りたいという。
第二に無人機の運用で、使用している周波数帯がどれほど広いのか、中継アンテナを使ってどれほどの出力(ワット数)で運用しているのか。それが分かれば、現在の国内法の縛りの中でできるのかできないのかという大きな判断ができると述べた。
第三に継戦能力である。日本は現在、非常に古い戦争を題材に弾薬が何発必要かといった計算をしているが、4年7か月戦っている実際の戦争から、継戦能力を保つにはどれだけ必要かという新しい尺度を教えてほしいと考えている、と髙田氏は語った。
キーウの橋と路線バスへの攻撃
番組の後半は、ロシア軍による民間施設への攻撃に移った。ウクライナ非常事態庁などによると、東部ドネツク州クラマトルスクで今月8日、停車中の路線バスに乗客が乗り込んでいたところが攻撃され、33人が死亡、20人が負傷した。ドネツク州当局によると、誘導滑空爆弾が使われた。前日にも攻撃があり、2日間で78人が死亡している。北部チェルニヒウ州では集合住宅も攻撃を受けた。
首都キーウでは4日、ドニプロ川にかかる北橋を無人機が直撃し、市長によると2人が負傷した。南橋も無人機の攻撃を受け、米戦争研究所によると1日から4日の間に北橋と南橋は合わせて7回攻撃された。BBCによれば、市内を東西に分けるドニプロ川の橋は1日あたり約50万台の車両が行き交う交通の要衝である。番組が紹介した映像では、市民が「もう1時間バスを待っている」「毎日の仕事で川の向こうに行かなければならないが、橋を渡るしか手段はない」と語っていた。
北橋への攻撃は、ドイツのメルツ首相のキーウ訪問中に行われた。ゼレンスキー大統領は、破壊はテロ行為そのもので、ロシアは市民を大都市から追い出し都市機能を麻痺させようとしていると非難した。
誘導滑空爆弾の性能と、バスは狙われたのか
髙田氏の説明では、誘導滑空爆弾は慣性航法とロシアの衛星測位システムGLONASS(アメリカのGPSに相当)で誘導されるため、動いている目標は狙えない。地図上の座標を入力し、そこへ確実に向かわせる爆弾で、高高度から投下すると射程はおよそ100km前後とされる。炸薬量は、映像で見たキーウの橋を攻撃したドローンの2〜3倍程度と理解しているという。
そのため髙田氏は、誘導滑空爆弾であったことを前提とすれば、バスを狙った可能性は低く、たまたまバスがいた場所に着弾したのだろうと見る。ただし、誘導滑空爆弾だったかどうかも含めて確実な答えではなく、あくまで仮定の上での話だと断っている。
「新ドクトリン」か、交戦規定の修正か
ゼレンスキー大統領は今月3日公開のロイター通信のインタビューで、ウクライナの情報機関が、プーチン大統領がこれまでよりはるかに広範な民間施設への攻撃を認める新たなドクトリンを示した文書を入手したと述べた。インフラや物流施設、特に都市や村を問わずあらゆる場所の道路、学校、病院への攻撃を認めているという。人々に首都をはじめとする都市を離れるよう圧力をかけることが作戦の狙いだとし、前線で苦戦する中、プーチン大統領が強硬姿勢を内外に示したい思惑もあるとの見方を示した。
髙田氏は、そもそも攻撃対象をドクトリンで定めるのかという点に疑問を呈した。髙田氏の理解では、ドクトリンとは軍事行動や部隊運用の基本原則・指針であり、アメリカのエアランド・バトルや旧ソ連の縦深作戦がその例である。これを基に部隊運用、教育訓練、防衛力整備が行われる。一方、今回のような目標の拡大は、ROE(交戦規定)の再認可や修正に近い。ドクトリンが「どう戦うか」を示すのに対し、ROEは「どこまでやるか」を示すものだと説明し、大統領がドクトリンと言うならそうなのだろうが、自分たちの感覚では交戦規定の修正と理解していると述べた。
では、ロシアは国際人道法を無視して民間施設を攻撃する段階に踏み切ったのか。髙田氏は、それはロシアが苦しいことの裏返しだと見る。国際人道法を真っ向から否定することはしないが、グレーな部分にどんどん手をつけている印象だという。
兵頭氏は、ロシアはこれまでも民間インフラを攻撃し、軍事拠点や軍事利用を理由に挙げてきたが、ここまで攻撃が拡大すると説明はほとんど難しくなっていると指摘した。特に短期間に北橋と南橋を集中的に攻撃したことは、民間人が多く使うインフラを攻撃せよという明確な指示がなければ起きないと考えられ、ドクトリンの内容はまだ明らかでないものの、民間人の犠牲を承知の上で攻撃するという「レベルの引き上げ」をロシア側が打ち出しているのではないかと述べた。
欧州の会議で共有された「ロシアは焦っている」という認識
松田氏は、ロシアが苦戦し焦っているというのは、9月初めに自身も参加した安全保障会議での最大のテーマの一つだったと明かした。欧米の現役・退職した政治家や軍人、専門家が集まったこの会議では、昨年2回、今年春から夏にかけて1回、計3回の東部での大攻勢にいずれもロシアが失敗したとの評価が出たという。
会議で示された数字によれば、ロシア側の戦死者は今年前半が1日あたり1000〜1300人、今年の夏からは1500〜1700人、ごく最近は開戦以来最多の1日2000人以上に達した。これはロシアが事実上の動員で補充している兵の数を上回っており、戦えば戦うほどロシアは地上戦で負けていく状況だという。
その中でロシアが打ち出したのが二つの方向だと松田氏は説明する。一つはウクライナ国内へのほとんど無差別と言っていい攻撃の強化で、これが今回の新ドクトリンの議論にあたる。もう一つは支援するヨーロッパ諸国へのハイブリッド攻撃の強化で、選挙干渉やSNSでの干渉にとどまらず、領空・領海侵犯、事実上のテロ行為、支援に関わる軍需工場や関係者への放火や暗殺未遂などが始まっているという。会議のコンセンサスは、ここで動揺するのではなく、ロシアを交渉の場につかせるためにウクライナ支援とロシアへの制裁・圧力をさらに強化すべきだというものだった。小野寺議員一行の訪問はこうした背景のもとにあった、と松田氏は位置づけた。
橋を「落とさない」攻撃の意味
キーウでは、旧市街、大統領府などの政府施設、企業の本社、大学のほとんどがドニプロ川の西岸に集中し、東岸には住宅地が広がる。松田氏は、東岸には京都市との姉妹都市提携を記念した京都公園があり、ヨーロッパ最大級の桜並木と、滝を含む立派な日本庭園があって、戦時下で市民の憩いの場になっていると紹介した。西岸に住む人がそこへ行くには橋を渡らなければならない。右松氏も2月の取材で北橋を通り、多くの車が行き交う都市の動脈だという印象を持ったと語った。
髙田氏が注目したのは、橋を落とすほどの大型ミサイルが使われていない点である。小型ドローンで7回攻撃しても、それだけで橋を落とすことはほぼ不可能だ。本気で落とすこともできたはずだが、それをやれば国際人道法違反は免れない。髙田氏によれば、人道法違反かどうかは、標的が適切か、兵器が適切か、民間への付随的被害(コラテラル・ダメージ)の予見可能性がどうかという三つの指標で判断される。橋をまるごと落とせば間違いなく該当するが、今回はそうとも言えないギリギリのところを突いているという。
