「老後2000万円」はあくまで試算 50代が自分で老後資金を計算するための考え方

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概要

日本テレビ経済部長の大野伸氏が、50代の視点から経済を語る新シリーズ「大野部長のオトナ経済論」の初回である。聞き手は、3人の子どもを育てながら経済部で記者をしている山田舞子氏が務める。テーマは、かつて話題になった「老後2000万円問題」が今も目安になるのかという点だ。大野氏の答えは、役所の試算はあくまで試算であり、必要な老後資金は自分のライフプランから自分で計算するしかない、というものである。

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団塊ジュニア世代の「お金の三重苦」

大野氏は53歳で、自身をいわゆる団塊ジュニア世代と位置づける。人口が多いので受験は競争が激しく、就職活動は超氷河期と呼ばれた時代だった。会社に入ってからも、さまざまな改革や成果主義の中を生きてきた世代だと振り返る。経済部の現場記者、デスク、解説、部長と歩んできたが、それ以外の部署も含めると、会社人生30年のうち26年ほどはお金に関わる仕事をしてきたという。

その大野氏によれば、50代男性は「不安しかない」。よく言われる「お金の三重苦」として、自分や親の介護・老後の費用、子どもの教育費、住宅ローンの三つを挙げ、これを同時に抱えている人が多いと見る。残りの会社人生も見えてくる年代で、まだ先だと思っていてもあっという間に迫ってくる、というのが大野氏の実感である。

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父親にエンディングノートを頼んで怒られた話

家族の間でもお金の話がしにくいことを示す例として、大野氏は自分の体験を話した。すでに引退している父親の貯金がどこにどれだけあるのか、保険はどこに入っているのか、大野氏は何も知らなかった。そこで父親に「そろそろエンディングノートを書いておいてくれないか」と頼んだところ、父親は怒り、「俺に早く死んでほしいのか」と言われた。そうではない、先のことは分からないからだと説明すると、今度は「なぜ俺の遺産を気にしているのか」と言われたという。

大野氏はこの経験から、家族でもお金のことは口に出しにくく、人に言えないがどうしたらいいか分からないという悩みを抱えているのが50代なのではないかと述べた。山田氏は、親の世代は特にそうかもしれないと応じている。

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2000万円は試算の前提ごと読む必要がある

山田氏は、2000万円を貯めておけばよいのかと尋ねた。大野氏はこれをはっきり否定する。この数字は金融庁が2019年にまとめた金融審議会市場ワーキング・グループの報告書に出てくるもので、高齢社会での資産形成・管理の課題を整理した分厚いリポートの中の一つの試算にすぎない、と大野氏は説明する。山田氏は、コロナ以前のかなり前の資料だと付け加えた。

試算の前提は、夫婦2人で暮らし、年金収入が月20万9000円、生活費が月26万3000円というものだ。毎月5万4000円が足りず、老後が30年あると合計で約2000万円不足する、という計算である。さらに、持ち家でローンを完済していること、健康であること、物価がそれほど上がっていない時代であることも前提になっていると大野氏は指摘する。

物価が上がり続け、健康でいられる保証もない今、この前提は「もう破綻している」と山田氏は言う。持ち家でローンを完済して健康でいるという条件については、2人は冗談まじりに「前世でだいぶ徳を積んだ方」の話だと評し、これ以上ない願いだと述べている。

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前提に当てはまらない人が増えている

大野氏は、自分の世代そのものがこのモデルから外れやすいと見る。団塊ジュニアの時代は不景気で正規雇用に就けなかった人が多く、正規雇用でも退職金のない会社がある。山田氏は、自分も含めて周りで高齢出産が増えていると話し、子どもが自立している前提も崩れつつあると述べた。単身者の存在や、働き方が多様になって退職金の有無が変わってくる点も挙げている。大野氏も、自分の周りに独身の男性が何人もいるといい、そうした人たちが試算どおりになるとは思えないと語った。

ここで大野氏が「地上波ではなかなか言えないこと」として語ったのは、役所の試算はあくまで試算であり、数字が一人歩きしてはいけないということだ。テレビや新聞も、どういう前提の、どういう家庭の試算かはきちんと伝えている。それでも見出しだけが目立ってしまい、なかなか伝わらないことがあると大野氏は認める。

ほかにも、地方に住むか都市部に住むかで、同じ年齢で住宅ローンのない夫婦2人でもかかるお金は違う。何歳まで生きるかも予測できない。大野氏は、老後のお金が心配なのは「見えないから」だと言い、見えないものを無理に見ようとするのは難しいと述べる。

