救急クリニック院長の手取りは月15万円 埼玉・川越で見た救急医療の現場
日テレNEWS埼玉県川越市に、救急医療に特化した民間の医療機関「川越救急クリニック」がある。院長の手取りは月15万円ほどだという。患者は次々と搬送されてくるが、経営は赤字で人手も足りない。番組はこの院長に密着し、救急医療の現場が抱える問題を追った。
医師2人・看護師6人で救急搬送に対応
川越救急クリニックは、全国でも珍しい救急医療専門の民間医療機関だ。24時間救急車を受け入れ、夜間診療も行っている。多数の救急搬送を、医師2人と看護師6人で受け入れている。
背景には救急医の不足がある。番組によれば、救急医は全国で1万3000人が必要とされているが、実際には半数にも満たない。埼玉県は、人口に対する医師の数がおよそ40年にわたり全国最下位だという。
取材中にも、1台の救急車が到着して10分ほどで、外には2台の救急車が並んでいた。病院に着いても救急車の中で待ってもらうことがあり、多いときは5台ほど並ぶという。
「今日は無理です」と断られ続けた家族
午後11時すぎ、この日4件目の救急搬送で70代の女性が運ばれてきた。脳からの命令を伝える脊髄が炎症を起こし、排尿などが難しくなっていた。付き添いの娘は、救急を受け付けているはずの病院に電話しても「今日は無理です」と断られ続けたと話した。
上原院長はこの状況をこう説明する。24時間救急専門の医師がいる病院は数えるほどしかなく、ほかは各科の医師が交代で当直をしている。そのため、当直医の専門外の患者について救急の依頼が来ると、断ってしまうことがあるという。
大学病院への集中を見てクリニックを開設
上原院長は以前、埼玉県内の大学病院で救急医をしていた。当時困っていたのは、軽症の風邪から命に関わる重症の患者まで、すべてが大学病院に集まってしまうことだった。対応しきれない状況を見て、一人でも多くの患者を救おうとこのクリニックを立ち上げた。
救急部門はたいてい赤字
しかし経営は厳しい。院長によれば、ほとんどの病院で救急部門は赤字だ。夜に来るかどうかわからない患者のために、十分なスタッフをそろえて待機しなければならないからだという。
このクリニックでも、人件費と物価高による医療物資の値上がりが経営を圧迫している。昨年は赤字が1000万円を超えた。経費を徹底的に削り、人件費を抑えるために請求書の処理なども院長が自分で行っている。
院長自ら麻酔科のアルバイト
院長は自分の取り分も削っている。クリニックからの手取りは10万〜15万円ほどしかないといい、生活費を稼ぐために週2回、麻酔科医としてアルバイトをしている。
この日は働き始めて9時間たった午前0時前に、ようやく夕食をとった。赤字を抑えるため、看護師たちも協力している。しかし食べ始めて3分後に救急隊から受け入れ要請が入り、食事は中断した。食事中に呼ばれるのは「ほぼ毎日」だという。
運ばれてきたのは60代の女性だった。転倒した際にバッグの紐が首に絡まって圧迫され、呼吸が苦しくなったという。頭と首のCTを撮ったが、骨にも脳内にも異常はなかった。女性は、医師に大丈夫だと言われてほっとし、生きていてよかったと思ったと話した。
処置を終えるとすぐに次の要請が入った。その後も搬送が続き、院長は食事をとれないまま働いた。
63歳、2時間で起こされる夜
落ち着いたのは午前3時半だった。朝9時まで睡眠をとって次の対応に備える予定だったが、仮眠をとる院長室は一般的な院長室とはかなり違う様子だった。そしてわずか2時間後、再び受け入れ要請が入った。
上原院長は今年63歳になり、体への負担は小さくない。それでも受け入れる理由を院長はこう話す。断るのは簡単だが、本当に危ない状態なのか大したことがないのかは、医師が診なければわからない。その判断を救急隊に任せてしまっても仕方がない。
朝になり、夜勤の看護師が交代して帰っていく中、院長はそのまま勤務を続けた。医者がいないので仕方がないと言い、この日は10時まで働くという。
2040年に向けた課題
日本救急医学会によれば、長時間労働になりやすい救急医の人手不足は、さまざまな地域で問題になっている。救急医療の課題に取り組む医師は、病院はどこも努力しているが、それも限界に来ているのではないかと話す。高齢者人口が最も増えるのは2040年とされており、それに向けて社会全体で対策を考えなければ、救急医療の明るい未来は描けないという。
今年6月には、物価高への対応や医療従事者の賃上げなどのために診療報酬が手厚くなるよう改定された。それでも、救急医療を取り巻く課題はまだ数多く残っていると番組は伝えている。
埼玉県にある救急クリニックの院長なんですが、手取りは月15万円ほどだと言います。次々と患者が搬送されてくる中、救急医療の現場は経営難と人手不足で過酷な状況になっていました。
埼玉県川越市にある川越救急クリニック。全国でも珍しい救急医療に特化した民間の医療機関だ。年間、救急搬送。ここでは医師2人、看護師6人で対応している。
ちょっと触るぞ。
パパの声聞かせて。パパいるよ。パパいる。
消毒する。ありがとう。いい子だ。
そんな救急医療の現場で今、深刻な問題となっているのが救急医不足だ。救急医は全国で1万3000人が必要とされているのに対し、実際には半数も満たしていない。埼玉県は人口に対する医師の数がおよそ40年にわたり全国最下位。
先ほど救急車が到着して10分ほどでしょうか。外にはもう救急車2台並んでますね。病院に来てもちょっと待ってしまうことも。
あります、あります。はい。救急車の中で待たせるとかね。最高何台になるんだっけ? 5台ぐらいだっけ?
