簗農水大臣の「予算カット発言」 音声の続きと元支援者の証言から見えた背景
日テレNEWS簗農林水産大臣が、地元の自治体を名指しして「道路予算を大幅にカットした」と語った音声が問題になっている。日本テレビの「news LOG」は、なぜ大臣が地元に対してそうした発言をしたのかを追跡取材した。手がかりになったのは、問題の音声の「続き」と、かつて大臣を支えた人々の証言である。
問題の発言と大臣の釈明
取材班は、簗大臣の選挙区である栃木県那須烏山市の居酒屋で、10年以上前に大臣の事務所で働いていたという人物に話を聞いた。この人物が見せた写真は、およそ14年前、大臣が最初に選挙に出た頃のものだという。そこには背筋を伸ばして支援者と向かい合う簗大臣の姿が写っていた。
その簗大臣が、那須烏山市などを名指しして、令和8年度の予算を大幅にカットしたと語ったのが今回の発言である。番組によると、那須烏山市と那珂川町は、前回の衆院選で大臣の得票が対立候補を下回った地域で、大臣はその地域の道路予算を大幅に削ったと話していた。発言は大臣に登用される前の今年5月のものだ。
大臣自身は、自民党の党員が集まる場で自分の中に高揚感のようなものがあり、少し誇張した表現をしてしまったと説明している。番組は、本当に高揚感のせいだったのかという問いを立てて取材を進めた。
高市総理との近い関係
番組はまず、2021年に高市総理が自民党総裁選に出馬した際の映像を紹介した。総理の後ろには、名前入りのタオルを身につけた簗大臣の姿があった。番組によれば、2人はともに安倍元総理を慕い、思想や信条も近い。高市総理は映像の中で、簗大臣を「私の知恵袋」と呼び、いなかったら本当に大変だと語っている。
「実行力重視」をうたった先月の内閣改造で、簗大臣は農林水産大臣として初入閣を果たした。
初当選時の選挙責任者が語る「敵と味方を分ける」性格
次に話を聞いたのは、2012年に簗大臣が衆院選で初当選した際に選挙の責任者を務め、大臣の陣営をまとめていた中心人物である。この人物は当時の大臣について、辻立ちを熱心に行う「根性のある人」だと思っていたと振り返る。
一方で、敵と味方をはっきり分けてしまうところがあったとも語った。周囲はよい政治家になってほしいと一生懸命助言したが、大臣は自分を支持しない人を敵だと判断してしまったという。2人の間には次第に溝が生まれ、この人物はおよそ7年前に陣営を離れ、その後は対立候補の支援に回った。
離れていった支援者たちと渡辺議員
大臣のもとを去ったのは、この人物だけではなかった。元事務所関係者は、みんなで一生懸命応援していた人たちが一人、また一人と離れていき、その多くが相手候補の渡辺議員のところに集結してしまったと話す。
渡辺議員は33歳。今年2月の衆院選に無所属で出馬し、選挙区では渡辺議員が勝利、簗大臣は比例で復活当選した。大臣が予算をカットしたと名指しした市と町では、渡辺議員の得票が大臣を大きく上回っていた。
音声の「続き」にあったもの
番組によると、予算カット発言が飛び出した同じ挨拶の中で、簗大臣が渡辺議員について話す場面があった。音声では、選挙の際に渡辺議員本人がバイクでやって来て、大臣に「共に頑張りましょう」と言ったことを挙げ、「許さないと思った」と語り、相手を罵るような言葉も口にしている。
さらに大臣は、自分が今は幹事という立場にあるのでこうしたことができる、自分がいなくなればできなくなる、それを守るためにこういうことをやっている、という趣旨の発言もしていた。
渡辺議員は当選1回の無所属新人である。かつての支援者たちは、予算カット発言の背景について、大臣が渡辺議員側に自分の力を見せつけたかったのではないかと話した。
これに対し、現在も簗大臣を支える後援会の会長は、大臣は本当に愚直で不器用だが、地域のため、地方都市の衰退を何とか食い止めたいと考えている人だと語った。
なお国土交通省は、大臣からの問い合わせはあったものの、予算を減らすような圧力はなかったとする調査結果を発表している。
スタジオの議論①:辞任すべきか
スタジオでは、斎藤さんが「当然、大臣は辞めるべきだ」と述べた。税収は過去最大になる一方で国民は物価高に苦しんでおり、自分たちの払った税金がどう使われるかを強く気にしている。その中で一部の政治家が恣意的なやり方で税金を使っていると受け止められれば、政治全体への信頼に深刻な問題を引き起こすとして、辞任は避けられないとの見方を示した。
スタジオの議論②:高市総理はなぜ続投させたのか
