【総額〇〇〇万】2025年ベストバイ完全版!プロが唸った革靴・バッグ・ガジェットを全て見せます
石川俊介の〇〇〇洋服、靴、バッグ、ガジェットを年間通じて買い続けたファッションデザイナーの石川俊介氏が、2025年に購入した膨大なアイテムの中から選りすぐりの製品を振り返り、その使い心地や選定基準を語った。数々の高級メゾンから機能的なアウトドアギア、専門的な撮影機材までを自腹で購入し、実際に現場や旅先、日常生活で使い倒したからこそ見えてくる利点と課題が具体的に示されている。
玄関置きのスニーカーと完成された英国靴:ニューバランスとクロケット&ジョーンズ
2025年に最も多く購入したカテゴリーは靴であり、毎月3〜4足、年間で36足から40数足を購入したと石川氏は語る。その中で日常的に手が伸びたスニーカーとして挙げられたのが、ニューバランスの「U1906LBN(トリプルブラック)」である。
このモデルはローファータイプのスニーカーで、中国を訪れた際に条件反射的に衝動買いしたものだという。履き心地については「スポスポ抜ける」と語り、決して絶賛できるフィット感ではないとしながらも、玄関に置いておいて近所を少し歩く際にそのままつっかけて出かけられる便利さがあり、結果としてちょこちょこ履いてしまう一足になったと振り返る。
一方で、本格的な革靴として高い評価を与えたのが、クロケット&ジョーンズの「SHERWOOD(Bark Tanned Leather Sole)」である。ハンドグレードコレクションに属する上位ラインで、購入価格は14万8,500円。石川氏は、グッドイヤーウェルト製法の出し縫いステッチを表面から隠すヒドゥンチャネル仕様など、手間のかかる工程を丁寧に施している点を評価する。
特に最大の魅力として挙げたのが「Vフロント」の構造である。着脱がしやすく、足元にエレガントな印象をもたらすため、スーツスタイルや冠婚葬祭はもちろんのこと、チャッカブーツのような感覚でカジュアルに合わせることもできる。上質な革が使われており、磨いた分だけ応えてくれる質感の高さを備えながら、昨今の革靴市場の高騰を踏まえるとコストパフォーマンスにも優れていると推奨した。
パリ現地調達の日本未展開モデルとサカイの遊び心:J.M. WESTONの3足
クラシックな定番モデルには食指が動かず、デザインに遊びのあるモデルに惹かれたという石川氏は、J.M. WESTONから3足を選出している。そのうち最初の2足はパリで購入した日本未展開モデルである。
1足目は「Iena Slip-On Oxford」で、現地価格は約13万円。過去のメゾン マルジェラの靴を想起させるシューレースのないデザインだが、マルジェラのようにアイレット(紐穴)が開いているわけではなく、穴自体が存在しない。甲の内側にエラスティックゴムが配されており、紐を解くことなくスニーカー感覚で着脱できる。ソールには最初からラバーが貼られている。購入直後に雨に降られて革の質感が一部損なわれたというハプニングには触れつつも、日本の店舗ではクラシックな定番品が中心となりがちな中、こうしたシンプルでひねりの効いたデザインは非常に合わせやすいと語る。
2足目は「Edouard Derby with Rubber Sole」。こちらもラバーソール仕様のVフロントモデルだが、2ホールのミニマルなカッティングと、非常に絞り込まれたナローな木型(ラスト)が特徴である。石川氏が訪仏したタイミングでセールにかかっており、約10万円で購入できたという。クラシックな正統派とは一線を画すモダンでエレガントな佇まいを評価する一方、ラストが極めて細いため、久々に「纏足(てんそく)」のような締め付け感を味わいながら履いていると苦笑いを交えて語った。
3足目は日本で購入した、sacai(サカイ)とのコラボレーションモデル「WORKER BOOT(BLACK BOX CALF & BLACK LINING)」である。元々はブラウン系のスエードやヌバックで展開されていたワークブーツをベースに、ブラックのボックスカーフで仕立て、コバからソールが大胆にはみ出した構造を採用している。久々にブーツを履きたいと考えた際、普通のクラシックブーツでは物足りなさを感じていた石川氏にとって、パンキッシュな遊び心のあるディテールが響いたという。ザ・ロウの細身のブラックデニムと合わせてパンク調に合わせることも、太番手の黒ウールトラウザーに合わせてクラシックな装いを崩すこともできる、汎用性の高い主力ブーツとして重宝している。
ブーツに見える短靴の機能美:THE ROW「Nobilis」
