錦織圭の引退イベントでフェデラー、国枝慎吾、ゴードン・リードが語った錦織の功績

YouTubeで開く ↗
概要

10月11日、東京・有明コロシアムで「UNIQLO LifeWear Day Tokyo 2026 with Kei Nishikori」が開かれた。現役を退いたばかりの錦織圭に、ロジャー・フェデラー、国枝慎吾、ゴードン・リードが加わり、エキシビションマッチを行った。イベント後の会見では、錦織が引退直後の心境と、これからテニスから少し離れて自分と向き合いたいという考えを話した。他の3人は、錦織がテニス界に何を残したのかをそれぞれの立場から語った。質疑ではフェデラー自身の引退の受け止め方、錦織との対戦の記憶、錦織の今後への助言にも話が及んだ。

11分で読めます
0:06

引退から1週間、錦織が感じていること

最初に感想を求められた錦織は、「ありがたかった」という気持ちが一番だと答えた。大勢の観客と、並んで座る仲間たちと楽しい時間を過ごせたことが本当に幸せだったという。引退してまだ1週間なので、またコートに出ていくのは早いかもしれないという恥ずかしさもあった。それでも最高の時間だったと振り返った。

引退の実感があるかと聞かれると、この1週間は「スイーツを2個食べたり」と、アスリートとしてはあり得ない生活をしてきたと笑った。そのおかげで、引退したという気持ちになんとなく実感が出てきているという。

1:40

国枝慎吾とゴードン・リードの感想

国枝は、錦織の引退イベントに関われたことを光栄で嬉しいと述べた。フェデラーが日本に来てくれたこと、長年戦ってきたゴードン・リードと再びシングルスで試合ができたことも嬉しかったという。錦織にこれまでの思いと感謝を伝えられたと思う、とも話した。

リードは、日本のテニス界のレジェンドである錦織のイベントに招かれたことを、自分にとって大きな意味があったと述べた。3人と一緒にプレーできたことも嬉しかったという。過去には国枝とかなりの激戦を重ねてきたが、今回はとても楽しかったと語った。そのうえで「1回で十分なので、ずっと引退したままでいてください」と冗談を飛ばした。国枝は「1セットもやっていないくらいで腰がだいぶ痛い。現状は理解しています」と応じた。

3:45

フェデラー「悲しむことではなく、祝うこと」

フェデラーはまず、錦織のプレーについて「引退している割にはすごかった。本当にうまかった」と評した。そのうえで、引退したばかりの週に、祝いの場に来られたことが嬉しいと述べた。

フェデラーが強調したのは、この引退を悲しみや寂しさではなく、前向きに受け止めてほしいということだった。錦織自身もそう思ってくれているといいとし、ファンやユニクロが祝ってくれたこと、錦織とともに戦ってきたことの良い面を見てほしいと話した。引退は人生で一度きりの「卒業」であり、錦織はテニスに全力を尽くしてきた。そこから一歩離れ、こうした特別な形で卒業することは誇りに思っていいと語った。それを直接伝えられて嬉しいと述べ、祝福の言葉で締めくくった。

5:09

初めて同じ側に立ったダブルス

この日、フェデラーは錦織とダブルスを組んだ。感想を聞かれると、「良かった」と答えた。現役時代に組めていれば良かったが、その考えを一度も持たなかったことが残念だという。当時はダブルスをあまりプレーしていなかった。自分たちの「弱い体」を守るために、シングルスに専念していたからだと説明した。

今回は初めて、対戦相手としてではなくコートの同じ側に立った。それがとても楽しかったという。過去の錦織との対戦については、オリンピックでの試合にも触れ、良い試合ができたと記憶していると話した。シングルスの対戦は良い記憶ばかりで、厳しい試合もあり、何度も錦織に負けたとも語った。今はコートでプレーする機会も少なくなったので、同じサイドでプレーできたことが本当に嬉しかったという。国枝とリードが来てくれたことにも感謝した。

錦織も、同じサイドに立つのはとても新鮮だったと話した。フェデラーのフォームや、横から見ても綺麗なストロークには見惚れる部分がたくさんあり、間近で見られて楽しかったという。

7:58

「全然やり切ってはない」――錦織の本音

代表質問では、引退セレモニーを終えてやり切ったと感じているかを問われた。錦織は「全然やり切ってはない」と率直に答えた。やり切ったと思わなければいけない部分もある。ただ、最後は体も気持ちも持たなかった。もう少し自分の納得できるプレーをしたうえで終われていたら、もっと納得できていたと思う、と語った。

