衛星画像で読む中国の軍事拠点 南シナ海・ラオス・ジブチで何が進んでいるのか
日テレNEWS「世界一流の軍隊」を目指す中国は、国外を含む各地で軍事利用できる施設の建設や拡張を進めている。BS日テレ「深層NEWS」は、元中国防衛駐在官で笹川平和財団上席フェローの小原凡司氏と、防衛研究所の高橋杉雄氏を迎え、南シナ海、東南アジアのラオス、アフリカのジブチの3か所を衛星画像で分析した。番組では中央アジアへの兵器輸出や、放送前日に確認された空母「遼寧」の動きも取り上げた。最後には、中国の言う「覇権」とは何を目指すものなのかを議論している。両氏はいずれも、中国の狙いを領土の拡張とは見ていない。他国の選択肢を狭め、中国に配慮して動かざるを得ない関係をつくることだと捉えている。
南シナ海で倍増した中国船と「ミッションキル」
最初の話題は南シナ海である。フィリピン沿岸警備隊によると、今月8日、警備隊の船が中国海警局の船から妨害を受けた。フィリピン政府は、先月南シナ海で確認された中国軍と海警局の船が101隻に上り、8月の56隻からほぼ倍増したとしている。フィリピン軍の南シナ海担当報道官は、中国の動きを「ミッションキル」と呼ばれる手法だと説明した。フィリピン側が任務を続ける能力そのものを破壊しようとしている、という見方である。
船が増えた背景について、小原氏は中国側の主張を紹介した。フィリピンはアメリカなど他国を巻き込んで合同演習や共同パトロールを行っている。中国はこれを「いわゆる」と留保付きで呼びつつ、フィリピンが南シナ海の安全を脅かし環境を乱していると主張する。そのうえで、自国の権利を守るためとして、8月以降は海軍の演習やパトロール、海警局のパトロールを明確に増やしていると述べている。
ミッションキルの中身について、小原氏はフィリピン側の補給と救助を例に挙げた。南シナ海にはフィリピンの漁民がいるほか、フィリピンがセカンド・トーマス礁(アユンギン礁)に座礁させた軍艦には軍人が常駐している。こうした人々への補給や負傷者の輸送はフィリピンの公船が担う。中国はその船を自国の船で妨害し、目的地に到達させない。そうすることで、フィリピンがこの海域で実質的に活動できていないと示そうとしているのだと小原氏は見る。
シエラマドレ号を巡る攻防
今回の妨害は、セカンド・トーマス礁に座礁させた艦に駐留する部隊で体調不良の兵士が出て、その兵士を収容しに向かったフィリピンの船に対して起きたものだった。
高橋氏によると、中国の目的は、座礁艦「シエラマドレ号」に残る兵士たちを息ができないほど追い込み、引き上げざるを得なくさせることにある。高橋氏は歴史的経緯も説明した。フィリピンがこの艦を座礁させた当時、スカボロー礁をはじめ南シナ海のいくつかの礁では、中国が漁船で占拠し、そこから埋め立てを始めることが続いていた。フィリピンはアメリカに支援を求めたがあまり応じてもらえず、自力で対処するとして艦を座礁させた。その結果、この場所で中国の膨張は止まっている。高橋氏は、中国にとってここは目の上のたんこぶであり、フィリピンを引き上げさせたうえで漁船を送り込んで占拠することを狙っていると考えてよいと述べた。
ミスチーフ礁に集まる210隻の「漁船」
番組は次に、ミスチーフ礁の衛星画像を検証した。中国は南シナ海の西沙諸島や南沙諸島で埋め立てと軍事拠点化を進めている。ミスチーフ礁では2010年代から急速な埋め立てが始まり、約3000メートルの滑走路が建設された。今年7月に撮影された画像では礁の中央付近に多数の船が写っており、小原氏の分析では画像の範囲内で210隻が確認できたという。
小原氏によると、これらの船は漁船の形をしている。中国は明言しないが、動員された「海上民兵」の船だと小原氏は見ている。中国は、フィリピンと領有権を争う礁を占拠するときにこの海上民兵の船を使う。以前にも200隻以上の漁船で礁の中を埋め尽くして他の船を入れなくし、実質的に支配したことがある。小原氏は、そうした行動をいつでも取れるよう準備しているのではないかと述べた。
画像を拡大すると、船が横一列につながり、筏のように固定されているのが分かる。理由について小原氏はこう推測する。礁の内側なので波はそれほど高くないはずだが、漁船は長さ35〜60メートルほどと小さいため、待機中は横につないで安定させているのではないか。また、海上民兵はこの隊形のまま前方へ押し寄せる訓練も行っている。小原氏は、この隊形を使って占拠したり、他の船を押し出したりすることもあると見ている。
船の集団ごとに隻数や位置、向きがばらばらに見える点も話題になった。小原氏は、船は風に向かって立つので船首はおおむね同じ方向を向くと説明した。一方、グループごとに隻数が違う理由は分からないと率直に述べている。ただし、補給など何らかの活動をするときには固まりがばらけるため、動きがあることは画像から読み取れるという。
海上民兵とは何者か
小原氏によると、民兵は人民武装部の正式な組織である。民兵であること自体を職業にする「基幹民兵」と、そのつど動員される「普通民兵」がいる。ミスチーフ礁では、地域によって若干の差はあるが、5月から9月半ばまでの休漁期間に動員がかかり、船が増える。普段は漁業をしている人々が、動員に応じて手当を受け取る仕組みだという。
7月には210隻いた船も、休漁期間が終わった現在は大きく減っており、10月8日時点の礁内の船は字幕上で78隻程度とされる。漁が始まれば本業に戻るため、船が減るのは当然である。ただ、小原氏は2つの点が分からないと述べた。1つは、5月半ばには一気に増えるのに、減り方がそれほど急ではないこと。もう1つは、漁が始まっているにもかかわらず礁内に多くの船が残っていることで、小原氏はこれを異常な事態だと指摘した。
コメンテーターの伊藤俊行氏が、一般の漁業者も法的に位置づけられているのかと尋ねた。小原氏の説明はこうである。人民武装部が動員をかけるが、実際には漁業者個人ではなく水産会社などに働きかけ、何隻出せという形で動員していると思われる。参加者が共産党員とは限らない。ただし平時から動員がかかり、1週間程度の訓練も行われていることは分かっている。伊藤氏は、漁業が偽装なのではなく、実際に漁業をしながら必要なときには来られる体制を普段から整えているのだと受け止めた。
小原氏はさらに、基幹民兵が乗る船は漁船の形をしていても放水銃を備えていると付け加えた。ミスチーフ礁ではこうした船が50隻弱、他の漁船が漁に出ている冬の期間も礁内にとどまっているという。長期間居座ることでフィリピン側が対応に苦しみ、疲弊していく点も、海上民兵が使いやすい事情の1つだと小原氏は認めた。
フィリピンにとってのグレーゾーンの難しさ
兵士と民間人の境界を曖昧にするグレーゾーンの手法について、高橋氏はフィリピン側の苦境を説明した。フィリピンは沿岸警備隊で対抗するが、中国海警局も強力で押し込まれていく。軍同士になっても勝てないうえ、軍を出せば「軍事的にエスカレートさせた」と非難され、かえって立場が悪くなる。そのため、海上民兵や海警局で圧力をかける手法は、文字通りグレーゾーンで非常に有効な方策になっているという。
キャスターの右松健太氏は、見た目は民間漁船なので、フィリピンが強い圧力をかければ中国に「平和な漁民に何をするのか」と言う口実を与えてしまうのではないかと尋ねた。高橋氏はそれを認め、フィリピン軍自体が非常に弱いのであまり手を出せないが、仮に手を出してもそうなると述べた。サボタージュの際に「民間の漁民がやったこと」として責任を回避する可能性についても、高橋氏はあり得るとした。いわゆる「もっともらしい否定可能性」も使えるという見方である。
アンテロープ礁の滑走路と「不沈空母」
続いて番組は、南シナ海北部・西沙諸島のアンテロープ礁を取り上げた。先月25日撮影の衛星画像には、滑走路建設のために稼働するクレーンと、満載状態の資材を積んだ船が写っている。ロイター通信は専門家の見方として、滑走路の建設は順調に進み、来年半ばまでに完成する見通しだと伝えた。南シナ海で中国にとって最も重要な海上基地の1つになる可能性があるという。
小原氏によると、建設中の滑走路は北端がまだ確定していないが、オーバーランエリアを含めて3000メートルを超える規模になりそうだ。戦闘機だけなら一般に2400メートルあれば運用できるが、大型輸送機や空中給油機には3000メートル程度が必要になる。東北東に約90キロ離れたウッディー島には約2300メートルの滑走路があるため、欧米メディアの中には、アンテロープ礁に滑走路を造る必要はないと論じるものもあった。しかし小原氏は、2300メートルでは大型輸送機が降りられないと指摘する。戦闘機を展開するには機体だけでなく整備要員や機材も運び込む必要があり、大型輸送機が欠かせない。そのため、アンテロープ礁はパラセル諸島で非常に重要な軍事基地になる可能性があると小原氏は見ている。