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まず「出ていくお金」をライフプランとして書き出す

では、どうすればよいのか。大野氏が勧めるのは、今後の人生のライフプランを考えることである。

例として、大野氏は山田氏に、いいお酒を飲み続けたいかと尋ねた。山田氏は飲み続けたいと答え、大野氏も同じだと言う。こうした望みには大きな個人差がある。ただし、飲み続けるつもりでも肝臓を悪くすれば別のお金がかかるかもしれない。分からないことばかりだが、とりあえずやりたいことを書き出すことが大事だというのが大野氏の考えだ。

車も例に挙がった。いらない人もいれば、地方では手放すのが現実的でない人もいる。買い替えは高いが、カーシェアにすれば車検代はかからなくなる。こうしたことを今の段階で書き出してみると、意外とお金はかかるものだと大野氏は言う。仕事だけでなく趣味やプライベートも含めて書き出し、そうして初めて自分に必要なお金の試算になる、というのが大野氏の主張である。

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自分だけで決められない支出:子ども、親、お墓

出ていくお金は自分の分だけでは済まない、と大野氏は続ける。子どもが結婚すれば親としてご祝儀を出さないわけにはいかない。豊かな時代の先輩には子どもに車を買ってあげる人もいたが、今はさすがに難しい金銭感覚の世代になっていると大野氏は見る。それでも、子どもが突然留学したいと言い出したらどうするか、といった子ども世代のことも一度考えておくべきだという。親が倒れたり介護が必要になったりした場合にいくらかかるかも同じである。

大野氏が実際に家族と議論したことがある話として挙げたのが、お墓の問題だ。高齢の世代には自宅のそばにお墓を持ちたがる人が多いが、子ども世代にとってはお墓参りが現実的に大変なこともある。納骨堂でよいのではないか、永代供養でよいのではないか。こうしたことは自分だけでは決められないと気づいた、と大野氏は語る。周りを巻き込んで考える必要があり、老後のお金が不安だと思い始めたときがすぐ動くときだという。

山田氏が「つまり、自分に必要なお金は自分で計算するしかない。若干身も蓋もない」とまとめると、大野氏はそれを認めた。自分のお金をどう使いたいかは自分にしか分からない。趣味に大金をかけないと生きがいがない人もいるし、年金生活になったからといって急に趣味をやめることはできない。大野氏は、お金はある意味で人間の欲望そのものだと言い、人生の価値観を試算することになるのだろうと述べた。

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「入ってくるお金」を確かめる:ねんきん定期便、退職金、3階建て

出ていくお金と並んで大事なのは、自分にどれだけ収入が入ってくるかだ。大野氏は、これが見えていない人は若い人だけでなく自分の世代にも意外と多いと見ている。

まず確認するものとして挙げたのが、誕生月に届く「ねんきん定期便」である。はがきのようなもので届くが、山田氏は「来たような、来てないような」と笑う。大野氏によれば、ねんきん定期便は50歳未満と50歳以上で見込み額の前提が違い、50歳以上ではより現実味のある見込み額が示される。これで、仕事をやめた後の基礎的な収入がおおよそ分かる。

次に大きいのが、会社からどれだけ受け取れるかである。最近は転職する人が多く、勤続年数で退職金が決まる会社では金額が少なくなることもあるので、個人で確認する必要があると大野氏は言う。企業独自の年金や401Kのように自分で管理する制度がある会社もある。大野氏は、国民年金という基礎部分の上に厚生年金などがあり、さらにその上に企業独自のものや積み立てがある「3階建て」の構造だと説明した。

これに加えて、個人で入っている年金保険、貯金、株や有価証券などの投資、さらには家賃収入まで丁寧に洗い出すと、老後に入ってくるお金が見えてくる。そうすれば、金融庁の2000万円のモデルケースに当てはまるのか、それ以上にかかるのかを計算できるようになる。逆に、地方で親の家に住むなどお金のかからない暮らし方をする人なら、今のお金で大丈夫だと分かるかもしれない、と大野氏は付け加えた。

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足りない場合:長く働く、年金の受け取り時期を考える

計算しても足りない場合はどうするか。大野氏はこれを「一番大変なケース」としたうえで、健康であることが前提だが、働き続けるのが一つの生き方になると述べた。高齢でも働き続けられる人は非常に増えている。

