長谷部誠が語る「データでは変えられないもの」 ジン日本上陸40周年セレモニーでの対話

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概要

10月8日、ドイツの時計ブランド「ジン」の日本上陸40周年を記念するセレモニーが都内で開かれ、元サッカー日本代表の長谷部誠と、ジン スペツィアルウーレン社CCOのシモーネ・リヒターが登壇した。長谷部は昨年からジンの「ミッションパートナー」を務めている。司会者は、フランクフルトでの暮らし、指導者になっても変わらない価値観、次の世代に受け継いでほしいものを長谷部に尋ねた。長谷部が繰り返し口にしたのは、データや情報があふれる時代でも「本物」と、それに感じる「ロマン」を大切にしたいという考えだった。

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フランクフルトとの縁、そして時計好きとしての自分

最初のあいさつで、長谷部は自身とフランクフルトの関係を説明した。フランクフルトに住んで13年目になり、アイントラハト・フランクフルトで約10年プレーした。引退後もこの街で暮らし、クラブとの契約も続いている。ジンはフランクフルトで創業したブランドであり、その縁でミッションパートナーとして一緒に歩んでいることをうれしく思うと語った。

長谷部によると、フランクフルトでは街を歩いたりレストランに入ったりすると、人々が互いに時計を意識しながら身に着けている様子が目に入るという。長谷部自身も昔から時計が大好きで、「コレクターとは言いませんが」と前置きしたうえで、いろいろなことを調べてきたと話した。ジンの魅力については、創業から60年以上たっても変わらない技術へのこだわりを挙げ、それを来場者に少しでも感じてもらえればうれしいと述べた。

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「2つの顔」を持つ街での暮らし

司会者は、フランクフルトで時間の流れを感じる場所と、日本とドイツの時間感覚の違いを質問した。長谷部はこの質問のうち、街の印象を中心に答えた。

長谷部の説明では、フランクフルトは金融の街で、ドイツには珍しく高層ビルがいくつも建っている。その一方で、市街地から車で10〜15分走れば大きな森や公園など豊かな自然がある。長谷部はこれを街の「2つの顔」と表現した。

長谷部は旧市街の街並みも趣があって好きだという。ジンの店舗があるレーマー広場は、アイントラハト・フランクフルトがヨーロッパリーグやドイツのカップ戦であるポカールで優勝したとき、市庁舎からみんなでカップを掲げた場所でもあり、歴史を感じられる場所だと紹介した。ただ、自分にとって一番好きなのは、街を出て森や公園を歩きながらゆっくり過ごす時間だという。家族で公園に行くことも多い。

フランクフルトで普通に散歩できるのかと司会者が尋ねると、長谷部は「全然大丈夫ですよ」と答えた。たまに声をかけられることはあるが、人々は気さくに話しかけてくれるので、ストレスなく生活しているという。

ここでリヒターがドイツ語で補足し、通訳がその内容を伝えた。フランクフルトのもう一つの良さは、世界有数のクラブチームがあることだという。長谷部の現役時代、アイントラハト・フランクフルトはリーグの中でも成績が良く、黄金期だった。今はもっと頑張ってほしいところだが、だからこそ市民として情熱を持って応援したいチームだと、リヒターは冗談を交えて語った。

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指導者になって感じる、データでは置き換えられないもの

司会者は、時代や環境が変わっても変わらないものとして何を感じているかを尋ねた。長谷部が選手から指導者に立場を変えたことを踏まえた質問である。

長谷部は約2年前に現役を終え、すぐに指導者の道に進んだ。現役時代はピッチの上で情熱や感情を表に出すことができたが、引退後はその部分が自分の人生から少し欠けてきたと感じていたという。

そのうえで長谷部は、現在のサッカーの状況に触れた。テクノロジーやデータ、分析ツールが大きく進化し、サッカーの中で多くの部分を占めつつある。それでも、自分の中にある情熱、言い換えれば「ロマン」のような、データでは変えられないものに今あらためて魅力を感じていると語った。

長谷部はこの考えを時計にも結びつけた。さまざまな製品が出てくる中で、自分はものづくりにロマンを感じるタイプであり、それを失いたくないという。サッカーの指導という仕事でも、時計という趣味でも同じ感覚を持っており、40年という年月がたっても、これから先も持ち続けたいものだと話した。

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長谷部の愛用モデルと、裏ぶた越しのムーブメント

続いて司会者は、65年以上受け継がれてきた「103シリーズ」に触れ、これから40年先も残ってほしいジンの時計はどれかと二人に尋ねた。

長谷部はジンの時計を所有しており、今いちばん気に入っているのは、新しく出たグリーンの文字盤のモデルだと答えた。仕事柄、時間を測ることが多いので、その点でも使いやすいという。ジンの時計全般については、実用性を重視し、技術を真摯に追求して質の高い時計を作っているという印象を話した。

長谷部は「変な趣味だと思われないで欲しい」と断ったうえで、個人的な楽しみ方も紹介した。シースルーの裏ぶたからムーブメントを眺めながら過ごすのが好きだという。お酒はあまり飲まないので、お茶を飲みながら時計の裏側を見るのが趣味のようになっている。ジンの技術者が真摯に作ったものを受け取り、身に着けさせてもらっている。そのことを意識しながら、これからも着けていきたいと語った。

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リヒターが挙げたUシリーズと潜水艦の素材

同じ質問にリヒターはドイツ語で答え、通訳が内容を伝えた。103のように長く残ってほしいモデルとしてリヒターが挙げたのは「Uシリーズ」、特にU2のような製品である。その理由には個人的なものと製品そのものに根ざしたものがあり、Uシリーズはブランドが大切にしているものをすべて体現しているという。

リヒターの説明では、U2は時間を測る計測器として構想された時計である。また冶金学の面でも多くのノウハウが詰まっている。潜水艦に使われる鋼材を加工して使っており、それには非常に難しい工程が必要だった。その技術はリヒターがこの日着けていたU18にも生かされているという。多くのテクノロジーが詰まっていること、そして本物の潜水艦用の素材を使っているという特別感を、今後も残していきたいと話した。

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次の世代へ:「本物を見分けてほしい」

最後の質問は、10年後、20年後の次の世代に受け継いでほしいものは何か、というものだった。

長谷部の最初の答えは「正直」受け継いでほしいと思うことは個人的にはあまりない、というものだった。時代の変化が非常に激しいので、次の世代の人たちが自分で何を感じ、何が本物かを自分で判断するのが一番だと考えているからだという。

それでも一つ挙げるならと前置きし、長谷部は直前の話につなげて「本物をしっかりと見分けてほしい」と述べた。世の中には情報があふれているので、その中から本物を見つけるのは難しいかもしれない。それでも自分の中でしっかりと本物を見つけ出し、それを大切にしてほしいと語り、トークセッションは終わった。