高橋氏は、こうした基地の増加を「沈まない空母」がいくつもできた状態だと表現した。15年ほど前に南シナ海で埋め立てが始まったころ、高橋氏自身も「有事にはアメリカが潜水艦からトマホークを数十発撃てば無力化できる、ただの標的ではないか」という議論をしていたという。しかし拠点が6か所、7か所と増えると、互いに支援し合い、互いのミサイルで防護できるため、簡単には潰せなくなる。高橋氏は、中国にとって最重要の拠点である海南島の前方に、海と空の要塞地帯ができつつあるというイメージで捉えてよいと述べた。
戦闘機や哨戒機が常時離着陸するようになれば、事実上の防空識別圏を南シナ海に設定することも可能になり、能力は大きく上がると高橋氏は見る。台湾有事を見据えた布石か、南シナ海支配の一環かという問いには「両方」と答えた。台湾有事の際には南から攻めることになるし、マラッカ海峡を通る航路を他国に使わせなくすることもできるからだという。第1列島線の前進か内海化かという問いに対しては、こう答えた。フィリピンやベトナムが中国になびく可能性はそれほど高くない。だからこそ、相手を子分にするのではなく南シナ海を実力で支配する。そのための拠点だという。
中国はこうした施設を軍事施設だとは言っておらず、アンテロープ礁を観光地にするという話さえある。小原氏はこれに対し、いくつかの根拠を挙げた。まず、アンテロープ礁は南北を反転させるとスビ礁とよく似た形をしており、比較するとスビ礁と同じような施設を建設しているように見える。次に、島の上の2か所にコンクリート製造施設が造られている。画像の船の積み荷はセメントと思われ、骨材や砂利と混ぜてコンクリートを大量に生産している。普通の施設ではなく、なぜこれほどのペースで造るのかを考えれば、少なくとも軍民両用になると考えるのが自然だと小原氏は述べた。
伊藤氏は、礁は本来、隠れ岩のような場所で、そこに施設を造るのは脆いと思っていたと述べた。そのうえで、数を増やすことでその弱点を克服できるのか、まだ造り続けるのかと尋ねた。高橋氏は、浅い場所にしか造れないので適地はそれほど多くないとしつつ、数を多く、しかも大きく造っていると答えた。アンテロープ礁の埋め立て面積は、辺野古のキャンプ・シュワブに新たに造られる基地の4倍あるという。そうすることで戦闘機も受け入れ、ミサイル攻撃にも耐えられるようになっていくのではないかと高橋氏は見ている。
ラオスの「共同訓練センター」は軍事基地か
話題は東南アジアの内陸国ラオスに移った。首都ビエンチャンの北約50キロにある空港で、中国の新たな施設の運用が始まった。先月の画像では滑走路が完成している。中国国防省は先月29日、この空港で共同支援訓練センターと航空学院の運用を開始したと発表した。目的はラオス空軍のパイロット育成の支援であり、第三国を標的にするものではないと説明している。
小原氏は滑走路の短さに注目した。オーバーランエリアを含めても約2000メートル、実際の滑走路はおそらく1800メートル程度しかない。今月に入ってからの画像では、着陸用の白線と滑走路の方位を示す数字がすでに描かれている。この長さでは大型の戦闘機の離着陸は難しい。そのため小原氏は、現時点では中国の説明どおり、小型の訓練用ジェット機などを使う訓練施設だろうと見ている。ただし「共同」という名前を付けている以上、中国も使えることになる。滑走路の北側にも南側にも拡張の余地があり、今後どう使っていくかは注目すべきだと述べた。
ニューヨーク・タイムズによると、衛星画像では中国とパキスタンが共同開発した軽量の2人乗り機JL-8が確認されている。高橋氏は、現状では中国軍の基地になるかどうかは判断できないと前置きした。そのうえで、ラオス軍の訓練を支援すれば長期にわたって両国の軍と軍の関係が非常に強くなるとし、それが現時点で評価できる狙いだと述べた。ベトナムは中国の友好国になりきらないうえ、アメリカとの関係も深めている。その間にあるラオスとの関係強化には、かなり強い目的があると高橋氏は感じている。
内陸国であることの意味について、高橋氏は、海に面していないため大量の物資を運び込むのが難しく、軍事拠点にすることはそもそも難しいと述べた。ただ、インドシナ半島の中央にあるため、ベトナムや南シナ海、インド洋方面をにらみながら関係を強化し、何らかの施設や情報収集拠点にすることはあり得ると見る。
伊藤氏は日本との関係を取り上げた。ラオスの首相は6月に来日して高市首相と会談し、「自由で開かれたインド太平洋」での協力を確認している。カンボジアについては、中国が基地の拡張を手助けしているとみられる一方、日本はOSA(政府安全保障能力強化支援)で協力している。伊藤氏は、日本にとって重要な国々に中国が入り込んでいることには注視が必要ではないかと問いかけた。高橋氏は、多くの国は中国かアメリカか日本かを選びたくないので両にらみで進めると答えた。ラオスとカンボジアは比較的中国寄りだが、だからこそ日本との関係もある程度は維持したいと考えており、そこがポイントになるという。
カンボジアのリアム海軍基地とラオスの空港が空と海で連携しているのかという問いに、小原氏は、現段階で連携しているようには見えないと答えた。どちらの基地もそれほどの規模がないからだという。リアム海軍基地も中国では「共同保障訓練センター」と呼ばれている。中国語の「保障」には整備や補給の意味が含まれる。ここでも「共同」という言葉を使っていることから、中国はカンボジア海軍を訓練・支援すると言いながら、自らも使えるという意味を持たせていると小原氏は見ている。
中央アジアの兵器市場でロシアに代わる中国
番組の映像では、ウズベキスタン国防省が今年8月にSNSへ投稿した動画が紹介された。中国国営の英字紙チャイナ・デイリーによると、ここで最新鋭の戦闘機として紹介されているのは中国のJ-10である。米経済誌フォーブスは、中央アジア諸国はもともとロシアとの軍事的な結びつきが強いが、西側の制裁でロシアの防衛産業が影響を受けるなか、代わりの供給元として中国の存在感が増していると伝えた。先月27日のトルクメニスタン独立記念日のパレードでは、中国の移動式防空システムFK-2000が少なくとも10基確認されたと、香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポストが報じている。
中国製兵器の評価について、高橋氏はロシア製との大きな違いとして、実戦でまだ使われていない点を挙げ、性能の評価は難しいと述べた。一方で、価格の安さ、インフラ整備などとの抱き合わせ販売に加え、最近では電子装備や半導体の能力は中国製のほうが高いと考えられる点が評価につながっているのではないかと見る。
小原氏によると、中国はもともと中央アジアや中東、アフリカに武器を売っていたが、かつては近代的な兵器を製造できず、安価な武器が中心だった。買う側も当時はそれほど高性能な兵器を求めていなかった。今は地域によって緊張が高まり、高性能な兵器が求められている。そこで手頃な価格で高性能な兵器となると中国製が候補に挙がるという。J-10については、パキスタン空軍のJ-10Cが相手の航空機を撃墜した実績があるとされ、実戦経験のある数少ない戦闘機になった。そのためJ-10Cを欲しがる国は増えていると小原氏は見ている。
ロシアとの摩擦について、高橋氏は、旧ソ連圏に他国の影響力が強まることをロシアは好まないので愉快ではないだろうと述べた。ただ、ロシアはウクライナを巡って中国から様々な支援を受けており、実際にアフターサービスもできなくなっているのだろうと推測する。そうであれば、不愉快でも受け入れざるを得ず、今後は競争していかなければならないと考えているのではないかという。中央アジア諸国の側について高橋氏は、中国の安全保障圏に吸い込まれる警戒感はあるとしつつ、ウクライナ侵攻を見てロシアに依存しすぎる怖さも感じたはずだと述べた。東南アジアと同じく両にらみでいきたいという動機があるのだろうという見方である。小原氏もこれに同意した。どの国もロシアへの一方的な依存を怖れてきた。そこへ中国が、カタログデータ上ではあってもロシア製に対抗できる性能の兵器を売れるようになったことで、中央アジア諸国が本当にバランスを取れるようになってきたと述べた。
ジブチ基地で増える通信施設
中国が軍事的影響力の拡大のために重視しているとされるのが、アフリカ東部のジブチである。ジブチはバブ・エル・マンデブ海峡に面しており、米戦略国際問題研究所(CSIS)によると、世界の海上貿易の約16%がこの海峡を利用している。ジブチにはアメリカ、フランス、イタリアなどに加え日本の自衛隊も拠点を置いており、多国間の共同訓練も行われる。中国は2017年にここへ基地を造った。CSISは、中国の基地は経済的権益を安全保障上の脅威から守るとともに、海軍の訓練拠点としても活用されているとしている。