救急患者が押し寄せる多忙な医療現場。
しているにもかかわらず、去年大赤字出したんで、1000万超えましたね。
赤字が。
はい。
崩壊の危機に直面していた。
今日はね、生活費を稼ぐためのバイトです。
バイトですか?
バイトです。
過酷な現場で奮闘する救急医を追跡した。
24時間、救急車を受け入れているほか、夜間診療にも対応する川越救急クリニック。午後11時12分。この日4件目の救急搬送。運ばれたのは70代の女性。
いっぱいたまってんな。
脳からの命令を伝える脊髄が炎症を起こし、排尿などが困難になっていた。付き添いで来ていた娘さんに話を聞くと。
電話で探しても、今日は無理です、今日は無理ですって言って、ずっと。
それは救急があるところですか? それとも。
そうです。救急があるところです。
救急医療の現状を上原院長は。
そこも分かんないんですよ。救急の専門っていうのが24時間っていう病院は、多分数えるぐらいしかないんですよ。あとはみんなで当直医が交代でやってんですよ。
なるほど。
だから今日の当直医は内科の先生です、今日の当直医は耳鼻科の先生ですとかね。
自分の専門外のことって、救急の依頼が来ると断ってしまうってことですか?
はい。
かつては埼玉県の大学病院で救急医をしていた上原院長。
大学の救命センターで困ってたことが、軽症の風邪ひきさんから超重症、死にかけてる人まで全部大学病院に来てた。
大学病院に救急患者が集中し、対応しきれない状況を目の当たりに。1人でも多くの患者を救うためのクリニックを立ち上げた。しかし、大きな問題が。
大抵の病院で、その救急部門って赤字なんですよ。結局、人件費ですよね。夜、来るか来ないか分からない患者さんを、十分なスタッフをそろえて待っとくわけですよ。
近年のクリニックでも、人件費と物価高による医療物資の高騰が経営を圧迫しているという。
去年大赤字出したんで、1000万超えましたね。
赤字が。
はい。
徹底した経費の削減を行い、人件費を抑えるため、請求書の処理なども院長自ら行っている。さらに。
今日はね、生活費を稼ぐためのバイトです。今、僕、自分のとこから手取りで10万、15万ないくらいしかもらってないので。
院長自ら取り分を削減。週に2度、麻酔科医としてアルバイトをしているという。午前0時前。この日働き始めて9時間。
いただきます。
救急対応の合間を縫っての夕食は、節約も兼ねて自炊。赤字を抑えるため、看護師たちも協力してくれている。すると、食べ始めて3分後。
救急クリニックです。
うん。
救急隊から受け入れ要請が。
はい。じゃあ行きましょう。
食事は中断。
こういうふうに食事中に電話かかってきて呼ばれるってことは、普通にあることですか?
ほぼ毎日ですよ。
運ばれてきたのは60代の女性。転倒した際、バッグのひもが絡まり首を圧迫。呼吸困難に陥ったという。
頭と首、両方CT撮ったけど、特に骨だとかそういうのは大丈夫。頭の中も出血とかなかった。
先生が大丈夫ですよって言ってくださって、なんかほっとはしたし、生きててよかったって思った。
処置が終わるとすぐに次の受け入れ要請が。
はい、15分ぐらい。了解です。
その後も救急搬送が相次ぎ、食事もできなかった上原院長。落ち着きを見せたのは午前3時半。
今日は寝るぞ。寝るぞ。寝るぞ。寝るぞ。どう?
ここから朝9時まで睡眠を取り、再び救急対応に備えるという。
ここは院長室。
ここ院長室ですか? ちょっと想像してる院長室とは少し違うような感じはするんですけど。
おやすみなさい。電気消すよ。よし。
そのわずか2時間後。
はい。はい。ちょっとお待ちください。
再び受け入れ要請が。
上原院長は今年で63歳。体への負担も決して小さくない。
断るの簡単なんですけど、その病態って医者の目で見ないと、本当にやばいのか、別にそんなに大したことないのかって分かんないじゃない。だから、それを救急隊に丸投げしてもしょうがないんで。
夜間勤務を終えた看護師が交代する中。
じゃあ、さよなら。お疲れさま。
続行で。
人いねえもん。医者がいねえからしょうがないんだよ。
じゃあ、今から何時まで?
10時まで。
10時まで。
うん。
赤字経営に救急医不足。厳しい状況が続いている。日本救急医学会によると、長時間労働の傾向にある救急医の人手不足は、さまざまな地域で問題になっているという。救急医療の課題解決に取り組む医師は。
病院の努力はもう皆さんどこもしてるかと思うんですけど、それも限界に来てるんじゃないかなと。高齢者人口が一番増えるのが2040年って言われてますので、そこに向けて世の中の対策を考えていかなければ、明るい救急医療の未来っていうのはちょっと描けないかなと思いますね。
今年6月、物価高騰への対応や医療従事者の賃上げなどのために、診療報酬を手厚く評価する仕組みが改定されたが、救急医療を取り巻く課題はまだまだ山積みだ。
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