そのうえで、そこはもうどうしようもないと区切りをつけた。今後はゆっくり時間を過ごし、テニスから少し離れて気持ちを整理したいという。何をしたいのか、何ができるのかを探しながら、ゆっくり自分と向き合っていきたいと述べた。

8:59

3人が語る錦織の功績

続いて、錦織がテニス界に残した功績について3人に質問が向けられた。

国枝は、錦織のプレーが大好きだと語った。テニスを見ていて「この選手は面白い」と思える選手は実は限られている。自分にとってそれはフェデラーであり、錦織だったという。この2人は自分のテニスを好きな気持ちをさらに強くしてくれた存在で、その2人と同じ場にいられることが嬉しいと述べた。この日は「青春ですね」という思いで1日を過ごしたという。

フェデラーは、錦織が残したものはバックハンドの素晴らしさやスピードといったプレー面だけではないと述べた。国枝の発言にも触れながら、錦織の人格を挙げた。見ているだけでエキサイティングで、対戦相手としても嬉しかったという。ツアーでもマジカルなタッチを持つ選手は本当に数少なく、錦織はその1人だったと評した。これほどの選手がいなくなるのは少し寂しい。それでも時間は誰にとっても過ぎていくもので、残念ではあるが祝うべきことだと考えている、と語った。そして、錦織のプロフェッショナリズムや物事への向き合い方、コートにもたらしたフェアな精神を心から尊敬しており、人としても尊敬していると述べた。

リードは、トーナメントで戦っている間は常に戦闘モードなので、全体像がなかなか見えないと話した。一歩引いて見ると、錦織は日本、さらには世界の多くの若い人たちにとってテニスのインスピレーションだったと思うという。トロフィーやショットの面でも素晴らしい業績であり、これからの人生を楽しんでほしいと語った。

リードはさらに一言付け加えた。日本を代表するのがどういう気持ちかは自分には分からない。そう前置きしたうえで、自分の国は日本より10倍以上小さいが、オリンピックチャンピオンなどテニスで名を残した人たちがいる、と比較した。そのうえで錦織は、それまで日本選手がいなかったトップ40、トップ30、トップ20という「天井」を破らなければならず、実際に壁を破ってきたと述べた。それには大きな力が必要で、錦織は前人未踏の地にたどり着いた。リードは、そこに錦織のキャリアがいかに特別だったかが表れていると語った。

14:04

錦織が語る3人の存在

代表質問の最後に、錦織は両脇に座る3人から受けた刺激について答えた。

国枝については、日本のテニス界を引っ張ってきた存在で、自分よりずっと先に行ってしまっていると話した。メンタルの強さが話題になるなど、学ぶところがたくさんあったという。同じNTC(ナショナルトレーニングセンター)で練習していたとき、国枝の練習は「めちゃくちゃすごい」と語り、その姿を見て自分ももっと頑張らなければと思えた、身近な存在だったと振り返った。

フェデラーは、錦織が最初に好きになった選手だった。自分のアイドルを目指しながら、そのアイドルに勝たなければいけないと思わなければならないのはとても大変だったという。その試練を与えてくれたのがフェデラーであり、「他の3人」だった。彼らが大きな壁になってくれたことは、自分にとっても他の若い選手にとっても大きかったと述べた。

リードについては、遠くから駆けつけてくれたことに触れた。ずっとトップで戦ってきた同じテニス選手として、メンタルの持ち方や辛さを分かち合える存在だという。同じユニクロのメンバーとして3人が来てくれたことは本当に幸せで、特にフェデラーとリードは遠方から来てくれたので感謝しなければと述べた。最後は、3人がずっと褒めてくれるので「今日だけはすごくゆっくり寝られそう」と話し、会場を和ませた。

17:10

フェデラーが振り返る自身の引退

一般質疑では、フェデラーに自身の引退の過程について質問があった。負けた後もチャレンジャーとしてプレーしていたが、レーバーカップの頃から徐々に引退を受け入れていったのか、という趣旨である。

フェデラーは、自分の場合は怪我もあり、キャリアの後半で引退に向けて徐々に気持ちを緩めていったと答えた。突然崖から落ちるような形ではなかったという。「これで終わるんだな」と思いながらも、もう少し頑張ろうという時期があった。そのため、引退したときにはほっとした部分もあったと語った。体を追い込むハードなトレーニングをしなくてよくなった。体調が良くないのに、なぜ負けたのかをメディアに説明しなくてもよくなった。負けた理由を怪我のせいにしたくない気持ちもあり、キャリア後半の状態を考えると、引退には安堵があったという。

