安保3文書改定、自民・維新の温度差と自衛官不足、無人機戦への備えを元防衛事務次官と元陸自方面総監が議論
日テレNEWS高市政権は国家安全保障戦略をはじめとする「安保3文書」の改定を年末までに行う予定で、議論は大詰めを迎えている。BS日テレ「深層NEWS」は、2022年の前回改定で政府・与党の調整役を務めた元防衛事務次官の髙橋憲一氏と、現役時代に防衛大綱などの作成に携わった元陸上自衛隊中部方面総監の山下裕貴氏を招き、中国・ロシア・北朝鮮の3正面に向き合う日本の防衛政策を論じた。コメンテーターは読売新聞編集委員の飯塚恵子氏である。番組では、連立相手の交代による与党内の温度差、自衛官の人材確保、無人機やAIを使う「新しい戦い方」への備え、継戦能力、防衛費と財源、そして3文書に込めるべき理念が取り上げられた。
前回改定から4年、何が変わったのか
髙橋氏は、2022年12月の閣議決定時にはすでにウクライナ戦争が始まっていたものの、その後の変化は大きいと述べた。最大の変化として挙げたのは第2次トランプ政権の登場である。当時、日本は「ルールに基づく国際秩序」「法の支配」を前提に、同盟国・同志国と連携していくと考えていた。しかしアメリカがアメリカ第一主義を打ち出したことで、その前提が揺らいだという。加えてイラン戦争が始まり、国際情勢はさらに変化したと髙橋氏は見る。
もう一つ髙橋氏が強調したのは、米ロ間の核軍備管理の消失である。2019年に中距離ミサイルを全廃するINF条約が失効し、今年になって戦略核兵器の数の削減や信頼醸成を担ってきた新STARTも失効した。これまでの理念が失われ、核軍備管理の枠組みもなくなったという点で、安全保障環境は「極めて新しいステージに入った」と髙橋氏は表現した。
山下氏は、極東地域に目を向ければ共通しているのはアメリカの力の低下であり、パクス・アメリカーナが少しずつ崩れているのではないかと述べた。一方で中国は軍事力を強化し、現状変更の動きを活発化させている。北朝鮮は数日前にも弾道ミサイルを発射し、ロシアは戦争を続けながら日本に軍事的な威嚇・圧力をかけている。2022年の3文書策定時と比べて情勢は厳しさを増していると山下氏は言う。その一方で日本の相対的な国力は下がり、自衛隊は隊員の確保が非常に難しくなって体制を維持できるのかという問題に直面している。必要性と可能性の間に矛盾が生じている、というのが山下氏の見立てだった。
山下氏は今回の改定に求める点として、文書が単なる各省庁の分担作業の寄せ集めにならないことを挙げた。各役所が分析を分担しているためパーツごとには立派だが、1本筋の通った理念があるのかが問題だという。現在の文書は「目標とアプローチ」という書き方をしているが、日本をどう作り、どう守っていくのかという理念があり、それを実際にどう実現するのかが読んで分かる文書にしてほしいと注文した。
3文書の構成と改定スケジュール
番組では3文書の構成も確認された。今後10年程度の外交・防衛政策の基本指針である「国家安全保障戦略」、防衛目標とその達成手段を示す「国家防衛戦略」、目標達成のための装備品の調達方針や経費総額を定める「防衛力整備計画」の3段階である。山下氏は、このうち「戦略」と名のつくものは実は2つで、最後は計画だと補足した。
今回の改定に向けて、与党の自民党と日本維新の会はそれぞれ6月に政府へ提言を提出した。有識者会議も報告書をまとめる方針で、政府は与党と有識者会議の議論を受けて年末までに閣議決定するとしている。
飯塚氏は、3文書が決まらなければ政府予算案も閣議決定できない点を強調した。全体の方針が決まらないと予算を組めないため、今年はクリスマスあたりになるかもしれないが、それまでに必ず閣議決定しなければならず、時間はあまりないという。
公明党の「ブレーキ」から維新の「3歩前」へ
飯塚氏は政治環境のポイントとして、まず連立相手の変化を挙げた。公明党は「平和の党」として、軍事的な路線をできるだけ控えめにするよう自民党に後ろからブレーキをかける立場だった。これに対し維新は自民党の「3歩ぐらい前」を行き、軍事強化の強硬路線を前面に出している。その結果、自民党の側がどう慎重に進めるかという構図になっていると飯塚氏は説明した。
前回改定で調整役を務めた髙橋氏は、2022年当時のプロセスを振り返った。春ごろに自民党安全保障調査会の提言が出され、政府が議論を整理して秋口に政府案を示す。自民・公明でつくる与党の安全保障プロジェクトチームが秋口からテーマごとに緊密に調整していく流れだった。自民党が比較的高めの球を投げ、公明党は過去の安全保障政策との整合性や憲法との関係をかなり細かく詰めていった。行政府としても理論的に詰める必要があり、同時に政治的にそれが持つかどうかも見込みながら年末の閣議決定に向かったという。
当時の大きな論点は反撃能力だった。髙橋氏によれば、平成30年の大綱では「検討」にとどまっていた。最大のネックは、政府がそれまで反撃能力について「計画も装備もしない」と答弁し続けてきたことで、ただしそれは憲法にも専守防衛にも反しないという立場だった。その後、北朝鮮のミサイルが何発も発射され、BMD(弾道ミサイル防衛)での迎撃を難しくする技術的な進歩が生まれた。海上自衛隊のイージス艦に搭載したミサイルや、陸上のパトリオットで迎撃するミサイル防衛だけで国民を守り切れるのかという問題意識が政治の側にも広がり、前回改定で反撃能力が政治的にも認められたと髙橋氏は説明した。
山下氏は現場側の経緯として、日本海にイージス艦を張り付けておくのは非常に負担が大きいため、陸上自衛隊が地上配備型のイージス・アショアを持つべきではないかという議論があったことを紹介した。途中で方針が変わり洋上型になったが、様々な点で議論が深まり、体制にも影響していったのが実態だという。
原子力潜水艦をめぐる自民と維新のずれ
自民と維新の温度差を象徴する例として番組が取り上げたのが、原子力潜水艦の保有検討である。去年10月に両党が連立を組んだ際の合意書には「次世代の動力を搭載した潜水艦の保有にかかる政策を推進する」と明記された。今年6月の提言では、維新が「早急に原子力潜水艦を導入すべき」と明記したのに対し、自民党は「次世代の動力」の検討とし、「原子力」という言葉は使わなかった。
飯塚氏は今回の見直しの主な登場人物を整理した。政府側では、防衛大臣経験者の木原官房長官がおり、高市首相はおおむね木原氏に任せている。小泉氏が防衛大臣を務める。自民党では防衛大臣経験者の浜田安全保障調査会長、維新では吉村代表以下、藤田氏も含めて非常にストレートな防衛力強化を唱えている。このほか防衛産業や有識者会議のメンバーが関わる。有識者会議の議論が9月で一段落し、10月・11月から政府内と与党の議論が始まるタイミングであるため、立ち止まって考えたいというのが番組の趣旨だと飯塚氏は述べた。
髙橋氏は率直な見方として、6月に両党がそれぞれ提言を出した以上、意思疎通をしながら政策を練り合わせるプロセスが当然始まるはずだが、自分は今政府にいないので実際の話し合いは分からないとしたうえで、側聞する限りそうしたコミュニケーションが取られている感じはあまりしないと述べた。原子力潜水艦のように大きな政治問題になりうるテーマを抱えながら、12月に確実に閣議決定しなければ予算編成が遅れる。その政治プロセスをどうコントロールしているのかが見えない、という懸念である。
飯塚氏も、原子力潜水艦は国家プロジェクトのような次元の話であり、非核三原則の問題もあれば原子力基本法の改正も必要になるなど論点が非常に多く、2か月余りで議論しきれるのかという難しい課題があると指摘した。
自衛官はどれだけ減るのか
続いて番組は自衛官の人材確保を取り上げた。先月の政府の有識者会議資料によれば、自衛官の数は減少が続いており、2035年には2025年度と比べて約3万7000人減少すると試算されている。将来、今と同じ水準を維持するのは困難だと指摘されている。
髙橋氏によると、自衛官の主な募集対象人口とされる18歳から32歳の人口は、令和8年の約1709万人から、40年後の令和48年には約6割にまで落ち込む。処遇改善は非常に重要で必ずやるべきだが、同時に自衛隊の戦い方を見直し、省人化・省力化を進めなければ、厳しい安全保障環境に十分対処できなくなると髙橋氏は主張した。そのためにはAIや無人化、場合によってはフィジカルAIの導入も考えなければならない。