その狙いについて髙田氏は、地上戦で成果が出ない分、住民の心に不安と恐怖を植え付け、ウクライナ国民の内側から政権を倒そうとする別のアプローチではないかと見る。たびたび非常ベルが鳴るスーパーには怖くて行かなくなるように、スーパーそのものを壊さなくても人を遠ざけられる、という例えを挙げた。物理的に橋を落とさず、「この橋を通りたくない」という心理的影響を与えることが都市機能の麻痺につながる、という見立てである。
なぜ今、橋なのか
兵頭氏は、米戦争研究所などの分析ではザポリージャ州でも橋への攻撃が行われており、キーウだけの問題ではないと指摘した。ドクトリンがウクライナ全域で橋を攻撃するよう指示している可能性もあり、ウクライナ側は今後も警戒せざるを得ないという。
10月に入って攻撃が急に集中した理由について、兵頭氏はロシア側の焦りを挙げる。ウクライナによるロシア国内への攻撃が続いていることへの政治的な報復の意味合いもあるだろうとする。またドネツク州でのウクライナ側の作戦により、ロシアが未制圧地域で進めようとした攻勢作戦が失敗に終わり、前線でも苦境に立たされつつある。さらに西側の支援を抑えたいという狙いから、外国の要人が利用する列車への攻撃も強まっており、メルツ首相のキーウ訪問中に橋が攻撃されたことには欧米諸国を牽制する意図もあったのではないかと述べた。
右松氏は続けて、大規模な攻撃ではなく小型無人機などで低コストに一定の効果を上げることがロシアの思惑と一致しているのではないかと髙田氏に問うたが、その応答は放送上では確認できない。飯塚氏は、コストは安くても民間人を無差別に攻撃する規模は拡大しているとし、それに対するヨーロッパの批判が静かに感じられると指摘した。ロシアのハイブリッド攻撃を受けて欧州がロシアを恐れ、報復を警戒している面があるのかもしれないが、民間人の死傷者が増えている以上、ヨーロッパはもう少し声を上げるべき時ではないかと述べた。
ウクライナの対抗策:ロボット砲とジェット推進型迎撃ドローン
AFP通信によると、ウクライナ空軍は橋などを狙う無人機への対策として、橋にロボット砲の設置を進めており、ロシアのジェット推進型無人機をすでに撃墜したと主張している。キーウには12基が設置されたという。
髙田氏は、単体で動かしているだけならそれほど効果はないと評価した。見たところ12.7mm程度の機関砲で、1000m程度まで近づかないと効果が出にくい。ただし「ロボット」「AI」という言葉が入っており、目標の発見、識別、追跡、射撃、評価という一連の流れ(F2T2EA、いわゆるキルチェーン)を担うシステムの中の一つの火力プラットフォームとして配置されているなら効果はあるという。パトリオット(PAC-3)などと比べれば途方もなく安価で、市内の各所に設置されていく可能性もあると見る。
一方で、市街地での12.7mm弾は落下する破片の問題もある。髙田氏は、兵士が肩に担いで撃つ赤外線誘導の携帯型地対空ミサイル(MANPADS)が有効だとした。ジェット推進型の無人機は必ず熱源を出すため、赤外線ホーミングが非常に効くという。ただ、限られた資源は前線が優先であり、都市部をどこまで守るかは軍人が口を挟むところではなく、米軍で言う「防護対象リスト(ディフェンデッド・アセット・リスト)」として政治が決めることだと強調した。
松田氏は、ウクライナの迎撃態勢は従来、電子戦(ジャミング)、赤外線ミサイル、航空機搭載の機関砲、ピックアップトラックの荷台に載せた機関砲で構成されてきたと補足した。これらは時速300〜400km程度の通常型ドローンには対応できるが、時速600〜700kmに達するジェットドローンには対処が難しい。そのためウクライナはジェット推進型の迎撃ドローンを開発し、実戦化にはすでに成功しており、今後はその量産化が鍵になると述べた。
日本企業の工場も標的に:JTの工場への攻撃
最後に、日本関連企業への攻撃が取り上げられた。ロシア国防省は7日、ウクライナ中部ポルタワ州にあるJT(日本たばこ産業)関連会社の工場などを攻撃したと発表した。飯塚氏は、攻撃は1回ではなく2回目であり、標的として狙われていると見られると指摘したうえで、JTがウクライナで工場を持ち続ける理由は経済的な見通しなのか、両国関係や支援の意味もあるのかを松田氏に尋ねた。
松田氏によれば、開戦前から40社ほど進出していた日本企業のうち、開戦後にウクライナから撤退したところは一つもない。理由の一つは雇用の維持である。JT、正確にはジャパン・タバコ・インターナショナルのウクライナ法人は、日本のウクライナにおける最大の投資先の一つで、最も多くの雇用を生んでいる会社の一つだという。
JTが意図的に狙われたかどうかまでは分からないと松田氏は断ったうえで、前後してコカ・コーラやマクドナルドなど、市民生活に近いものを作る工場や倉庫も攻撃されていると指摘した。髙田氏が述べたように、市民生活への嫌がらせ、不自由感を作り出すことが、軍需産業と全く関係のない日本や欧米の企業の工場が狙われる背景にあるのではないかという見方である。2度攻撃を受けたものの、JTの全従業員は無事で、不幸中の幸いだったと松田氏は語った。
市内の橋から立ちのぼる黒煙。映像をスロー再生してみますと、画面左から飛来したロシアの無人機が橋を攻撃する瞬間が映し出されています。さらにドネツク州では路線バスなどが攻撃を受け、33人が死亡するなど、民間人が巻き込まれる被害が相次いでいます。
深層NEWSは、前線からおよそ10kmの街で活動する日本人写真家、尾崎孝史さんを取材しました。撮影した映像には、連日の攻撃が日常の一部となった市民たちの生の声が収められていました。
深層NEWS、本日のゲストをご紹介します。元駐ウクライナ大使の松田邦紀さんです。松田さんは2021年、駐ウクライナ大使に着任。2024年10月の離任まで、現地でロシアによるウクライナ侵攻の対応などに尽力されてきました。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。よろしくお願いします。
陸上自衛隊で東部方面総監や陸上総隊司令官などを歴任した、元陸将の髙田克樹さんです。髙田さんは陸上自衛隊のOBが参加する陸修偕行社で、安全保障の研究委員長をされています。よろしくお願いします。
お願いします。よろしくお願いいたします。
ロシア政治、外交、安全保障に詳しい、防衛省防衛研究所研究幹事の兵頭慎治さんです。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。よろしくお願いいたします。
まずは最新ニュースからお伝えします。日本時間の午後6時過ぎにノーベル平和賞が発表されました。ノーベル平和賞の受賞が決まったのは、南アフリカの国際法学者ナバネセム・ピレイさんです。
ピレイさんは元国連人権高等弁務官で、南アフリカ高等法院で初めて白人以外の女性判事となったほか、ICC、国際刑事裁判所の判事や、ルワンダ国際刑事裁判所の所長も歴任しています。選考委員会はICCの赤根所長らがアメリカ、トランプ政権から制裁を受けている現状を念頭に、「裁判官自身が制裁を受け、彼らの機関が攻撃にさらされる中で、我々には勇気、知恵、断固たる決意を持つ人物が必要とされている」と、ピレイさんの業績を称賛しました。
はい。ということで、このピレイ氏が選ばれたこと、松田さん、どのようにこの一報をお聞きになりましたか?