今年2月撮影の衛星画像を2023年のものと比べると、基地の南東側と北西側に新たな施設が増えている。CSISによれば、これらは通信施設である。
小原氏はまず、ジブチ基地は中国が海外で唯一、自国の基地だと認めている施設だと説明した。2017年に完成し、2018年から運用されている。日本やアメリカ、フランス、イタリアの基地は飛行場側にあり、航空機によるパトロールを主な目的としている。これに対し中国の基地は海に面し、海の方を向いている。小原氏は、中国がバブ・エル・マンデブ海峡を含むこの海域を重要な海上交通の拠点と考え、ここを押さえる意思を持っていると見る。また、日本の自衛隊の基地などは撤退を想定した仮設の基地であるのに対し、中国の基地は恒久的な使用を念頭に置いた非常に堅固な建物になっているという。
能力強化の面では、北側にレーダードームが複数造られ、南側には大きなパラボラアンテナが3基並んでいる。CSISの分析では短波通信用、超短波通信用などのアンテナ類や5Gの設備もあるとされる。小原氏は、これらを使って各種の通信や通信の傍受も行えるようになっていると見ている。周波数ごとに得られる情報が違うのかという質問には、こう答えた。機器によって出す電波は異なり、自ら通信する場合も、電波の長さによって到達距離が変わったり、距離は短いが非常にクリアに通信できたりする。5Gであれば、どの帯域幅でどれだけのデータを送れるかといった違いがあり、用途は様々だという。
イラン情勢を受けて中東に展開する米軍の情報を集めている可能性について、高橋氏は次のように述べた。ジブチの各国の基地はもともと海賊対策のために造られた。ただ中東情勢の緊迫で軍の活動が活発になれば、中国から見て、ここで米軍の情報を取れば価値の高いものが得られると考えるのは自然だろう。仮に暗号が読めなくても、電波がどの頻度で、どこから出ているかという、いわゆるシギントだけでも相当な情報になる。そうした点は考えているのではないかという。
日本が中国をどう警戒すべきかについて、高橋氏は「両方を見る必要がある」と述べた。まず、海賊対策での協力は今や数少ない日中協力の1つなので、きちんと続けることが第一に必要だという。一方で、情報収集やアフリカへの影響力の足場になるという点には警戒の要素がある。ただ中国のアフリカ政策は、冷戦期に植民地独立運動を支援していた時代からの長く深い付き合いに根ざしている。それを理解したうえで何が起きているかを正確に知り、日本は日本でやるべきことをやっていくことが必要だと高橋氏は述べた。
伊藤氏は、中国は衛星画像で見られていると分かっているはずだと指摘した。そのうえで、見られても仕方ないと思っているのか、ある程度見せる意図があるのか、それとも見えない動きにこそ注意すべきなのかと問うた。小原氏は、ジブチ基地に関してはわざわざ見せるためではないと思うと答えた。ただ、これだけ大々的な基地を造れば、中国が軍事プレゼンスを展開する拠点を持っていると示すことにはなり、それを隠すつもりもないのだろうと述べた。
空母「遼寧」の動きと台湾周辺の同時行動
番組では新たなニュースとして、防衛省統合幕僚監部の発表も取り上げた。前日、中国の空母「遼寧」が沖縄本島と宮古島の間を通過して太平洋に出て、石垣島の南約250キロで艦載機の発着艦訓練を行ったという。
高橋氏によると、中国の空母がこの海域を抜けて西太平洋に出ること自体は時々ある。今回の特徴は、そのまま西太平洋へ出るのではなく台湾の方へ進み、そこで戦闘機を発着させたとみられる点だ。様々な情報を総合すると、この時期は台湾海峡周辺で中国空軍や海警の活動が活発化しており、11機が台湾海峡の中間線を越えた。中間線を越えるのはかなり挑発的な行動で、しかも戦闘機だけでなく電子戦機や無人機も含まれていた。これが台湾の東西で同時に起きたことがポイントだと高橋氏は強調する。台湾の封鎖などを目指した演習・訓練だった可能性は否定できず、ある種の警戒が必要だと述べた。
小原氏は、衛星画像から追った経過を説明した。遼寧は青島の基地から運用されているが、10日までは在泊していた。11日から13日の間に姿を消し、13日の画像ではすでにいなかった。空母打撃群を構成する大型の055型駆逐艦も一斉に出港しており、ある程度大規模な行動が想定された。一方で、打撃群が長期間行動するときには補給のために常に随伴するはずの総合補給艦は、いったん出たものの13日には港に戻っている。そのため小原氏は、今のところそれほど長い航海にはならないのではないかと見る。ただし補給艦が再び出始めれば分からないと留保した。訓練の目的については、高橋氏の言うように何かピンポイントの目的があって動いたのだろうと述べた。
中国の「覇権」は何を目指すのか
まとめの議論として、右松氏は中国の覇権とはどのようなものかを問うた。高橋氏は、今見て取れるのは子分を増やすことではないと答えた。他国の選択肢をできるだけ狭め、最終的には中国の意向を忖度して動くように仕向けていくことが覇権戦略ではないかという。グローバルに広げて軍事的影響力も増し、アメリカと対抗できる存在になる。あるいは、アメリカを快く思わない国にとっての「プランB」になれるような形をつくる。高橋氏は、アメリカを完全に置き換える覇権ではなく、アメリカの覇権に対するアンチテーゼ的な選択肢になることが、現実的に目指せるところではないかと述べた。
小原氏は、中国のやっていることは歴代王朝とあまり変わらないのではないかとさえ思うと述べた。中国の王朝は領土を広げる一方、周辺国が朝貢すれば、かえってより多くの土産を渡していた。ただし中国の言うことは聞かせた。今の中国も、子分を作るというより安全保障協力を強め、相互の協力関係を強固にしている。これは日本がヨーロッパやオーストラリア、フィリピン、ベトナムなどと始めていることでもある。しかし、中国からの支援がなくなればその国の能力も失われるという関係になれば、相手は中国の意向をうかがわざるを得ない。小原氏は、中国はそうした協力を広げ、中国が求める国際秩序を支持させ、あるいは中国に忖度して動くよう求めており、今はその布石を打っている段階に見えると述べた。東南アジア・南アジアについては、まだ軍事協力の段階であり、中国に頼らざるを得ないように仕向けていくものだという。
アメリカの見方について、高橋氏は2つあると説明した。1つは、中国のグローバルな影響力拡大をアメリカへの挑戦として警戒する見方である。もう1つは、米中競争の焦点は西太平洋、第1列島線、台湾といったエリアなので、中国がジブチなどへ投資して資源を広く分散させれば、かえってアジアが手薄になるとして「やらせておけ」とする見方だ。中国が往年の米軍のような世界展開をまだ目指しているとは思わないとしつつ、焦点が台湾と西太平洋である以上、そこが薄くなるならやらせておけばよいという発想があるという。そう仕向ける戦略的コミュニケーションがあるのかという問いには、単に観察しているだけだろうと答えた。むしろ、アフリカなどを重視して張り合うのか、西太平洋や中東を重視するのかという、アメリカ国内の政策論争につながる話だという。小原氏は、アメリカに張り合うつもりはないだろうとしつつ、海上輸送路に中国が影響力を行使できるようになることには警戒感があると付け加えた。
今後注目すべき点:兵器以外の軍の強化
最後に、今後何に注目すべきかが問われた。高橋氏は、中国軍の近代化というと新型兵器に注目が集まりがちだが、軍はそれだけではないと述べた。基地というインフラがあり、兵士の練度もある。今回取り上げたのは、兵器を支えるインフラが中心だった。南シナ海の「不沈空母」のような基地を今後どうしていくのかに加え、番組で扱わなかった論点としてPKOや海賊対策を挙げた。これらは中国にとって一種の実戦訓練の場と位置づけられてきており、それによって兵士の練度も上がっているという。高橋氏は、兵器以外の部分での中国軍の強化にも注目していく必要があると述べた。
小原氏は、軍には複数の側面があるという指摘に同意したうえで、人民解放軍の「保障」、つまり整備・補給の問題は今なお根深いものが残っているようだと述べた。国内の基地も拡張しており、今後どうするのかは注目しなければならないという。海外への影響力という点では、ソマリア沖の海賊対処に派遣された第48次の部隊が現在帰国の途上にあり、東南アジア各国を回って影響力を強めている。小原氏は、そうした動きを踏まえ、日本も影響力を強化する取り組みが必要だと締めくくった。
強い軍が必要だ。国の安全を守るために。世界一流の軍隊を目指す中国ですが、その目標に向けた動きが衛星画像から見えてきました。今日は世界各地で軍事施設の建設を加速させる中国の脅威を徹底分析します。
深層NEWS、本日のゲストをご紹介します。元中国防衛駐在官で笹川平和財団フェローの小原凡司さんです。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。よろしくお願いいたします。