ただし髙橋氏は、それに伴う課題にも触れた。AIは暴走するかもしれない。またフィジカルAIについては自律型兵器(LAWS)に関する規制の議論があり、人間の意思が介在しなければ誤射や誤爆で人が傷つく恐れがある。その責任をどうするかを含め、AIや自律型兵器の規制の問題も新しい戦略や政策文書の中でしっかり議論する必要があると述べた。
「無人化は組織縮小のためではない」山下氏の反論
これに対し山下氏は「反論するわけではないが」と前置きしつつ、人材が確保できなくなると財政当局や事務方はすぐに自衛隊の体制を縮小する方向に向かい、その方便として無人化・省人化、今回はAIが持ち出されると批判した。ウクライナ戦争で見てきたように、AIの意義は精密性と速さにある。ドローンや地上の無人機は、第一線の兵士の命をどれだけ守るかのために使われているのであって、組織をコンパクトにするためではない。新しい戦い方を取り入れることと体制の議論は別の話で、分けて考えるべきだというのが山下氏の主張である。
山下氏は、現役時代に「中期防や防衛大綱は作らない方がいい、作るたびに自衛隊が縮んでいく」と冗談で言っていたと明かした。これまでは財政面から縮められてきたが、今度は人が取れないから縮めようとしている。必要性があるなら可能性を追求すべきだと訴えた。
髙橋氏は、自身もこれまで大綱に2回関わり、平成16年の大綱では冷戦終結後の「平和の配当」として陸上自衛隊を16万人から12万人に減らせという議論がすでにあったと振り返った。募集担当の課長も務めた経験から、人が取れればいいが取れない時代がすでに来ており、充足率は下がり続け、予備自衛官の充足率はさらに低いと指摘した。現実の問題を解決して任務を遂行するためには、省人化は取り組むべき課題だという立場を崩さなかった。
飯塚氏は、この対立は今に始まったものではないと補足した。いわゆる背広組は事情もあって合理化の方向に進みがちで、制服組は防衛力を基盤的にきちんと保持すべきだと主張する。さらに自民党の国防族からは、定数を減らせば中国に誤ったメッセージを送るという「見た目」を重視する議論も出るため、すんなり収まる議論ではないとの見方を示した。
番組では、この日、小野寺元防衛大臣らが自衛官の人材確保と処遇改善を目的とする議員連盟を発足させたことも伝えられた。初会合で小野寺氏は、3文書をまとめるうえで最も大切なのは重要な資源である「人」だと強調し、議連では給与・手当の見直しや家族への支援策などを検討するという。
募集の現場から見た「自治体の役割」
地方協力本部長として沖縄で2年間募集に携わり、人事計画課長も務めた山下氏は、募集の制度的な問題を指摘した。自衛官の構成で最も多い2等陸・海・空士の募集は、自衛隊法と地方自治法により、一部が自治体の法定受託事務になっている。自衛官の職名が「募集官」ではなく「広報官」であるのはそのためだと山下氏は説明し、この自治体の役割を活性化させるべきだと訴えた。地方協力本部が名簿を閲覧しようとすると個人情報を理由に反対する活動もあるが、それは本来自治体の仕事であり、自衛隊だけでやるには限度があるという。
山下氏によれば、陸上自衛隊の充足率は86.5%。もともとは予算定員の制約で低く抑えられていたが、今は集められないことが原因になっている。そのうえ定員のついていない地方協力本部などに数千人の隊員を回しているため、部隊の実際の充足率はさらに低い。第一線の普通科中隊では、4個小隊あるはずのところが演習で1個小隊しか使えない状況だという。
体制を縮めるか、国を挙げて募集努力をするかという選択の中で、山下氏は後者を主張した。現状では広報官1人が非常に広い地域を担当しているが、市役所や役場が支援して自分たちも募集に取り組めば3倍、4倍になる。それは防衛省だけではできず、国民的な議論が必要だと述べた。
無人機戦の広がりと周辺国の動き
番組はVTRで、新しい戦い方をめぐる周辺国の動向を紹介した。ロシアのウクライナ侵攻では戦闘の長期化とともに無人機を活用した戦い方が主流になってきた。先月28日からロシアで行われた合同軍事演習「ツェントル2026」で、プーチン大統領はウクライナでの実戦経験が演習に反映されていると強調した。インターファクス通信などによると、演習には中国など少なくとも8か国と、侵攻の実戦を経験したロシア兵2000人以上が参加し、無人機戦の教訓が色濃く反映されていたとされる。
中国軍は「新たな脅威への対応」と題した動画をSNSで公開し、迫る無人機を兵士が直接迎撃する様子や、防護策を施した車両による自爆型無人機への対処を見せた。北朝鮮の金正恩総書記は去年から無人機開発を最優先課題の一つに位置づけ、ロシアからジェット推進型無人機技術の提供を受けている可能性が指摘されている。
日本では、陸上自衛隊が先月2日、「小型攻撃用無人機」と呼ばれる機種を初めて公開した。スマートフォンで操作できるのが特徴で、無人機の迎撃などへの活用も想定されている。無人機の役割は情報収集にとどまらず、敵の無人機への対処や迎撃へと広がりつつある。政府はこうした新しい戦い方への対応を3文書の改定に盛り込む方針である。
流行に流されず「バランスの取れた防衛力」を
島国・日本にどのような技術と戦い方が必要かを問われた山下氏は、まずVTRの映像は展示訓練であり、最新兵器を持っていると示すこと自体が先見性のアピールだと指摘した。そのうえで歴史の例として、第一次世界大戦後に日本の陸軍と海軍がヨーロッパに調査団を派遣し、総力戦や機械化戦争といった当時の新しい戦い方を詳細に分析して持ち帰ったが、予算がなく実現できなかったことを紹介した。今回も詳細に分析すべきだが、新しいものにすぐ飛びつくのではなく、ドローンやAIがあれば戦車や装甲車はいらないといった方向に行かず、バランスの取れた防衛力を作る必要があると述べた。欠落したところが弱点になるからだ。
山下氏は自らの経験も明かした。2010年に陸上幕僚監部で中期防の議論をしていた際、内局の担当課長から、陸上自衛隊が5個部隊・90両保有していたキャタピラ式の多連装ロケットシステム(MLRS)を全廃せよと言われた。将来、多連装ロケットを使うような戦場は発生しないという理由だったが、「今のウクライナを見てください」と山下氏は言う。火砲についても、北海道に1987年制式化の自走式でない火砲が一部残るのみで、それもなくなっていく。ミサイルさえあれば火砲はいらないと言われたという。一方ウクライナでは、ドローン対応と並行して戦車や装甲車が使われ、ウクライナ軍がロシア軍のドローンを制して無力化したうえで機械化攻撃を行い、領地を確保した事例もあると山下氏は語った。日本の防衛戦略の柱は着上陸侵攻対処と防空であり、バランスの取れた多層的な防空システム、バランスの取れた装備と戦い方によって欠落や欠点を作らないことが制服組として求められていると述べた。
髙橋氏も山下氏の意見に賛成したうえで、新しい戦い方に応じて必要な装備は徐々に変わっていくし変えていかなければならないが、ときに流行に流されて「その装備はいらない」という主張が「いつも現れる」と述べた。自身の現役時代にもイージス艦は不要でミサイル艇を重視せよという人たちが現れたが、その後BMDが始まり、イージス艦が使われるようになった。艦を建造し訓練して使い物にするまで何年もかかるのだから、将来の脅威を正確に分析しながら、あまりに短いサイクルで考えるのはよくないという。
新しい戦い方の前に問われる「継戦能力」
髙橋氏はまず大きな前提として米中関係に触れた。髙橋氏の理解では、アメリカは中国を最大のライバルとしつつも話し合いのできる相手とみており、中国と対話しながらインド太平洋を比較的自由で開かれた状態に保つことがアメリカの利益につながると考えている。同時に第一列島線にいる日本などに必要な防衛力の強化を求め、第一列島線を抑止力として安定させることを期待している。アメリカは西半球に閉じこもるのではなく、インド太平洋でどの国の覇権も許さない。そこで必要な抑止力を担うのが日本の役割だというのが髙橋氏の認識である。