政治取材の経験が長い竹内さんは、高市総理が簗大臣の続投を判断した理由について取材内容を紹介した。総理に近い人物は、総裁選で応援してもらったからだと打ち明けたという。また別の政権メンバーは、総理のメンツに関わるからだと話した。高市総理が簗大臣に目をかけていたと語る人は多く、目をかけていたからこそ自分のメンツを守るためにも辞めさせないのだ、という見方があると竹内さんは説明した。
来年に地方議員選挙を控える自民党内の不満について問われると、竹内さんは、このまま続投させた方がダメージがある、あるいはダメージにつながる可能性があると見ている自民党議員も結構いると答えた。総理としては、謝罪して出直すというならチャンスを与えたいということだろうが、野党は参議院に簗大臣の問責決議案を提出しようとしている。可決されれば大臣として認めないという引導を渡す形になり、高市総理が力を入れる消費税減税の法案などの国会審議にも滞りが出るのは避けられない。野党はそうならないよう早く辞めるべきだと圧力をかけている、と竹内さんは解説した。
スタジオの議論③:国会審議を止めるべきではない
別のコメンテーターは、農林水産分野ではコメの価格や食料自給、食料安全保障といった重要な論点が控えていると指摘した。政治家は言葉の人であるべきで、発信で誤ってしまったことを「不器用」や「敵と味方をはっきり区別する性格」で片付けられては困るという。簗大臣が大臣としてどのような思いを持ち、日本のコメ政策をどう考えているのかはまだ聞いたことがないと断ったうえで、1人の大臣の進退をめぐって国会が止まっている時間はなく、とりあえず身を引いた方が国のためではないかとの考えを述べた。
国会では連休明けの13日火曜日から予算委員会が開かれ、野党側は追及を強める方針だと番組は伝えている。
news LOGは簗大臣が予算カット発言に至った裏側を追跡取材。あの音声の続きに手がかりがありました。
簗農林水産大臣の選挙区、栃木県那須烏山市にある居酒屋。話を聞いたのは、10年以上前に大臣の事務所で働いていたという人物だ。
見せてくれた1枚の写真。そこには。「みんなで酒飲んだ時だ」
「この時は何年前ぐらいです?」「これ、最初に出たところだと思うよ」
およそ14年前、背筋をまっすぐに伸ばし、支援者と向かい合っていた簗大臣。その簗大臣が、ここ那須烏山市などを名指しして言い放ったのが、あの発言だった。
「那須烏山市と那珂川町の令和8年度の社会資本整備では、大幅にカットしました。これはもう前なんですね」
那須烏山市、那珂川町は、前回の衆院選で対立候補に票数で下回った地域。その道路予算を大幅にカットしたと話したのだ。
「自民党の党員の集まるという中で、ある種、自分の中でも高揚感みたいなものがあって、その中で少し誇張したような表現をしてしまったということ」
高揚感のせいだったのか。私たちは予算カット発言の裏側を追跡取材。手がかりは、あの音声の続きにあった。
「共に頑張りましょうって言ったんですよ」
これは2021年、高市総理が自民党総裁選に出馬した時の映像だ。総理の後ろ、そこには名前入りタオルを身につけた簗大臣の姿があった。互いに安倍総理を慕い、思想信条も近い。
「もうとにかく私の大事な簗ちゃん、私の知恵袋の簗ちゃん、いなかったら大変。本当に大変です」
実行力重視をうたった先月の内閣改造では、農林水産大臣として初入閣を果たした。問題の予算カット発言は、大臣に登用される前、今年5月のもの。一体なぜ地元に対してそうした発言をするに至ったのか。
まず話を聞いたのは、三森文徳さん。2012年、簗大臣が衆院選で初当選した時、選挙の責任者を務めた。簗陣営をまとめる中心人物だった。
「人となりというか、どういう感じだったのかっていうのは」「辻立ちをすごくやるっていうことで、根性のある人だなっていうふうに私ら思ってましたよね」
努力家だったという簗大臣。しかし。
「敵と味方をはっきり分けてしまうってところがあって、我々も一生懸命アドバイスをしたり、いい政治家になってもらいたいということでやったんですけど、自分を支持しない人は敵だという判断をしてしまう」
2人の間には次第に溝が。そしておよそ7年前、みさんは簗陣営を離れ、その後、対立候補の支援に回ったという。簗大臣のもとを去ったのは、みさんだけではなかった。元事務所関係者は。
「一生懸命みんなで応援したんですね。けど、そういう人たちがみんな1人1人、だんだん離れていって、そういう人たちはどこ行ったかっていうと、いわゆるその相手候補の渡辺真太朗君のところにみんな集結してしまって」
渡辺真太朗議員、33歳。今年2月の衆院選では無所属で出馬。選挙区では渡辺議員に軍配が上がり、簗大臣は比例復活に回った。簗大臣が予算をカットしたと名指しした市と町では、渡辺議員が簗大臣の票を大きく上回っていたのだ。
実は、予算カット発言が飛び出した挨拶の中でも、簗大臣が渡辺議員について話す一幕があった。