そして、防衛省防衛研究所研究官で、国際安全保障、現代軍事戦略がご専門の高橋さんです。よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。よろしくお願いいたします。
世界各地で覇権拡大の試みを続ける中国は、軍事利用可能な施設の建設や拡張を加速させているとの指摘もあります。その中でも今日は南シナ海、そして東南アジアのラオス、アフリカのジブチ、この3か所から中国の戦略を考えていきたいと思います。まずは南シナ海の状況について、佐藤さん。
中国が領有権を主張し、実効支配を強めている南シナ海ですが、その動きが加速しているようです。フィリピンの沿岸警備隊によりますと、今月8日、警備隊の船が中国海警局の船による妨害を受けたとしています。フィリピン政府によりますと、先月、南シナ海域で確認された中国軍と海警局の船は101隻で、これは8月の56隻からほぼ倍増したということです。
フィリピン軍の南シナ海担当報道官は、中国による軍備増強について、これはミッションキルと呼ばれる手法で、フィリピン側の任務を継続する能力そのものを破壊しようとしていると述べています。
まず小原さんに伺います。以前からこの南シナ海では中国とフィリピンの衝突が続いていました。その上で、中国軍ですとか海警局の船が今、倍増しているんだと。これ、背景をどういうふうにご覧になりますか。
中国の主張によれば、フィリピンがアメリカやその他の国を巻き込んで南シナ海で、中国は「いわゆる」とつけますけれど、合同演習ですとか、あるいは共同パトロールのようなことをやって、フィリピンが南シナ海の安全を脅かしているんだと。ここの環境を乱しているんだと。だから中国は自分たちの権利を守るためにと言って、明確に8月以降、南シナ海での海軍の演習やパトロール、海警局もパトロールを増やしているというふうに言っています。
その中で、フィリピン軍の報道官が言及したミッションキル、これは任務の無効化ということのようですが、具体的にどのような手法や、さらには行為というのを示すんでしょうか。
特にフィリピンの漁業などもですけれど、そういったところへ補給をしたりですとか、あるいは後ほど出るかもしれませんが、セカンド・トーマス礁というところにフィリピンが座礁させている軍艦。ここにフィリピンの軍人が常駐していますので、ここに対する補給、あるいはけが人などが出たときの輸送など、フィリピンの公船、公の船が補給だとか救助というのをやるんですけれど、そのこと自体を船などを使って妨害する。そこまで到達できないようにしたりとかすると。そのことによって、フィリピンが実質的にここでそうした公の活動ができていないではないかということを示すということなんだと思います。
高橋さんにも伺いたいと思います。今まさに画像でご覧いただいたのが、南シナ海にはフィリピン海軍が、このセカンド・トーマス礁、これはアユンギン礁とも言われますが、ここに座礁させている軍艦に部隊を駐屯させています。その部隊、今回何が起きたかというと、この駐屯させている部隊の中で体調不良の兵士が出たと、フィリピン側ですね。その兵士を収容するためにこの船に向かっていたフィリピンの船に対して、中国が妨害したんだと。こういったことが常態化している。さらにそれを常態化させていくこの目的、中国には一体何があるんでしょうか。
目的は、このシエラマドレ号に残っている兵士たちを引き上げさせると。もう補給ができない形に追い込んで、引き上げざるを得ない形にフィリピンを追い込んでいくことが目的で。というのも、フィリピン軍がこのシエラマドレ号を座礁させたときというのは、有名なのはスカボロー礁ですけど、南シナ海のいくつかの小島というか、礁の、何とか礁ってやつですね、中国が漁船で占拠して、そこから埋め立てを始めていくみたいなことが続出していたんです。
フィリピンは当時アメリカに支援を頼んだんですけど、あまり支援してくれなかったので、じゃあ自分でやってやるということで座礁させたと。そこで中国の膨張が止まっているんですね。だからそこを、やはり中国にとっては非常に目の上のたんこぶみたいになっていて、引き上げさせて、また漁船を送り込んで占拠するということを狙っていると考えていいと思います。
さらに、南シナ海の海域には数多くの中国の船が集結しているところもあるようです。
中国は現在、南シナ海の西沙諸島や南沙諸島で埋め立てや軍事拠点化を進めています。今回、船が集結しているとされるのが、こちらミスチーフ礁です。ミスチーフ礁は中国が2010年代から急速な埋め立てを開始し、およそ3000メートルの滑走路が建設されるなど、軍事拠点化が進んでいます。
ご覧いただいているこちらなんですが、今年7月に撮影された衛星画像です。これはミスチーフ礁の一部を拡大した写真なんですが、この全景を見てみますと、このように中央付近にいくつも船が確認できます。小原さんの分析によりますと、この画像の範囲内で210隻が確認できたということなんですが、この船の正体は一体何なんでしょうか。
船の形は漁船の形をしていますが、これも中国は明言しませんけれど、民兵に動員された海上民兵と言われる、そういった活動をする船だと思います。
これは何の目的で集結しているんですか。
先ほど高橋さんのお話にもあったように、中国はフィリピンと、彼らが言う領有権争いをしているサンゴ礁などを占拠するときに、この海上民兵の船を使って占拠してしまうんです。これは以前も200隻以上のこういった漁船を使って、サンゴ礁の中を埋め尽くして、他の船が入れなくしてしまって、中国は実質的に取ってしまうということをやります。ですから、そういったことをいつでも行えるように準備をしているのではないかと思います。
では今度は、この船の部分を拡大してみたいと思います。このように、衛星画像でも分かるんですが、1つの船がずらっと横につながって、まるでいかだのように固定されているのが分かります。小原さん、これはなぜいかだのように船をつなげる必要があるんでしょうか。
これはサンゴ礁の中なので、そんなに波は高くないはずですけれど、やはり漁船は35メートルから60メートルぐらいの長さ、大きさなので、小さい船なので、安定をさせるために、待機している、いわゆる動かない間は、このようにつなげて安定を保っているのではないかと考えられます。ただ実際、この隊形で前に押し寄せるような訓練も海上民兵は行っていますので。
そうですか。
ここでは待機していますけれど、こういった隊形を使って占拠をしたり、あるいは他の船に対して押し出していくというようなこともやっていると思います。
改めて、もう少し全景を見てみますと、こういったいかだ状につながれた、言ってみれば船の塊といいますか、集団が、この船の数も角度も場所もばらばらなんですよね。この辺りには何か法則性ですとか、合理的な意味合いがあるんでしょうか。
角度自体は大体同じ方向を向くと思うんですけど、これは風に勝手に船は立つんですね、風が吹いてくると。なので、大体船の舳先というのは同じ方向を向くということなんだと思いますけれど、この隻数がそれぞれのグループで違うのはなぜかというのは、よく分かりません。ただ、補給をしたりですとか、何か活動するときには、この固まっているものがばらばらになっていきますので、そうすると何か動きがあるんだということが分かります。
なるほど。南シナ海では以前から、この領有権を争っている海域で、訓練ですとか支援を受けた人たちが海警局と行動を共にする、海上民兵の活動が確認されていました。私たちもよく海上民兵という存在を伝えるんですが、どういうような存在と解釈していますか。
海上民兵というか、民兵自体は人民解放軍の正式な組織です。ただ、この民兵と言われる人たちには、基幹という、この民兵であること自体を職業にしている人と、普通民兵といって、その都度動員される人たちがいます。ですから、このミスチーフ礁も5月から9月半ば、これは地域によって若干の差はありますけれど、漁が休みの期間、この期間に動員をかけられて船が増えるという状況が見えます。
これは普段は漁師として魚を取っていて、例えば報酬をもらったり、手当をもらうという目的で集まってくる、そういうふうな。
動員をされれば手当も支払われるということですけれど。ですから、先ほど7月には210隻だったんですが、すでに休漁期間、漁が休みの期間が終わっていますので、10月8日現在では、このミスチーフ礁の中には78隻しか船がありません。
むしろ漁の期間というのが、漁が始まっていくと当然その皆さん、漁が目的、本業ということになるので、海上民兵は減ってくるわけなんですね。
はい。ただ不思議なのは、増えるときは5月半ばに一気に増えるんですけれど、減り方がそんなに急ではないのがなぜかというのが分からないのと、もう1つは、減っているにもかかわらず、本当は漁が始まっているにもかかわらず、このミスチーフ礁に多くの船がいるということになると、それは異常な事態だということが分かると思います。