そのうえで髙橋氏は、新しい戦い方よりも前に取り組むべきは継戦能力の確保だと主張した。ウクライナ戦争の初期には米国製の対戦車ミサイル「ジャベリン」が大量に消耗し、アメリカの在庫が危うくなった。イラン戦争でも、イランのドローンに対して高価な迎撃ミサイルを投入することになり、アメリカは対空ミサイルを消耗した。いわゆる非対称な戦いである。そうした戦いに日本は耐えられるだけの弾薬・ミサイルの備蓄を持っているのか、防衛産業に増産を求めて十分に確保できるのか、と髙橋氏は問いかけた。
人の問題もある。現在の自衛隊の定員は、有事の初動の第一撃に耐えるための正面の定員を確保する考え方で、継戦能力としての人員は手薄だという。その担い手となるはずの予備自衛官は充足率が半分を切っている。新しい戦い方は重要だが、継戦能力をいかに確保し強化するかを合わせて考えることが必要だと髙橋氏は述べた。
山下氏は、継戦能力は防衛省・自衛隊だけでなく防衛産業の問題でもあると応じた。弾薬や装備が消耗したときにすぐ生産できる体制があるか。ただし増産を求めれば企業は投資しなければならず、その投資分をどうするかという問題もある。人的戦力、物的戦力に加え、もう一つは日本国民が長期の防衛作戦に耐えられるかどうかだと山下氏は指摘した。ウクライナはインフラが相当攻撃されており、継戦能力は総合的な国力の問題だという。
スタートアップとの装備開発、新制度への評価
防衛産業の強化策として番組は、小泉防衛大臣が今月2日に発表した新たな取り組みを紹介した。無人機やAIなど優れた先端技術を持つスタートアップ企業と協力し、装備品の開発を促すものである。小泉大臣は先月の会見で、防衛力強化と防衛生産基盤の強化を目指したいと述べていた。
髙橋氏は、日本の防衛産業はこれまで重厚長大型で、研究開発に時間がかかり、装備化まで5年、10年かかるのが当たり前だったと説明した。スタートアップと協力し、装備化まで前提にしてより早いサイクルで新技術を取り入れることは、技術革新の時代に絶対に必要だと評価した。
今回の取り組みの新しさは、自衛隊の現場のニーズをまず公開し、それに対する解決策をスタートアップから募る点にある。山下氏は、企業のアイデアと部隊のニーズを合致させ、どれだけ早く採用して戦力化するかという点で画期的に動いているのは事実だと述べた。「防衛本省とはいつも戦っていたので褒めることはないが」と笑いつつ、今回の取り組みは大したものだと評価し、延々とやっていた研究開発の期間を縮めることや補助金を出すことも隔世の感があると語った。さらに山下氏は、従来の重厚長大な大企業もこれに刺激を受けてイノベーションに取り組もうとしており、業界が活性化しているのは事実だと付け加えた。
防衛費は多いのか少ないのか
番組は防衛費の推移も示した。2022年の改定でGDP比2%を目標に掲げて以降、防衛費は右肩上がりとなり、2025年度予算でGDP比2%を前倒しで達成した。今年度の当初予算は約8兆8000億円で過去最高である。野村証券が去年発表した試算では、GDP比を3%に引き上げた場合、5年後の2031年度の防衛予算は19兆円程度(19.6兆円)になるという。一方、アメリカは去年末の国家防衛戦略で同盟国にGDP比5%の水準を求めている。
髙橋氏は、前回の改定では防衛力を抜本的に強化するという方針のもとで必要なものを積み上げた結果としてGDP比2%になったと説明した。そのうえで、この2%は純粋な防衛力整備の経費だけではないと注意を促した。純粋な防衛力整備の対象経費が約8.9兆円、沖縄の地元負担軽減が約0.2兆円、NATOの定義に基づく海上保安庁予算などが約0.9兆円、これにインフラ関連の投資を合わせて2%になる。アメリカはNATO諸国に対し中核的な軍事支出3.5%とインフラ投資1.5%で計5%を求めており、国家防衛戦略ではNATO以外の国にもこれを唱えていくとしている。オーストラリアのように3%を掲げる国もある中で、日本としては必要な装備・人員・施設を積み上げて防衛費を考えるべきだと髙橋氏は述べた。
髙橋氏はまた、日本の防衛費は実は大きくないと強調した。2024年度の1人当たり防衛費は日本が7万円で、アメリカ24万円、ロシア27万円、韓国13万円、オーストラリア14万円、イギリス10万円、フランス12万円、ドイツ11万円だという。日本の防衛費は長らく抑えられ、第2次安倍政権以降に回復してきたもので、トランプ氏以前からアメリカには日本の負担が少ないと強く言われた経験が何度もあったと振り返った。キャスターの右松氏は、この額を高いとみるか安いとみるかは国ごとの所得水準などによっても違い、単純な比較は難しい面もあると付け加えた。
財源と期限、残された時間
財源について飯塚氏は、今の臨時国会では消費減税が最大の争点になっていると指摘した。消費減税の財源をどう捻出するかの議論が終わらなければ、防衛費のためにどこかで増税したり各所から財源を集めたりする手当てもできない。消費税の議論が11月末に終わるのか、もっとかかるのではないか。現時点では消費減税の議論にもまだ十分入れていないと飯塚氏は見る。
それでも期限は切られている。飯塚氏は、税制が関わるという意味で自民党のキーマンは、防衛大臣を務めた国防族であり、現在は党の税制調査会長を務める小野寺氏だと述べた。防衛と税の両方に関わる小野寺氏が、今後議論をリードし、また非常に悩ましい立場に立つのではないかという見立てである。さらに、防衛力強化の目標達成時期も5年なのか7年なのか決まっておらず、そうした議論もこれからしなければならない。12月までの日程は非常にタイトになると飯塚氏は述べた。
3文書に込めるべき理念は何か
最後に番組は、改定される3文書にどのような理念を込めるべきかを2人に尋ねた。
髙橋氏は、これまで日本が拠り所としてきたのは法の支配であり、ルールに基づく国際秩序だったが、トランプ氏はアメリカもそれに立たないと言っていると指摘した。そのうえで、日本がどういう新しい理念でやっていくのかが問われているとし、非核三原則、原子力潜水艦、自衛官の募集、そして防衛産業を含む継戦能力といった問題をしっかり議論し、新しい理念を立てることが大事だと述べた。
山下氏は、日本がNATO諸国と違うのは、1か国でロシア、中国、北朝鮮と向き合っている点だと強調した。新しい国家安全保障戦略で日本を10年後にどう繁栄させ、どう守っていくのか、そのために防衛戦略をどう考えるのかについて、哲学や理論を1本通し、それに見合う体制を作ってほしいと述べた。理念とは物の考え方の柱だ、というのが山下氏の結論だった。
自民・維新間の調整、原子力潜水艦をめぐる法制度上の論点、人材確保と省人化をめぐる考え方の違い、そして財源と達成期限という未決の課題を抱えたまま、政府は年末の閣議決定に向けて残り2か月余りで議論を進めることになる。
高市政権は国家安全保障戦略など、いわゆる安保3文書の改定を年末までに行う予定で、議論は佳境を迎えています。中国、ロシア、北朝鮮の3正面に向き合う日本にとって必要な防衛政策、そして今の政治環境がどうなっているのか議論します。
深層NEWS、本日のゲストをご紹介します。元防衛事務次官の髙橋憲一さんです。髙橋さんは防衛事務次官を退任後、国家安全保障局で2022年の安保3文書の改定に政府与党の調整役として関わりました。よろしくお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。そして元陸上自衛隊中部方面総監の山下裕貴さんです。山下さんは現役時代、現在の国家防衛戦略にあたる防衛大綱などの作成に携わられました。よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
よろしくお願いいたします。高市総理は安保3文書の改定を年末までに行うとしています。自ら設けた期限まで2ヶ月余りですが、政府与党や有識者会議の議論も佳境を迎えています。
まず髙橋さんに伺いたいと思いますが、髙橋さんが関わった今の安保3文書の改定から4年という月日が経ちました。再び改定が求められているこの安保環境の変化、今どのように捉えていらっしゃいますか?
