柴咲コウと原作者・吉川トリコが語る『余命一年、男をかう』の「不器用なプロポーズ」

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概要

Netflix映画『余命一年、男をかう』のFRaU特別試写会で、主人公・片倉唯を演じた柴咲コウと原作者の吉川トリコがアフタートークに登壇した。観客はこの日初めて作品を観たばかりだった。トークではキャスティングの受け止め方、出演を決めた理由、そして多くの観客が心を動かされたであろうあるセリフについて、演じた側と書いた側の両方から振り返りが語られた。

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会場そのものが劇中のロケ地だった

トークの冒頭、司会者は会場について観客に問いかけた。唯は劇中で、残された人生でやりたいことのリストを作っている。その中に「プレミアムシートで映画を観る」という項目があり、この日の会場はその場面のロケ地だった。柴咲によれば、厳密には撮影したのは隣のシアター2だが、ほぼ同じ場所に唯と、赤楚衛二が演じる相手役が並んで座っていたという。

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原作者が見た「柴咲コウの唯」

映像化にあたり柴咲が唯を演じると聞いたとき、吉川は最初驚いたと話した。原作の唯は地方で働く地味な事務員という設定で、柴咲の名前を聞いて「地味……?」と戸惑ったという。ただ、吉川には柴咲の出演作『メゾン・ド・ヒミコ』の印象が強く、すぐにその雰囲気を思い浮かべた。さらに、子どものまま、少女のまま大人になってしまったような唯の気の強さが柴咲にはあると感じ、ぴったりだと思って公開を楽しみにしていたと語った。

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柴咲が出演を決めた理由

柴咲は、オファーを受けるといつも「なぜ自分に声をかけてくれたのか」を考えながら、企画書、原作、脚本に目を通すという。今回はまず原作があまりに面白く、自分が役に向いているかどうかは脇に置いても「いいな」と思ってしまったのが純粋な理由だった。

もう一つは素朴な疑問と興味だった。小説には言葉にしきれない登場人物の心の動きが書かれている。脚本でいえばト書きに当たるそうした部分が、実写で人物が動いたときにどう表現されるのか。それが脚本にどう落とし込まれるのかにも関心があり、まずは話を聞いてみようというところから始まったという。

司会者も、柴咲と聞いて最初は唯のイメージと結びつかなかったが、観てみると「唯だった」と述べ、客席もうなずいていた。

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「関わらせてほしい」というセリフを、演じた側から

この日、司会者が特に取り上げたのは、唯が相手に「人生に関わらせてほしい」と伝えるセリフだった。多くの観客が強く心を揺さぶられたと思われる場面である。

柴咲は、台本や原作で読んだときから、このセリフを「ある意味プロポーズだ」と感じていたという。偶然出会った二人の間にいろいろな出来事があり、一度は「もういいよ」となる。そこから唯がさまざまに考えた末にたどり着く言葉で、柴咲はそれを「超不器用な」プロポーズだと表現した。

ただし柴咲は、唯がこの言葉を素直に差し出せたわけではないとも説明した。相手の立場や自分が置かれた状況があり、そもそも唯は長生きしようと思っていない。そうした事情に逆らうことなく、その時点で精一杯出した自分なりの正直な気持ちとして演じたという。また、赤楚もこの場面にキュンとしたとインタビューで話していたことに触れた。

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書いた側が見た「一歩踏み出す恐怖」

吉川も、このセリフはプロポーズの言葉として書いたと明かした。あまり人と関わらないように生きてきた唯が、大きく踏み出す最初の一歩となるセリフだったという。

吉川は、そこには不安や恐怖があったはずだと語った。一歩踏み出すこと自体が怖く、拒絶されたらどうしようという恐れもある。だからこそ、柴咲が少し突っぱねるような言い方をしているのを見て、「その感じ分かる」と強く共感したと話した。

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本番中に感じた、説明のつかない緊張

吉川の話を受けて、柴咲は撮影当時の感覚を振り返った。「よーい、スタート」で始まる本番を毎回少しずつ重ねていくが、この場面では芝居をしているときの緊張や、本番ならではの緊張とは違うものがあったという。かなりドキドキしていたが、それが何なのかは当時の自分にも分からず、本番だから緊張しているのだろうと思っていた。

しかし吉川の言葉を聞いて、柴咲は「そういうことだったんだ」と気づいたという。心の奥底にあった「どうしよう、どうしよう」という気持ちは単なる本番の緊張ではなく、拒絶を恐れながら一歩踏み出す唯の恐怖と重なっていたのではないか、と柴咲は振り返った。

司会者が「今の話を聞いてまた観たくなる」と言うと、柴咲は配信作品なのでそれができると応じ、11月5日から観られることが改めて伝えられた。