伊藤さん、いかがでしょうか。
今お伺いして、海上民兵というのは、きちんと法的に位置づけられた民兵という人たちが参加していると。一方で、その一般民兵ですか、漁業をやっている人たちも入ってくると。この人たちも法的に位置づけられている。
はい、そうです。人民武装部という組織が動員をかけるんですけれども、実際には漁業者1人にというよりは、水産会社等に働きかけて、何隻出せというような動員をかけていると思われます。
必ずしも共産党員であるとは限らない。
限らないんですが、ただ平時から動員がかかって、1週間だとか、そういった期間で訓練も行っているということは分かっています。
漁業は偽装ではないんですね。漁業はやっていて、しかし、いざというときには来られるということを普段からやっていると。なるほど。
高橋さん、こういった、いわゆる実動部隊と言えるような民兵、海上民兵を使うことで、つまり平時と有事の間を曖昧にさせるグレーゾーンということもよく言われます。この辺り、フィリピン側としては対応の難しさというのがあると思うんですが、どういうふうにご覧になりますか。
そうですね。やはりこれに対してコーストガード、沿岸警備隊で対抗するわけですけれども、中国の海警、沿岸警備隊もやはり強力なので、そこで押し込まれていくと。軍同士になっても勝てないし、あるいは軍を出したら軍にエスカレートしたと非難されて、かえって立場が悪くなるので。こういった海上民兵とか海警とかで圧力をかけていくというのは、文字どおりグレーゾーンでは非常に有効な方策。
これは見た目が一応、民間の漁船という立場を取っているので、そうするとフィリピン側としては、ここにあまりにも軍事圧力をかけると、中国側としては、平和な漁民たちに何をするんだということで、言ってみると口実を与えてしまう。
そうですね。フィリピン軍自体すごく弱いので、あまりできないんですけれども、やったとしてもそういうことになってしまうということです。
何かサボタージュをしたときに、言ってみると、これは民間の漁民たちがやったことなんだということで、中国側が責任回避する、そういったことも考えられるんですか。
あり得るでしょうね。そういった、もっともらしい否定可能性というものもまた使えると思います。
小原さん、その点で言いますと、海上民兵が、確かに漁があるとき、ないときで数は随分変動があるということですが、もう四六時中ずっといると、フィリピン側も対応に苦慮して、疲れてくるとか、そういった状態というところが、ずっと海上民兵を使いやすいという事情もやっぱりあるわけですか。
もちろんそのとおりだと思います。先ほど、普通民兵のほかに基幹民兵という、ずっと民兵として活動している人たちがいると。この人たちが乗っている船も漁船の形はしているんですけれど、放水銃などをつけていたりもします。これがミスチーフ礁の中には50隻弱、この冬の期間、他の漁船が漁をしている期間も、この中で待機している状態です。
そうしますと、いずれ警戒を緩めたりとか、さらには撤退したりとか、そういったことがフィリピン側にあると、その隙をついて領有権を固めていくということになりそうですが、この後は南シナ海の覇権を狙う中国にとって最も重要となるとも言われる海上基地について、衛星画像で詳しく見ていきます。
中国の南シナ海覇権にとって重要な海上基地が建設されていると指摘されているのが、こちら、南シナ海の北部なんですね。こちらなんです。アンテロープ礁といいます。佐藤さん。
こちらは先月25日に撮影されたアンテロープ礁の衛星画像です。北側のこちらの辺りを拡大した写真、出ますでしょうか。こちらが、本格的な滑走路建設のために稼働中のクレーンが写っているのが確認できます。さらに、少し小さくて見えづらいんですが、こちら、船を確認することができまして、これを拡大してみますと、満杯の砂利を積んでいることが確認できるといいます。
ロイター通信は専門家の意見として、滑走路の建設は順調に進んでいて、来年半ばまでに完成するとの見通しだとしています。さらに専門家は、南シナ海で中国にとって最も重要な海上基地の1つになる可能性があるとも指摘しています。
まず小原さん、これが来年半ばに完成すると、どのような航空機の運用が可能になるんでしょうか。
今建設をしている滑走路と思われる部分、まだ北端がどこまでなのかというのは確実に分かっていないんですけれど、3000メートルを超えるような長さ、これはオーバーランエリアという滑走路の本体からちょっと外れるところも含めてなんですけど、3000メートル級の滑走路ができると。戦闘機だけであれば2400メートルあれば、一般的には運用できると言われているんですが、大型の輸送機ですとか、あるいは給油機、空中給油機等ですね、これはやはり3000メートルぐらいないと運用できないので。
先ほどの地図にはありましたが、ここの90キロメートルぐらい東北東側にウッディー島というところがありまして、そこには2300メートルぐらいの滑走路があるんです。欧米のメディアでも、ウッディー島に滑走路があるんだから、もうこのアンテロープ礁に滑走路を作る必要はないだろうというようなことを言っているメディアもあったんですけれど、実際には2300メートルでは大型の輸送機等はここに降りられないとなると、戦闘機を展開する上では戦闘機本体だけではなくて、それを整備する要員ですとか機材というのも一緒に持ち込まなければいけないので、そうしたときには大型の輸送機も必要になるということですから、このアンテロープ礁が、この西沙諸島、パラセル諸島の中で非常に重要な軍事基地になる可能性があると思います。
高橋さん、南シナ海のこれは環礁の1つなわけですが、ここに陸上の基地が出来上がるということ、これは何を意味するんでしょうか。
すごく簡単に言えば、沈まない空母、不沈空母がいくつも出来上がった状態と言えるわけです。15年ぐらい前に南シナ海で埋め立てが始まったときには、ここに滑走路を作っても、アメリカが潜水艦からトマホークを撃てば、有事のときにそれこそトマホーク何十発かで無力化されるんだから、ただのターゲットじゃないかという議論を私自身もしていたんですけど、今6か所ぐらいあるのかな、6か所、7か所というふうに数が増えていくと、相互に支援したり、相互のミサイルで防御したりできるので、簡単には潰せなくなっていきます。
ですから、南シナ海全体が、海南島が中国にとって一番重要な拠点ですけれども、海南島の前方にある種の要塞地帯、海空の要塞地帯が出来上がっていくと、そういうイメージで捉えていいと思いますね。
そうしますと、こういったアンテロープ礁を含めた基地がいくつも確立していくと、中国の監視能力もそうですし、さらに能力はかなり向上するということになるわけですか。
ということになります。ですから、ここから常時、戦闘機や哨戒機が離着陸するようになれば、いわゆる防空識別圏みたいなものを事実上、南シナ海に設定することも容易になりますし、そういった意味で大きく能力が上がっていくというふうに見られます。
これは台湾有事を見据えた布石なのか、それともこの南シナ海支配の一環なのか、これはどういうふうに見ればいいですか。
両方でしょうね。当然、台湾有事のときは南から攻められるわけですし、あとはマラッカ海峡を通るのを他の国に使わせなくすることもできるわけですから、それらも踏まえて南シナ海を支配しつつ、台湾海峡有事のときにも備えになるというようなことだと思います。
よく第1列島線、第2列島線というふうに言われますが、中国としてはこの南シナ海から防衛線をさらに前進させていきたいという試みの1つなのか、それともやはりこの海域を内海化して、聖域化したいためのこういった基地なのか、この辺りいかがですか。
結局、フィリピン、ベトナムが中国になびく可能性ってそんなに高くはないので、そこをある種、自分の子分にすることは諦めて、南シナ海を実力で支配するということで。
そのための拠点だということなんですね。小原さん、中国は表向きにはこの施設などについては、軍事施設だと言っていないわけですよね。
言っていません。アンテロープ礁に関しても、これが軍事基地だということは言っていませんし、観光地にするんだという話さえあるんですけれど、ただ、このアンテロープ礁、実はスビ礁を南北反転させると同じような形をしているんです。
そうですか。
比較すると、スビ礁と同じような施設を建設しているように今のところ見えるんです。しかも、このアンテロープ礁、2か所にコンクリートの製造施設を作っていまして、この島の上にですね。先ほど砂利とおっしゃいましたけど、あれはセメントだと思われていて、セメントと溶剤ですとか砂利とかを混ぜてコンクリートにするんですけれど、それを2か所、大量に今作っているんです。なので、普通の施設ではないし、なぜこんなにピッチを上げて作っているんだろうということを考えると、やはり少なくとも軍民両用になると考えるのが自然だと思います。