2022年の12月に、今の安保3文書が閣議決定されました。その頃は実はすでにウクライナ戦争が始まっていましたが、トランプさんの登場によって大きな考え方が変化をしたと思います。一番大きいのは、当時我々はあくまでもルールに基づく国際秩序、法の支配によって国際社会に、同盟国や同志国と連携してやっていこうというふうに思っていたわけですが、第2次トランプ政権の登場によって、いわゆるアメリカ中心主義、アメリカファーストということになりましたので、この考え方が一つ大きな変化をもたらされたと。その後またイラン戦争が始まったということで、国際情勢に対して大きな変化が生まれていると思います。
そしてもう一つ、考えなければならないのは、核に関する米露の軍備管理がなくなってしまったと。
そうですね。
2019年に中距離ミサイルを全廃するINF条約が廃止され、今年になって米露間での戦略核兵器に関する数の削減ですとか、信頼をやっているニュースタートが失効してしまったと。
新STARTとも言われる。
新STARTです。そうですね。そういうことを考えると、これまでの理念がなくなり、核に関する軍備管理の部分が失効したという点で、今の安全保障環境は極めて新しいステージに入ったというふうに言えると思います。
山下さんにも伺いますが、今お話があったように、まさに急激な変化がこの間ありました。その中から、今のこの安保3文書は何が書かれているのかも含めてですが、それから何が想定を超えてしまったのか、そして今回の改定においての要点、この辺りどういうふうに捉えていらっしゃいますか?
そうですね。今、全般、グローバルの話をされましたけど、極東地域を見てみれば、やはり共通するのはアメリカの力が弱っているというか、パクス・アメリカーナが少しずつ崩壊していっているんじゃないかなと。逆に中国の力を見てみますと、軍事力を強化しているし、現状変更の動きは非常に活発になっていると。北朝鮮は相変わらず、数日前も弾道ミサイルを撃ちましたけどね。ロシアも戦争しながら日本に対して軍事的な威嚇ですよね、圧力をかけていると。それだけ極東地域の情勢が、2022年に作られた3文書に比べたら厳しさを増しているということですよね。
内を見てみますと、日本の相対的な国力はちょっと下がっていると。それから自衛隊を見てみますと、後で議論になりますけども、人員の確保が非常に難しくなって、体制を維持できるのかという話になってきていると。必要性と可能性のところから、そこがちょっと矛盾してくるわけですけども。想定というか、これだけ多く変わってきていると。
そして今回作られるであろう、今作成中の安保3文書ですね。実は2文書ですよね、戦略ってついているんですね。最後は計画ですから。その中で要点とすれば、単なる文書ではなくて、パーツ、パーツは立派ですよ。各役所が分担して分析をされていますから。ところが一本筋があるのかという、理念があるのかということですよね。理念ですからね。目標とアプローチというふうに書かれているんですが、ではない、方針と指導要領ですね。どういう日本を作っていくのか、どういう国を守っていくのかと、そういう理念があって、実際どう作っていくか、それが読んで分かるような文書に作ってもらいたいということです。
その理念の部分についても後半少し時間を取ってお話ししたいというふうに思います。では、この安保3文書とは一体どういったもので、改定までどういったプロセスをたどるのか見ておきます。
安保3文書とは、その名の通り3つの段階に分かれた文書です。まず向こう10年ほどにわたる外交、防衛政策の基本指針である国家安全保障戦略。防衛目標と、それを達成するための手段を示す国家防衛戦略。そして目標を達成するための防衛装備品の調達方針や経費総額を定める防衛力整備計画で構成されています。
今回の改定に向け、与党である自民党と日本維新の会は、それぞれ提言を政府に提出しています。現在行われている有識者会議も秋をめどに報告書をまとめる方針で、政府は与党と有識者会議の内容を受けて、年末までに閣議決定するとしています。
では飯塚さんに伺います。こういったようなタイムラインで、今物事が進んでいるということですね。
そうですね。政治環境としては、今回のことは2つ大きなポイントがあると思います。一つは連立の相手ですね。高市政権の連立の相手は、公明党から新しく日本維新の会になったということですね。公明党は平和の党だと言って、軍事的な路線をできるだけ控えめに、自民党に後ろからブレーキをかけていたという立場でしたけれども、今回の維新はどちらかというと自民党の3歩ぐらい前を行っていて、軍事強化の強硬路線を前面に出していると。自民党がどうやって慎重に行くかという、そういう感じになっていると。
額ですね、どうする問題。これ、今、消費減税の財源の問題も抱えていまして、非常に重要で。重要なのは、今、右松さんが指してくださっていますが、安保3文書を決めないと、この政府の予算案というのも閣議決定できないんですね。全体のことが決まらないと政府の予算を決められませんから。これ必ず年末、今年はもしかするとクリスマスあたりかもしれませんけども、この辺りまでにこの安保3文書の閣議決定も行わないといけない。時間はあまりないんですよね。
そうですね。では、この安保3文書の改定を巡って、今お話がありましたように、与党の中で連立を組む自民党と日本維新の会との間でずれが生じているといいます。その影響とは。
4年前に行われた安保3文書の改定で、与党内で調整する相手は連立を組む公明党でしたが、髙橋さん、現在は日本維新の会と自民党という関係になります。当時、調整にあたっていた時は自公政権でした。その時と、今のこの自維政権の違いというもの、どういうふうに分析されていらっしゃいますか?
まず2022年なんですけれど、カレンダー的に申し上げると、大体春頃に自由民主党の安全保障調査会の提言が出ます。それを受けた形で政府がいろんな形で議論を整理して、秋口に政府としての概案を、自民党と公明党が作られる与党の安全保障PT、プロジェクトチームがありまして、秋口からそれぞれのテーマごとに緊密に調整をしていくというプロセスがございました。
言ってみれば、自民党が比較的高めの球を投げる。公明党は、私の感じから言うと、過去の安全保障政策との整合性、それから憲法との関係、そういうものについてかなり細かく議論をし、詰めていくというプロセスがありましたので、やはり理論的に、それはかなり我々としても詰めないといけないと。また同時に、政治的にこれが持つかどうかということも、我々は行政府の人間ではありましたけれど、ある程度そこを見込みながら、年末の閣議決定に向かって進んでいくと。
当時は確か反撃能力についてが大きな議論でしたね。
そうですね。おっしゃる通りで、反撃能力なんですけれど、これはその前の平成30年の大綱では検討という状態になりました。その後、この反撃能力をどう認めていただくかということがありまして、いろいろ苦労したんですけれど、まず反撃能力について一番大きなネックとなったのが、それまで政府は反撃能力については計画も装備もしないという答弁をずっとやっていました。
ただし、これは憲法にも反しないし、専守防衛にも反しないと。ただ、その時何が起こったかというと、まさに北朝鮮のミサイルが何発も発射され、それから我々のBMDにとっても非常に迎撃が難しい技術的革新が生まれたので、BMDだけで。
これ、BMDというのはどういったことでしょう?