靴カテゴリーの最後に紹介されたのは、THE ROWの「Nobilis レザー シューブーツ」である。分厚いソールが取り付けられた重厚な作りながら、分類としてはローカットのシューブーツとなっている。
最大の特徴は、パンツの裾を被せてしまえば完全にサイドゴアブーツやチェルシーブーツを履いているように見える点である。履き口が比較的狭いため足を入れる際はやや履きづらさがあるものの、ヒール部分のパーツが一枚革で構成されており、背面に継ぎ目(ハギ)がない立体的なカッティングが施されている。エレガントなラインとボテッとしたトウのボリューム感が絶妙なバランスを保っている。
石川氏はこの靴の利点として、脱ぎ履きの楽さだけでなく、スタイリングにおける独特の役割を挙げる。THE ROWで購入した、加工感が非常に粗野で一歩間違えるとおじさんぽく見えてしまうデニムにこのシューブーツを合わせると、全体のバランスが引き締まり、現代的な装いとして成立するという。定番的に展開されているモデルであり、ショップからの入荷連絡を受けて即決したと語る。
質感と実用性の狭間:THE ROWとボッテガ・ヴェネタのバッグ
バッグカテゴリーでは、2025年を通じてTHE ROWとボッテガ・ヴェネタの2ブランドを重点的に購入したと石川氏は振り返る。
ミニバッグとして紹介されたTHE ROWの「REGENT X BODY」(約20万円)は、しっとりとした触り心地の良い上質なカーフレザーを使用したミニマルなポシェットである。ポケットが少ない軽装の時期に重宝する一方、寸法について「もう1〜2cm大きければiPhone Pro Maxがスムーズに入った」と語り、現状は収納時にかなりタイトで出し入れに引っかかりがあるという実用上の課題を挙げた。それでも同ブランドが持つ繊細で洗練された空気感には高い魅力を感じており、同ブランドではほかに旧型の「XL Park Tote」や「Marlo」も愛用している。
一方のボッテガ・ヴェネタからは、イントレチャートを用いたアイテムが複数登場した。「イントレチャート スモール オーガナイザー」(15万4,000円)は、日常的に持ち歩く薬や小物をまとめて鞄に放り込むのに適したサイズ感として重宝している。
さらに石川氏が「最高に使いやすい」と太鼓判を押したのが、「スモール イントレチャート ファスナー トート」(購入時約54万円、現行は60万円超)である。スマートフォンを素早く取り出せるポケットの配置や、愛用するMacBook Airが無理なく収まる絶妙な容量設計、カチッと自立する剛性と編み込みレザーの柔らかさが共存している点を絶賛した。
また、下半期に買い足した「カセット スモールイントレチャート カメラバッグ」は、大判のイントレチャートで編み上げられた構造で、小型の高級コンパクトカメラ(RICOH GRなど)や財布、鍵、携帯電話を収めて出かけるのにちょうど良いサイズ感として活用されている。同ブランドの三角形カラビナを備えた「トライアングルキーリング」(5万1,700円)も含め、ブランド特有のレザーの質感を高く評価した。
旅と出張の実戦装備:パタゴニアのMLC、ロエベ、日常のナイロンバッグ
ハイブランドの遊び心として購入したのが、LOEWEの「エレファントバッグ ラージ(クラシックカーフ)」である。当初はアフリカのサファリツアーに携行することを構想したものの、サイズの問題で断念したという。着用シーンは限られるものの、石川氏自身が手掛けるMARKAWAREの度詰めの「ヒュージスウェット」が持つシワ感と、立体裁断された象のシワ感を合わせるスタイリングを楽しんでいる。
対照的に、純粋な実用性と機動性を求めて選ばれたのが、パタゴニアの「ブラックホール・マイクロ・MLC 22L」(2万2,000円)である。名作MLCシリーズの最小モデルとして登場した本作は、機内持ち込みサイズのスーツケースのキャリーバーに通した際、左右にはみ出さず美しく収まるサイズ設計が秀逸である。22リットルという容量ながら、着替え、カメラ2台、ノートPC、大量のガジェット類やフライト用アメニティを詰め込んでも破綻せず、バックパックとしてもショルダーバッグとしても使えるため、移動の多い出張において欠かせないギアとなっている。
さらに日常使いとサブバッグとして以下の製品が紹介された。
- BAGS IN PROGRESS「CARRY ALL BEACH BAG(BLACK CROCO VEGAN LEATHER)」: 軽量でありながら、調整可能なストラップにより手持ち・肩掛けに対応。両サイドの幅調整や内側の大型ポケットなど、カメラやPCを気兼ねなく放り込める使い勝手の良さを備える。