今まさに国際社会において国際法の秩序が揺らいでいる、意図的にそれを壊さんとする勢力がいる中で、ノーベル平和賞としては最大限の敬意を払って、この女性に受賞を決めたんだと思います。これは私なりに考えると、ほとんどICC、ICJといったものに対する平和賞だと思います。
なるほど。髙田さんはいかがでしょうか?
トランプさんの標的となっているICCですね。これにまさに関わった方を選定されたということは、本当に法の支配というものを念頭に選ばれたのかなというふうに思います。
兵頭さん、今回のノーベル平和賞を含めて、やはりトランプ氏も意欲を示したということもあって、そういったところのコントラストもやや感じる受賞だったかもしれませんね。
そうですね。やはり国際裁判所、ICCに関しては、今アメリカもかなり厳しい姿勢を強めているということもあって、当初は赤根所長も対象になるんじゃないかという見方もありましたが、結果的にそこではなくて、ICCの判事をかつてやっていた方が受賞するということになったと思いますので、ちょっとギリギリの判断だった。対立、分断が出てくる可能性もありますので。しかしながら、もうすでにご指摘があったように、法の支配に基づく国際秩序が重要だという、こういうメッセージというのは、今回の受賞から十分感じ取ることができたんじゃないかと思います。
飯塚さん、いかがですか?
そうですね。まさに本当におっしゃる通り、トランプ大統領に対する強烈なアンチテーゼを象徴する受賞だと思います。弁務官という仕事なんですが、国連の人権分野の最高責任者ですね。国連の事務総長が任命するということですけれども、一つ、今、現職のフォルカー・チュルクさんという方がいるんですが、この方はトランプ政権の批判をずっとしているんですね。
まさに今日受賞された、受賞が決まったナビ・ピレイさんですね。ピレイさんは直接トランプ批判はしていません。少し前の方ですから。ただ、現職のこの国連人権高等弁務官は、厳しくトランプ政権の、特にその人権問題ですね。国際法というのもあるんですけれども、やはり人権違反が甚だしいと。今年の6月でも、サッカーワールドカップを前に、アメリカの移民取り締まりをこういう形ではいけないと、改善するべきだという強いメッセージを出しています。
やはりこのポジションにいた方が受賞したということは、国際法もそうですけれども、人権問題に対してもっとアメリカを含め、明確な理想を掲げるべきではないかと、そういう強いメッセージが込められていると思います。
トランプ大統領は、しきりに自分こそがこのノーベル平和賞を受賞するにふさわしいということを繰り返していて、最近では、先ほどからお話がありますが、このICCに対する批判を強めて経済制裁もかけたわけですよね。むしろそういったことが、このICCの存在意義を改めて再認識させるようなことが国際社会に広がったと思うんですよ。それが今回、受賞に結びついたのであれば、先ほどお話もありましたが、強烈な皮肉として国際的には刻まれるということになりそうですね。
そうですね。平和賞ということで言えば、今年の2月に誰がイランに対する戦争を始めたんだと、まずそういうことを考えるべきですし、本来は紛争を解決したということは、どれだけ人々に平和が広がったかという、そこが評価されるべきであって、自分がこれをやった、あれをやったということが評価の対象になるわけではないということを考えても、トランプ大統領の主張というのは全く当たりませんし、今日の平和賞の受賞の決定というのは、本当にそういうトランプ氏の考え方に対する強いアンチテーゼだと思います。
さて、こちらをご覧ください。
小野寺元防衛大臣はウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談を行いました。この訪問の全日程に同行した松田元大使が見た舞台裏に迫ります。
今月1日、ウクライナの首都を訪問した小野寺元防衛大臣は、ゼレンスキー大統領と会談しました。この訪問には本日のゲスト、松田さんも同行されていらっしゃいました。
松田さんは日本から小野寺さんに同行していたというふうにも伺ったんですが、今回の訪問団はどのような目的と狙いがあったんでしょうか?
年末に向けて、ご案内のように政府、それから与党は、安全保障の3文書の改定に取り組んでおりますが、その中で21世紀の戦争、言い換えればドローンやAIといった新しい技術の導入、それに伴う戦術、さらには戦略面での変化、こういったものをしっかりと現場で、関係者からも話を聞き、視察もする。そういったことを踏まえた上で、この文書の改定に生かしていくと、これが一番大きな目的であり狙いでありました。
同時に、やはり戦火のウクライナにおいて急速に、防衛産業、ドローンをはじめとする防衛産業が確立してきています。そしてそれを支えている研究や企業、それから政府、それから金融機関等の、いわゆるエコシステム。この実態についてもしっかりと見てくる。そしてそういったものの中から、一つでも二つでも日本の安全保障に生かせるものは、しっかりと教訓として、そして経験として受け止めて帰ると、こういったいろんなものがありました。
もちろん同時に、戦争の開始以来、ウクライナを支援している日本としての力強い立場を、議員団の訪問という形でウクライナの政府及び国民の皆様に示すということも、もう一つの目的でございました。
今回は政府の立場というわけではありませんが、与党幹部でもあり、そして防衛大臣経験者である小野寺氏ということになりますので、この訪問についてはウクライナ側としてはどのように受け入れていた、そして迎えられたというふうに捉えていらっしゃいますか?
