緊急地震速報の警報を取り消し 気象庁が会見で説明した「M9.9」過大推定の経緯

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概要

2026年10月16日12時40分頃、気象庁は北海道から中部地方にかけて緊急地震速報(警報)を発表した。その後、強い揺れは観測されず、気象庁は発表を取り消した。同日午後に開かれた会見で、気象庁の担当者は、実際に起きたのはカムチャツカ半島付近を震源とするマグニチュード6.9の地震だったと説明した。速報の処理では震源を千島列島と決め、マグニチュードを9.9と過大に推定したという。担当者は冒頭で謝罪し、過大推定の原因は「現在調査中」と繰り返した。記者の質問の多くにも、その場では答えを示せなかった。

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何が起きたのか

担当者の説明によると、12時38分頃、カムチャツカ半島付近を震源とするM6.9の地震が実際に発生し、函館市で震度1を観測した。気象庁はこの地震を受け、12時40分に北海道から中部地方を対象に緊急地震速報の警報を発表した。この警報は、緊急地震速報の処理で震源を千島列島に決定し、マグニチュードを9.9と過大に推定した結果だという。

担当者は資料の図を示しながら、速報で推定した震源の位置(星印)と、その後の解析で求めた実際の震源(バツ印)を比べた。両者の距離について問われると、図のスケールから「400から500km」程度、資料の2点の緯度経度から計算すれば概ね450km前後だろうと答えた。正確な値は2点間の距離として改めて求める必要があるとも述べている。

担当者は今回の事態を、地震そのものは発生して緊急地震速報の処理は動いたが、その過程でマグニチュードを過大に評価したことが原因だと整理した。警報で予測した最大震度は7で、資料には地域ごとの予測震度が細かく載っていると説明した。

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取り消し(キャンセル報)の仕組みと8分の経緯

警報は12時40分に発表され、キャンセル報は12時48分に出た。取り消しに至った判断について、担当者は次のように述べた。緊急地震速報が出たあと、P波やS波がどれくらいの時間で到達するかを監視している。到達するはずの時間になっても実際に揺れがなかったことから、明らかに過大だと判断してキャンセルした。震源の深さが今回は約160kmで、この周辺は観測が少ない場所であることも踏まえたという。

会見の後半で、別の職員がキャンセル報の基準を補足した。警報を発表した後、最大震度が2以下だった場合や、地震以外の要因によるものと分かった場合に、警報に対するキャンセル報を出すことになっている。今回は最大震度2以下だったため、この基準に基づいてキャンセル報を発表したと説明した。読売新聞の記者が「S波のデータがそろって違うと分かったのか」と確認すると、担当者はそうではなく、震度が小さかったからだと答えた。

キャンセル報が出るまでに最速でも8分程度かかるのかという質問には、場所によると答えた。当日現場にいたという担当者は、波が明らかに来ているはずなのに揺れがない状態を確認し、確実だと判断した時点で出すと説明した。今回はそれが8分だったという。

過去の取り消しの例を問われると、最近では2026年3月7日8時12分に、緊急地震速報の「予報」をキャンセルしたのが最新だと答えた。「警報」の取り消しは今回が初めてだという。過去の取り消しの総回数は、その場では分からないとした。

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原因の見通し:サイバー攻撃、落雷、ハードウェア

原因として何が想定できるのか、いつ頃発表できるのかという幹事社の質問に、担当者は職員総出で調査している最中であり、時期は言えないと答えた。

NHKの記者はサイバー攻撃の可能性を尋ねた。担当者は、システムに攻撃があったという情報は得ていないと答え、記者が念を押すと「ないです」と述べた。ただし、なぜないと言えるのかの詳細はシステム担当から聞いている話であり、自分からは詳しく説明できないとした。

日本テレビの記者は過去の例を挙げた。別の場所でほぼ同時刻に小さな地震が起き、それが過大な速報につながったケースがあったとして、その可能性を尋ねた。担当者は調査中なので、その際に答えたいとした。落雷が原因だった過去の例について問われると、落雷の心配はないと思うと答えている。