一方で、引退後にやりたいこともたくさんあったため、スケジュールをしっかり計画して守ろうとした。ところが現役時代、多くの人に「引退したら時間があるから連絡して」と言ってしまっていた。そのせいで引退後にメールがたくさん届き、かえって自分の首を絞めることになったと笑った。ただ、そうした時期にもボールを打ち、子どもの頃に戻ってテニスとは何だったかを思い出すように、テニスと関わり続けることはおそらく大事なのだろうと話した。

19:43

錦織との対戦の記憶

続く質問では、フェデラーと錦織の対戦に話が及んだ。質問者によれば、2人は11回対戦し、そのうち3回がATPファイナルで、フェデラーが2勝、錦織が1勝している。

フェデラーは「2回勝ったと言ってくれてありがとう」と応じた。覚えているのは負けた試合ばかりで、ATPファイナルで勝ったことは覚えていなかったという。負けたほうが悔しくて記憶に残るのだと話した。たくさん対戦しすぎて細部は忘れたが、ATPファイナルで対戦したのは間違いないとした。

そのうえでフェデラーは、錦織はクレーでもグラスでも、インドアでもアウトドアでも素晴らしい選手だったと述べた。錦織は危険を伴う相手なので、対戦するときはしっかり準備しなければならなかったという。ウィンブルドン、全豪オープン、ATPファイナル、マドリードなど、大きなコートで多くの戦いを繰り広げてきた。錦織のおかげで本当に追い詰められ、それによって頑張れた、とフェデラーは語った。

21:51

フェデラーから見たテニスの時代と車いすテニス

次の質問は、ライバルたちとの時代や、パラリンピック・車いすテニスを含め、テニスの広がりを内側からどう見てきたかを問うものだった。

フェデラーは、自分がツアーでプレーし始めたのはサンプラスとアガシのキャリアの最後の頃だったと振り返った。アガシとは10回ほど、サンプラスとは1回だけ対戦したという。当時は多くの人が「次は誰が上がってくるのか」と話していた。その後、ナダル、ジョコビッチ、そしてシナーやアルカラスが出てきた。先のことは分からないことが多かったが、自分はトップに立ったと語った。ジョコビッチやナダルらとも戦い、錦織、ラオニッチ、ワウリンカ、デルポトロといった有能な選手たちも出てきた。それはとても良いことで、本当に良い時代だったと思うという。

フェデラーは、自分も観客を増やすことに貢献できていたら、多くの子どもたちがテニスを見るようになっていたら嬉しいと述べた。テニスは職業にもなり、日常的にも楽しめるスポーツだという。長生きのためにジムへ行く人もいるが、テニスもそうしたトレンドの1つになればいいと話した。

車いすテニスについては、大きく拡大していると述べた。15年ほど前から、グランドスラムの2週目になると車いすテニスの選手たちもロッカールームに来るようになり、一緒に話すようになったという。ロッカールームも活気づき、大きなコートで試合が行われるようにもなった。フェデラーはこれをテニスの発展として語り、今後も視野が広がっていけばいいと述べた。

25:03

錦織の今後へのフェデラーの助言

最後の質問では、錦織が休養後に「面白いことをしたい」と話していることを受け、フェデラーにどんなことをしてほしいかが問われた。フェデラーは「見出しに良さそうな質問ですね」と応じた。錦織に「何をすればいいかな?」と振り、困っている様子だと笑わせた。

そのうえでフェデラーは、錦織は自分と同じようにテニスを愛していると思うので、何らかの形でテニスに携わってほしいと答えた。解説者でも、コーチでも、テニスアカデミーでも、テニス協会でもいい。とにかく何らかの形で「黄色いテニスボール」と関わるものであってほしいという。それがサイドジョブでも構わないが、テニス界には必ず関わってほしいと話した。錦織は日本にとって、またアジア全体にとっても大きなインスピレーションだったからだ、とその理由を述べた。

さらに、少し先輩として助言するなら、時間を取って、世界にはテニス以外にもいろいろなものがあることを見てほしいと語った。今は分からないかもしれないが、新しい人と出会い、学び、耳を傾け、オープンな心を持って世界を広げていってほしい。フェデラーはそう錦織に呼びかけた。