ウクライナ側からしますと、開戦以来ウクライナを支援してくれている日本との関係を、さらに強化していきたいという思いはあったと思います。特に8月の初めの会議の場で、ゼレンスキー大統領からウクライナの外交団に対して、もっと日本との関係を発展できるだろうという、いわば激励の言葉もありましたから。
その中で、日本との関係に関しまして、政府間の関係と同時に、やはり議員との交流。これは実はあまり知られていませんが、欧米各国は5年間、政府との交流に加えて議員外交を積極的にやってきました。
そうですか。
そういう意味では、ウクライナとして、まずは国民によって直接選ばれている議員代表団を受け入れることで、議員を通じて改めて日本の国民の皆様に対する感謝の意を伝えたいということが一つ。同時に、今ご質問にもありましたが、小野寺議員、そして同行された大野議員、田議員、いずれも与党、自民党の中での安全保障問題のエキスパートですから、やはり日本とウクライナとの協力関係の中で、これまで欧米諸国に比べてややもすると弱かった防衛分野での協力について、さらなる議論を深めたいという意識もウクライナ側にあったというのが私の受け止めです。
そうですか。髙田さんに伺いますが、髙田さんも制服組として、まさに自衛官として小野寺元大臣に仕えたお一人として、今回の訪問をどのように捉えていらっしゃいますか?
大臣らしいなというふうに改めて思います。私が現職時代に小野寺防衛大臣、大野大臣政務官だったんですけれども、2人とも本当に現場を非常に大事にされるというふうに感じておりました。
現場の感覚、それから隊員との会話、これによって温度を知り、政策に反映するという姿勢は、私、横から見ていましても非常に尊敬していました。それがそのままの訪問になったんじゃないかなというふうに思っています。
兵頭さん、先ほど松田さんからもありましたが、先月は森衆院議長が訪問してゼレンスキー大統領と会談をしていますし、そして野党の国民民主党の玉木代表も議員外交としてキーウを訪れている。こういった日本の政治家が今このウクライナを訪問していること、今回も含めてどのように評価をしていますか?
大使もご指摘になられたように、議員外交という形でかなり重層的にウクライナに連帯の表明、これがなされている。これがウクライナ側からも評価されているということだと思いますし、タイミングとしては、やはりこの3文書の改定で、今本当に新たな戦い方を自ら経験しているウクライナから知見、生の声を実際に聞き取る。これは日本にとって、今後どういう安全保障政策を進めていくのかという、非常に重要な今、節目だと思うんですね。そこが達成されていると。
さらにドローンに関しては、日本の場合は迎撃用の、防衛用のドローンということでありますけれども、そこの技術協力について、一つ話し合いができたということなので、今後そのドローン、AIを使った新しい戦い方に、技術面で日本がどう備えるのかというところも、今回大きな成果、収穫があったんではないかというふうに思います。
この辺りの防衛の意義については、後ほどもしっかりと議論していきたいと思うんですが、小野寺さんは自身のXでウクライナ訪問の詳細を投稿しています。その中で、シェルターでの避難ですとか、ゼレンスキー大統領との自撮りなど、今回のエピソードの舞台裏について、この後伺っていきたいと思います。
小野寺元防衛大臣はポーランドのヘウムから列車でウクライナを訪問。所要時間は11時間の予定でしたが、実際には到着まで18時間かかったといいます。到着が遅れた理由は、ロシア軍による空襲です。小野寺さんはXに、「キーウ行きの列車で移動中に突然停車。車掌が『すぐに車外に出て』と叫んでいました。着の身着のままで車外に出ると、大勢の乗客が誘導され、途中駅のシェルターに」というふうにつづっています。
松田さんにお伺いしたいんですが、投稿された写真を見てみますと、このように皆さんが並んでいる中で松田さんも映っていらっしゃって、比較的落ち着いた様子に見えるんですが、この避難の際の状況はどうだったか、お聞きしてもいいですか?
もし私が落ち着いているように見えるとすれば、私は実は今回初めてではなくて、9月の前半に1回ウクライナを訪問しておりまして、その時も列車での移動中にやはり緊急停止して、車外に退避を命じられるというのを一度経験しています。従いまして、その時の仕組み、すなわちウクライナの防空軍とウクライナの国有鉄道との間の連絡体制、それから各車両ごとに1人いるウクライナ国有鉄道の職員の対応、こういったものをよく知っていましたので、そういう意味では多少落ち着いていたというふうに言えるかもしれませんが。
寒いというようにXの発言にもあったと思うんですが、実際避難されて、状況はどうだったんでしょう?
今回は実は3回列車が緊急停止して、3回とも車外への退避を求められました。その中のうち、これは3回目の映像ですね。実は映像にない2回目は、我々、車外に出てレール脇にある草むらの中、露に濡れた草むらの中を移動して、列車から離れたところで避難するということもやりました。
従って、実は気温とか寒さという意味では、その屋外避難の時の方がずっと寒かったんですが、そういう意味ではシェルターの方が比較的暖かいといえば暖かかったんですが、ただ逆に言うと、シェルターに避難するということは、それだけ緊急性が高かったということも言えると思います。
いずれにしても3度避難させられます。そのたびに睡眠も削られますし、ただ私が感心したのは、我々もそうですけれども、外国人の乗客もそうですが、ウクライナの乗客の人も落ち着いていましたし、国有鉄道の関係者、それから周辺にいる駅の関係者も、誘導等の体制はしっかりしていましたから、そういう意味では幸いにして、不測の事態は起きないままに、無事にまた列車に戻って旅を続けることができたと申させてください。
戦争が最初始まった頃、2022年、大使は現職の大使としてウクライナにおいでだったと思うんですが、その頃と比べて今の方が、こういう鉄道への直接攻撃ですとか、治安というか、その安全は悪化しているという、そういう実感を得られたんですか?
開戦当初と現在を比べれば、ロシア側の攻撃の対象、目標、それからその背後にある意図というのは大きく変わってきています。今ご指摘のように、現在ロシア側は地上戦で苦戦を強いられている中で、何とかウクライナ側を支援している欧米諸国からの人と物の移動を阻害したいと。そのために、及び関連する通信に対する攻撃というのを現在。
小野寺さんの一連の今回のウクライナ訪問では、今後の活発なコミュニケーションの維持ですとか、防衛分野での協力といった議論もあったということです。どのようなお話が出たのか、さらに詳しく伺いたいというふうに思います。
小野寺さんはゼレンスキー大統領をはじめ、要人らと会談をしました。会談後には、ウクライナ侵攻当初に話題となった場所にも訪れています。
小野寺元防衛大臣はXに、「ゼレンスキー大統領と会談後、ロシアから侵略された時、大統領が勇気を示された世界で一番有名なセルフィーの場所を訪ねたら、自ら案内くださり、参加者みんなを入れて再現してくださいました」と投稿しています。
この場所、多くの方が知っている場所かもしれません。説明はもう控えますが、松田さん、この場所に案内をしてくれたゼレンスキー大統領の計らい、どういうふうにご覧になりますか?
