不登校の声をラップで届ける 「マイクラおかん」が開いた不登校ラップライブの舞台裏

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概要

今年9月、横浜市で「不登校ラップライブ」というイベントが開かれた。主催したのは、息子の不登校をきっかけにラップを始めた「マイクラおかん」こと下﨑真世さん(51)である。番組はライブの2週間前から本番までを追い、不登校を経験した出演者たちがそれぞれの体験をどう言葉にし、今悩んでいる子どもや家族に何を伝えようとしたのかを取材した。

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息子の不登校から始まったラップ

下﨑さんの息子が学校に行かなくなったのは、小学校に上がる頃だった。当時、下﨑さんは母親としてどうしていいのか分からず悩んだという。そんな時、自分の思いをラップで表現するコンテストがあることを知った。

下﨑さんは挑戦した理由について、自分もチャレンジできる大人だということを伝え、背中を見せたいという思いがあったと語る。そして「私のチャレンジする場はこのラップコンテストだ」と思ったのだという。名前は息子の好きなゲームから取り、「マイクラおかん」としてコンテストに出場した。母としての葛藤をラップで表現して賞を受け、ラッパーとしての活動を始めた。その後は自らラップコンテストを主催するなど、精力的に活動を続けてきた。

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なぜ「不登校」をテーマにしたのか

今回のライブは、不登校などの当事者や家族が参加するイベントの中で開かれた。テーマは「不登校で見つけたこと」である。

準備を進める下﨑さんは、35万4000人もの不登校の子どもがいるのに、いつまでマイノリティ扱いされるのだろうと感じると話す。だからこそ、まずは当事者の声と家族の声を聞いてもらいたいという。下﨑さんは、枠からこぼれてしまう言葉を出せる場がやはり必要だと考えた。こぼれ落ちる当事者の声を多くの人に届けるため、不登校についての思いをラップで表現する出演者を募集し、不登校経験者など3組の出演が決まった。

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ガールズトークさん 「弱さも強さも愛してる」

応募した出演者の一組が、2人組のラップユニット「Saint ack kids」だ。メンバーのガールズトークさんは、働きながら音楽活動を続けている。幼い頃から自分の気持ちを表現するのが苦手で、小学生の頃には不登校を繰り返していたという。

当時の心境について、ガールズトークさんは、学校に行くだけで、外に出たら一歩ごとに吐くような状態で、どうやって生きていっていいのか分からなかったと振り返る。どうやって大人になるのか、何歳まで生きるのだろうと思うほどだったという。20歳頃までは引きこもりがちだった。

歌詞の最後、16小節目には「弱さも強さも愛してる」というフレーズを入れた。引きこもりや弱い自分も否定するのではなく、それも本当の自分だから向き合い、受け入れてあげる。その点を歌詞で強調したかったと説明する。弱さも含めてありのままの自分を受け入れてほしい、というのが、今悩む子どもたちに伝えたいメッセージだという。

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ポケットの中さん 「綺麗事を愛そう」

相方のポケットの中さんは、普段はフリースクールで働いている。不登校などの子どもたちと接する中で感じた思いを歌詞にした。

ポケットの中さんが気に入っているのは「綺麗事を愛そう」というフレーズだ。子どもたちと話していると、親や先生が「大丈夫だよ」と優しい言葉をかけても、「それは綺麗事じゃん」という話がよく出るという。それに対してポケットの中さんは、綺麗事は綺麗事でありなのだと考え、親や先生からの優しい言葉も一度受け取ってみてもいいのではないか、という思いを込めた。

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D-EGOさん 初めてのステージと書き直した歌詞

出演者の中には、初めてステージに立つ人もいた。20歳の大学生、D-EGOさんである。ラップは1年ほど前から始めたが、人前でライブをしたことはなかった。人前に立つと足がガクガクするほど緊張するタイプで、人前で何かをすることをこれまで避けてきたという。今回は胸を張ってステージに立ち、自分自身も自信を持てるようになりたいと話していた。

D-EGOさんは中学校の3年間、不登校だった。もともと考えすぎてしまう性格もあり、入学前から心が疲れてしまっていたという。進学による環境の変化で周りの視線が気になり、学校に行けなくなった。

歌詞づくりでは試行錯誤があった。最初は不登校の苦しかった部分や生きづらかった部分をかなり生々しく書いていたが、自分自身が辛くなってしまったという。今不登校で悩む人に前を向いてほしいと考えた末、歌詞を変えた。「人生まだまだ」「大丈夫。全然大丈夫」といった言葉に、これから変えられるという気持ちを込めたと話す。下を向いて歩き、暗いことばかり考えていた時期は前に進めなかったという自身の経験から、とにかくチャレンジしてほしいという気持ちがあるという。

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本番当日のステージ

当日の会場には、不登校などの当事者やその家族も訪れた。開演前、出演者からは、聞いてくれた子どもや家族の気持ちが少しでも楽になればうれしい、一歩踏み出す勇気や、一人で抱え込まないでほしいということを伝えられたら、という声が聞かれた。

ライブの口火を切ったのは、下﨑さんと、不登校の子どもを持つ母親らで結成したグループだった。学校に行くか行かないか、他人の物差しは関係ない、悩むことじゃない、胸を張って自分のペースで行こう、といった趣旨のリリックを披露し、会場は大きな歓声に包まれた。

舞台裏では緊張した様子のD-EGOさんの姿があった。名前を呼ばれて始まった初ステージでは、不登校だった3年間の経験と、将来への不安を抱えていた頃の思いをラップに乗せた。そして、今辛い人に向けて、失敗しても後悔しても、今から変えれば問題ない、人生まだまだこれからだ、という言葉を届けた。胸を張ってやり切ったD-EGOさんは、お客さんが音に乗ってくれたことが支えになったと話し、自分の言葉が誰かの心に届いていたらいいと語った。

続いてSaint ack kidsの2人が登場した。ガールズトークさんは、頭痛など体に出やすい不調、ほっとできるのはトイレの中だけだったこと、緊張と不安、冷や汗といった、外に出るのが怖かった過去を歌った。そのうえで、今も引きこもりがちでも、だからこそ歌詞に味が出ると自分を肯定し、「弱さも強さも愛してる」と締めくくった。ポケットの中さんは、こんな世の中だからこそ綺麗事を愛そう、大人には分からない子ども部屋の哲学がある、と歌った。

ステージを終えた2人は、みんなに届けながら自分自身にも届けているような感覚があって面白かったこと、子どもたちも来ていて真剣に聞いてくれ、目が合う場面もあってよかったことを振り返った。観客からは、学校に行かないからといっても他にも選択肢があると知って元気づけられた、という感想が聞かれた。

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下﨑さんがこれから考えたいこと

イベントをやり遂げた下﨑さんは、不登校関連のイベントで「かわいそう」と思われるのが嫌だったと明かす。そのうえで、それぞれの人が自分の気持ちを言える、言いやすい場をこれからも考えていきたいと話した。