【プロが解説】目から鱗のファッショントリビア!!知ってるようで分かってないファッション用語大辞典さ・た行編
石川俊介の〇〇〇概要
デザイナー歴25年の石川俊介氏が、知っているようで正しく理解されていないファッション用語や業界の専門用語を深掘りして解説する企画の「さ・た行編」。服作りの工程、歴史、素材特性から業界の裏事情までを紐解きます。
見出し付き・読了5分
1. 「さ行」の用語解説
- ザ・ロウ(THE ROW)
- ロゴを排除し、マズローの欲求階層における「自己実現欲求(自分自身の満足)」を満たすブランドとして台頭。クワイエット・ラグジュアリーの代表格。
- 近年はアイコンバッグ「マルゴー」のヒットにより、周囲に見せる「承認欲求」の記号へとシフトしている側面や、大手資本の参入による一般的なラグジュアリー化という両面性を持つ。
- サステナブル
- 欧州主導のビジネスルール形成という側面を持ちつつも、現代の繊維・ファッションビジネスでは不可避の最重要課題。
- 重点分野は「環境負荷低減」と「人権デューデリジェンス」の2点。
- ジッパー(ファスナー)
- 業界では「ファスナー」と呼ぶのが一般的。「チャック」は業界ではほぼ使われない。
- デザインの名称(ジップアップ、ジップフロントなど)としては「ジップ」を用いる。
- 食器(織機 / しょっき)
- 経糸(たていと)の間に緯糸(よこいと)を通して布を織り上げる装置。
- 手機から旧式力織機(シャトル織機)、レピア、スルザー、エアジェットへと進化。高速・高効率化と生地の柔らかな風合いは相反関係にある。
- スーパー〇〇's(スーパー番手)
- 国際羊毛繊維機構(IWTO)が定めるウール繊維の細さ(直径)の規格。数字が10上がるごとに約0.5ミクロン細くなる(例:スーパー120's=17.75ミクロン以下)。
- 整理加工
- 織り・編み上がった未加工の生地「生機(きばた)」に施す最終仕上げ処理。風合い(硬軟、シワ感)、機能性(撥水、防縮)、起毛や縮絨などを決定づける重要な工程。
- セレクトショップ
- 1980年代のインポートショップ(ビームス、シップスなど)が起源。90年代に全国へ波及し、自社オリジナル主体のSPA業態へと変化した。
- 袖山(そでやま)
- 袖幅線から袖山頂点までの高さ。袖山が高いと下ろしたときの立ち姿が美しくなり(テーラード向け)、低いと腕を上げやすくなる(ワーク・アウトドア向け)。
- 梳毛(そもう)
- コーミング(櫛削り)工程を経て短い繊維を除去し、長い繊維を平行に引き揃えて紡績したウール糸。滑らかで光沢と強度があり、スーツ地や上質なTシャツなどに使われる(短い繊維を残してふっくら仕上げる糸は「紡毛」)。
2. 「た行」の用語解説
- ダウンパック
- 羽毛の吹き出しや偏りを防ぐため、高密度生地で仕切り(バッフル)を作ってダウンを小分けに閉じ込めた構造体。製造には専用の圧送機が必要。
- 段返り(だんがえり)
- アメリカントラッドのジャケットに見られる仕様。3つボタンのうち第1ボタンがラペルの裏側に巻き込まれて返っており、真ん中の第2ボタンのみを留めるスタイル(中1つ掛け)。
- 超長綿(ちょうちょうめん)
- 繊維長が極めて長い希少な綿花(学名:ゴシピウム・バルバデンセ)。スビン、ギザ、スーピマなどが該当。細番手の糸を紡ぐことができ、上品な光沢と滑らかな肌触りを生む。
- ツイル(綾織り)
- 織物の三原組織の一つ。経糸と緯糸の交差をずらすことで表面に斜めの畝が現れる。平織りよりも柔軟性・ドレープ性に優れ、チノクロス、デニム、ギャバジンなどに使われる。
- 吊り編み
- 天井から吊り下げられた旧式の丸編み機。糸に無理な力をかけず、自重でゆっくり編み下ろすため、ふっくらとした独特の風合いと高い耐久性を両立する。
- デニム
- 太番手の綿経糸を「ロープ染色」でインディゴ染め(芯を白く残す中白染色)し、未染色の白緯糸とともに3/1右綾で織り上げた生地。肌への色移りを抑えるために裏面が白くなる構造。「ガラガラヘビ除け」は都市伝説。
- 手横(てよこ)
- 手動横編み機のこと。職人がキャリッジを手動で動かして編み立てるニット技術。
- 天然素材
- 自然界から直接得られる植物性(綿、麻など)および動物性(ウール、シルク、カシミヤなど)の繊維。石油を原料とする合成繊維や、化学処理した再生繊維(化学繊維)と対比される。
- ドメスティック・ブランド(ドメブラ)
- 日本国内発のデザイナーズブランド。90年代以降、地方のセレクトショップ網の発達に伴い、海外インポートと対比する形で卸売中心のビジネスモデルとして定着した。
- トレーサビリティ
- 原料から縫製・流通までの全工程を追跡できる透明性の仕組み。欧州で法制化が進む「デジタル・プロダクト・パスポート(DPP)」への対応が日本産地にとっても急務となっている。
- トワル
- 本番の生地で裁断・縫製する前に、シーチング等の安価な生地を用いてパターンを立体化し、シルエットやディテールを検証・修正するための仮縫いサンプル。