- ENGINEERED GARMENTS「Carry All Tote Reversible – Leopard Print」(2万8,600円): スーツケース内に常時折りたたんで携行する出張用トート。旅先で増えた機材をまとめたり、復路の機内持ち込み用バッグとして機能するタフな作りが特徴。
- Hervé Chapelier「1927F レオパード(ナイロン舟型ショルダーバッグXS)」(2万6,180円): フランス製を維持している点を評価。広い底マチにより見た目以上の収納力があり、黒を基調とした装いのアクセントとして機能する。
また、レザー小物として「USFL mini ロシアンカーフ ヴォリンカ × ブッテーロハッチ」(3万5,200円)を取り上げた。ロシアンカーフの質感には満足しつつも、コンパクトさを追求した結果として、紙幣を差し込む際の手間や、フラップを開けた際に小銭が脱落しやすい構造上の注意点が存在することを包み隠さず指摘した。
トラベル収納としては、イーグルクリーク(eagle creek)の「Pack-It」シリーズの圧縮ポーチをサイズ違いで多数揃えている。厚みのあるマチ付きポーチに衣類を入れ、外周のファスナーで物理的に圧縮する機構により、衣類をコンパクトにするだけでなく「鞄の中で荷物が暴れない」状態を作れる点が、旅のパッキングにおいて極めて有用であると説いた。
ベビーカシミヤの極みと土臭さを楽しむブルゾン:自社ニットとCristaSeya
洋服カテゴリーでは、石川氏自身が手掛けたcash & barba(キャッシュアンドバルバ)の「Baby SOMO Crew」(4万9,500円)および「Baby SOMO Cardigan」(5万1,700円)が筆頭に挙げられた。生後1年以内のカシミヤ山羊の産毛のみを集めて作られるベビーカシミヤを、薄手の梳毛(そもう)糸へと紡績して編み立てたニットである。カシミヤ特有の驚くべき肌触りと軽さを日常的に体感できる仕上がりとなっており、石川氏自身も日々のワードローブで最も着用頻度が高いシリーズとなっている。
アウターとして購入したのが、CristaSeya(クリスタセヤ)の定番アイテムである「cotton oversized blouson with leather patch」(約23万5,000円)のコーデュロイ仕様である。石川氏自身、自社ブランドでゆったりとしたハンティングジャケットの製作を試みたものの、生地選定に納得がいかずサンプルをボツにした経緯があり、その理想に近かった本品を購入したという。
バブアーなどに代表されるカントリーウェアの無骨さや、関西弁で言う「いなたい(野暮ったい)」雰囲気を絶妙に残しつつ、モダンなかっこよさに落とし込んでいる点を高く評価する。襟裏のレザーパッチや大胆な袖周りのシワ感が独特のムードを醸し出しており、前述したTHE ROWの無骨な加工デニムやシューブーツと合わせるスタイリングを楽しんでいる。
4着のダウンジャケットに見る、素材と構造の比較
アウターの中でも特に購入が重なったのが、それぞれ全く異なるアプローチで作られた4着のダウンジャケットである。
1. MARKAWARE「SILK DOWN PARKA」(19万8,000円)
表地に66ナイロンではなく、あえて本物のシルク(絹)タフタを採用した一着。見た目こそシンプルなアウトドア調の黒ダウンに見えるが、触れた時の質感と「シルクを着ている」という着用者の自己満足を極限まで追求している。内部には800フィルパワーの上質なダウンを充填し、防寒性と軽さを両立させている。
2. MARKAWARE「CASHMERE DOWN」
同ブランドで製作した、カシミヤフランネルを表地に使用したダウンジャケット。天然素材最高峰の手触りと包み込まれるような暖かさを追求した実験的なモデルである。
3. GOLDWIN「パーテックス カンタム ダウンパーカ」(6万9,300円)
過去に石川氏自身がゴールドウインのデザインに関わっていた頃の設計が、マイナーチェンジを繰り返しながら継続展開されているモデル。スキーのシュプールをモチーフにしたフロントのデザインラインが特徴である。体が動いた際にダウンが偏って冷気が侵入する「コールドスポット」を排除する工夫や、首元に設けられたダウンチューブによる冷気の遮断など、テクニカルな構造が徹底されている。軽量なパーテックス素材でゆったりと膨らむシルエットは、日常使いにおいて最も信頼できる一着と位置付けられている。
4. BOTTEGA VENETA「テックナイロン パファージャケット」(約58万円)