私なりに感じたのは、まずはここ以来、首都に対する空襲が激化している中で、その危険を冒してまでウクライナを訪問し、ウクライナと連帯を示した我が国の議員団に対する敬意と、それから大統領一流の、ある種のユーモラスなホスピタリティの表れだと思いました。
同時に、この有名なセルフィーを再現することで、ウクライナの内外に対して、ウクライナを支援する国の指導者たちは、こういう危険な状態でもウクライナを訪問し、支援をプレッジし、ということを明確に示したかったと。そして何よりも、やはりこの映像ですから、そのインパクトは。
そうですね。
全世界に与えたインパクトは大きかったと思います。私、驚いたことに、前職で仕事をしていた香港とか、パキスタンの知人からも、これ見たよという連絡が来たくらいですから、そのインパクトは大きかったんだと思います。
非常にこれ、発信力と、そして当時のこのウクライナの連帯と、指導者は逃げないんだというこの強いメッセージが、まずは国民を鼓舞して、それが今につながっているということになりますもんね。
指導者も逃げないのみならず、ウクライナを支援している日本をはじめ、同国の我々も逃げないというメッセージだったと思いました。
はい。
そういった中で、今回、様々な防衛協力のあり方についても議論をしてきたということでありますが、松田さん、当然、様々、披瀝できるところ、できないところがあると思うんですが、今回の話の中で一番松田さんにとって印象的だったこと、そしてこれは手応えがあるなと感じたことは何だったんでしょうか?
私は、例えばドローンだとかAIだとかミサイルだとか、そういったものの説明、そしてそれぞれに関するウクライナ側の期待、希望といったこともさることながら、日本側からすると、どのように戦火のウクライナが新しい武器、弾薬の研究開発、そしてそれの量産化を進めたかという全体のエコシステムを、官民が協力して作り上げてきたと。もっと言えば、官と民と、学ですね、研究も含めて。それを我々が知ることができたというのは、極めて大きな教訓になったと思います。
これは日本にとっても重要です。一例を挙げますと、新しい武器の開発から生産までのリードタイムが、昔は数年だったウクライナが、今2か月まで縮めることができています。
はい。ただ、このエコシステムの確立といった点においては、やはりこれは置かれた戦火であるという状況と、自分たちがこれをしっかりと作らなければ侵略をされてしまうという、そういった強烈な圧迫感もあってできたものかもしれない。日本に実装するというのは、なかなかこれはまた環境が違う点で難しいと思うんですが、その点の何か突破口みたいなものはあるんでしょうか?
私は、戦火だからこそウクライナがやむにやまれずに作り上げたエコシステムというところはもちろんありますが、それをしっかりと分析していくと、例えば日本の国内にある、普段は別な分野で作り上げられてきている研究開発の成果、言い換えれば汎用品、汎用技術、そういったものを防衛だとか、日本の場合には平時における治安の維持だとか、あるいは防災だとかというふうに考えていくと、私は戦火のウクライナの経験を、日本の現在の様々なニーズに合わせて、しっかりと受け入れることはできると思いましたね。
飯塚さん、いかがでしょうか?
そうですね。これはいろんなことを、安保3文書の改定に向けて日本も知見を得たいという、今回は非常に明確な目標、目的があったという意味で意味があり、今、大使が言われたようなこういったことは、高市首相、政府内にも伝わったと思うんですね。非常に意味があったと思います。
一方でゼレンスキー大統領からすると、日本というだけでなくて、やはりG7とか、この西側の社会から支援を受け、そして気持ち的に寄り添っているという、これを示すことができたのは、やはりウクライナ側にも大きなメリットがあったんだろうなというふうに思います。
髙田さん、日本がウクライナから学ぶべき知見、これをどういうふうに捉えていらっしゃいますか?
私がしゃべる内容は多分、軍事的なものになってくるんですけれども、やはり戦争開始以来4年7か月、彼らが現場のニーズを吸い上げて作ったと言われている戦場管理システムのデルタですね。この中身というのは具体的にどんなものなのか。
それからデルタは、米軍のメイブン・スマート・システムとプロトコルを一緒にして、相互に学習できるような状態になっていると聞いています。この中に日本として入り込む余地があるのかないのかとかですね。また具体的には無人機の運用については、軍事的に言うと、使用している周波数帯域というのがどれほど広いのかとか、利得アンテナを使って、出力、ワット数はどれぐらいまで出して実際やっているんだと。今、国内法で縛られている中で、できるのかできないのかという大きな判断ができると思うんですね。
それからもう一つは、継戦能力については、我々、今非常に古い戦争を題材にした、弾が何発ぐらいいるというような計算をしているんですけれども、今、実際のこのウクライナ戦争、4年7か月戦って、どれぐらいの継戦能力を保つためにはこれぐらいいるんだとか、その尺度を、新しい尺度を教えていただけませんかという、かもしれないことですね。そう思うんですよね。
さて、ロシア軍は主要な橋を相次いで攻撃するなど、首都攻撃を強めています。民間施設の軍事攻撃を強めるというロシアの新しいドクトリン、その詳細とは。
激しく燃えるバス。ウクライナ非常事態庁などによりますと、東部ドネツク州のクラマトルスクで今月8日、ロシア軍がバスなどを攻撃し、33人が死亡、20人がけがをしたということです。バス停に停車していた路線バスに乗客が乗り込んでいたところを攻撃されました。市民生活の足でさえロシア軍の標的になっています。
ドネツク州当局によりますと、この攻撃には誘導滑空爆弾が使用されたということです。ウクライナでは前日にもロシア軍の攻撃があり、この2日間で78人が死亡しています。
ロシア軍の攻撃が激しさを増す中、4日には首都キーウ。無人機がドニプロ川にかかる北橋を直撃。直撃地点のすぐ脇を間一髪で通り抜ける車。市長によりますと、この攻撃で2人がけがをしたということです。路面に残された大きな穴。この攻撃の影響で、周辺では渋滞が発生しました。
今、ロシアが執拗に狙っているのは、市民生活の動脈とも言える橋です。南橋も無人機の攻撃を受けました。アメリカの戦争研究所によりますと、1日から4日の間に北橋と南橋は合わせて7回攻撃されたということです。
キーウ市の中心を流れ、市内を東西に分けるドニプロ川。BBCによりますと、この川にかかる橋は、1日当たりおよそ50万台の車両が行き交う交通の要衝となっています。そのうちの北橋と南橋がロシア軍の攻撃対象になったのです。
キーウ市民は、「もう1時間バスを待っています。ここまで来たのに川を渡れないのです」。
「毎日の仕事で生地区に行かなければならないのですが、橋を渡るしか手段はありません。ドニプロ川の下に歩いて渡れるようなトンネルがあるわけないですから」。
北橋への攻撃が行われたのは、ドイツのメルツ首相のキーウ訪問中でした。要人の訪問中にもかかわらず行われたこの攻撃について、ゼレンスキー大統領は、「破壊はテロ行為そのものだ。都市機能の破壊にほかならず、ロシアは市民を大都市から追い出そうとしている」。ロシアが主要都市から住民を追い出し、都市機能を麻痺させようとしていると非難しました。
またロイター通信によりますと、こうした民間施設への攻撃に関連して、ロシアの新たな軍事行動の指針、ドクトリンを記した文書を入手したと明らかにしました。
「入手した文書によって、ロシアが都市や村を問わず、道路、学校、病院などを標的にすることで、人々に首都をはじめ各地の都市を離れるように圧力をかけようとしていることが分かった。これが彼らの作戦の狙いなのだ」。
ゼレンスキー氏はさらに、ロシア軍が前線で苦戦する中、プーチン大統領が強硬姿勢を内外に示したい思惑もあるのではないかとの見方を示しました。民間インフラを容赦なく攻撃するロシア軍。その狙いと戦略を分析します。
今、映像にもありましたが、ウクライナ内務省などによりますと、8日、東部クラマトルスクで乗客を乗せたバスがロシア軍による爆撃を受け、これまでに33人が死亡しています。ウクライナでは7日にもロシア軍の攻撃があり、この2日間で78人が死亡しています。
髙田さんにお伺いしますが、この攻撃は誘導滑空爆弾が使われたということなんですが、この破壊力や使用意図をどう見ていますか?