「私がね、許さないと思ったのはね、してたんですよ、選挙に。で、その時に本人が乗った候補者が来て、私にマイクで何て言ったと思うんですか? 『簗さん、共に頑張りましょう』って言ったんですよ。てめえ、おい」
渡辺議員は当選1回、無所属の新人議員。大臣は。
「私が今、幹事という立場になって、幹事長にちょっと来てるって言われれば、こんなことはできるんですね。今度私がいなくなったら、完全にされてますから。それを守るためにこういうことをやって、正しい方向に持っていかなきゃいけないと思ってやっていますので」
予算カット発言の裏側にあったもの。簗大臣のかつての支援者たちは、渡辺議員側に自分の力を見せつけたかったのではと話した。今も簗大臣を支える後援会の会長は。
「ある意味、本当に先生は愚直で不器用なんですよ。愚直で、だけど本当に地域のため、地方都市の衰退っていうものを何とか引き止めたい」
国交省は、大臣から問い合わせはあったものの、予算を減らすよう圧力はなかったとする調査結果を発表している。
「斎藤さんは、この簗大臣の問題、どう見てらっしゃいますか?」
「当然、大臣は辞めるべきだと私は思いますね。今、やっぱり国民は税金をたくさん払っていて、税収は過去最大になってるわけですけれども、一方で物価高ですごい苦しんでいて、やっぱり自分たちの払った税金がどう使われるか、すごい気になってる中で、非常に恣意的なやり方で税金を一部の政治家が使ってるんだっていうふうになれば、政治全体への信頼を、やっぱり非常に深刻な問題を今引き起こすと思いますので、辞任は避けられないのかなと私は思います」
「政治取材の経験が長い竹内さんにも聞いていきますが、高市総理、簗大臣、続投の判断ということで、これ、なぜ守る判断をしたのか。この点どうでしょうか?」
「これ、総理に近い人に聞いてみたんですね。そうしましたら、やっぱりさっきもありましたけれども、総裁選で応援してもらったからだって打ち明けていました。また、他の政権メンバーの人は、これ、やっぱり総理のメンツに関わるからだっていうふうに言ってました。これは動画の中にもありましたけど、やっぱり高市総理が簗さんのことを目にかけていたっていうことを言う人は多いんですね。この目にかけていたからこそ、自分のメンツを守るためにも簗さんを辞めさせないんだっていう、こういう見方なんですね」
「高市さんは個人的に思ってるかもしれないですけど、自民党の人たちは、来年、地方議員選挙も控える中で、かなり不満たまってるんじゃないんですか? どうなんですか、その辺りは」
「これはやっぱり、このまま続投させた方がダメージがある、もしくはダメージにつながっていく可能性があるんじゃないかっていうふうに見ている自民党の議員なんていうのも、結構いるんですね。総理からすれば、謝ったんだし、出直すっていうんだったらチャンスをあげたいっていうことなんでしょうけれども、実際問題、野党は参議院に簗大臣の問責決議案というのを出そうとしてるんです。この問責決議案というのが可決すると、もう駄目であると、この大臣として認めませんよと、引導を渡すような結果になります。となると、今、高市さんが力を入れようとしている消費税を減税する法案など、国会審議にも滞りが出ることは避けられないという感じになります。野党は、そういうことにならないように早く辞めた方がいいんじゃないかと圧力をかけてるわけなんですよ」
「でも、その部分に関しては、やっぱり国会論戦っていうことを、特に農林水産関係って大変じゃないですか。お米の値段の話が出そろってきます。それから食料供給の話、食料安全保障の話が出てくる。さっきのあれは、その裁判安全保障です。やっぱりいろんなことでされてる中で、その国会が止まるみたいなね、こういうことで止まる。だから僕は、政治家ってやっぱり言葉の人であるべきで、その発信力で誤ってしまう。それを不器用だとか、敵と味方をはっきり区別するんだっていうことでは困るんですよね。そこで滞らないように、ちゃんと、じゃあ僕はこの大臣としてどういう思いなのか。この日本の米政策なんかはまだ聞いたことないんで分かんないんですけど、でも今、そんな1人の大臣の首どうのこうのでやってる時間はないんで、だったら僕は、さのように、とりあえず身を引かれた方が、それが国のためなんじゃないかなって気がするんですよね」
「そうですね。大切な議論が停滞するということだけは避けていただきたいですね。その国会ですけれども、連休明け13日の火曜日から予算委員会が行われまして、野党側は追及を強める方針です」
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