弾道ミサイル防衛というのがありまして、例えば海上自衛隊においてはイージス艦に載っているミサイルが、陸で言えばペトリオットで迎撃する。ミサイル防衛システムで国民を守りきれないということが、政治の方にもかなり理解が広がっていたので、前回の安保3文書で反撃能力を政治的にも認めていただいた、そういうプロセスを。
山下さん、今まさに防衛省の中の議論ということですが、現場の中でもやはりこの北朝鮮の脅威というものが如実に現実のものとなって、こういった安保3文書の改定というのも、やはり現場レベルでも大きな推進力になるような、そういったことはあったんでしょうか?
そうですね。先ほどの話の流れの中でいくと、BMD対処の中で迎撃するのに、海上自衛隊のイージス艦が日本海に張り付いているのは非常に大変だということで、陸上自衛隊ではイージス・アショアと言って、地上発射型のイージスシステムを陸上自衛隊が持つべきではないのかという議論があって、これは途中で変わりましたけど、やはり海上型になりましたけど、様々な点でその議論が深まっていって、体制にも影響してきたという、それが実態だと思うんですよね。
飯塚さん、その点で、今お話があったように、当時は自民党、公明党の間で、比較的公明党は過去の答弁ですとか、政府見解、憲法との関連性において、ブレーキ役だったと。今は先ほど話があったように、3歩前と飯塚さんがおっしゃいましたけれども、少し前のめりな格好になっていて、自民党がむしろブレーキというか後ろにいるというような立ち位置。この議論においた時に、この立ち位置においた時に、やはり今、原潜の議論というのがされている。一旦、河出さんの方からお願いします。
その顕著な例が、原子力潜水艦の保有の検討についてです。去年10月に自民と維新が連立を組んだ際の合意書には、次世代の動力を搭載した潜水艦の保有にかかる政策を推進すると明記されています。そして今年6月、安保3文書の改定に向けて自民と維新がそれぞれ政府に提出した提言を見てみますと、維新は早急に原子力潜水艦を導入すべきと明記していますが、自民は次世代の動力の検討とし、原子力の言葉は使いませんでした。
まさにこれが今の政治環境を物語るわけですよね、飯塚さん。
そうですね。今のこの安保3文書見直しのキーマンというか、こういう人たちが登場人物というのをちょっとまとめてみましたけれども、政府側は木原官房長官、防衛大臣経験者ですね。高市さんはもちろんいるわけですけども、高市さんは大体木原さんにお任せしていると。そして小泉さんが防衛大臣としていると、政府ですね。
それから自民党の方は浜田安保調査会長。浜田さんも防衛大臣経験者ですね。それからここですね、やっぱり維新。ここが今まで公明党だったわけですけども、与党が維新に変わり、吉村代表以下、藤田さんも含めて、非常に割とストレートな防衛力強化を唱えていると。
このほかに防衛産業とか、あと先月まで有識者会議でずっと議論をしてきましたけれども、こういう人たちが関わっているという。なぜ今日、番組でこの議論をしているかというと、この有識者会議での議論が一段落したんですね、9月で。それで今、これから政府内、それから与党との議論が、10月、11月で始めましょうというタイミングになったので、ちょっと今立ち止まってどういうことかというのを考えたいということだったわけですね。
髙橋さん、その点で言うと、以前携わった時にはこの自公政権のいわゆる政策決定プロセスと、今のプロセス、自民党と維新との関係も含めたりとか、そこが有機的に、お互い妥協点を探り合うような、そういった議論になっているのかどうかも含めて、随分違いを感じざるを得ないのか、この辺りいかがですか?
率直に申し上げて、自民党さんとそれから維新の会、両党が6月にそれぞれ提言を出されて、そうなればお互いの意思の疎通をしながら政策を練り合わせていくというプロセスが当然始まると思うんですが、今私は政府にいないので、実際にどういう話し合いが行われているのか分かりませんが、側聞する限りにおいて、そういうコミュニケーションを取っているという感じが私はあまりしない感じがしていますので。
そうすると、ここでおっしゃったように原子力潜水艦みたいな、ある意味で大きな政治的な問題になるかもしれない問題について、この12月に、さっきおっしゃったように確実に閣議決定しないと予算編成が遅れてしまいますので、その政治プロセスをどうコントロールしているのかというのが、ちょっと私は見えない状況ですね。
論点が多すぎるんですよね、原潜についてはね。
そう、原潜は特に国家プロジェクトのような次元ですからね。
それもあります。非核3原則の問題もあるし、原子力平和、というか原子力基本法もいじらないといけない。論点がいっぱいあって、こんな2ヶ月ちょっとで議論ができるのかという、非常に難しい課題があると思います。
加えて、今の新しい戦い方といったキーワードもあります。こういったことへの対応も問われる中で、実際に任務にあたる自衛官の人員不足にも課題が散見されます。この後。
安保3文書の改定は、ウクライナ侵攻やイランでの戦いを踏まえた新しい戦い方への備えが中心となっています。様々なこうした論点が挙げられているわけなんですが、何といっても防衛力の中核を担うのは自衛隊員にほかなりません。まずは実務を担う自衛官や自衛隊員の人材獲得について考えていきたいと思います。
先月行われた政府の有識者会議の資料によりますと、自衛官の数は減少が続いています。2035年には25年度からおよそ3万7000人減少すると試算されていて、将来的に今と同じ水準を維持することは困難だと指摘しています。
髙橋さん、これまでも処遇改善などの議論も活発に行われてきてはいるものの、じゃあそれが最も有効な処方箋になり得るのかという点も含めて、今回のこの安保3文書にはどういったことを書き込むべきなのか、いかがでしょうか?
おっしゃる通りで、自衛隊の、特に自衛官ですね。年齢的には18歳から32歳が一つの募集対象人口と言われているんですが、今出していただいたように、それが劇的にどんどん減っていくというのがあります。令和8年だと約1709万人。これが40年後の令和48年だと1016万人と、6割にまで落ちてしまいます。
ですから自衛官の処遇改善は非常に重要なことであって、これはぜひやらないといけないんですが、私は同時に自衛隊の戦い方を見直していくと、いわゆる省人化、省力化を進めていくということを合わせてやらなければ、今の厳しい安全保障環境に自衛隊が十分に対処できないことになってしまうと。ですからAIだとか無人化だとか、場合によってはフィジカルAIを投入するということを考えないといけないんですが、それにはAIは暴走するかもしれないと。
それからフィジカルAIの場合、実は自律型の武器に関する規制があります。LAWSと我々は呼んでいるんですが、人間の意思を介在しなければ、誤射、誤った射撃、誤った爆撃で人が傷ついてしまう。その問題についての責任問題をどうするかということも、今後の新しい戦略の中で、政策文書の中で、しっかりとAIの問題、あるいは自律型の兵器の問題に関する規制の問題、それも合わせてしっかりと議論していくことが必要だというふうに思っています。
山下さん、現場にいらっしゃった立場からして、こういったAI、無人機と言われた、省人化というお話、キーワードがありました。その点どういうふうに捉えていらっしゃいますか?
