人口451人の売木村で週4日開くパン屋 来日37年のフランス人店主の暮らしとパン作り

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概要

長野県の最南端に近い下伊那郡売木村には、金曜から月曜の週4日だけ開くパン屋がある。店主は来日37年目、63歳のフランス出身の男性だ。番組は、この店に村の外から客が集まる理由と、店主が日本で続けてきたパン作りへの思いを追っている。

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県内で2番目に人口が少ない村の小さなパン屋

売木村は信州の南の端に位置する村の一つで、人口は451人。県内77市町村のなかで2番目に人口が少ない。パン屋は村の道の駅の一角にある。

店にはベーコンやウィンナーを使った総菜パンが並び、客は次々と注文していく。ある客はハムとチーズの入ったパンがいちばん好きだと話し、初めて訪れた客は、立ち寄ったらおいしそうなパンがあったので買ってみようと思ったと語る。クリームパンについては、くどさがなく食べやすいという感想も聞かれた。

県境の村という土地柄から、隣接する愛知県や、ほど近い静岡県からも多くの客が訪れる。取材した日も、静岡県からわざわざ来た客の姿があった。

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店主ミショー・フィリップさん

パンを作っているのは、フランス出身のミショー・フィリップさん(63)。日本で暮らし始めて37年目になる。昨年3月に三重県から売木村へ移り住み、その2か月後から道の駅でパンの製造と販売を始めた。

フィリップさんは日本語で冗談を交えながら客とやりとりする。客から「頑張ってるよ」と声をかけられると、「じじなのに」と返す。今年1月には手術を受けて人工関節を入れたが、それでも「頑張ります」と店に立ち続けている。

地元の客にとっても、この店は貴重だ。ある客は、これまでパン屋に行くには1時間ほどかけて出かけなければならないことが多かったが、今は焼きたてのパンが食べられると話す。

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週末だけの営業から週4日へ、道の駅の来訪者も1割増

店は当初、週末だけの営業だったが、現在は金曜から月曜までの週4日に広げている。番組によると、フィリップさんが店を始める前と比べて道の駅を訪れる人はおよそ1割増え、観光客だけでなく地元の人の姿も目立つようになった。

人気のバゲットは早い時間に売り切れる。取材日も午前10時半には「完売」となった。すぐに焼き足しても、それもまたすぐになくなってしまう。フィリップさんは「困るんだよ」と言いながら、バゲットを3回焼くだけでは間に合わないとこぼしていた。

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フランスにはない、日本のパンの楽しさ

フィリップさんがパン作りを始めたのは37年前。現在はおよそ40種類のパンを扱い、多い日には500個を焼き上げる。

フィリップさんは日仏のパンの違いについて、フランスでは同じパンを30年、40年と作り続けても飽きられず、新商品はあまり出ないと説明する。それに比べて日本はパンの種類が豊富で、だから日本は楽しいと思ったという。

いちばんのおすすめは「あんバターフランス」だ。フランスではなかなか考えられないメニューだが、フィリップさんは「フランス人なのにこれは好き」と話す。試食したリポーターは、しっかりしたパン生地で噛むほどに小麦の風味が広がり、あんこの甘さとバターのコクを引き立てていると評した。

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モルディブでの出会いから日本へ

フィリップさんはもともとフランスで菓子作りなどを学び、22歳で世界各地にリゾートを展開するフランスの企業に就職した。仕事で世界中を渡り歩くなか、モルディブのホテルで働いていたときに、旅行で日本から訪れていた女性と出会う。

日本に来た理由を尋ねられると、フィリップさんは「奥さんの影響です。結婚しました」と答える。その女性との結婚をきっかけに、20代半ばで仕事を辞めて来日した。最初は名古屋のホテルで働きながらパン作りを学び、来日から9年後に三重県で初めて自分の店を開いた。

三重県の店は25年間続けたが、3年前に引退を決め、かつての従業員に店を譲った。その頃、売木村で暮らしていたフランス人の友人に誘われ、村への移住を決めたという。

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「仕事は忙しいけれどストレスは減った」

村での暮らしについてフィリップさんは、人も少なく、ゆっくりできてストレスがないことがいちばんだと話す。仕事は忙しいが、ストレスは減ったという。

現在、妻と娘は県外で暮らしており、村では一人暮らしだ。朝、村の人とあいさつを交わし、「元気ですか」と聞かれると「最高」と答える。仕事を終えて風呂に入るのが最高だと語る姿からは、田舎暮らしを楽しみながら好きなパン作りを続けている様子がうかがえる。

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気がかりな母のことと、日本で生きる決意

そんなフィリップさんにも気がかりがある。母親がまだフランスにいるため、いつかはフランスに帰らなければならなくなるかもしれないという。

それでもフィリップさんは「日本で死ぬわ」と話し、できる限りはパン作りを続けたいと語る。番組は、信州の小さな村でパン作りに愛情を注ぎ続けるフィリップさんの姿で締めくくられている。