そうですね。誘導滑空爆弾ですから、基本的には誘導方式は慣性航法と、それからロシアの衛星であるGLONASSの誘導ですね。アメリカのGPSに匹敵するものですけれども。ですから、動いている目標を狙うとかはできません。基本的には地図上の座標を入力して、そこに確実に向かわせるという爆弾です。高高度から発射すると、大体射距離は100km前後というふうに言われています。
炸薬量が100kgぐらいのものですね。ですから通常の、今ビデオで見せていただきました橋のドローンの攻撃の炸薬量の約2倍から3倍ぐらいのものだというふうに理解しています。
今のお話も踏まえて、バスに当たったわけですけれども、バスを意図的に狙ったのか、それとも道路を狙っていて、たまたまそこにバスが通りかかったのか、この辺りはどうご覧になりますか?
誘導滑空爆弾ということを前提に考えれば、バスを狙うということは私はないと思いますね。たまたまだったと思います。これは誘導滑空爆弾だったかどうかも含めて、確実な答えではないと思いますが、もしそうであるならばという仮定、前提でお話ししています。
はい。そして北部のチェルニヒウ州では、集合住宅が攻撃を受けて倒壊もしています。こういった民間施設への攻撃が激しくなっている中、ゼレンスキー大統領は、ロシアの軍事行動の指針を示す新たなドクトリンを入手したと話をしています。
今月3日に公開されたロイター通信のインタビューで、ゼレンスキー大統領は、ウクライナの情報機関は、プーチン大統領がこれまでよりはるかに広範な民間施設への軍事攻撃を認める新たなドクトリンを示した文書を入手したと述べました。その上で、インフラや物流施設、特に都市や村、あらゆる場所の道路、学校、病院への攻撃を認めているといいます。
髙田さん、これ、そもそも攻撃対象というものをドクトリンで定めるものなんでしょうか?
我々の理解では、ドクトリンというのは、あくまで軍事行動や部隊運用のための基本原則と指針を示すものであって、アメリカで有名なのはエアランド・バトルだとか、旧ソ連で有名なのは縦深作戦とかというものであります。これは、このドクトリンをもとに部隊運用や教育訓練や防衛力整備がなされていくという、非常に軍隊のもととなる考え方ですね。
一方、今回の目標を拡大したというのは、我々の感覚で言うと、ROE、ルール・オブ・エンゲージメントの再認可、修正ということの方が近いんではないか。すなわちドクトリンというのは、どう戦うかを示している教義でありまして、ROEというのはどこまでやるか、そういうふうに理解していただければいいと思います。大統領がドクトリンとおっしゃっているなら、ドクトリンなんでしょうけれども、我々の感覚で言うと、どちらかというとルール・オブ・エンゲージメント、交戦規定の修正というふうに理解しています。
そうですか。ただ少なくとも、ゼレンスキー大統領が手にして持っているものに、ドクトリンの文字が書いてあるか書いていないかは別にしても、少なくともロシアとしては、攻撃対象に対して民間施設というものを躊躇しないと。つまり国際人道法で定められているような、ジュネーブ条約にあるような、そういったところをもう無視して攻撃をするということに、踏み切ったというふうに見た方がいいんですか?
そうですね。それで苦しいんだと思います。苦しい裏返しだと私は見ています。もちろん国際人道法を真っ向から否定するようなことはロシアはしないと思いますけれども、そのグレーな部分にどんどん手をつけているという印象を持っています。
兵頭さん、その点ですね。グレーな部分にということ、そしてロシアの状況が今苦しいということの裏返しなのではないかと。ただ、国際的な批判が免れないわけですね。こういったものが存在すること自体が、紙としてあるのかどうかも含めて、この辺りいかがでしょう。
これまでも民間インフラの攻撃はロシアはやっていたわけですね。ただ現在に至っても、軍事的な拠点であるとか、あるいは軍事的な利用、今回の橋についてもあったんだというふうに言ってはいるんですけれども、ここまで民間インフラの攻撃が拡大してしまうと、もはやちょっと説明はほとんど難しくなってきているんじゃないかと。
特に今回は短期間で北橋、南橋を集中的に攻撃しているわけですよね。そこも明らかに、この橋、これは民間インフラで多くの人たちが使うのを攻撃しろという、こういう明確な指示がやはりないと、こういう事態にはならないと思いますので。ロシア側からすると、このドクトリンの内容自体がまだ明らかにはなっていませんけれども、これまで以上に民間インフラ、そして民間人がここで犠牲になる可能性もあるということを分かった上で攻撃するという、その明確なレベルの引き上げというか、新たな攻撃指針をロシア側は打ち出してきているんではないかというふうに思います。
このレベルの引き上げという点で松田さん、ちょっとお伺いしたいのが、これまではロシアも様々な理由をつけて、これは軍事目的に利用されているんだと。仮に橋も、もちろん軍用車両が通るかもしれないといったことを、こじつけで言い訳できるかもしれないわけですね。
ただ今回、このドクトリンというものに示されたものが、細かくどういうふうに書いてあるかは別にしても、民間施設もある程度認めるということがロシアの中枢から下りてきた時に、これがどのような段階に踏み込んで、これからの戦争が変わっていくのか、いかがでしょうか?
