【住宅ローン】リスク20倍「残クレタワマン」減らない利息の恐怖/東京マンションバブルは「すでに終焉」!?高値掴みなら人生のピンチ/不動産価格は長期でまだ上がる《清水俊介の辛口住宅ローン診断》
楽待 RAKUMACHI近年の都心部におけるマンション価格の高騰と日本銀行の利上げ局面が重なり、住宅購入を取り巻く環境は大きく変化している。変動金利で限界まで資金を借り入れて高値で購入した層の家計リスクや、返済負担を抑える名目で登場した新しいローン商品の危険性、さらには都心マンション市場の今後の動向について、住宅ローン診断士で株式会社エム・アセット取締役の清水俊介氏が分析と見解を示した。清水氏は、巷で囁かれる「マンションバブル崩壊」の真実を整理しつつ、実需層が取るべき判断基準を論じている。
高値掴みと変動金利が招く「蟻地獄マンション」のリスク
清水氏は、ここ数年の急激な価格上昇のなかで無理をして都心のマンションを高値で購入し、変動金利でローンを組んだ世帯は極めて厳しい状況に直面していると指摘する。手元に残る実質的な余剰資金がゼロあるいはマイナスの状態でインフレや利上げが進めば、家計の赤字は拡大し、住宅ローン破綻に近づくことになる。
こうした状況下で「売却して逃げればよい」と考える購入者もいるが、現実は容易ではない。都心マンションの相場は直近で調整局面や停滞期に入っており、希望通りの価格で売却できないケースが増えている。購入時よりも安い価格でしか売れなくなると、売却額がローンの残債を下回る「オーバーローン」の状態に陥る。手持ち資金で差額を補填できなければ売却そのものが成立せず、身動きが取れなくなる。
さらに清水氏は、破綻に直面した人間が取る現実的な行動として、すぐに自己破産や任意売却を選ぶのではなく、生活費を極限まで切り詰めて無理に住み続けようとする傾向を挙げる。その結果、終わりの見えない生活困窮が続く「蟻地獄マンション化」が進む恐れがあるという。一方で、毎月の手取りや自己資金に十分な余裕がある層であれば、金利上昇やインフレの影響を吸収でき、相場が軟調な局面でも売却を急がず回復を待つことができるため、同じ高値掴みであっても家計への影響は根本的に異なると説明している。
「残クレタワマン」と超長期ローンの罠――元本が減らない仕組みの代償
近年、一部の金融機関で取り沙汰されるようになった「残価設定型」の住宅ローンについて、清水氏は自動車の残価設定クレジットになぞらえて「残クレタワマン」や「残クレローン」と呼び、そのリスクは自動車ローンの比ではないと警鐘を鳴らす。
このローンの基本的な仕組みは、通常の元利均等返済などによる住宅ローンと、元本を減らさず利息のみを支払い続けるローンの組み合わせである。たとえば1億円の借入を行う場合、5000万円は通常の住宅ローンとして返済し、残りの5000万円は利息のみを払い続ける形態を取る。毎月の返済額を通常より低く抑えられる点が唯一のメリットとされるが、利息のみを払っている部分は居住している限り借金そのものが減らない。完済するには、将来的な一括返済か、物件を売却してその代金を充当するしかない。
清水氏の試算によると、1億5000万円の借入を行い、半分(7500万円)を通常ローン、もう半分を残クレ部分として組んだ場合、減らない借金部分の金利水準が高めに設定される傾向も相まって、35年間で支払う利息の総額は、全額を通常の住宅ローンで借りた場合と比べて1600万円以上も増加する計算になるという。また、期間満了時には残価部分の一括返済を求められるリスクも存在する。
元本の減りが遅いローンとしては、返済期間を長く設定する「50年ローン」などの超長期ローンも同様のリスクを抱えている。金利が上がらない環境であれば返済額の抑制効果が働いたが、金利上昇局面では残債の多さが仇となり、利息負担の増加幅が急拡大する。同額の借入で金利が1.0%から1.5%へと0.5ポイント上昇した場合を比較すると、35年ローンと50年ローンでは利息の増加ダメージに約754万円(清水氏いわく「車2台分」)の差が生じる。
清水氏は、こうした借入で最も懸念すべきは定年後の老後生活だと強調する。年金生活に入った段階で支払いを続けられるのか、あるいは売却時に残債割れとなって住居を失うのではないかという問題である。高齢になってから賃貸住宅を借りるハードルは高く、売却前提で将来を楽観視して組むローンの危険性は極めて高い。金融庁も超長期ローンを取り扱う金融機関に対し、リスク説明が十分に行われているか監督を強める動きを見せているという。
タワマン転売バブルの終焉と「ワニの口」現象の真実
メディア等で報じられる「タワマンバブル崩壊」について、清水氏は実態を正確に捉える必要があると語る。崩壊しているのは不動産市場全体ではなく、投機的な取引が繰り返されていた「マンション転売ヤー市場」であるという見解だ。
ここ数年の都心高額マンションの急騰は、実態価値を伴わない転売業者間の転売や、一部の海外富裕層による投機資金が押し上げていた側面が強い。しかし、海外勢の買いが一服し、さらに政府による短期売買(取得後5年以内の譲渡所得に対する重課税の強化など)への規制議論が進んだことで、転売市場の潮目が変わった。転売業者が高値で仕入れた物件を買い取る後続の買い手がいなくなり、売り出し件数が増加する一方で成約件数が減少し、在庫が積み上がる事態となっている。
不動産市場の異変を示す指標として、売り出し価格と成約価格の乖離を表す「ワニの口」が注目されている。売り出し価格(上顎)が急上昇する一方で成約価格(下顎)との差が開いている現象を指すが、清水氏はこれが直ちに市場全体の暴落の前兆を意味するわけではないと分析する。