強度の高い高密度ナイロンにダウンを隙間なく詰め込み、表側にステッチ(バッフル)を出さない構築的なフォルムを持つ。襟元にブランドの象徴である大振りのイントレチャートレザーが配されており、襟部分はクリーニング時に取り外せる構造になっている。非常に強い主張と圧倒的な防寒性を持ち、華やかなシーンや遊びに出かける際のアウターとして愛用している。
デニムの再解釈とスラックスの哲学:THE ROWとボッテガ・ヴェネタ
ボトムスにおいても、THE ROWとボッテガ・ヴェネタの2つのアプローチが対比された。
まずデニムパンツにおいて、石川氏は紛失を理由にTHE ROWの定番モデルを2本買い直している。1本目はスキニーに近い細身のブラックデニム「CARLISLE JEAN IN COTTON」(12万1,000円)。ワイドパンツ全盛の反動として、下半身を引き締めてスタイルを良く見せるタイトなシルエットを再び楽しむために選ばれた。
2本目は同じくTHE ROWの「MORTON JEAN IN COTTON」(12万1,000円)。このモデルについて石川氏は、あえて「非常にいなたく、ダサい加工感」であると率直に評する。ヒゲやアタリが意図的に省かれ、中途半端にフェードした色落ちは、1980年代後半から90年代初頭のアメリカの初老男性が穿いているような野暮ったさを湛えている。しかし、自分自身のブランドでは決して出せないこの絶妙な「ダサさ」を、現代の解釈で愛でることこそがファッションの面白さであり、着こなしの腕が試されるデニムとして評価している。
これらに対し、ボッテガ・ヴェネタの「インディゴ ワイドレッグ デニムパンツ」(17万1,600円)は、日本製の上質で柔らかいデニム生地を用い、最初から洗練された美しいワイドシルエットを描く。バックポケットに施されたイントレチャートのレザーパッチやV字のステッチワークなど、ハイブランドならではの緻密なデザイン性が光る一本である。
ウールパンツでも両ブランドの美意識が際立つ。THE ROWの「Zev バージンウールパンツ」(22万8,900円)は、しなやかなサージ生地による美しいドレープと深い2タックが特徴のトラウザーである。特筆すべき点として、ヒップラインを美しく見せるためのデザイナーのこだわりから、クリース(折り目)が通常の畳み位置からずらして入れられており、折り目に沿って普通に畳むことができない構造になっている。手入れに細心の注意を要するものの、全体のシルエットは極めて流麗であると評した。
一方、ボッテガ・ヴェネタの「ウールギャバパンツ」(約18万円)は、樹脂加工が施されたかのような硬質でタフなウールギャバジンを使用している。立体的なフォルムがしっかりと保持される構築的な仕立てであり、縫製や作りの堅牢さという観点ではTHE ROWを凌ぐ完成度を見出している。
首元を彩る実用アイテム:エルメスのシルクバンダナ
小物のなかで特筆すべき存在として紹介されたのが、HERMÈS(エルメス)の55cm角スカーフ「シルクバンダナ」である。
石川氏は自身の日光アレルギーへの対策として、首元の日焼けによる湿疹を防ぐためにスカーフの着用を始めたという。エルメスの大判スカーフ(カレ90)や大判ショール(カレ・ジェアン)は男性が日常使いするにはボリュームが出すぎて扱いづらいが、この55cm四方のバンダナサイズは襟元に収まりが良く、メンズの首元に巻くのに最も適したサイズ感であると語る。
購入したのは、アフリカ渡航に際して仕立てたサファリジャケットに合わせるためのベージュ系カラー2種、「ロデオ・デ・フルーツ」と「H.アンリュミネ」(各4万6,200円)。全身黒のコーディネートに上品な差し色を添える実用的な装飾品として、継続的に集めているアイテムである。
現場主義の映像・写真機材:キヤノン、ソニー、マミヤの運用法
YouTube動画の撮影や出張時の記録のため、石川氏は専門的な撮影機材にも多額の投資を行っている。
コンパクトデジタルカメラでは、Canonの「PowerShot V10」(14万8,500円)の機動性を高く評価した。35mm判換算で16mmという超広角から撮影できるズームレンズを備え、本体上部に高性能なマイクを搭載している。大型シネマカメラやジンバル付きカメラに比べて起動が圧倒的に速く、ポケットから取り出して即座に十分な音質と画質で動画撮影に入れる手軽さは、旅の記録において唯一無二であると語る。
メインの映像機材としては、SONYの最新シネマカメラ「FX2B」を導入。上位機種であるFX3に対して一部のハイスピード撮影性能などで劣るものの、角度を可変できるチルト式ビューファインダーを備えているため、日差しの強い屋外でも外付けモニターなしで視認性を確保できる。荷物を最小限に抑えたい旅先での撮影において、スチルと動画を高品位に両立できる機材として信頼を寄せている。