先ほど髙田さんがおっしゃいましたけれども、実はロシアが苦戦している、ロシアが焦っているというのは、9月の初め、私も参加した安全保障会議での、一番大きなテーマの一つだったんです。
そうですか。
その会議には、欧米から現役及び退職された政治家や軍人、その他専門家が集まっていたんですが、その中で出たのは、昨年2回、そして今年春から夏にかけての1回、都合3回の東部戦線での大攻勢に、いずれもロシアは失敗したと。
なるほど。
その結果として、今年の前半は1日当たり1000から1300人の戦死者。今年の夏からは1500から1700。つい最近は、開戦以来最も、2000人以上の戦死者が1日で出ていると。これは実は、ロシアがやっている様々な形での事実上の動員による補充兵の数を凌駕しているんです。従って、戦えば戦うほどロシアは地上戦において負けていくと。
その中で出てきたのが二つありまして、一つはウクライナ国内に対する、ほとんど無差別と言っていい攻撃の強化。これが今、新ドクトリンで我々が議論していることですが、二つ目は、支援しているヨーロッパ諸国に対するハイブリッド攻撃の強化。それも選挙干渉とか、SNSの干渉ではなくて、領空、領海侵犯、それから事実上のテロ行為。支援している軍事工場や関係者に対する放火、あるいは暗殺未遂等々が始まっていると。
ということで、ロシアは相当困っている。だからこそこういう無謀と言えるような作戦に、ウクライナ国内においてもヨーロッパに対しても出てきている。だからこそ会議でのコンセンサスは、今ここで動揺したりするのではなくて、改めてロシアをして、にうために、ウクライナ支援の強化と、ロシアに対する制裁その他の圧力の強化をしなければいけないということが議論されました。そしてそれを背景にしての、今回の小野寺議員一行の訪問があったということになります。
そして先ほどお伝えしていますように、この主要な橋への攻撃、ここをもう少し深掘りしていきたいというふうに思うんですが、標的となったのは、首都に流れるドニプロ川にかかる北橋と南橋という、この二つの橋なんですね。これは市内の西側と東側をつなぐ、主要な交通の要衝になっています。
川幅が広いこのドニプロ川にあって、東側というのは住宅街で、そして西側にはダウンタウンというか、都市機能が集中している、こういったような構図になっているんですが、これがやはり松田さん、キーウの街の特徴と言えるんでしょうか?
はい。旧市街ですとか、大統領府をはじめ政府関係の施設、それから企業の本社、それから大学等は、ほとんどが川の西岸に集中しています。同時に東側は住宅地が広がっていると。
東側といえば、日本との関係で忘れてはいけないのは、実はキーウ市の東側に、京都市とキーウ市の姉妹都市を記念した京都公園というのがありまして、ヨーロッパでも最大の桜の並木があり、今写真にありますが、実は立派な枯山水を含む日本庭園があると。これが戦時下でも市民の憩いの場所になっていると。ただここに行くためには、西側に住んでいる我々は、橋を渡っていかなきゃいけないということになります。
私も2月にウクライナを取材した時に、この北橋の方をまさに通ったことがあるんですね。その時、やはりドニプロ川は川幅が広いですから、本当に多くの車が行き交っていて、まさに都市機能の動脈というような印象があったんですが、さらにこの東側にはベッドタウンということで、こういった市民にも愛される施設があると。まさにこの橋の寸断で生活を本当に切り取ろうと、分断しようという、そういう企みを感じるわけなんですが。
髙田さん、そういった意味で言うと、こういった橋を狙うということ、これは都市機能の、言ってみると、以上に、どういった効果があるのか、どうご覧になりますか?
今回は橋を落とすような大きなミサイルを使っていないという点に、実は注目をしています。小さなドローンで7回と言われていますが、攻撃をして、それ自体では橋を落とすことはほぼ不可能なんですね。
本来ならば、橋を落とすほどの兵器を使うこともあり得たわけですか?
そう、本気であれば。ただそれをやると国際人道法違反、これは免れません。そこの、切裁部のですね。人道法違反というのは、標的が適切なのか、その兵器が適切なのか、それから予見可能性がどうであるのか。予見可能性というのは、コラテラル・ダメージという民間の被害が、この三つの指標で、ひどいじゃないかという結論になるんですが、橋を丸々落としてしまうと、それは間違いなく当てはまるんですけれども、今回のこれは、そうでもないと言えるギリギリのところをやっていると。
これは大臣もおっしゃったように、地上戦での成果が出ない分、そこにやって、地域の住民の心に訴えて、不安と恐怖を植えつけて、ウクライナの国民の内側から政権を倒してしまうという、この別なアプローチであるような気がします。
私なんかも例え話ですけれども、スーパーに行く時に、たびたび非常ベルが鳴るようなスーパーは行きませんよね。
確かにそうですね。
スーパー自体を壊すんじゃなくて、たびたび行くたびにベルが鳴るようなところは怖くて行けないと、こういうようなことじゃないでしょうか。
じゃあ具体的に物理的に橋を落とすのではなくて、それは今お話があったような国際的な、組織でま抜かれないということですから、この橋を通りたくないというふうな心理的影響を与えることが、ある意味その都市機能の麻痺につながっていくという、そういった狙いということなんですね。
はい、そう思います。
なるほど。そして兵頭さん、こういった新たなドクトリンとしている、ゼレンスキー大統領が伝えているものですが、そういった中で言うと今後、ウクライナ各地の橋というものが狙われていく可能性、この辺りいかがでしょうか?
すでに他の地域でもこの橋の攻撃が行われているということで、ザポリージャ州でもロシア軍が攻撃を行っているというふうに、戦争研究所などでは分析をしていますので、決してこれは、だけじゃなくて、ひょっとするとそのドクトリンの内容っていうのは、ウクライナの広範囲に橋を攻撃することを指示している可能性もやっぱりあると思うんですね。ですから、今後もこの橋に対する攻撃っていうのは、ウクライナ側は警戒せざるを得ないと思うんですけども、なぜこの今のタイミングかっていうところがあると思うんですね。
10月に入っていきなり集中してきているってことですが、すでにご指摘があったように、ロシア側にかなり焦りみたいなものがやっぱり出てきているんだろうと。ロシア内の新攻撃のこれが続いていますので、政治的な意味合いもあるんでしょうし、そして、すでに大使もご指摘になられましたが、ドネツク州でのこのビバルディ作戦、ウクライナ側のですね、これによって、ロシアが未圧地域、ここの攻勢作戦をやろうとした、これが失敗に終わってしまっているわけですよね。ですから、ここでかなり前線においても苦境に立たされつつあると。
それから、西側のこの支援を何とか抑止したいということで、これまで外国の要人の方が利用される列車も含めて、その攻撃が強まっていますし、メルツ首相がキーウ訪問した直後にも橋の攻撃があったということで、欧米諸国を牽制する、そういう狙いもあったんじゃないかと思います。
この焦りという点が、強度の強い攻撃ではなく、例えばサボタージュのレベルだったりとか、さらにはこの無人という、その小さな発火のような、そういったような大がい苦痛ではないというところに今ロシアの思惑が一致するならば、ある意味コストを安く、比較的力の強い攻撃を与えられる。この辺りは髙田さん、どういうふうに見ればいいんでしょう?