ちょっと反論するわけじゃないですけども、人材が確保できなくなると、すぐに財政当局、事務方は自衛隊の体制を縮小するという方向になるんです。そうなった時の方便としては無人化、省人化、今回はAIですが、に行くんですよ。
AIって、皆さんウクライナ戦争をずっとここで議論した通り、精密性と時間の速さですよ。それから無人というのは、ドローンや地上で動いているのは、あれは第一線の兵士の人命をどれだけ助けるかってやっていて、組織のコンパクト化のためにやっているわけではないんですよ。だからそういう面からすると、新しい戦い方の中でもちろんドローンとかいろいろ出てきますけども、それを取り入れた、創造した新しい戦い方と体制の話は違う話ですから。これを分けてやらないと。
我々が現役の時によく冗談で言っていたのは、中期防や防衛大綱は作らない方がいいと。作るたびに自衛隊が縮んでいくと。今までは全部財政面から縮んでいっていたんです。今は今度は取れないから縮めていくとですよね。必要性があるのであれば可能性を追求しろということです。後から話になると思うんですけど、そういうことだと思います。
髙橋さん、いかがでしょう、その点について。
私も実は大綱はこれまで2回ありました。一つは平成16年大綱で、当時は平和の配当ということで、陸上自衛隊を16万から12万に減らせというのが実はすでにありました。つまり冷戦が終わったので、そういうことをやるべきだと。それからおっしゃる通り、自衛官の募集がなかなか厳しいということ。私は募集担当課長もやってきました。
そういう中で今後やるべきことは、自衛隊の体制を見直していかないと、我々が与えられた任務が。人が取れればいいんですが、取れない時代がもう来てしまっていると。実際に充足率もどんどん下がっていると。もっと言えば、予備自衛官の充足率はもっと下がってしまっていると。そういうことを考えると、現実にある問題をいかに我々が任務を遂行するために解決していくかということにおいては、省人化というのは取り組むべき課題だと私は思います。
一つだけいいですか? この話は多分今に始まったことじゃなくて、どうしてもいわゆる背広の人ですね、制服の人とで、やっぱりどうしても背広の人はどんどん合理化していくという方向に、やむを得ない事情もあって。そして制服の人たちはもっとちゃんと防衛力を基盤的に保持するべきだと。これに自民党の人たちですね、国防族の人たちとかは、やっぱり今、定数を、人員の数を減らしたりすると中国に誤ったメッセージを送るじゃないかと。その減らすという、そういう見た目が大事なんだという議論があって、結構すんなり収まる議論ではないと思いますね。
そうですね。この点について、自民党の議連が初会合を行ったのが今日だったんですね、夕方。河出さん、お願いします。
小野寺元防衛大臣をはじめとした自民党の有志議員は、自衛官の人材確保や処遇改善等を目的とした議員連盟を今日発足させました。初会合で小野寺氏は、安保3文書をまとめる中で最も大切なのは重要な資源である人だと強調。議連では自衛官の人手不足に対応するため、給与や手当の見直しに加え、家族への支援策。
つまり処遇ということになるんでしょうけど、山下さん、もちろん隊員を増やす努力は大事だと思うんですね。ただ一方で、少ない人数で戦うことも大事だという議論も含めて、今後どうやるべきだとお考えでいらっしゃいますか?
そうですね。私も地方協力本部長を2年、沖縄でやってきて、実際に隊員の募集をやってきました。それから人事計画課長でコントロールもしてきましたけども。隊員を、2等陸海空士、自衛官候補生、一番多いところを集める任務を背負っているのは、自衛隊法と地方自治法によって自治体の任務なんですよ。募集の一部は自治体がやるようになっているんですよ。そこを活性化してくれということですよ。
我々は、自衛官が今、自衛官を採用しています。第一線で活動している自衛官たちの職名は広報官です。これなぜかというと、募集は一次ですよ、一番下のね。募集は一次的に自治体がやりなさいという法定受託事務があるわけですよ。だから職名が広報募集官ではないというところがある。だからそういう面からすると、もう少し国民的議論が必要ですよ、自治体を動かすのと。
協力本部で名簿を閲覧しようや、活動に反対するわけです、個人情報を。それは元々自治体の仕事ですと。それを我々がやっているのも限度があると。今、陸上自衛隊の充足率は86.5%。元々は予算定員で、予算がないから落とされていましたけど、今は集められないと。そこから定員がついていない地方協力本部などに数千名の隊員を使っているわけですよ。だから実際はもっと下がっている、部隊は。第一線の普通科中隊だと、4個小隊あるところが演習で1個小隊しか使えないわけですよ。
こういう現状を見るのに、もう限界があるから、髙橋さんが言ったように体制を縮めるか、私が言っているようにもうちょっと国を挙げて募集努力してくれということですよ。私が思うに、1人でものすごく大きい地区を広報官が担当しています。これを例えば市役所とか役場が援助してくれて、自分たちもやりますよと言えば、これ3倍、4倍になるわけですから。そこは防衛省だけではできないということですよ。まだ伸びしろがあるということです。
さて、日本を取り巻く安全保障環境が激変する中で、この安保3文書の改定に盛り込まれるとされているのが、新しい戦い方への対応です。日本はどのように備えればいいんでしょうか?
我が国を取り巻く安全保障環境は加速度的に変化し、複雑かつ深刻になっています。防衛力の抜本的強化のため、年末までに3文書を見直します。
22年に策定され、今後10年間の日本の安全保障政策の指針となる、いわゆる安保3文書。政府は今年内の改定を予定しています。22年2月末に始まったロシアによるウクライナ侵攻では、戦闘の長期化とともに、無人機を活用した新しい戦い方が戦場の主流になってきました。
先月28日からロシアで行われた合同軍事演習「ツェントル2026」で、プーチン大統領は、ウクライナでの実戦で得られた経験が演習に反映されていると強調。
演習参加者は最新の兵器や装備を使用し、全ての任務は特別軍事作戦で得られた経験に基づいて実施され。
ロシアのインターファクス通信などによりますと、この演習には中国など少なくとも8カ国、さらにウクライナ侵攻の実戦を経験したロシア兵2000人以上が参加しました。無人機戦で得られた教訓が色濃く反映された演習だったとされています。
また中国軍は「新たな脅威への対応」と題した動画をSNSで公開。迫りくる敵の無人機を兵士が直接迎撃する様子や、防護柵を装着した車両による自爆型無人機への対処も確認されました。
一方で北朝鮮の金正恩総書記は、去年から無人機開発を最優先課題の一つと位置づけて、ロシアからはジェット推進型無人機の技術の提供を受けている可能性が指摘されています。中国、ロシア、北朝鮮という3正面からの脅威に直面する中、現代戦は大きく姿を変えています。こうした安全保障環境の変化を受け、政府は新しい戦い方への対応を安保3文書の改定に盛り込む方針です。
先月2日、陸上自衛隊が初めて公開したのは、小型攻撃用無人機という名前の機種です。スマートフォンで操作できるのが特徴で、無人機の迎撃などへの活用も想定されています。日本では無人機の役割が情報収集にとどまらず、敵の無人機などへの対処や迎撃へと広がりつつあります。こうした変化は防衛政策の大きな転換点となっています。周辺国からの軍事的脅威が高まる中、日本は新しい戦い方にどのように備えていくべきなのでしょうか?
中国、そしてロシアの連携に加えて、北朝鮮の動きも見過ごすことはできません。特にこのウクライナの戦場では、日進月歩の勢いで無人機の性能ですとか、さらにAIを駆使した統合運用が進んでいるという実態を私たちも目にしています。山下さん、何でもかんでもフルスペックに揃えることは難しいにしても、この島国日本の防衛においては、今どういったテクノロジー、そしてどういった戦い方が求められるのか、いかがですか?