伊藤さん、いかがでしょう。
この「礁」という言葉だと岩礁ぐらいの話ですよね。ここにものを作るというのは、さっき高橋さんがおっしゃったように結構もろいんじゃないかって思っていましたけど、たくさん作ることによってその弱点を克服できるということですよね。ということは、まだまだ作るというふうに見ていいんでしょうか。
もちろん、もともと浅い場所でしか作れないので、作れる場所もそんなに多くないと思いますけれども、数多く、しかも大きくですね。例えばアンテロープ礁の埋め立て面積って、例の辺野古のキャンプ・シュワブの新しく作られる基地の4倍の面積がありますから、やっぱり非常に大規模なんです。そうすることで戦闘機も置けるし、ミサイルも置けるしみたいなことになっていくのかなと。
なるほど。このように、様々な地域で軍事施設の建設や拡張を続けると見られる中国ですが、東南アジアのラオスでは、初となる国外基地の運用を開始する可能性が指摘されています。新たな脅威となるんでしょうか。中国の東南アジアでの軍事的な影響力が一段と拡大するかもしれません。
東南アジアの内陸国ラオス。中国の新たな軍事施設が開設されたというのが、このラオスの首都ビエンチャンの北、およそ50キロメートルの位置にあるバンクン空港です。先月の写真では滑走路が完成していることが確認できます。中国国防省は先月29日、このバンクン空港で共同支援訓練センターと航空学院の運用を開始したと発表しました。ラオス空軍のパイロット育成の支援を目的に挙げ、第三国を標的とするものではないとしています。
小原さん、このように共同支援訓練センターという名称ですが、実態としてはどこまで軍事基地と見ていいのかどうか、いかがですか。
まず、この滑走路の長さが、先ほども挙げましたけれど、この滑走路はオーバーランエリアまで含めて2000メートルぐらいしかないんです。
短いんですね。
はい。実際の滑走路は多分1800メートルぐらいしかない。今月に入ってからの衛星画像を確認すると、すでに着陸のための白い線を何本か引くのと、その滑走路の方位を示す数字を入れるんですけど、それはもう入っています。ちょうどこれは左へ90度回転させた画像になっているんですけど、実際にはこの左側が北で、右側が南なんですけれど、そうすると戦闘機、大型の戦闘機がここで離発着するのは難しいということになります。
ですから、中国が説明しているように、今のところはあくまで小型の訓練用のジェット機などを使った訓練のための施設ということになるんだと思いますが、共同という名前をつけているということは中国も使えるということなので、今後、この基地をどのように使っていくのか。これは北側も南側も、まだ拡張できる余地があるところなので、ここをどうしていくのかは注目すべきだとは思います。
お話のように、ニューヨーク・タイムズによると、航空機は中国とパキスタンが共同開発した軽量2人乗りの機体であるJL-8が止まっていたというようなことも、衛星画像では確認できているようなんですが、高橋さん、ある意味、中国としてはラオス軍のパイロット育成ということを目的としているようなんですが、ただ、これが実質、中国が主導を握るかどうかも含めて、この施設をどういうふうに評価しますか。
現状で中国軍の基地になるかどうかということは判断できないのがまず第1です。ただ、ラオス軍の訓練を支援するということは、今後長期にわたってラオスと中国との軍と軍との関係が非常に強くなっていくので、それが今、評価できる狙いなのかなというように思います。特にベトナムはやはり中国の友好国にはなりきらないですし、タイはアメリカの同盟国ですから、その間にあるラオスとの関係を強化するということは、かなり強い目的はあるのではないかと感じますね。
ラオスは海に面していない内陸国、この辺りの軍事的な意味合いをどういうふうに評価すればいいですか。
海に面していないので、やっぱり大量の物資を運び込むのが難しいんですよ。だから軍事拠点にすることはそもそも難しいんだと思います。ただやはり、このインドシナ半島の中央にあるので、それこそタイとかベトナムとか、あるいは南シナ海、マラッカ海峡はちょっと遠いかな、インド洋をにらみながら、そことの関係を強化して、何らかの施設なり情報収集の拠点にするということがあり得ると思います。
伊藤さん、いかがでしょう。
ラオスの首相が6月に日本に来て、高市首相と会って、自由で開かれたインド太平洋について協力するという話を確認していますよね。それから中国が多分カンボジアでも、基地の拡張を手助けしていると。カンボジアと日本は例のOSAですよね、軍の関係のODAというふうに言われていますけど、あれで協力もしている。だから日本にとってはラオスとかカンボジアというのは非常に重要だし友好国なんだけど、そこに中国が入ってきているということには非常に注意しなきゃいけないかなという感じはしたんですけども、どうですかね。
多くの国は基本的に、中国かアメリカか日本か、選びたくないんですよね。だからあくまで両掛けしながらやっていくので、比較的ラオス、カンボジアは中国寄りではあるんですけど、だからこそ日本との関係もある程度ちゃんと維持したいと思っているので、そこはポイントではないかと思います。
小原さん、カンボジアのリアム海軍基地、これはかなり今、整備も進んでいるという話もありますが、そしてこのバンクン空港ということで、空と海、これは別々の施設として見ずに、連携しているというふうな見方もできるんですか。
今の段階で連携しているようには見えないです。それぞれの基地がやはりそれほどの規模がないから。カンボジアのリアム海軍基地も、共同保障訓練センターというふうに中国で呼称されていて、中国でいう「保障」というのは、整備ですとか補給という意味が含まれるので、その訓練をするための施設ですよと言っている。ただ、ここでも共同という言葉を使っているということになると、中国がカンボジア海軍を訓練しますよ、支援しますよと言いながら、中国も使えるという意味ではあるとは思います。
この後は、アフリカのジブチで通信施設の拡充など、世界一流の軍隊を目指す中国の最新の動きを見ていきたいと思います。
これは中央アジア、ウズベキスタンの国防省が今年8月、SNSに投稿した動画です。中国国営の英字紙チャイナ・デイリーによりますと、最新鋭の戦闘機として紹介されているのは中国の戦闘機J-10です。アメリカの経済誌フォーブスは、中央アジアの国々はもともとロシアとの軍事的な結びつきが強いものの、西側諸国による制裁の影響で、ロシアの防衛産業に代わる供給元として中国の存在感が増しているとしています。
先月27日に行われた、同じく中央アジア、トルクメニスタンの独立記念日のパレード。香港の英字紙サウスチャイナ・モーニングポストによりますと、パレードで確認されたのが中国の移動式防空システムFK-2000です。パレードでは少なくとも10基が確認されたということです。サウスチャイナ・モーニングポストは、これについてもロシアに代わって中国の役割拡大を浮き彫りにするものだと指摘しています。
その中国が今、軍事的影響力のさらなる拡大のため重要視していると見られているのが、アフリカ東部の小国ジブチです。ジブチは中東情勢を巡っても注目されているバブエルマンデブ海峡に面しています。アメリカのCSIS、戦略国際問題研究所によりますと、この海峡は世界の海上貿易のおよそ16%が利用する、世界有数の海上交通の要です。
このジブチは各国の軍事基地が集中していることでも知られています。アメリカやフランス、イタリアなどのほか、日本の自衛隊も拠点を構えています。アメリカ軍や自衛隊が参加する多国間の共同訓練も実施される重要な場所です。ここに中国も2017年、基地を作りました。またCSISは、中国の基地は経済的権益を安全保障上の脅威から守るとともに、海軍の訓練拠点としても活用されているとしています。
衛星画像が捉えたアフリカ、ジブチの中国軍基地。中国が進める基地の近代化とは。こちらは今年2月に撮影されたジブチの中国軍基地の衛星画像なんですが、2023年に撮影されたものと比較してみますと、南東側、そして北西側に新たな施設が増設されているということなんです。アメリカのCSIS、戦略国際問題研究所によりますと、これらは通信施設だということです。
もう少し詳しく見ていきたいと思いますので、南東側の施設を拡大した写真がこちらになります。こちらに、この地点なんですが、出ない。出ませんかね。改めて、ちょっと出ませんが、こちらに通信施設、複数のアンテナらしきものが確認できるということなんですが、小原さん、CSISによりますと、様々な設備を設置しているということのようで、中国がこの地域における情報収集能力を高めたと分析しているようなんですが、これらは一体どういった施設なのか、どのように運用されているんでしょうか。