ニッポン放送の記者は、13年前に関西で起きた過大予想では中継局の光受信装置の障害が原因だったと聞いているとして、今回はハードウェアとソフトウェアのどちらに起因するのか絞り込めているかを尋ねた。担当者は、現時点ではハードウェアではなく処理の方だと考えていると答えた。プログラムなどかと重ねて問われると、どこが原因かは今調べているところだとした。

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「誤報」なのか「過大評価」なのか

テレビ朝日の記者は、今回は誤報というより、地震は起きていたが評価を誤ったものかと確認した。担当者は、マグニチュードを実際より過大に評価した結果だと見ていると答えた。予測が実際を下回るケースも含めた的中率の数値は、手元にないので改めて知らせるとした。

これに対し日本テレビの記者は、最大震度7程度を予測して実際は震度1だった以上、多くの人は誤報と受け止めているのではないかと質問した。担当者は、誤報かどうかは受け止め方の問題だとしたうえで、今回はちょうど昼時でもあり、大変多くの人に迷惑をかけたことを真摯に受け止めると述べた。再発防止と技術的な改善を進めたいとして、改めて謝罪した。

同じ記者は、キャンセル報が出た際にも多くの人のスマートフォンが警報音とともに鳴ったと指摘し、取り消しの際は鳴らさないような改善を考えているかを尋ねた。担当者は、現時点では検討していないと答えた。緊急地震速報の提供を始めた20年ほど前からその仕様で動いているという。必要に応じて検討すべきかもしれないが、今の段階では何も言えないとした。

18:40

M9.9という数字について

テレビ朝日の記者は、当初の「9.9程度以上」という評価が想定上の最大値なのか、それ以上の数値は出ないのかを尋ねた。担当者は確認中としつつ、外向けの情報では少なくとも9.9を最大として出す仕様になっていると説明した。内部でどう処理していたかは調査中で、外向けには9.9という形で出るという。

フジテレビの記者は、9.9が過大だとどのようなプロセスで分かったのかを尋ねた。担当者は二つの点を挙げた。一つは、知られている最大の地震の規模がM9.5であり、9.9は地震学的に「なかなか厳しい値」だという点。もう一つは、緊急地震速報では主要な揺れがいつ来るかが分かるため、その時点で揺れがなければ計算がおかしいと分かるという点である。では、9.9という明らかにおかしな数字を出す時点で止められないのかという追加の質問には、どのような処理になっているかも含めて調べると答えるにとどめた。

20:58

発表履歴に見えるマグニチュードの急上昇

記者の関心は、資料の「緊急地震速報の発表履歴」にも向いた。担当者は、緊急地震速報は最初に予報として出て、計算を繰り返してマグニチュードが大きくなった際に警報になると説明した。表で黒いハッチ(赤枠)がかかった第17報と第19報が、警報として発表した部分だという。

日本テレビの記者は、第16報あたりまではM6〜7程度とある程度正確に予測できていたのに、それ以降急に過大になった点について、一般論としてどんなことが考えられるかを尋ねた。担当者はそこも含めて調査中で分からないと答えた。NHKの記者も、記録上は第15報の段階で7.3から9.9へ大きく上がっていると指摘し、そこで何かおかしなことが起きたという認識かを尋ねた。担当者は、出力の瞬間は職員が見ているわけではなく自動的に流れていくもので、その場でここまで冷静には見ていられないと説明した。今からデータを見て「おかしい」と言うのは結果論であり、その時にどのデータを使ってどう処理したかを見ないと分からないとして、事実しか伝えられないと述べた。

朝日新聞の記者は、過去の大規模な地震で予報・警報のマグニチュードが途中から大きくなっていくことは一般にあり得るのか、それとも途中から2程度上がる動き自体が異常なのかを尋ねた。担当者は一般論として、巨大な地震ほど地震活動が終わるまで数分かかり、その間マグニチュードを計算し続けてどんどん上がっていくことはあると答えた。ただ、それが1上がるのか2上がるのかは、どのような場所でどのようなメカニズムで起きたかによるとした。