そうですね。今VTRにありましたけども、これは展示訓練ですからね。こういう最新兵器を持っていますよということは、やっぱり先見性を持つことだということですよ。国家安全保障戦略、防衛戦略という中の理念の中で、新しい防衛戦略を作っていくんですけども。
ちょっと古い話ですけども、第一次世界大戦が終わった時に、日本陸軍と海軍は戦史収集団というチームを作ってヨーロッパに派遣して、その戦い方を詳細に分析して帰ってきて、それを軍備に当てるという作業をしたんですよ。
当時の新しい戦い方、あれですね。
そうですよ。総力戦である、機械化戦争であるというのを全部持ってきたんですよ。ところが予算がないので実現できなかったですけど、今回も詳細に分析して、新しいものにすぐ飛びつかないでもらいたいということですよ。ドローンやAIをやったら、それだけあればじゃあ戦車や装甲車はいらない、陸上自衛隊だったらですよ、に行かないで、バランスの取れた防衛力を作る必要があると。欠落したらそこが弱点になるんですよ。
ちょっと一例を言うと、2010年に私が陸上幕僚副長で中期防の議論をやっている時に、事務次官室で会議をやったんですけど、髙橋さんじゃないですよ、事務次官でね。そこだけちょっと。その時にバトルになった。それは担当の内局の課長と。彼が言ったのは、MLRS、HIMARSで下がキャタピラになっている多連装ロケットシステムが、陸上の5個大隊、90両あったんですよ。全部廃止しろというわけですよ。何でですかと言ったら、今から将来にあたって多連装ロケットを使うような戦場は発生しないと言ったんですよ。今見てくださいよ、ウクライナで。
それから高射砲を、今、陸上自衛隊、北海道に数少ない、1987年に制式化した高射砲が一部ありますが、自走式の。でもこれ、もうなくなっていくんです、後がないから。高射砲もいらないと言われたんです、ミサイルさえあれば。じゃあドローン対応は、今ウクライナ、2000メートルの射界で、あの車を使っていますよね。
戦車や装甲車もビバルディ作戦や、ザポリージャのフリャイポレだと、ウクライナ軍はロシア軍のドローンを制して無力化して、機械化攻撃をして領地を確保したと。だからそういうことがあるので、今回作るような、新しい戦い方というよりは、防衛戦略は着上陸侵攻対処と防空ですから。バランスの取れた多層的な防空システム、バランスの取れた装備と戦い方を持って、欠落や欠点を作らないというのが、我々ユニフォームからすると、それが求められているというふうに思います。
髙橋さんは、今回の防衛白書にも新しい戦い方というのが立てられましたよね。お話があったように、確かに無人機、そしてAIを使ったようなもの、加えて認知戦とか様々なところに対応すべきだという新しい議論と、同時にやっぱりこれまでの戦い方のノウハウというものをどういうふうに重ね合わせていくのか、今、山下さんの話の中に聞きますよね。これどういうふうに捉えていらっしゃいますか?
まず一つ、ちょっと大きな話をさせていただきたいんですが、これからの米中関係がどうなるかということです。アメリカと中国の関係は、特にアメリカは中国を最大のライバルだけど、話し合いはできる相手だと。基本的に中国と話をしながら、インド太平洋地域を比較的自由で開かれた状態にしておくことがアメリカの繁栄につながるんだと。また同時に、第一列島線にいる我々に対して必要な防衛力を強化しろと。我々の役目は第一列島線を抑止力として安定させることだ。これが今のアメリカの国家安全保障の基本になっています。
ですからアメリカは西半球だけに閉じこもるんではなくて、インド太平洋の覇権をどの国に対しても許さない。我々の役割は、そこで必要な抑止力を維持することだと。それが我々の役割だというふうに思っています。
それを前提に、新しい戦い方よりも私は前にやるべきことは、日本の継戦能力をどうやって確保するかということは大きな問題だと思います。例えばウクライナ戦争が始まった時には、ジャベリンというアメリカの対戦車ミサイルが大量に消耗して、実際にアメリカの在庫が危険になる状態になりました。今度のイラン戦争においても、イランが用いるドローンに対して高価な迎撃ミサイルを投入することによって、アメリカは対空ミサイル、いわゆる飛んでくるドローンを撃ち落とすために高価なミサイルを使って、消耗してしまいました。
非対称とも言われましたね。
そうですね、非対称な戦いですね。そういう状態になった時に、果たして日本がそのような戦い方に耐えられるだけの継戦能力を持っているんだろうか。十分な弾薬とミサイルの備蓄があるのか、あるいは国内、防衛産業に増産をお願いするとして、それが十分に確保できるのか。
もう一つは、私は人の問題もあると思っています。残念ながら、今の自衛隊の定員というのは有事初動、第一撃に耐えられるだけの正面の定員を確保すると。継戦能力としての確保、例えば予備自衛官がいますが、それは充足率が半分を切っている状態です。こういうことを考えると、新しい戦い方はとても重要なんですが、我々としてはこの継戦能力をいかに確保するか、それをいかに強化するかということも、私は合わせて考えることはぜひ必要だと思います。
山下さん、いかがですか?
継戦能力は、やはり自衛隊だけではなくて、防衛省、自衛隊だけではなくて、防衛産業ですよね。弾薬、あるいは装備もそうですからね。それが消耗した時にすぐに生産できる体制にあるかと。ただ、これ気をつけないと、じゃあ増やせと言われたら、それは会社が投資しないといけないので、その投資分をどうするかとかですね。だからそういう面で継戦能力が非常に大きいですから、人的戦力、物的戦力。
そしてもう一つは、日本国民が防衛作戦に耐えられるかどうかという話ですよね。日本国民がどれだけ長い、万が一、有事に。ウクライナは相当インフラが破壊されていますから。だからそういういろんな面で、国力、総合的な国力ということですよね。
まさに新しい戦い方といって、私たちはどうしてもウクライナで見ているような先進的な戦術、戦法、そしてそこを支える戦術、戦略ですよね。こういったところに目が奪われがちではあるんですが、やっぱり大前提として、山下さんがおっしゃったような、かつて、昔からあるような兵器の有用性も認めつつ、そしてそこにどういうふうに入れ替えていくのか。この辺りの議論というのは、防衛省と自衛隊の中で一致しているのか、この辺りどういうふうに捉えていらっしゃるんですか?
言ってみれば、新しい戦い方をやる、その中で必要な装備品がやっぱり徐々に変わっていく、変えていかなければならない。ただ、山下さんがおっしゃったのももちろん賛成するんですが、時にして一つの流行に流されてしまって、そういう装備がいらないんだと。ただし、そういうことが実はいつも現れるんです。
いつも現れる。
私がやっている時も、イージス艦はいらないんだと言っていた人たちが現れて、ミサイル艇を重視しろと。その後、BMD、弾道ミサイル防衛が始まって、イージス艦も使われるようになりました。もっと先を見通しながら、新たな脅威がどういうものが今後出てくるのかということの正確な情勢分析をしながら、イージス艦を建造して訓練して使い物になるのに何年もかかりますから、それをあまりにも短いサイクルで考えるのは私も良くないと思います。
この中長期的な将来の戦い方や、さらに外交も含めてだと思います。国力とは一体何なのかも前提としながら。ただ、お話があったように、この防衛産業をどのように整備しながら、これも一つの防衛力に変えていくのかといった点において、防衛省はこの防衛力強化のために初めて民間企業と協力していく新たな制度を開始しました。
今月2日、小泉防衛大臣は、無人機やAIをはじめとした優れた先端技術を持つスタートアップ企業と協力して、装備品の開発を促す取り組みを始めたと発表しました。これに先駆けて小泉大臣は先月の会見で、この取り組みによって防衛力強化や防衛生産基盤の強化を目指したいと述べています。
髙橋さん、先ほどの議論も踏まえて、こうした民間のスタートアップ企業との研究開発の試み、どのように捉えていらっしゃるんですか?
今まで日本の防衛産業というのは、言ってみれば重厚長大産業で、非常に研究開発も時間がかかると。装備化にも5年、10年、平気でかかるような形でやってきたんですが、今おっしゃるように、民間のスタートアップ企業と協力して、より早い期間で、特にこれは装備化することまで前提に考えていかないといけません。従って今、小泉大臣がやっておられることは、要はスタートアップ企業を活用し、より早いサイクルで新しい技術を装備化していくということが、今のこの技術革新の中で、これは絶対必要なことだというふうに思います。
山下さん、今回の取り組みで新しいのは、自衛隊の現場のニーズをまず公開をして、それに対して民間のスタートアップに解決策を募るという、これまでとは逆の発想のような感じがするんですけど、これはやっぱり防衛装備品の開発や調達の一つの転換点とも言えるんですか?