なるほど。飯塚さん、いかがでしょうか?
そうですね、コストは安くですね。ただ、こういった、要は民間のシビリアンというか、そういう人たちを無差別に攻撃する規模が拡大しているわけですね。やはりここのことについて、見ていると少なくともヨーロッパはちょっと静かな感じがしますね。こういう攻撃に対する批判というかですね。
先ほど大使が、欧州自体にもロシアがハイブリッド攻撃を仕掛けてきているということもあって、そういうお話をされましたけれども、欧州もちょっとロシアに怯えている、また仕返しされるかもというのがあるかもしれないということなのかもしれませんが、こうした民間人がもうどんどん攻撃を受けて死傷者が増えているということでは、やっぱりヨーロッパはもう少し声を上げる時ではないかなと思いますね。
そして、ウクライナ側の対抗策についても触れておきたいと思うんですが、AFP通信によりますと、ウクライナ空軍は、などを標的としたロシアの無人機対策の一環として、橋にロボット砲の設置を進めているんだということのようなんですね。これ、ロシアのジェット推進型無人機をすでに撃墜しているというふうにもウクライナ側は主張しているんですが、髙田さん、このロボット砲についての評価、いかがでしょうか?
これが単体で動かしているものなら、そんなに効果はないと思うんですね。
そうですか。
お見受けしたところ、多分12.7ミリぐらいの兵器だと思うんですけども、射距離は1000メートルぐらいまで近寄らないと、なかなか効果は出てこないです。ただ、ロボットとAIという言葉が入っていますので、これが、我々よく言うんですけど、F2T2EAっていう、目標を発見して、同一化し、追跡して、射撃をして、交戦して評価するっていう、これがキルチェーンと呼ばれるものですけど、これが一つのシステムの中の、一つのプラットフォームとしてこのロボットがあるのであれば、これは効果はあると思います。
そうですか。これ、今12基、キーウに設置されているということなんですが、どうなんでしょう? この設置コストというのは、ちょっとなかなか兵器の詳細までこちらでは分からない部分もあるんですが、これ、比較的安価に設置できるのであれば、市内の至るところに設置することも今後あり得るんでしょうか?
あり得ると思いますね。これは、例えば比較の対象にならないかも分からないですが、PAC-3なんかに比べると、とんでもなく安いですね。こういうものが、繰り返しになりますが、システムの一環として、火力発揮のプラットフォームとして設置していれば、非常に効果があると思います。
これまでは、言ってみるとウクライナ空軍は戦闘機の機関砲などで無人機を撃墜したりとか、あと地上からこうやって発射することもあって、なかなかこのジェット推進型の無人機に対して、相当苦労しているというところはありますよね。この辺りは、今後大量生産して、このロシアも大量の無人機をキーウに飛ばしてくるという時に、何が一番有効な手立てになるんでしょうか?
そうですね。有効なのは、12.7ミリでもいいですけど、前が近いですから、あとの破片とか、あれも大変なんですよね。できれば、MANPADSっていう、兵隊が自分の肩に乗せて撃つ赤外線のミサイルですね。これは、向こうのロシアの、今ジェット推進型になりますと熱源が必ず出ますから。
なるほど。
そうすると赤外線ホーミングの携帯型ミサイルっていうのは、非常に効果があるんですね。そういうのも今後整備して、多分持っていると思うんですけど、整備してくると思います。
ただ、その分この迎撃部隊の方、言ってみると部隊を派遣して、そして備えなきゃいけないと。その辺りのコストはどうしてもかかるということですか?
そうですね。やはり前線が優先ですので。
そうですよね。
限りある資源の中で、いかに都市部を守っていくかっていうのは、これは政府の考え方ですね。軍の指導者じゃありません。ここは、いわゆる米軍なんかDALっていう、ディフェンディッド・アセット・リストって言うんですけど、どこを守るべきなのかというのは、これは軍人の口を挟むところじゃなくて、政治が決める。
なるほど。一つよろしいですか。ウクライナ側の迎撃体制は、昔からまずEW、それから今お話があった赤外線のミサイル。
EWというのは、これはジャミングですね。
それから赤外線ミサイル、それから航空機から発射するバルカン砲、いわゆる機関砲。そしてピックアップトラックの荷台につけた機関砲。これでやってきたんですが、これだと通常型のドローンは大丈夫なんですけど、それは時速大体300ないし400キロメートルですから、これがジェットドローンになりますと600ないし700出るものですから。そうなると対処が難しいということで、今、髙田さんがおっしゃったような対応策に加えて、ウクライナ側もジェット推進型の迎撃ドローン、これの実戦化にはもう成功していますので、今後の量産化というのが一つの鍵になっていくということだと思います。
なるほど。そして気になるニュースとして、日本関連の企業も攻撃を受けています。ロシア国防省は7日、ウクライナ中部、ポルタワ州にあるJT、日本たばこ産業の工場などを攻撃したと発表しています。飯塚さん、どうご覧になりますか?
そうですね、これ、しかも1回じゃなくて、もう2回攻撃されているわけですね。つまり逆に言うと、もう本当にターゲットとして狙われているということだと思うんですね。
これは松田さんにお尋ねしたいんですが、このJTがウクライナにずっと工場を持ち続けている理由、やはりタバコという産業の拠点として、ウクライナは非常に今後も有望だという、そういう経済的な見解が強いんですか? それと、もう少し日本とウクライナとの関係とか、支援の意味もあるとか、そういうどういう理由でずっと工場を持ち続けるんでしょうか?
開戦前から40社ぐらい進出している日本の企業、開戦後もウクライナから引いたところはどこもないんです。それは理由の一つは、雇用を維持すると。JTは、もっと言えばジャパン・タバコ・インターナショナルのウクライナ社ですけれども、ここはウクライナにおける日本の最大の投資先の一つであり、最もたくさん雇用を作っている会社の一つです。
そういう意味では、私はJTが意図的に狙われたかどうかまでは分かりませんが、相前後して、例えばコカ・コーラだとかマクドナルドとか、結構市民生活に近いものを作っている工場、あるいは倉庫が狙われていますので、さっき髙田さんがちょっとおっしゃいましたが、とにかく市民生活に対するある種の嫌がらせ、不自由感を作っていくということが、このような全く軍需産業と関係のない日本や欧米の企業が、そしてそこが持っている工場が狙われていることの背景にあるのかなと思います。
不幸にして2度攻撃されましたが、ジャパン・タバコの全従業員は無事ですので、そういう意味では本当に不幸中の幸いだったというふうに思っておりますけど。
はい。
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