東京のデータを精査すると、上顎の跳ね上がりは転売業者が強気な価格で売り出している数値を反映しているに過ぎず、下顎にあたる実際の成約価格は暴落しておらず、小幅なプラスを維持して推移している。エリア別に見ると、転売業者の取引が集中していた都心3区では成約価格が一時前年同月比で20%下落した月も見られたが、一般の実需層が居住目的で購入する城東や城南などのエリアでは前年比プラスを維持している。転売市場が作り出した局所的な相場が崩壊したことで、今後は実需層に適正な価格で物件が行き渡る健全な調整局面に入るのではないかと清水氏は期待を寄せる。
投機価格と実需価格の乖離――適正価格はどう見極めるべきか
新築時から中古市場に流通するまでの転売取引の連鎖について、清水氏は「時限爆弾付きのババ抜き」に例えて解説している。
例えば、新築時に1億円で売り出された部屋を転売業者Aが購入し、未完成の段階で別の転売業者Bへ1億2500万円で転売して2500万円の利益を得る。さらにBが転売業者Cへ1億5000万円で転売する。建物が完成して引き渡しが始まり、実際の現物が中古市場に出回る段階になると、購入検討者は実需層に移る。実需層は周辺の類似マンションの相場や賃料水準などを冷静に比較して値踏みするため、業者間の値上がり期待だけで吊り上げられた価格には手を出さない。結果として、転売業者が設定した投機的価格と実需価格の間に大きな乖離が生じ、最後に物件を抱えた業者が売却できずに取り残されることになる。
では、一般の購入検討者はどのように「適正価格」を判断すべきなのか。清水氏は、自身が不動産買取再販事業を手掛けている立場から、相場を判断する基準は売り出し価格ではなく「実際の成約価格」にあると述べる。
しかし成約価格のデータは一般には広く公開されていない。一般市場に流通している中古マンションの売り出し価格は、仲介会社が売り主から売却依頼(媒介契約)を獲得するために高めの査定額を提示しているケースが多く、値下げ交渉を見越した「値引き前提」の価格設定になっていることが珍しくない。そのため、ポータルサイト等で見かける個人の売り出し価格をそのまま相場と受け止めるのではなく、実態としての成約水準を意識して見極める姿勢が求められる。
マンション価格の長期シナリオ――暴落に至る条件と今後の見通し
今後の不動産価格の見通しについて、清水氏は自身のメインシナリオとして「短期的には踊り場、長期的には上昇」を掲げている。
短期的には、日銀の利上げとインフレの進行によって実需の買い手も様子見の姿勢を強めるため、一時的な小幅下落や停滞といった踊り場の動きにとどまると見ている。その後、社会全体が引き上げられた金利水準に慣れ、緩やかなインフレが継続していけば、中長期的には相場は再び上向いていくという考えだ。
一方で、価格が大幅に下落・暴落するシナリオについても検討しているが、金利上昇という単一の要因だけで不動産価格が崩壊する可能性は低いとみる。清水氏は柔道の判定に例え、金利上昇はせいぜい「有効」のポイントが入った程度であり、それだけで相場を崩す「一本」にはならないと表現する。
転売業者は利益が見込めなくなれば即座に損切りして売りに出すが、実際に住んでいる実需層は生活を守るために住宅ローンの返済を粘り強く継続する。売り急ぎや競売物件が市場に急増しない限り、市場全体の相場が崩れることはない。したがって、苦しい世帯が増えることと、実際に投げ売りが増えて価格が暴落することは同義ではない。不動産価格が本格的に下落に転じるためには、金利上昇に加えて深刻な景気後退、雇用や収入の大幅な悪化、過度なインフレによる家計の完全な破綻など、複数の悪条件が重なる必要があると指摘する。
郊外・戸建て市場への波及とインフレ下での家賃上昇リスク
都心部以外のエリアや戸建て市場、そして賃貸市場への影響についても議論が及んだ。
海外富裕層による需要は3年ほど前と比べて明らかに減退しているが、彼らが購入していたのは都心の超高額タワーマンションであり、一般実需層の市場への直接的な影響は極めて限定的である。
郊外エリアについては、都心のように数億円規模の借入を行うケースが少ないため、金利上昇に伴う返済額の絶対的な増加幅は都心より小さく、その点では破綻リスクは抑えられている。しかし、過去と現在の郊外市場を比較すると異なるリスクが浮き彫りになる。建築資材の高騰や人件費の上昇により、郊外の新築戸建て価格は大幅に上昇している。大手ハウスメーカーが採算の合わない一部地域から撤退し、建物の価格帯を引き上げている事例に見られるように、住宅取得にかかるコストは全国的に1段階切り上がっている。同じ年収水準であっても、かつてより多額の住宅ローンを背負わざるを得ない状況が生じており、その意味での返済リスクは以前より高まっている。
最後に清水氏は、現代の日本において最も注意すべきリスクは「インフレによる生活コスト全体の増加」であると述べる。引っ越し代や家具の買い替え費用にとどまらず、賃貸住宅の家賃も上昇傾向にある。エム・アセットが管理する物件でも、オーナーから賃料引き上げを求められるケースが急増しており、値上げ交渉に応じない管理会社から賃料アップを積極的に行う管理会社へと乗り換えるオーナーも出ているという。
家賃が上昇し続ける環境下では持ち家の取得も依然として有力な選択肢となるが、清水氏は「金利変動への耐性を持ち、何よりも身の丈を超えて借りすぎないこと」を最重要事項として挙げる。市場の過熱感や複雑なローン商品に惑わされず、手元資金と借入額のバランスを厳格に見極めることが、住宅ローン破綻を防ぐ根本的な防衛策であると結んでいる。