そうですね。やはり企業がいろんなアイデアを持っているので、そのアイデアと部隊のニーズを合致させて、それをどれだけ早く採用して戦力化していこうという、今、画期的に動いているのは事実です。防衛本省も、私は防衛本省といつも戦っていたので褒めることはないんですが、今回の取り組みは大したものだと思います。ずっとやっていた研究開発をきゅっと縮めるとかですね。今言ったようなのもやる、あるいは補助金を出すというのは、これも隔世の感がありますよね。だいぶ良くなったんじゃないか。
やっぱりこれまで、どうしても国家機密、軍事機密だと言って、なかなか防衛のニーズって外にあまり公開されなかったという点においては、ある意味、新しい戦い方の文脈なのかもしれませんが、こういったところが一つ一つ民間にも広がっていくというのは、一つの大きな流れの違い。これやっぱり防衛省にいらっしゃった立場としても、ここは画期的だと言えるんですか?
おっしゃる通りだと思います。言ってみれば、さっき申し上げたような、これまで防衛が付き合ってきた比較的大きな産業において、例えば必要なものを作っていただいたんですが、今まさに技術革新の世の中ですから、民間のスタートアップ企業からいろんな新しい役に立つものがどんどん出てくる。例えばお金を出したり、さっきのニーズにより近づけるというようなことをやりながら、それを装備化して自衛隊にとっての力にしていくということは、この世の中でとても大事なことだと思います。
一つです。今、重厚長大の伝統的な大きな会社が、ここもやっぱり刺激をされてイノベーションをしていこうとしているんですよ。だからそれが活性化していることは事実ですよ。
そういったですね。
今後の軍事力、軍事力というか防衛力ですね。この防衛力を強化していくために欠かせないのが、防衛費ということになるわけなんですが、その現状を見ておきます。
こちらが日本の防衛費の推移です。2022年の安保3文書の改定で、GDP、国内総生産に対して2%を目標に掲げて以降、右肩上がりとなっていて、2025年度予算でGDP比2%を前倒しで達成。今年度の当初予算はおよそ8兆8000億円で、過去最高になっています。
野村證券が去年発表した試算によりますと、防衛予算を現状のGDP比2%から3%へ引き上げた場合、5年後の2031年度の防衛予算は19兆円程度になるとしています。これ、3%の場合でも19.6兆という額でですね。
髙橋さん、アメリカは去年の末ですが、発表した国家防衛戦略の中でGDP比5%の水準を同盟国に求めるというようなことがあったわけで、そうするとアメリカの水準にはまだまだこれからということになるわけなんですが、日本として必要とされるこの防衛費とアメリカのニーズ、この辺が合うのかどうか、これ、いかがですか?
前回の2022年の安保3文書においても、結果的にGDP2%ということになりましたが、議論の過程において、防衛力を抜本的に強化するという方針のもとに、積み上げた形でこのGDP2%を達成すると。ただし、2%ということに注意しないといけないんですが、これは純粋な防衛力整備の経費だけではありません。
いわゆる純粋な防衛力整備対象経費が、大体8.9兆です。それから地元負担軽減、沖縄の地元負担軽減です。あれが0.2兆です。NATO定義における、例えば海上保安庁予算、あれが0.9兆入っています。それからもう1つは、インフラに関する投資で、これを合わせてGDP2%ということになります。
おっしゃるようにアメリカは、NATO諸国に対しては中核的な軍事支出として3.5、それからインフラ投資として1.5、これで5%というふうに言っている。これはただNATO諸国に対してだけではなくて、アメリカの国家防衛戦略、その他の国に対してもこれを唱導するんだ、唱えるんだという言い方をされています。
もちろん、オーストラリアのように2%、あ、3%という国もありますが、この中でこの防衛費が将来どうなるか。それは我々としては、必要な防衛力の、必要な装備や人員や施設や、そういうことをやりながら、防衛費を作っていくということを考える必要があると思います。
ただ、ちょっと1つ申し上げると、日本の防衛費というのは、皆さんが考えているより実は大きくはないんです。例えば、1人当たりの防衛費を考えていただくと、2024年度で日本は7万円です。アメリカは実は24万円なんです。ロシア27万、韓国13万、オーストラリア14万、イギリス10万、フランス12万、ドイツ11万です。
つまり、日本の防衛費というのは実は長らく抑えられていたということがあって、第2次安倍政権の2025年から回復してきたんですね。それを考えると、同盟国からはトランプさんより前からも、やはり日本の防衛力の負担は少ないということは、アメリカから強く言われたという経験が何度もありました。
なるほど。この7万円を高いと取るか安いと取るかというのは、国家の1人1人の収入とか、国家によってそれぞれ、国によって違いもあるので、なかなか比較も難しいところもあると思うんですが、一方でやっぱり財源というのはどういうふうにすればいいのかといった点について、飯塚さん、いかがでしょうか?
そうですね。やはり消費税の減税の話って、今の臨時国会は、もう最大の争点としてあるわけですね。この消費減税の財源をどう捻出するかという議論がまず終わらないと、この防衛費についても、どこかの増税とか、あっちこっちから集めてきて、これだけの巨額の防衛費を賄うための手当てはできないわけですね。
そうすると、まず消費税の議論がいつ終わるんですかということ。これが11月の末に終わるんですか? もっともっとかかるんじゃないですか? 今だって全然消費減税の議論に入れていないですよね。今、嫌な大臣の話があってですね。
そういうのがあって、でも、とはいえお尻は切れている。この中でどういう議論をするかということを考えると、大事なのは、やっぱり税制が関わるという意味では、自民党のキーマンは、やっぱり防衛大臣も務めたから、いわゆる国防族でもあり、そして今、党の税調会長を務めている小野寺さんですね。
小野寺さんは両方に関わっていて、この方が多分今後、非常に活躍したり、あるいはもう苦悩する、非常に悩ましい立場に立って議論をリードしていくんではないかと思います。だけど、ポイントは、しかもこれ、期間も実は決まっていないんですよ。5年でやるとかって書いていなくて、防衛力強化の目標の達成時期って、5年なのか7年なのかとも書いていない。
だから、そういう議論を今からしないといけないという意味で、難問山積、時間が本当に足りるのかという、非常に12月、タイトになると思います。
さて、この後は、この安保3文書にどのような理念を盛り込むべきなのか議論します。
今回の安保3文書の議論を巡っては、論点がたくさんあって、全てをこの1時間で議論することは難しいんですが、ただ、どういった理念を込めるべきなのか、最後のまとめとして伺いたいと思います。髙橋さん。
これまで我々が考えていたのは、法の支配でした。ルールに基づく国際秩序でした。ただ、アメリカもそれに立たないということをトランプさんは言っています。我々はどういう新しい理念でやっていくのか。そして日本の安全を守るためには、言ってみれば非核三原則の問題や原子力潜水艦の問題や自衛官の募集の問題や、それから継戦能力の問題。これは防衛産業と関わりがあります。それをしっかりと議論して、新しい理念を立てていく。これが大事だと思います。
山下さんは、この理念、どうあるべきか?
そうですね。NATO諸国と違うのは、我が国1か国でロシア、中国、あるいは北朝鮮と向き合っているというところですよね。だから、その新しい安全保障戦略の中に、日本を10年後、繁栄させていく、守っていく、そのために防衛戦略をどう考えるかというのをしっかり1本通していただいて、哲学というか理論を通していただいて、それに見合う体制を作っていく。だから、理念というのは、やっぱりものの考え方の柱だということになろうかと思いますよね。
今夜は、この安保3文書の改定に向けて、新しい戦い方における各論点を読み解いてまいりました。ありがとうございました。
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