ジブチの基地自体は、中国が唯一、海外で中国の基地だと認めている基地なんですね。先ほどお話があったように2017年にできて、2018年から運用されているんですけれど、日本やアメリカ、フランス、イタリアの基地が飛行場の方にあって、航空機を運用してパトロールをすることを目的にしているのと違って、このジブチの中国軍基地は海に面していて、海の方を見ているんですね。
ということは、先ほどもお話がありましたように、バブエルマンデブ海峡もそうですし、ここを非常に重要な海上交通の拠点と考えている。ここを中国が押さえるんだという意思と、あと他の国の、日本の自衛隊の基地などは仮設の基地なんです。撤退することを想定しているんですけれど、先ほどの衛星画像を見ても分かるように、中国のジブチ基地は恒久的に使うことを念頭に置いた、非常に堅固な建物になっている。
ここではさらに能力を高めるために、北側にはレーダードームなども作られていますし、情報収集能力を高めるとともに、先ほどの南側ですよね、これはパラボラアンテナ、緑で囲まれたところは大きなパラボラアンテナが3つ並んでいるということにもなります。他のアンテナ類もここに書かれているとおりなんですけれど、こういったものを使って各種通信などを行えるし、通信の傍受なども行えるということになっていると思います。
改めて見てみますと、この赤の部分が高周波通信用とか、この黄色が長波通信用。あまり専門的じゃないので、こういったような通信の周波数によってどういった情報がそれぞれ得られるのかというのは、なかなか分かりきれないところもあるんですが、それぞれが収集する情報の種類というか、それが違うということなんですか。
それぞれの機器によって出す電波というのは違いますし、あるいは自分が通信するにしても、どういった長さの電波を使うのかによって、到達距離が変わったりですとか、あるいは距離は短くても非常にクリアに通信ができるとか、ここに5Gというのもありますけれど、どのくらいのバンド幅でどのくらいのデータを送れるのかとか、様々な用途があると思います。
高橋さん、イラン情勢によって、この中東地域はアメリカ軍が展開しています。その点において、このジブチにこういった通信施設が設置されているということ、これはやはりアメリカ軍の情報を収集しているということも想定されるのかどうか、この辺りどうでしょうか。
もともとジブチの各種の基地は海賊対策のために作られているわけです。ただ、中東情勢が緊迫していく中で、軍の活動も活発化していると。そうなっていくと、中国から見れば、ここで米軍の情報を取ればかなりいいものが取れるじゃないかという発想なのは多分自然なんですよね。仮に暗号が読めなくても、電波がどういう頻度で出てくるかとか、どこから出てくるかという、いわゆるシギントと呼ばれることだけでも相当な情報にはなるので、そういったところは考えているのではないかと思いますね。
こうやってやはり気になるのが、このジブチに日本も自衛隊の拠点を置いています。高橋さん、その点で中国の存在というのはどういうふうに私たちは警戒すべきなのか。
両方見る必要があります。まず1つは、やはり海賊対策の協力というのはやっているので、海賊対策の協力は今、数少ない協力ですから、それはちゃんと続けていくということは、まず第1に必要です。あとは情報収集であるとか、アフリカに対する影響力のある種の足場になっていくというところは、警戒の要素はあるんですけど、ただ中国は中国で、アフリカ政策というのは非常に長い、冷戦期に植民地独立運動があったときに、植民地独立を支援している時代から非常に長い深い付き合いがあるので、そこを理解した上で、何が起こっているかをちゃんと知り、僕たちは僕たちでやることをやっていくということが必要なのかなと思いますね。
伊藤さん、いかがでしょうか。
今日ずっとこの衛星画像を色々見て分析していただいたんですけども、当然この中国側にしても、これを見られているということは分かっているわけですよね。分かっていても今の技術だと見られてしょうがないと思っているのか、それともある程度見せる意図があって色々やっているのか、あるいは全然見えない動きがあって、そこに我々は注意しなきゃいけないのか。この衛星画像を見ていくとき、分析していくときの注意点というのは、小原さん、どういうところにあるんでしょうか。
ジブチの基地に関して言えば、わざわざ見せるためにということではないとは思いますけど、これだけ大々的な基地を作っているということは、中国がここに軍事プレゼンスを展開する拠点を1つ持っているということを示すことにはなると思いますし、それを隠すつもりはないということなんだと思います。
さらに中国は、ロシアの影響力の強い中央アジアで、軍事面でその存在感を拡大しているといいます。高橋さん、この中央アジアは伝統的にロシアとの軍事的結びつきが強い地域ということになりますが、この中国の兵器というのが、ロシアの兵器と比較して、性能や信頼性でどのように評価されているのか、いかがですか。
ロシア製の兵器との大きな違いは、コンバットプルーブン、実戦でまだ使われていないということがまず違うので、その性能の評価というのは難しいんだと思います。ただ一方で、多分価格が安かったり、あとその他のインフラ整備とかと抱き合わせで販売されていたり、あと最近のことでいうと、おそらく電子装備とか半導体の能力とかは中国製の方が高いだろうと考えられると。そういったところが評価になるかなと思いますね。
小原さん、その点やはり中国がこの中央アジアの国々に、言ってみるとセールスをかけていく。先ほどVTRでもありましたが、戦闘機ですとか防空システム、かなり色々広げているような印象がありますが、その狙いをどういうふうにご覧になりますか。
もともと中国は中央アジア、中東などに対しても、あるいはアフリカに対しても武器は売り込んでいたと思います。ただ、今のように近代的な兵器を製造できるわけではなく、安い武器が多かったんですけれど、少なくとも売ってはいました。そして、買う側にしても、そこまで性能の高い兵器を当時は求めていなかったんだと思いますけれど、今は地域によっては非常に緊張が高まっている中で、性能の高い兵器が欲しいと。そのときにやはり、ある程度手頃な価格で高性能な兵器というと、中国のものが挙がってくる。
そして、このJ-10に関しては、実戦経験がある数少ない戦闘機で、パキスタン空軍のJ-10戦闘機が相手の航空機を撃墜したという実績があります、というふうに言われていますから、そういった意味では、このJ-10が欲しいと考える国は増えているとは思います。
中央アジアを巡って、高橋さん、伝統的にロシアとの結びつきが強かった。そして今は、中国軍が比較的新しい機材を、お話になったように色々パッケージにして売り込んでいる。そうすると、中国とロシアとの摩擦みたいなものはないんですか。
ロシアとしては愉快ではないとは思いますね。何せ旧ソ連ですから、旧ソ連に他国の影響力が強まることをロシアは好まないので、愉快ではないと思います。ただロシア側も今、ウクライナについて中国からの様々な支援を受けている中で、かつ実際に多分アフターサービスとかできなくなっているんだと思うんですよね。そうなっていくと、もう受け入れざるを得ない。不愉快だけど受け入れざるを得ないと。そこでまた今後競争していかなきゃいけないよねということになっているんじゃないかと推測できます。
これ一方で、中央アジアの国々の立場に立ってみるとですね、もちろん防衛とか軍事の分野で中国の兵器を導入するということになると、これ自国の安全保障の政策を左右するという、そういったことにもなると。中国の武器を入れることによって、中国的な安全保障に、言ってみると吸引されていく、そういった警戒感はないんですか。
ただ同時に、おそらくロシア側に依存しすぎることの怖さというものも、例えばウクライナ侵攻で感じたところもあるでしょうから、そういう意味で先ほどのアジアと同じく、両掛けしていきたいみたいな、多分インセンティブもあるんだと思いますね。
小原さん、その辺り、中央アジアの考え方っていうのはどういうふうに評価しますか。
おっしゃる通りだと思います。ですから、ロシアに一方的に依存するというのは、やはりどの国も怖いということは常に思っていたので、過去にも中国の支援も受けていたと思いますけれど、ここに来て中国がロシアの兵器に対抗できるような、カタログデータではあっても、その性能を持った兵器を売れるようになってきたということで、本当にそのバランスを取ることが中央アジアの国々にとってもできるようになってきたということなんだと思います。
それは裏を返すと、やはり中国がここ近年、この軍事産業を含めてですね、こういった兵器の開発能力、そしてそれが実際に使えるだろうというところの評価が、どんどん高まってきたということの裏返しっていうことでしょうか。