さらに、業務用の本格的な動画機材としてSONYの「PXW-Z200」も運用している。本体の重量はあるものの、高倍率ズームレンズ、長時間駆動の大容量バッテリー、そしてガンマイクやワイヤレス受信機を接続して4チャンネルの音声を同時に収録できる堅牢なオーディオシステムを備えている。暗所を緑がかったモノクロ調で撮影できるナイトショット機能も搭載しており、アフリカでの夜間サファリ撮影でも威力を発揮した。
アナログ写真の分野では、中判フィルムカメラの名機「New Mamiya 6」を愛用している。6×6判の正方形フォーマットで撮影できるレンジファインダーカメラで、持ち運ぶ際にはレンズがボディ内に沈胴する機構を備えているため、同社のMamiya 7に比べて鞄への収まりが格段に良い。フィルム1本で12枚しか撮れず、フィルム代と現像・プリント代を合わせると1シャッターあたりのコストは極めて高いものの、中判フィルムならではの緻密で滑らかな解像感と撮影体験には代えがたい魅力があると語る。
音声収録の強化としては、ソニーのポータブルダイバーシティーチューナー「URX-P41D」とワイヤレス送信機「UTX-B40」2台のセット(17万4,570円)を導入。一般的な2.4GHz帯のワイヤレスマイクで発生しやすい電波混信を回避し、より安定したプロ仕様の音質を確保するための投資として運用を始めている。
デジタルストレージと旅の快適性を支える生活家電
周辺機器や日常を支える家電類からも、徹底的に検証されたアイテムが挙げられた。
- Nextorage(ネクストレージ)「NX-P4SEシリーズ ポータブルSSD 4TB」: ソニーのカメラ向けメディアを手掛けてきた技術的背景を持つ国内メーカーのSSD。業界標準となっているサンディスク製品よりもさらにコンパクトな筐体を実現しており、4TBの大容量を極めて小さなスペースで持ち運べる信頼性を評価している。
- WACACO(ワカコ)「Minipresso NS2」: お湯を注ぎ、ネスプレッソのカプセルを装填して手動でポンピングすることで、どこでも本格的なエスプレッソを抽出できるポータブルマシン。宿泊施設の設備が不十分な辺境の地や途上国への渡航時でも、朝に安定した品質のコーヒーを確保するための必需品となっている。
- cado(カドー)「ふとん乾燥機 FOEHN 003」(2万4,200円): 海外拠点のベッド環境を衛生的に保つために導入した2代目のコンパクト布団乾燥機。冬場に布団をふっくらと温め、快適な睡眠環境を整えるために重宝している。
- マービン「忽乾(コツカン)エアロダクト THE ロング」: 旅先のホテルで洗濯した衣類を急速乾燥させるためのバルーン。内部に下着や靴下をハンガーで吊るし、外側にTシャツを被せて下からヘアドライヤーの温風を送り込むことで、約10分で完全乾燥させることができる。着丈の長いTシャツにも対応する「THE ロング」が登場したことで乾燥ムラが解消された。連泊ができない過密日程の出張において、携行する衣類を最小限に抑えるための最重要ギアとして推奨された。
2025年ベストバイ第1位:OM SYSTEM「Tough TG-7」
ハイブランドの服飾品やプロ仕様の高額な機材が並ぶ中、石川氏が2025年の年間ベストバイ第1位に選出したのは、OM SYSTEM(旧オリンパス)の防水コンパクトデジタルカメラ「Tough TG-7」であった。
本機を選んだ決定的な理由は、レンズ先端から1cmまで被写体に肉薄できる驚異的な「顕微鏡モード(マクロ撮影機能)」の面白さにある。衣服のデザイナーである石川氏は、生地の繊維構造やホテルの備品の質感、身の回りの微小な物質の表面を日常的に撮影し続けており、その観察体験が他のどの機材よりも知的好奇心を刺激したという。
さらに、現代の写真編集ソフトとの親和性も高く評価している。TG-7のセンサーサイズは極めて小さく、撮って出しのスペックだけを見れば最新のスマートフォンに劣る部分もある。しかし、RAWデータで記録できるため、アドビのLightroomなどのスーパー解像度機能を用いて現像処理を施すことで、過度なデジタル補正がかかったスマートフォン写真とは異なる、極めて素直で高精細な画像へと仕上げることができる。
雨天はもちろん水中撮影までこなせるタフネス性能を備え、ポケットに収まるコンパクトな筐体に唯一無二のマクロ機能を凝縮した本機は、高級メゾンや大型機材を買い尽くした石川氏にとって、2025年で最も日常を刺激した道具として結論付けられた。