働き続けることを否定的に受け止める人が多いが、働き方はいろいろあると大野氏は言う。たとえば足りない5万円を補うために、マンションの清掃などで何日か働く。それが生きがいになったり、若さや健康の秘訣になったりする人もいる。来年定年なのにお金が足りないという場合に考えられる方法だという。

年金の受け取り時期についても触れた。大野氏の説明は言い直しを含んで混乱している部分があるが、要点は、年金は受け取り時期を選べるということ、そして70歳まで繰り下げると本来の額の4割ほど増額されるということだ。山田氏が長生きを前提にした選択だと補足すると、大野氏は、70歳までなら元気に仕事ができるだろうし、その後は増えた年金で不足分を補うという選択肢もあり得るのではないかと述べた。

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今すぐできること:固定費を削って積み立て投資へ

とはいえ、どこまで働けるかに保証はない。今50代がやるべきことは何か。大野氏は「身も蓋もない」と前置きしつつ、固定費の見直しを挙げた。何となく払い続けているサブスク、払い続けるタイプの保険かどうか、光熱費のプランなどを地道に削れば、月5000円ほどは浮かせられるのではないかと大野氏は見積もる。年間で6万円になる。

浮いたお金の使い道として大野氏が挙げたのが投資だ。リスクはあると断ったうえで、iDeCoについては掛金が所得控除になって節税効果があるので、働いているうちに掛けることで今の時点でも恩恵があると説明した。新NISAでは非課税で保有できるものがある。こうしたコツコツとした積み立ては一つの方法だと大野氏は言う。

さらに、現状では株価がかなり上がってきているので、こういう時期には少しアグレッシブな投資をしてみる考え方もあると述べた。ただしリスクがあるので、分散することや、リスクの少しでも小さいものを選ぶことなど、考え方次第で自分で調べる必要があるとも付け加えている。50代が能動的に動かないと、足りない場合に困ることになるのではないか、というのが大野氏の見方である。

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最初の一歩の不安とプロへの相談、そして「黙り込まない」

山田氏は、投資や運用は最初の一歩を踏み出すのが難しいのではないかと尋ねた。大野氏は、金融知識に自信がない人ほどそこが不安になると認める。番組でもiDeCoなどの具体策を取り上げていくとしたうえで、証券会社の窓口やファイナンシャルプランナーなどプロに相談するのも大事だと述べた。ただし悪い人もいるので、だまされないようにきちんとした相手に相談し、シミュレーションしてもらうことが必要だという。

大野氏が何よりよくないと強調したのは、お金のことで「黙り込む」ことだ。家族にも言わないことがある。日本人はお金の話を下世話なものと考える人が多いという印象があり、そこは変えていかなければならないと大野氏は言う。若い人には投資教育が盛んに行われ始めており、山田氏も中高生からの取り組みがあると応じた。高齢化が進み、インフレの社会になる中で、お金を自分で増やして大切に考えていくことが必要になると大野氏は述べた。

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最後に健康:飲み代の節約という「痛いところ」

締めくくりに山田氏が「最後に身も蓋もないことを言うと、健康が一番」と言うと、大野氏も同意した。飲み食いを減らす、いいお酒を飲みすぎない、運動するといった話になり、山田氏は飲み代の節約は大事な課題で、浮いた分を投資に回せばよいと突っ込む。大野氏は、飲んで話してすっきりするというメンタルの健康も大事だと「言い訳」して笑いを誘いつつ、50代は健康あってのマネーライフだと認めた。

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今後のテーマ:為替、新しい消費、AI

番組は手作りで本音を話していく方針だと大野氏は語り、視聴者にコメントで聞きたいことを寄せてほしいと呼びかけた。今後のテーマとして大野氏が挙げたのは、iDeCo、NISA、株価、為替である。為替についてはドル円ばかりがニュースになりやすいが、たとえば日本人に人気の旅行先の通貨が今どうなっているか、円安の中でどこなら比較的円が強いか、といった掘り下げ方があるという。山田氏は、老後の話はどうしても後ろ向きになりがちなので、旅行のような前向きな話題はいいと応じた。

大野氏自身の関心としては、タイムシェア型の別荘のような新しい消費のトレンド、海外不動産などの投資分野の仕組みも挙げた。さらに、自分たちの世代は正直AIに弱く、パソコンも分からないと認めたうえで、ゲストを呼んで、AIは危ないと言われるが実際どうなのか、50代がどう使いこなすのかといった話もしたいと述べ、初回を終えた。