23:56

観測点の少なさと「端っこ」の精度

朝日新聞の記者は、一般論として震源が深い地震では誤差が生じやすいのか、今回の深さが関係している可能性はあるのかを尋ねた。担当者は、はっきりしたことは言えないとしたうえで、一番効くのは観測点の数だと思うと述べた。地震波を検知する観測点が多いほど信頼性が上がるが、千島のような場所では観測点が遠く、精度はやはり落ちる。そういう面も多少はあると思われるという。

東京新聞の記者が、陸と比べて千島列島周辺の観測点数はどの程度違うのかを尋ねると、手元に資料がなく後日知らせると答えた。そのうえで、気象庁の観測点は北海道の根室あたりまでで、その先には気象庁の観測点を置いていないため、かなり離れていると言えると説明した。

産経新聞の記者は、資料に震源の深さ10kmとされた報があることを指摘し、観測点が少ない段階では深さを10kmと仮定して震度を推定する仕組みだったのではないかと確認した。職員は今回の件は確認中としつつ、一般に最初の時点で観測点が少ないときは、深さをある程度機械的に置いて予想する手法をとることはあると答えた。さらに記者が、国境に近くロシア側で地震が起きた場合には観測点を置けない限界があるのではと問うと、担当者は、北の端でも沖縄でも、端の方は観測の関係で精度が落ちる、そこは仕方ない部分があると述べた。

緊急地震速報の計算にはどの観測点を使っているのかという質問には、日本国内の観測点を使っており、気象庁の観測点と防災科学技術研究所の観測点を活用していると答えた。国外の研究機関の観測点は使っていないということになる。速報の仕組みについては、各観測点でP波を捉えて大きさを推定し、その後に続いて観測されるS波の情報も使いながら順次更新していくと説明した。今回のように規模の大きな地震では、波自体は捉えられているという。

日本テレビの記者は、東日本の海底に設置されたS-net(海底地震観測網)に異常があったという報告が防災科学技術研究所から入っているかを尋ねた。担当者は今のところ入っていないと答え、カムチャツカ方面の地震なので、そこに来る前にいろいろ分かってくるはずだと述べた。テレビ朝日の記者が過去の資料にある異常震域のような場所をどう評価しているかを尋ねると、モデル上でどうなっているかも含めて見なければならないとして、回答を保留した。

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地震そのものと津波の判断

テレビ朝日の記者は、2013年には南海トラフのような離れた地域の地震で同様の情報が出たことを挙げたうえで、今回の場所で起きた地震の規模はこの地域でよくあるものなのかを尋ねた。担当者は、昨年夏のカムチャツカの地震ではM8を超える地震があったとして、この場所は海溝沿いであり、M7程度の大きな地震はよくある場所だと説明した。

津波警報を出すかどうかの判断についても質問があった。担当者は、緊急地震速報が流れた後、震源の場所と規模の確定値が出てM6.9と分かったと述べた。実際の場所は遠く、深さも100何十kmあったことから、その段階で津波の心配はないと判断し、津波警報の運用には入らなかったという。

28:58

今後の説明と残された問い

原因の公表時期について、担当者は最後まで具体的な見通しを示さなかった。判明し次第速やかに知らせたいとし、改めて会見を開くかどうかは関係者と相談するとした。テレビ朝日の記者は、震度1程度の誤差ならともかく今回はかなり過大だったと指摘した。担当者は、その点は真摯に改善を進めると答えている。

会見の時点で答えが出ていない問いは多い。第15報から第17報にかけてマグニチュードがなぜ急に9.9へ跳ね上がったのか。外向けの上限である9.9の手前で、内部ではどのような値が計算されていたのか。出力の段階で明らかに異常な値を止める仕組みはあるのか。キャンセル報で警報音を鳴らす仕様を見直すのか。担当者は、原因は「処理の方」だと考えているとしつつ、詳細は調査結果を待つよう求め、改めて謝罪して会見を終えた。