おっしゃる通りだと思います。
そしてですね、またこれは新たなニュースなんですが、防衛省統合幕僚監部はですね、昨日、中国の空母「遼寧」が沖縄と宮古島の間を通過して、太平洋、石垣島の南およそ250キロで発着艦訓練を行ったということです。ちょっとこれについて解説をいただきたいんですが。
中国の空母がこの沖縄と宮古の間を越えて西太平洋に出ることは時々あるんですけれども、今回の特徴は、このまま西太平洋に出るのではなくて、台湾の方に進んでいったということが一つ特徴があります。ここで戦闘機を発着させたと見られると。
実は、いろんな情報を総合してみると、この時期に台湾海峡周辺での中国空軍、あるいは海警の活動が活発化していて、この中間線ですね、中台の中間線を11機が越えた。中間線を越えるのは、かなり実は挑発的な行動なんですけど、しかもそれは戦闘機だけではなくて、電子戦機とか無人機とかも含まれていたと。この行動が台湾の東西で両方同時に起こって。
これ、同時に起きていることがポイントなんですね。
そうですね。だからこれ、ある意味何らかの、例えば台湾の封鎖なんかを目指した演習なり訓練なりだった可能性というのは否定できないということ。全く本当に同じタイミングで起こっているので、そこはある種ちょっと警戒が必要かなというようには感じますね。
小原さんは今回の事案についてはどういうふうに評価をしているんでしょうか。
空母「遼寧」は、青島総合保障基地から運用されているんですけれど、ここの衛星画像を継続的に見ていると、10日までは青島にいました。11日から13日の間になくなっていて、13日の画像ではもうすでにないと。ただ、それに伴って055型駆逐艦という大型の駆逐艦、これ空母打撃群を形成する船なんですけど、これも一斉に出ていますから、ある程度大規模な何か行動を行うということが想定されたんですけれど。
ただ一方で、総合補給艦、これは打撃群が動く時、長期で動く時には補給のために常に随伴するはずなんですけれど、この船は一旦出て、13日には青島に戻っていますから、さほど長い航海に今のところならないのではないかと思います。もっとも、もう一度この補給艦が出始めると分からないということではありますけど。
そうすると、総合すると今回の訓練目的は一体何なんでしょうか。
ですから、高橋さんがおっしゃったように、ピンポイントで何か目的があって動いたんだと思いますし、長期にわたって何かそこで活動するというよりは、その目的のために動いたということではないかと思います。
さて、ここまで世界各地で軍事的な影響力を拡大する中国の動きを見てきましたが、改めてですね、高橋さん、これ中国における覇権、これ一体どういったものなのか、いかがでしょうか。
今見て取れるのは、子分を増やしていこうってことでは多分なくて、多くの国、他の国の選択肢をできるだけ狭めていって、最終的には中国の行動をより忖度した形で動くように仕向けていくと、そういうことがこの覇権戦略なんではないかと。
なるほど。言ってみると、グローバルに広げていくという、そういうことの発想ですか。
そうですね。グローバルに広げて、軍事的な影響力も増やしていく。かつ、そこでアメリカとも対抗できる、あるいはアメリカを快く思わない国に対するプランBになれるような形というものを作っていく。だから、完全にアメリカを置き換える覇権というよりかは、アメリカの覇権に対するアンチテーゼ的な選択肢になっていくということが、現実的に目指せるところじゃないかと思いますね。
小原さんはどういうふうに見ていらっしゃいますか。
中国がやっていることは、実は歴代王朝とあまり変わらないのではないかとさえ思うんですけれど。中国の王朝はもちろん領土は広げましたけれど、周辺国に対しては、朝貢外交をすれば、その朝貢した相手に対して、かえってより多くのお土産を渡したりしていたんですよね。ただ、中国の言うことは聞くということですから。
今、中国がやっていることを見ると、高橋さんがおっしゃるように子分を作るというよりは、安全保障協力を強めると、相互の協力関係は非常に強固なものになります。これは日本が今、ヨーロッパですとかオーストラリア、フィリピン、ベトナムなどとも始めているところですけれど、中国からの支援がなくなったら、途端にその国の支援はなくなってしまうということになると、中国に対して、その意向をうかがわざるを得ないと。
そういった協力を広めていって、中国の言うこと、中国が求める国際秩序ですね、これに対して支持をする、あるいは中国に忖度して動くと、そういうことを求める、その今は礎を作っているというふうに見えます。
そうすると、領土拡張という野心というよりはですね、この国際秩序の中軸を、いわゆる中華という言葉も含めてですね、中を担いたいと。そのための手段として今、軍事的な進出をしているというふうに見た方がいいんですか。
軍事的な進出とは、東南アジア、南アジアに関して言えば軍事協力の段階ですから、そういった意味では中国に頼らざるを得ないように仕向けていくということではあると思います。
こういったような中国の動きに対して、高橋さん、アメリカはどのような視点で見ているのか、いかがですか。
二つの見方があって、一つはやっぱり中国のグローバルな影響力の拡大を警戒する見方というのはありますと。それはアメリカに対する挑戦である。もう一つは、やはり今、米中の競争の焦点は太平洋、あるいはいわゆる第一列島線、あるいは台湾と呼ばれるエリアなので、むしろ中国がグローバルに、例えばジブチにいろんな投資をしていくことは、全体の資源が広がっていくので、逆にアジアが薄くなって、やらせておけっていう見方もあります。
昔のアメリカの軍事展開に近いような構図ということですか。
そこまでまだ中国は目指していないと思いますけどね。ただ、結果的にそうなっていくとしても、結局今の焦点は台湾であり、西太平洋なので、そこが薄くなるなら、やらせておけばいいっていう発想になっていますね。
そうすると、ある意味そのまま軍事、そこを手薄にさせていく。それはある意味、アメリカとしても、この東南アジア以外にですね、広げていくことは歓迎はしないにしてもですね、ある意味それは様子見ということも含めて、そういった目線もあるということですか。
そこでわざわざ張り合う必要はないっていうことですね。
やらせておけばいいという。これ具体的に、そういったことを仕向けていくような戦略的コミュニケーションってあるんですか。
それはもう単に観察しているだけだと思います。むしろアメリカ国内で、張り合ってアフリカとかをもうちょっと重視するか。いや、そうじゃなくて、やっぱりちゃんと西太平洋を重視しましょう、中東を重視しましょうってことでやっていくかっていう、そのアメリカ国内の政策論争につながっていく話ですね。
小原さん、どういうふうに聞きましたか。
張り合うつもりはアメリカにはないと思いますけど、ただ海上輸送路に関しては、中国が影響力を行使できるということに対しては警戒感はあると思います。
なるほど。さて、この後はですね、世界一流の軍隊を目指す中国の狙いについて、改めてお話を伺います。
世界一流を目指して突き進む中国軍ですが、高橋さん、今後どういったところに私たちは注目をすべきなんでしょうか。
やはり中国軍の近代化というと、新型兵器というところに注目が集まりがちなんですが、軍というのはそれだけじゃないんですよね。やっぱり基地というインフラもあり、兵士の練度といったところもあると。今日取り上げたテーマというのは、その兵器を支えるインフラ的なものが中心でした。ですから、南シナ海の不沈空母みたいな基地もそうですけれども、そういう基地をこれからどうしていくのかと。
あるいは、今日取り上げなかったものとしては、中国のPKOみたいなのがあるんですけど、PKOとか海賊対策というのは、ある種、実戦訓練の場として捉えられてきたんですよ。だから、そうやって兵士の練度も上がってきていると。そういった兵器だけじゃないところの中国軍の強化といったところも、注目していく必要があるということではないかと思います。
小原さん、いかがでしょうか。
幾つもの側面があるというのは、まさにおっしゃられた通りで、中国人民解放軍の保障と言われる後方ですね、整備、補給の問題は、今なお深いものが残っているようです。国内の基地も拡張していて、今後どうするのかというのは注目しなければいけませんけれど、海外に対する影響力という意味では、中国はいわゆるソマリア沖海賊対処、第48次が今帰国している最中で、東南アジア各国を回って影響力を強めているんですが、そういった意味では、日本もこの影響力を強化する、そういった取り組みが必要であると思います。
今夜どうもありがとうございました。
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